ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

マイラーズC イスラボニータの勝因はズバリ「ルメール騎手」

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先週はGⅠレースがありませんでしたが、東京では3着までに優先出走権が与えられるオークストライアルのフローラS、京都では安田記念・ヴィクトリアマイルの前哨戦であるマイラーズカップが行われ、次の大舞台のことを踏まえても見逃せないレースでした。


京都競馬メインの第48回マイラーズカップは、2番人気の2014年皐月賞馬イスラボニータが優勝。3歳秋にセントライト記念を勝って以降、じつに2年7か月ぶりの勝利です。

鞍上をルメール騎手に替えてからも3戦続けて2着と良い走りをするものの勝ちきれず、4戦目の今回は何が何でも勝っておきたいと、騎手はじめ関係者はこれまで以上の意気込みでレースに臨んだと思います。


勝利へと導いたルメール騎手の騎乗技術は見事。それ以外に言葉はありません。 競馬は、馬の能力はもちろんのこと、出走メンバーとの相手関係やペース、流れなど数多くの要素が作用します。その中で今回は馬場状態も重要なポイントでした。

肌寒さを感じる日が少なくなり日増しに暖かくなるこの時期は芝の成長がとても旺盛で、開幕週の芝の馬場状態はかなり良く、濃密なふかふかの様はまさに緑の絨毯。 馬場が良いこと自体は(荒れ馬場が得意な馬はともかく)基本的に走りやすいため大抵のジョッキーにとって喜ばしいのですが、レースにおいては当然それにともない時計は速くなり、コーナーなどで外を回っていたらロスとなり、そのロスは特に僅差の勝負になりやすいマイル以下の距離のレースでは大きくマイナスに働いて結果を左右してしまいます。いかに内側を効率よく、馬に無理や負担がないよう走ってうまく抜け出すかがカギとなります。

ルメール騎手は大外の11番枠に入ったことで、どうレースを組み立てようかと事前に何度もシミュレーションしたのでしょう。よく考えられた騎乗でした。


スタート後、普段よりも後ろに下げてスペースの空きをうかがいながら進めていましたが、いつもなら好位につけるレース運びが当たり前のところを、あえてそういう競馬をしなかったのは、内ラチ沿いのインを取りに行くと決めた覚悟の表れだったと思います。出走頭数が11頭で多くなかったのも幸いし、うまい具合に中団あたりにぽっかりとスペースができて、そこをすかさず狙いインコースにもぐり込みました。そして3コーナーあたりからじわじわと上がっていき、1番人気エアスピネルの横まで並びかけて、まるで相手となる馬の出方をうかがうようなレース運び。これにはエアスピネル鞍上の武騎手もあっと思ったのではないでしょうか。

自分と同じ人気馬で意識してはいても、まさか大外枠の馬が自分よりも内側にいるとは想定していないはずで、僕が武騎手の立場ならこの時点で“やられた”と観念しますね。

その後の直線のたたき合いは、GⅠホースの底力に加え、ロスなく回って脚をためるだけためたイスラボニータに軍配が上がりました。もしも「ルメール騎手が」「この乗り方をしていなければ」エアスピネルに届かず着差は逆になっていたと思います。


惜しくも2着に敗れたエアスピネル。 好位で折り合いをつけ、流れに乗りレースをスムーズに進めました。この馬はテンションが高く折り合いが難しいタイプですが、武騎手の手綱さばきはさすがで、馬に全く負担をかけていないのがわかります。本当に安心して馬を委ねられるジョッキーです。負けはしましたが、そつのない乗り方で騎乗内容としてはパーフェクトです。


3着の7番人気ヤングマンパワー。 好スタートから2番手を追走、逃げ馬不在のためかペースは速くなく馬場状態は最高と、ある程度は前めの位置にいないと勝負にならない流れだったことを考慮してのポジション取りかと思います。自分が騎乗する馬よりも能力が上回っているであろう相手が出走するときに、どのように乗れば負かせるのか、との思いで生まれた乗り方でしょう。

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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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