ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

皐月賞 若武者らしい積極性でアルアインを勝利に導いた松山騎手

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牡馬クラシック1冠目のGⅠレース、第77回皐月賞が中山競馬場で行われました。


69年ぶりの牝馬優勝への期待も含まれているのか牝馬のファンディーナが1番人気になりましたが、戦前からいろいろなところで触れていた通り、僕はこの馬に関しては懐疑的でした。理由は、これまで3戦3勝、内容も良く強い勝ち方だったと思いつつも、やはり戦ってきた相手が一線級とは言い難く、多頭数のGⅠレースでレベルが高い拮抗する力をもつ牡馬たちを相手に揉まれてしまったとき、牝馬ならではの精神面の脆さが懸念されたからです。

レースは岩田騎手が前走同様に好位のポジションを取って手応えも十分に進めていき、4コーナー手前から外へと出していきましたが、この仕掛け自体が少し早いように感じました。揉まれたり、前が詰まり進路が塞がったりするのが嫌だったのかもしれませんが脚はもう残っておらず。一瞬先頭に立っただけで追い出してからの反応はなく、7着に残るのが精いっぱいでした。 精神面は、今回やはり揉まれたとはいえ僕が心配していたほどではないようなので、次走はどのレースに出走してくるにしても見どころは作ってくれるのではないかと思います。


混戦模様の今年の皐月賞を制したのは9番人気のアルアインでした。 鞍上の松山騎手はスタートから馬を出していき、好位のポジションを取るとの意志がハッキリと出る騎乗ぶり。1周目のゴール板ではハナに立つ勢いで駆けていた馬をうまくなだめ、先に行きたい馬を行かせて追走していました。

馬の気持ちに合わせてリズムを崩さないように乗る騎手はわりと多くいますが、その場合リズムを重視しすぎて、手綱を押して前に行かせるなどのアクションを何もしないので、大抵が後方グループになります。今回松山騎手は、まず馬を動かして良い場所を取りにいき、そのあとでリズムを整えるというレース運びをしました。競馬は結果が全てのうえ、レースの流れや条件によってどの乗り方が正解かも違ってきますが、この松山騎手の若者らしい積極的な騎乗は見ていて非常に好感がもてるし“勝つためにこうやって乗っているんだ”という覚悟がにじみ出るようなレースぶりは実に見事でした。

JRAのGⅠ勝利は初めてとのこと、27歳の彼がこの先どれだけ活躍するのかとても楽しみです。


2着に4番人気ペルシアンナイト(デムーロ騎手)、3着には12番人気ダンビュライト(武豊騎手)と、2人の名手がそれぞれ馬の力を上手に引き出し好走に貢献しました。

後方からレースを進め、向正面から3コーナーにかけてインを上がって好位に取りついたデムーロ騎手に対し、好位のインで流れに乗りつつ道中じっと我慢していた武騎手。 共通するのは2人ともに、インではなく外を回っていったら上位争いは難しいと考えているような乗り方です。メンバー構成としては昨年ほど傑出した馬がおらず、全体的に同じくらいの力を持つ馬が揃ったため、どの馬が勝ってもよいレース。その中で確かに上の2頭も能力はありますが、レースがうまく運べなければ掲示板も難しいかもしれません。今回は2人のベテラン騎手のそつのない騎乗により良い結果を出せたのだと思います。


注目の一頭だった3番人気カデナは9着。 レースは後方から2着ペルシアンナイトの後ろをピタリとついていき、デムーロ騎手が上がっていったときに一緒に行きましたが、1列後ろだったためにインをスルスルと通ることはできず、カデナ鞍上の福永騎手はゴーサインを出しておきながら再び馬にストップをかけるというちぐはぐな手綱操作になってしまいました。

直線ではそれなりに脚を使っていたものの前と差が開いてしまい見どころはそれほどありませんでした。鞍上も関係者にとっても消化不良の内容でしょう。広いコースが合いそうなので、東京競馬場で期待します。

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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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