ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

桜花賞 馬場に笑った馬、泣いた馬

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ちょうど見頃となった阪神競馬場の桜の花に包まれて、第77回桜花賞が行われました。

今年の桜の女王に最も近いと言われた、一時は単勝1.1倍の断トツ人気に推されたソウルスターリングがまさかの敗北を喫し、結果は馬連万馬券となりました。

多くの競馬ファンが支持し、各馬の動向を知り抜いた競馬関係者ですら負ける要素がほぼ無いと判断するほどの力を持つソウルスターリング、僕もこの馬の好走は揺るぎないものと考えていました。

レースではスタートから位置取り、そして直線に向かうまでの過程は今までと同じように何の不利もなく順調にいっていたと思います。ところが追い出してからの反応が期待とは違うものでした。これはやはり当日の馬場が原因でしょう。

馬場発表では稍重とのことでしたが、かなり多くの水分を含んだ緩い馬場だったのでは。下が軟らかく不安定な状態だと、馬は脚もとを気にして恐る恐る走る感じになり、力を出し切れません。最後も決して伸びていないわけではありませんが、これまで良馬場で勝ってきたときのように追い出したらスイスイと動き出す感じはなく、持ち味が全く生かせずに終わった印象を与えるレースぶりでした。 フットワークが軽いタイプと思われ、当日の馬場が合わなかっただけでしょう。良馬場では力を発揮してくれるはずです。

優勝したのは8番人気レーヌミノルでした。

過去の戦績を見ても〔3.2.1.1〕と掲示板を外さない、それもデビュー戦勝利以降は出走レースの全てがGⅠ阪神JF(3着)を含む重賞で、この好成績を残しています。2戦目の小倉2歳Sで2着に6馬身差をつけて圧勝するなど、能力の高さは2歳の夏から証明済み。 もともとエリートと言ってよい世代トップレベルの力をもつ馬ですが、ここでソウルスターリングを負かすとは思わず、驚きました。

好スタートを切ると4・5番手につけて余裕の手応えで追走。馬の頭がそれほど下がらず前脚の掻き込みが大変力強い、このような走り方は緩い馬場を気にすることなく走れます。

鞍上の池添騎手は馬場の良いところを選んで通るよう心掛けていたし、コース取り・位置取りともに完璧です。早めに抜け出した分だけ少しソラを使ってしまい後続馬に詰め寄られたものの、全体の内容としては申し分ない“本命馬の乗り方”でした。

2着に3番人気リスグラシュー。

中団よりやや前目でレースを進めましたが、これは鞍上の武豊騎手が意識的にポジションを取りに行ったとのこと。あの馬場では、どれほど末脚が切れる馬でもその脚を殺されてしまうので後ろから行くのはキツイ、かといって前に行き過ぎても、ペースが速くなれば体力の消耗が激しく直線バタバタになってしまいます。 馬場コンディションを読み、思ったとおりに乗れる(馬を動かす技術があるということ)。そして結果をキッチリと出すところはやはり武豊騎手。巧いなぁと思います。

もしもソウルスターリングを負かすならば、と僕が思ったのがアドマイヤミヤビです。 レースはスタートからダッシュがつかず後方グループで進み、後ろにいながら道中の手応えは怪しく、まるでハミを取っていない状態に見えました。

おそらく返し馬の時点でアドマイヤミヤビは下を気にして走る気力が失せてしまったのでしょう。デムーロ騎手も躓きっぱなしだったとコメントしていましたが、この馬にとっては不運としか言いようがない馬場状態になってしまいました。次走はオークスになるのかわかりませんが、何のレースにせよパンパンの良馬場であれば十分に巻き返しができる馬だと思います。



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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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