ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

桜花賞で明暗を分けた2人の騎乗

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先週は第76回桜花賞が阪神競馬場で行われ、牝馬クラシック1冠をかけて大変に見ごたえのある勝負が繰り広げられました。

昨年の2歳女王、単勝1.5倍の断然1番人気馬メジャーエンブレムは4着。

敗因は1つではなく、様々な要素が重なってこのような結果になったと思われますが、やはり最も影響が大きかったのは、好スタートが切れずに普段よりも少し後ろの位置取りになったことでしょう。

これにより馬群に囲まれてしまい動くに動けない態勢になりました。

あと感じたのは、圧倒的な人気を背負った騎手のプレッシャーによる心理状態です。

世代ナンバーワンの、それも完勝・圧勝を期待されるほどの馬に乗るという重圧がジョッキーの身体を動かさなかったのか、それとも、どう乗ろうが勝つ自信があったからこそあの位置で我慢したのか、その時のルメール騎手の気持ちはわかりませんが、いつもの彼に比べて消極的なレース運びでした。

結果論ですがスタートがあまり良くなかったとしてももっと積極的に逃げるか、もしくは被されない位置でレースが進められれば良かったのかもしれません。

僕が思うメジャーエンブレムの最大の長所は、スピードの持続力が他馬よりずっと優れているところ。

ですからレース運びとしてはハナを切って後続馬についてこさせ、なし崩しに追い込み馬の脚を使わせてしまうのがベストです。

要するに自分でレースを作ってスピードで押し切ってしまうのが勝利に最も近い乗り方だと思います。

ルメール騎手は今回、大事に乗りすぎて馬の能力を十分に引き出す競馬ができなかったように見えました。


今年の桜花賞を制したのは3番人気ジュエラーでした。

これまで3戦して勝ったのはデビュー戦の1つのみですが、その後2戦の成績もGⅢシンザン記念・チューリップ賞ともにタイム差なしの2着という立派なもの。

特に前走チューリップ賞ではゴール前、シンハライトとの叩き合いがじつに見ものでした。

今回は昨年のように超スローペースではなかったものの、前半は淡々としたスローな流れになり、その中でジュエラーのポジションは後方2番手。

追い込み馬にとっては不利な流れですが鞍上のデムーロ騎手は当然それを見越して徐々にペースアップし、位置取りを上げていきました。

仕掛けのタイミングといい、馬に気を抜かせずに追う技術といい見事のひと言。

なんといっても追っているときの騎乗フォームが綺麗です。

これぞ“馬を追う姿勢”といった感じのスマートな乗り方は見ていて気持ちが良い。

特に僕の場合、最近増えている馬の上でやたらと腰を動かすバタバタした乗り方が好きじゃないので尚更です。

頭が固い・古臭いと思われそうですが、鐙は短めで騎手と馬の背は水平、レース中に腰の位置がブレたりしない姿勢が美しいと思うし、手綱操作にしても腕をやたらと使うのではなく、小指をわずかに動かすことでハミを調整する、傍から見たら全く何もしていないようなものが格好良いと考えていて、これは生涯変わらない好みでしょうね。

騎手としての美学らしきものはそれぞれ違うので、見る人の好みとしか言いようがありませんが、僕は勝ちさえすればどんな乗り方でもOKというのではなく、いかにクリーンな競馬をし、いかに格好良く乗れるかに拘ります。

馬の強さや人気に頼らず、ジョッキーも魅せる騎乗をしてファンの心を惹きつけてほしいと考えています。


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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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