ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

アメリカJCC 蛯名騎手の腹の据わった騎乗が導いた鮮やかな勝利

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先週日曜日、1回中山開催を締めくくるGⅡレース第58回アメリカジョッキーズクラブカップが行われ、7番人気タンタアレグリアが優勝しました。

昨年は3戦のみの出走でしたがその3走はGⅢ・GⅡ・GⅠレースをそれぞれ4・2・4着とじつに安定感のある内容。

今回は昨春の天皇賞から9カ月ぶりの出走ということでそれほど人気にはならず、しかし終わってみれば実力があることをあらためて感じさせる勝ち方でしたね。

レースはスタート後、すぐに内ラチ沿いに進路を取り、インにもぐり込んで中団につけました。

まるで初めからそこを狙っていたかのように動いて位置取りをし、馬との折り合い良く、走りのリズムも良く、鞍上の蛯名騎手にとって、まずはポジション・流れともに理想的な感じでレースを進められました。

仕掛けどころでは、たとえば騎乗馬の手応えがとても良いのに前の馬の行きっぷりが怪しいと判断した場合(前が詰まって下手をすれば馬が立ち上がるような事態も考えられるため)、外へ進路を取りがちですが、今回蛯名騎手はインにこだわり、絶対に内から離れたくないのかという乗り方で終始隙ができるのを狙っていました。

結果うまい具合に、前にいる馬の内側に1頭分ほど入れる間隔ができたり、また他馬も外に出して仕掛けていったりなど、タンタアレグリアの前がタイミング良く開いていき、4コーナーでは何の苦労もなく逃げ馬の真後ろまで取りつくことができました。

前半の貯金(ためた脚)が十分にあり、さらに仕掛けどころでも馬を動かさず心身の消耗ゼロのまま馬なりでここまで来られたという好運。

この時点で鞍上は勝利が見えていたでしょう。

直線に向いて追い出すと内ラチ沿いから脚を伸ばしてゴール。蛯名騎手の腹の据わった騎乗が素晴らしい、じつに鮮やかな勝利でした。


2着に1番人気ゼーヴィント。

中団で脚をため直線は外に持ち出すと力強く伸びてはいたのですが勝ち馬にかなり上手く乗られたため、その分だけ届きませんでした。

昨年のGⅢラジオNIKKEI賞を制した後、秋にセントライト記念2着、古馬に混じっての福島記念2着、そして今回と重賞3戦連続2着となり勝ちきれないレースが続いてしまいましたが、当然ながらこれだけの好走は力があるからこそできること。

4歳になった今年は期待大です。

人気と実力を兼ね備えたスターホースになる可能性を感じます。


3着の3番人気ミライヘノツバサは3番手の好位でレースを進めましたが、比較的速いペースになったため前を行く馬には厳しい流れとなってしまいました。

そんな中4コーナーを回ると逃げ馬を捕らえて先頭に立ち、逃げ込み態勢をとりました。

たぶん切れ味勝負だと少々分が悪いとわかっていた内田騎手はこのような乗り方をしたのでしょうね。

こういうタイプの馬は脚をためようと追い出すのを待てば待つほど切れ味鋭い他馬にかわされてしまい着順を落としてしまいます。

結果的にこの内田騎手の判断が、ミライヘノツバサにとっては不向きな流れのレースで3着に粘らせることができたのだと思います。

好騎乗でした。



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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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