2007年10月05日
9回の裏。2アウト。ワシントン・ナショナルズのバッター、トッド・リンデンが4球目のカーブを見逃し、三振を喫した。
その瞬間、フィリーズのクローザー、ブレット・マイヤーは自分のはめていたグローブを思いっきり、そして空高く放り投げた。そのシーンは、フィリーズファンが14年間溜め込んだ憤り、悲しみ、諦め、涙、忍耐力、そして負け続けたチームへの変わらない忠誠心が一つの大きなエネルギーとなり、一気に噴き上がった象徴のように見えた。
ベンチで戦況を祈るように見つめていた強打者、パット・バーレルは叫びながら全力疾走し、キャッチャーのコステよりも先にマイヤーに抱きついた。続いてコステ、内野手陣が誰彼かまわず抱き合い、歓喜の雄たけびを上げる。
フィリーズの本拠地、シチズンズバンク・スタジアムをパンパンに埋め尽くしたフィリーズのファンは、絶叫に近い声を上げながら、今まで味わいつくした屈辱の日々に別れを告げるかのように、白いタオルを力いっぱい振り続けた。
やったんだ。俺達のフィリーズがついにプレーオフに進出するんだ。
9月30日。MLBのレギュラーシーズン最終日、162試合目にしてフィラデルフィア・フィリーズはニューヨーク・メッツを引き摺り下ろし、ナショナルリーグ・東地区のタイトルをもぎ取った。1993年、トロント・ブルージェイズ相手にワールドシリーズで涙を飲んでから、実に14年ぶりのプレーオフ進出。長い間アトランタ・ブレーブスやフロリダ・マーリンズ、そしてメッツの後塵を拝し続け、踏みつけられた末の優勝であり、悲願であった。
この結果は、若く才能溢れる選手達が、不安になりながらも己の可能性を信じ続け、メッツという巨大な敵に必死に、歯を食いしばりながら喰らいついた結果である。残り17ゲームになった9月。ナ・リーグ東地区首位を走るメッツに対し、フィリーズは7ゲーム差を付けられ、2位に甘んじていた。後ろからは若さ溢れるブレーブスが、虎視眈々と2位の座を狙っていた。
ファンの脳裏をよぎるのは、何年も善戦しながらあっさりと負け続けた、いつものフィリーズだったろう。追い込まれると自分達を見失い、バラバラになっていたフィリーズは、しかし今シーズン、苦しい立場になると逆にチームが一つにまとまり、自分達の最終的な目標を常に再確認し続けた。
今の主軸、エースに成長を遂げたコール・ハメルズ、ショートでナ・リーグのMVP候補ジミー・ロリンズ、ファーストのライアン・ハワード、セカンドのチェース・アトリー、そしてバーレル、マイヤーは全員フィリーズの生え抜きの選手である。才能が有りながら、人一倍成功に飢え、自分達の本来の力を見せ付けてやりたいと熱望する若人たちの集まりである。
それに加え、他球団を渡り歩き、フィリーズにたどり着いたベテラン達がいた。このままでは終わりたくない、見返してやりたいという強い気持ちと、今までメジャーを生き残ってきた経験が、フィリーズを一つにし、より強く、前に突き動かす。今年一年、セットアッパーとして縦横無尽の働きをしたジェフ・ゴードン、優勝がかかった最終戦、圧倒的なプレッシャーがその左腕に重くのしかかった中で、ナショナルズ打線相手に5.1回投げ、1失点に抑えたジェイミー・モイヤー。
若いチームにモチベーションと緊張感を保たせ、ベテランを適材適所で登用、起用する。たとえ殆ど無くなったとしても、わずかな可能性を追い続けるようにチームを持っていった、チャーリー・マニュエル監督を中心とする首脳陣の手腕は評価されるべきだろう。それは9月中旬と後半を12勝4敗で乗り切った勝負強さ、つまりはチーム力として現れている。
その姿は、ベルトランやマルティネスなど、最近主力を「買」ってチームを編成してきたメッツとは全く異なるものだった。勝っている場合はいいが、一度窮地に追い込まれたチームは、チームとして原点に帰る目標がないと一気に空中分解をする。フィリーズに追い上げられた今年の終盤、必要だったのは慌てたチームを落ち着かせ、まとめるキャプテンシーであり、首脳陣のマネジメントではなかったか。昨年地区優勝をし、戦力的にも資金的にも充実しているメッツからはどこか中だるみを感じ、プレーから沸き立つような熱い思いと、チームとして「絶対にこれを成し遂げたい」という目標を感じることは出来なかった。
フィリーズは、プレーオフ一回戦となるディビジョンシリーズを、コロラド・ロッキース相手に戦っている。第1戦を2-4で落としたフィリーズ、2戦目も初回に2点を先制されるなど、依然苦しい戦いが続いている。ただ、これまで通り自分達の立ち居地をしっかりと把握し、常に諦めず、挑戦者の気持ちで我武者羅にプレーし続けるならば、結果は自ずと付いて来るだろう。
フィリーズ、頑張れ。
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2007年10月01日
「おかえり、オーキー。」
その瞬間、温かい拍手が岡島秀樹投手に降り注ぎ、そしてとても大きな歓声がフェンウェイ球場を包んだ。
9月14日の対ヤンキース戦で、2者連続で被弾するなど、疲労から来る不調が伝えられていた岡島は、13日ぶりのマウンドに8回表、3-5の場面で登場した。進出が確定したプレーオフに向けての調整と、現段階でどれほど復調したのか、首脳陣がテストする意味合いが濃かった中での当番だった。
正直、ファンがこれほど岡島を優しく迎えるとは思っていなかった。
安定感抜群だった岡島のピッチングが、8月から9月にかけて、徐々に、しかし目に見えて悪くなっていった。0.9点台だった防御率は、2.2点台まで跳ね上がり、救援に失敗する場面も出始めた。
ボストンのファンは辛らつである。少しでも負けが込んだり、打てない日々が続くと、新聞はもちろん、ラジオやインターネットのブログで不振の選手は、ファンから詳細な数字を突きつけられ、批難にさらされる。
春先にセンターのココ・クリスプが絶不調だった時、地元のスポーツラジオ局、WEEIのトークショーではルーゴの放出とイチロー獲得の可能性について、朝から晩までリスナーとホストとの間で喧々諤々の議論が繰り広げられ、ヤンキースに猛追されたシリーズ終盤には、左斜紋筋痛で24試合を休んでいた主砲、ラミー・ラミレスに「この時期、怪我をしていない選手など何処にもいないのに、試合に出ないなんて甘えすぎている。わがままだ」との批判がインターネット上を席捲した。
一方、野球というゲームを誰よりも理解し、酸いも甘いも噛み締めてきたボストンのファンは、他のどのチームのファンよりも、限りない愛をチームと選手に捧げる。
岡島が今年、どのようなピッチングを見せてきたのか。4月の、黙って座っていると底冷えのするボストンの春の夜に、ヤンキース相手に見せた快投を、ファンは覚えている。レッドソックスが春先から夏にかけて見せた快進撃を、影で支え続けたのは誰か。ファンはしっかりと見ている。
またマウンドに上がる際に帽子を取ってうつむき、平常心を保つよう、そして今日の無事を祈る。岡島の、そういった野球に対する真摯な態度もまた、ファンの心をつかんでいるのだと思う。
その晩、岡島は1回を被安打1、無失点で投げぬき、最後はファンのスタンディング・オベーションに、この日2つ目の三振で答えた。
わぁっ、とその日一番の歓声が岡島に送られた。ボストンで野球をしている岡島は、そしてレッドソックスの選手全員は、幸せだなと思う。
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2007年09月24日
「勝っても意味ないだろ。プレーオフ、どうせ行けねぇんだから。毎年同じことばかり繰り返しやがって。」
先週の土曜日(9月15日) 、メッツがホームでフィリーズに逆転負けを許した直後、メッツファンがフィリーズファンに向かって言った負け惜しみの一言が、ここ最近、ずっと頭から離れない。一週間が経ちその捨て台詞は、現実味を帯び始めた。
4.5から1.5、そして再び2.5。減っているかに見えるゲーム差は、残りゲームが6という状況の下では、何の慰めにもならない。埋めきれない、絶対的で絶望的な差。メッツがマーリンズに逆転勝ちを収め、今日(23日) の対ナショナルズ戦での敗戦によって、フィリーズの逆転優勝への道はほぼ閉ざされてしまった。
しかし、まだ希望は潰えていない。敵はサンディエゴ。フィリーズのプレーオフへの戦いは、ワイルドカード狙いへと移った。周囲パドレスに0.5ゲーム差の2位。まだまだ、いける。
逆転に次ぐ逆転。9月に入ってのフィリーズの戦いぶりは、覚めやらぬプレーオフへの飢餓感を体現したものであり、たとえ疲労で体が言うことを聞かなくなっていても、プレーオフという夢と可能性を信じて愚直なまでに前を向き、歩みを止めようとしない人間の強さでもあった。
もっとシーズン序盤で勝っていたら・・・と嘆くフィリーズファンも多い。ただ毎年勝たねば明日がない状況に追い込まれても、どこかクールに、他人事の様な戦いぶりを見せていたチームが、ここまで一丸となって、泥臭く、血眼になって、死に物狂いで戦ったこともなかった。
危機感と、執念と。
たとえ今シーズン、「いつものように」レギュラーシーズンで敗退したとしても、今シーズン末に選手一人ひとり体験し、ファンに見せたものは、チームのDNAとなり、新たな骨格を作り上げていく。
レギュラーシーズン、いよいよ最終週。もう後がない愛するチームの明日を想うと、切なくなり、逃げ出したくなる。ただ、その結果がどうであろうと、最後の、最後の瞬間まで、応援したいと思う。
posted by nysports |13:27 |
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2007年09月17日
そのプレーは8回表、2アウト1、2塁の場面で起こった。3-3の同点。カウントは1ストライク・ナッシング。舞台はメッツの本拠地、シェイ・スタジアム。
フィリーズのリード・オフマン、ジミー・ロリンズが打ったライナー性の、とても鋭い打球はセンター方向へグングン伸びていった。メッツのセンター、カルロス・ベルトランが捕球しようと2歩前に出たその時、球場全体の音が消えて無くなった。その前進した2歩がチームに何をもたらすか、まるでファンがわかっているかのように。
次の瞬間、スタジアムは大きなため息に包まれる。ベルトランは目測を誤ったのだ。彼の頭上を越え、センターフェンスに向かって転がるボールを慌てて追いかけるベルトランの背中を見ながら、フィリーズの3塁コーチャー、スティーブ・スミスの腕は、強い風を一杯に受けた風車のように勢い良く回り続ける。5-3。フィリーズ、逆転。ブーイングは鳴り止まなかった。
その一寸の判断ミスが生み出したコントラストはとても残酷だった。綺麗に晴れ渡った、澄んだ秋空の下、フィリーズファンの身に着けている赤いシャツは、より一層輝きを増し、メッツファンの顔は一気に暗くなり、着ている青色のTシャツは、くすんで見えた。
レギュラーシーズンも残り半月となり、プレーオフ進出に望みをかけるチームは一勝をもぎ取るごとにプレーオフへの可能性を祈り、一敗を喫する度に行き先のわからない明日を憂う。
フィリーズは危なげない継投でこの試合をものにし、ナショナルリーグ東地区の首位を走るメッツとのゲーム差を4.5に削り落とし、ワイルドカード争いではトップのパドレスとのゲーム差を1.5に保った。しかし、フィリーズ・ナインは気を休めることは出来ない。斉藤隆投手がいるドジャースも、同ゲーム差でフィリーズと並び、虎視眈々とプレーオフへの出場権を狙い、それを全力で奪い取りにかかる。
そして数字の上では優位に立つメッツでさえも、ここ最近のような、緩慢なプレーが散見される戦い方を続けると、その優位性はあっという間になくなってしまう。この日( 15日)では先に挙げたベルトランの判断ミスと、する必要性がまったく無いところで遊撃手ホセ・レイエスの3盗を試み、失敗するなど、開幕当時の爆発的な強さはすっかり鳴りを潜め、チーム自体がガクッと停滞しているのが少し気がかりだ。
また、フィリーズは15日時点で対メッツ戦7連勝を飾るなど、上位のチームとは比較的いい戦いをするものの、下位のマーリンズ、ナショナルズにはよく取りこぼすことが多い。若く、活きのいい選手が多いだけに、監督とコーチが選手の心理マネジメントをきちんと管理し、常に挑戦者の気持ちで戦うようにしなくては、この先1993年以来のプレーオフ進出は厳しくなるだろう。
プレーオフへの渇望、祈り、叫び、喜び、チームへの忠誠心、悲しみ、誇り。ファンの様々な思いが交錯しながら、今月末にはプレーオフに進出するチームが決定する。
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2007年09月10日
「レッドソックスにあまりマッチしていないんだよ - 16パーセント。」
ボストン・レッドソックスの松坂大輔投手は、現地8日、ボルチモアでオリオールズ戦に先発。満塁ホームランを含む8失点を許し、3回を投げ終わることなく降板。12敗目を喫した(14勝)。
明けて現地9日。現地メディアはここ5戦で1勝4敗、防御率9.57の右腕の敗戦と、ヤンキースが再びゲーム差を5・5に縮めたことをこぞって報じた。ボストン・グローブは「オリオールズ、楽勝する」という見出しで、ゲームを振り返った。比較的冷静なトーンで、松坂投手、ファレル投手コーチ、フランコーナ監督のコメントを掲載し、ここ最近の松坂投手の成績を分析しながら、どこに不振の原因があるのか探ろうとしていた。
一方、より大衆向けで辛辣な記事で有名なボストン・ヘラルドはよりストレートだった。
「松坂、失意の中、あっという間に敗れる。」見出しはそのように書かれ、「ダイスケはレッドソックスのローテーションの重要な一角を担ってきたが、ここ最近、(ダイスケの出来は)一番の懸念事項になりつつある」と、記事は始まっている。
「松坂はどうしちゃったと思いますか」-そのマイケル・シルバーマン記者が書いた記事の横には、ボストン・グローブの読者アンケートが掲載されていた。
1.今年は松坂の年じゃないだけ
2.そもそもレッドソックスにあまり合ってない
3.まだアメリカの野球に適応しようとしている
4.不運が重なっただけ
これら4つの答えのなかで、一番多かったのが、73パーセントを占めた3番だった。「まだダイスケはアメリカの野球を勉強しているだけ。今シーズンもなかなかやっているじゃないか。なぁに、慣れたらガンガン勝ってくれるさ」と。
と同時に、松坂投手が「レッドソックスにあまりマッチしていない」と答えたレッドソックス・ファンが16パーセントもいた。「マッチしていない」、つまりボストンが今、ヤンキースに追い抜かれるかもしれない、という現状に対して松坂投手が「マッチしていない」のか、プレーオフ、ワールドシリーズを勝ち抜いていく上で、日本の至宝と謳われた右腕はチーム事情に「マッチしていない」のか。もしくは、そもそも1億ドルの男は、レッドソックスのチーム、ボストンという街に「マッチしていない」のか。そのどれかが当てはまるかはわからない。そのいずれなのかもしれない。どれも当てはまってないかもしれない。ただ、高まる不満を隠しきれないファンが多くなっているのは、事実だ。
レギュラーシーズンが1ヶ月を切り、現実が数字として明確になるこの時期。ボストンファンは松坂投手に対し抱いていた、シーズン当初はどこかモヤモヤっとしていた疑問も、今は具体的な形として感じているのは確かだろう。「新人のバックホルツはノーヒット・ノーランをやったし、ベケットは18勝をあげた。ウェイクフィールドだって41歳で16勝だ。何でダイスケは・・・。」 信じていながらも、一度ネガティブな方向に思考が働くと、否定的な考えに思考回路が支配される。スポーツファンはつい、愛するチーム、選手のことでさえもそんな風に考えてしまう。
「自分自身にとって我慢の時期だと思いますけど、それよりも自分一人がチームに迷惑をかけて、本当に申し訳なく思っています。」 レッドソックスのゲームをほぼ全試合放映する地元ケーブル局、NESNのウェブサイトで松坂のぶら下がり会見を見た。丁寧に質問に応じるものの、口は重く、顔の表情も曇ったまま。一番ふがいなさを感じ、ファンとチームに申し訳なく思っているのは、誰でもない、松坂大輔なのは明らかだった。
次回登板予定は現地14日、フェンウェイスタジアムでのヤンキース戦。周辺の雑音を消し去り、ファンの不安を笑顔に変える、最高の舞台が整った。
※アンケートはボストン・ヘラルド紙のHP上で展開されているため、パーセンテージはリアルタイムで変わります。そのため、実際に表示される数字と、
ここにある数字に違いが出る可能性があります。あらかじめご了承ください。
(ここで書いた数字は、米国東部時間9日、午後11時現在)
posted by nysports |11:58 |
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2007年08月17日
昨年の今頃、暑さが猛威を振るったアメリカ東部だが、今年の夏はからっとした、比較的過ごしやすい日が続いている。
そんな天候なのに、レッドソックスはどうも夏ばて気味だ。序盤戦は宿敵、ヤンキースの調子の悪さを尻目に、連戦連勝。一時は14.5ゲーム差をつけていたのだが、ここに来て失速。オールスター後、ヤンキースは20勝9敗というハイペースだったのに対し、レッドソックスは19勝14敗。8月16日現在では5ゲーム差まで縮まった。
そんな元気のないチームの中で、一人気を吐く選手がいる。二塁手のダスティン・ペドロイヤだ。開幕当初、レッドソックスの弱点の一つとして2塁が挙げられていた。2006年途中にメジャーデビューを果たオたペドロイアだったが、31試合で2本塁打、打率.191と、満足の行く結果を残すことを出来なかったからだ。
開幕はなんとかメジャーに残り、8番や9番を打つことになったが、中々打撃は上向きにならず、4月には6試合連続無安打を記録するなど、4月の打率は.182と低調だった。それが5月には一転。アリゾナ州立大学出身の2塁手は、9試合で2安打以上を記録。月間の打率.415をたたき出す。
6月の月間打率は.333、7月は.299と好調を維持。それに伴い、波の有るルーゴやクリスプに代わって、2番を打ち始める。ここ最近ではリード・オフマンの役割を果たすなど、173センチと小柄なペドロイアの存在感は、大物と役者ぞろいの強豪チームの中で確実に大きくなっている。
ペドロイアを語る上で忘れていけないのはその守備能力だ。位置取りはもちろんの事、全力で右へ左へ走り、懸命に白球を追う。そのダイビング・チャッチでチームの危機を救ったことは数知れず、その姿は正に映画「スパイダーマン」を髣髴とさせる。レッドソックスの中継でも、松坂投手のピンチをその守備で救ったことを覚えているファンの方も多いのではないか。
また、その小さな体全部を使ってのフルスイングと、常に全力でベースを駆け抜けようとする姿勢は、バテ気味のチームメートを牽引する。寡黙で派手さはないものの、堅実なプレースタイルは正に職人。最近ペドロイアのTシャツを着ているボストンファンが増えているのは、彼に共感するファンが多いからだろう。
そんな彼の経歴を紐解くと、エリート街道を歩んできたことがわかる。野球の名門、アリゾナ州立大学では、全米制覇は出来なかったものの、2003年には打率.404を記録し、Pac-10(太平洋側に有る大学10校が構成するスポーツ・リーグ)のベストナインに3度選ばれるなど、メジャーでの成功も確実視されていた。2004年のドラフトでレッドソックスが指名、その後ペドロイアはシングルAから着実にステップアップ。23歳になった2006年、ついにメジャーデビューを果たすこととなる。
そんなペドロイアの成長振りに、フランコナ監督も目を細める。「だから言ってただろ?彼はやる奴だって。正直、去年の9月とキャンプ、シーズン当初はまだメジャーのレベルじゃないかな、って思ったんだけどね。今はもちろん高いレベルのプレーを見せてくれているよ。満足しているね。」
オーティス、ラミレス、シリング、ベケット、パペルボン、岡島、そして松坂。メジャーの舞台でも輝き続けるスターの中で、年棒38万ドル(およそ4100万円ほど)のペドロイアは輝きを少しずつ増し続ける。
posted by nysports |06:42 |
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2007年08月09日
今シーズンに入って、レッドソックスのエース、カート・シリング投手の元気が無い。故障者リストに乗ってから60日目。ローテーションに復帰したシリング投手は、8月6日ロスアンジェルス・エンジェルス戦に先発したものの、4失点を喫し、復帰を白星で飾れなかった。
セオ・エプスタインGMとレッドソックスは、2007年シーズン後にFA選手となるシリング投手と、春季キャンプ前時点では契約延長はしないと発表した。今年40歳という年齢に加え、今シーズン、怪我をするのではという懸念からの決断だった。契約を延長して、気持ちよく開幕を迎えたかったシリングは、レッドソックスの判断に失望感を表したが、4月、5月を5勝2敗、防御率3.68という好成績でシーズンのスタートを切った。
しかし、6月に入ってから徐々に安定感を欠きはじめる。シリングはあわやノーヒットノーランを達成しそうになった、6月7日の対アスレチック戦を除いた3試合で、最高でも5回を投げきるのがやっと。同月の防御率は5.79と、4月、5月の防御率に比べておよそ2点も悪くなっている。それに加えて、MRIスキャンで異常なしと診断されたが、6月18日の対ブレーブス戦後に肩の異常を訴えるなど、怪我の心配も依然としてある。
「なんだかしっくりいかないんだよ。今年はずっと色んなことを受け入れるように努力しているよ。それは年のせいなのかもしれないし、(物事が)うまく行かないからかもしれない」と毎週出演するラジオ番組で気持ちを吐露したシリング。普段ならもっと強気の発言をするのに、こんなしおらしい、元気のないシリングを見た記憶は無い。
2004年、ヤンキースとアメリカン・リーグの王座をかけた戦ったチャンピオン・シリーズ第6戦で、まだ術後まもない足首から出血していても、痛みをこらえてチームのために黙々と投げ続けたシリング。優勝に見放され続けてるフィラデルフィア・フィリーズで、9シーズン(2000年は途中から在籍)ひたすら黙々と投げ、通算101勝をかき集めたシリング。常に反骨精神に溢れ、勝ちに飢えを覚えず、貪欲に野球と向き合ってきた。
8月8日現在でチームは68勝44敗でアメリカン・リーグ東地区1位。2位ヤンキースに5.5ゲーム差をつけており、気の早いファンは3年ぶりの優勝を疑わない。ただ、ヤンキースは一時の絶不調から抜け出し、西地区のエンジェルス、中地区で昨年ワールドシリーズに出場したタイガースと、強打者ぞろいのインディアンズも調子を崩さない。
厳しい戦いが予想される今年だからこそ、40歳の右腕にはまだまだ頑張ってもらわなくてはいけない。いつもの強気でファンとチームを引っ張ってもらわなくてはいけない。
posted by nysports |06:57 |
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2007年07月31日
井口選手がフィラデルフィア・フィリーズへ移籍した、という報道を聞いてびっくりしたのは先週金曜日。次の日のデーゲーム、対パイレーツ戦では桑田投手から犠飛から一打点をあげ、続く日曜日には2本ヒットを打つなど、早々と存在感を示していることに一人感嘆の声をあげています。
スポーツ好きの方でしたら、今はデンバー・ナゲッツにいるアレン・アイヴァーソンと、彼の繰り出す切れ味鋭いカットインを思い浮かべることでしょうが、
日本に住んでらっしゃる多くの方々にとっては、フィラデルフィアと聞いても映画「ロッキー」や「フィラデルフィア」が思いつくぐらいで、あまりなじみの無い街かと思います。確かにニューヨークで感じることが出来る躍動感にかける、味はあるが少し地味な街です。
そんな街を本拠地に置くフィリーズ(「フィラデルフィアっ子」の意)、現在NL3位とあまり目立たない、地味なチームと思いきや、なかなかキャラが立っている、見ていて面白いチームなのです。
先日、フィリーズは10000敗を喫した初のMLBチームになりました。創設1883年から数えて124年。単純計算をすると1年でおよそ81敗(正しくは80.645)しています。1941年には111敗(43勝)を記録。そんなチームを応援しているファンはかなり熱狂的というか狂信的で、10000敗目を喫した夜は歓声が球場を包んでいました。逆の意味でお前らすごいよ、と。監督は「そんなの関係ない。勝ちしか興味がない」とむっとしていました。
フィラデルフィアのファンは、レッドソックス・ファンに気質は似ていますが、勝っても負けてもフェンウェイを満員にして、チームに力を与えようとするボストンファンに対し、多くのフィリーズファンは負けが込むと球場に行くのをやめ、チームに無言のプレッシャーを与えます。
そこまで裏切られると、ファンはフィリーズからチームを鞍替えしてもおかしくないと思いますが、多くのファンは1980年に見せてくれたワールドシリーズ制覇の奇跡を信じて止みません。安打製造機と相手チームに恐れられたマイク・シュミットと、全速力でベース間を走り抜け、1塁打を2塁打にして、2塁打を3塁打に変えた「チャーリー・ハッスル」ピート・ローズを軸に戦い、一気にペナント初奪取まで駆け抜けた年は、今でもファンの間で語り草になっています。
監督は日本でヤクルト、近鉄でプレーしたチャーリー・マニュエル。選手の間では「きちんと対話をしてくれ、一人一人をリスペクトしてくれる」と評判はいいです。ただ、ソフトすぎて選手がしまってプレーしない、という地元の批判もあります。
注目するべき選手は、前回の日米野球にも出場した1塁手ライアン・ハワードと2塁手チェイス・アトリー。ハワードは昨年52本の本塁打を打ったパワーヒッターで、アトリーはシュアな打撃と守備がきらりと光る選手です。
また左翼手のバーレルも一時の不振を脱し、勝負強く、長打も打てますし、
若手投手のハメルズは長身からキレの有る球を投げ、将来有望株です。
ちなみにショートのロリンズを含め、上に挙げた選手は全員イケメンです。「MLBイケメンコンテスト」なるものがあれば、悲願(?)の優勝も夢ではありません。
いつも問題視されているのが3塁と投手陣。特にリリーフエースのワグナーがFAで(よりによって宿敵)メッツに2年前に移籍してから、不安定な試合が増えました。
リリーフの問題はさておき、守備力にも定評の有る井口選手のことですから、3塁コンバート論が巻き起こってくると思われます。
一フィリーズファン、そして元フィラデルフィア市民として、一人でも多くの日本人の方々が井口選手を通じて、この一筋縄ではいかない、愛すべきチームと、歴史に包まれた街を好きになってくれれば、と思います。
フィリーズ、要注目です。
posted by nysports |04:32 |
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