2008年07月01日
想い出(3)/険悪なスロベニア越え~ユーロ2008取材より
月も変わり、喧騒と熱気に包まれたユーロ2008もあっという間に過去の話となりそうな勢いです。大会中はクロアチアの国旗をつけた車があちこちに見られたものですが、最近はそんな車は滅多に目にすることもなくなり、クロアチアのユニフォームや国旗を使ったショーウインドウの飾り付けも次第に無くなりつつあります。国民の関心事は夏のバカンスをどこで過ごすか、もしくは外国からの観光客が押し寄せるこの時期にいかに儲けるかの二点に絞られてくるものです。 不定期に書く「想い出」コラムですが、まだ記憶が新しいうちにユーロ2008を触れようと思います。今回は移動にまつわる話、それもスロベニアに対するクロアチア人感情がテーマです。 私はクロアチア代表の試合を中心に計6試合を取材した中で、クロアチアからオーストリアもしくはスイスまでの移動は列車を使用しました。アクレディ(取材証)を持っている人はオーストリアとスイスの一等車を無料乗車できる特典があるわけですが、入国するまでの切符は必要となります。ただし、アクレディはオーストリアとスイスでしかピックアップできないので、まずは試合開催地まで足を運ぶ必要がありました。初戦のクロアチアvs.オーストリアの開催地はウィーン。ウィーン往復に選んだ手段は地元旅行社が企画した「Vatreni Vlak("炎の列車"という意)」というサポーター専用列車でした(写真)。 朝5時55分にザグレブ発で、6時間掛けてウィーンに到着。戻りは試合後、夜行列車になります。価格は549クーナ(約1万2600円。)この試合は10万人ほどサポーターが駆けつけたといいますが、多くは自動車で移動しました。それでも列車内はクロアチアの赤白チェックのユニフォームを着込んだサポーターでほぼ満員となりました。そんな中、私はコンパートメントで有給を取って試合に行く現職警官4人と一緒になり、日本人という珍しさもあってすっかり打ち解けたのでありました(写真下)。 客車には定番のサポーターソングがかかり、ビールを飲みながらの合唱。しかし、30分もすれば緊張が走ります。 「さあ、これからヨーロッパだ」
クロアチアもヨーロッパの国でありますが、彼らの中には潜在的に「ヨーロッパ=西側の先進国=EU」というイメージがあります。スロベニアは早々と2004年にEUに加盟したのですが、クロアチアは戦犯問題もあってEU加盟に出遅れてしまいました。そんな中、クロアチアに住む人々は"旧ユーゴの優等生"スロベニアを通らない限り、どうしてもオーストリアに辿り着けないのです。 EU加盟後にすっかり大きくなったスロベニア国境のドボヴァ駅に入ると、駅のホームに特別警官隊がずらりと並んでいます。 「なんだ、あいつの面構えは! あのヒゲはまるでユーゴのおっさんみたいだぜ」 既にビールでほろ酔いのクロアチア人警官は隣国の同業者の悪口を言います。 クロアチアとスロベニアは犬猿の仲。先にEU入りしたことへのヤッカミもあるのですが、漁業水域問題や国境問題をはじめ両国間には数多くの国際問題を抱えており、その民族間感情の悪さはクロアチア~セルビアと匹敵するほど。ちなみにクロアチアの国旗をかざしてスロベニア国内を車で走り、もしスロベニア警察に検挙されると41ユーロの罰金が取られるそうで、ここまで来るともう嫌がらせです。ネット上ではこんなクロアチア人の皮肉があります。 「スロベニア人と蚊の違いは何かって? 蚊に神経質になるのは夏だけ、ってことさ」 パスポートは念入りにチェックされ、手荷物も開かなくてはなりません。もちろん、発炎筒などがあればそこで没収。なにせ完全武装した警官隊も構えているので抵抗などできません。相当な時間が経過し、ようやく客車が動き出すと、クロアチア人警官は禁煙のコンパートメントを出て車両の廊下でタバコに火をつけました。そこで同僚が言います。 「スロベニアは公共の場所でのタバコが禁止されているらしいぜ」 「はあ。知るか、そんなもん!」 ユーロ2008とは無縁のスロベニアを列車が走る中、サポーターたちが歌います。 「Trazim je na karti, nema je, Slovenije! Slovenije!」 (地図で探したところでも無いんだぜ、スロベニア! スロベニア!)
これは小国かつEUに飲み込まれたスロベニアに対しての皮肉ソングです。今年はEUの議長国を務め、平均年収は二倍近くと、すっかり水を空けられたクロアチアにとっては、こうでも言わないと溜飲が下がらないようです(笑) 思い返せば、4年前のユーロ2004予選プレーオフで両国が戦い、あのプルショのゴールが無ければ格下スロベニアに沈められていました(ちなみに今回のスロベニアは予選グループで7チーム中6位)。もし、あそこで敗北していたらクロアチアは面目丸潰れだったことでしょう。だからこそ、プルショはクロアチア人にとって永久に英雄であり続けるのです(彼がセルビア人とはいえ)。 ちなみにチャンピオンズ・リーグ2008/2009シーズンの抽選会が今日行われ、ディナモ・ザグレブは予選一回戦のリンフィールド(北アイルランド)を下せば、次の二回戦は昨年に引き続いてスロベニアのドムジャレと対戦することが濃厚となりました。 二回戦に出てくる普通のチーム相手ならば1万人も観客がスタジアムに集まらないところですが、昨年は2万人以上が集まり、敵意むき出しに汚いコールを連発(映像はこちら。53秒ぐらいから上のフレーズが出てきます)。何かと「目の上のたんこぶ」なスロヴェニアとの宿命はまだまだ続きそうです。 気になるのは列車で一緒だったクロアチア警官の皆さん。クロアチアのサポーターはあれでもまだまだ手緩いところがありますが、今度は熱く暴れるディナモ・サポーター「BBB」相手に警備として彼らも借り出されることでしょう。確かハイドゥク・スプリトのファンだと言っていた記憶が。

初戦のクロアチアvs.オーストリアの開催地はウィーン。ウィーン往復に選んだ手段は地元旅行社が企画した
クロアチアもヨーロッパの国でありますが、彼らの中には潜在的に「ヨーロッパ=西側の先進国=EU」というイメージがあります。スロベニアは早々と2004年にEUに加盟したのですが、クロアチアは戦犯問題もあってEU加盟に出遅れてしまいました。そんな中、クロアチアに住む人々は"旧ユーゴの優等生"スロベニアを通らない限り、どうしてもオーストリアに辿り着けないのです。
EU加盟後にすっかり大きくなったスロベニア国境のドボヴァ駅に入ると、駅のホームに特別警官隊がずらりと並んでいます。
「なんだ、あいつの面構えは! あのヒゲはまるでユーゴのおっさんみたいだぜ」
既にビールでほろ酔いのクロアチア人警官は隣国の同業者の悪口を言います。
クロアチアとスロベニアは犬猿の仲。先にEU入りしたことへのヤッカミもあるのですが、漁業水域問題や国境問題をはじめ両国間には数多くの国際問題を抱えており、その民族間感情の悪さはクロアチア~セルビアと匹敵するほど。ちなみにクロアチアの国旗をかざしてスロベニア国内を車で走り、もしスロベニア警察に検挙されると41ユーロの罰金が取られるそうで、ここまで来るともう嫌がらせです。ネット上ではこんなクロアチア人の皮肉があります。
「スロベニア人と蚊の違いは何かって? 蚊に神経質になるのは夏だけ、ってことさ」
パスポートは念入りにチェックされ、手荷物も開かなくてはなりません。もちろん、発炎筒などがあればそこで没収。なにせ完全武装した警官隊も構えているので抵抗などできません。相当な時間が経過し、ようやく客車が動き出すと、クロアチア人警官は禁煙のコンパートメントを出て車両の廊下でタバコに火をつけました。そこで同僚が言います。
「スロベニアは公共の場所でのタバコが禁止されているらしいぜ」
「はあ。知るか、そんなもん!」
ユーロ2008とは無縁のスロベニアを列車が走る中、サポーターたちが歌います。
「Trazim je na karti, nema je, Slovenije! Slovenije!」
(地図で探したところでも無いんだぜ、スロベニア! スロベニア!)
これは小国かつEUに飲み込まれたスロベニアに対しての皮肉ソングです。今年はEUの議長国を務め、平均年収は二倍近くと、すっかり水を空けられたクロアチアにとっては、こうでも言わないと溜飲が下がらないようです(笑)
思い返せば、4年前のユーロ2004予選プレーオフで両国が戦い、あの
大会中からコヴァチはビリッチ監督、コーチ陣、マルコヴィッチ協会長、チームメイトらに残留を依頼され、またクロアチア敗退後にダルマチア地方に骨休めに訪れた際にも多くの地元の人々から代表に残るよう励まされたとのこと。
「人間は血と肉でできているんだ。これほど人々から残留をお願いされても感動しないなんて演技することはできないよ。まず何より心に聞いて私は決定をもたらすんだ。感情は私において時速200kmのスピードで働き、あらゆる道理にかなった考えすらも凌駕してしまう。
今回のケースでは私のステータスという問題だけだった。もし物事が悪意によって始まっているならば、それは単に私に問題があるというだけだ。それを解決するのは簡単なことだろう。しかし、現在のように全てがポジティブな状況で私が去ることが最も賢い選択だと考えている中で、全員が私が残留すべきと確信しているのも最も辛い状況なんだ。けれども、スラヴェン・ビリッチがクロアチア国営放送のゲストとして出演し、私について語った瞬間に全てが折れたんだよ」
引退撤回のきっかけとなったビリッチの発言とは、27日のユーロ特番でのものでした。
「ニコは以前よりこのユーロが最後と言ってきた。ロベルトも然りだ。しかし、そうであるべき必要はないんだ。客観的に考えれば、ニコが38歳でワールドカップに出場するのは現実的ではない。しかし、ウィーンで私は彼らに言ったんだ。待ってくれ、時間はまだあるんだ、と。
我々には数ヶ月後にカザフスタン戦、イングランド戦、ウクライナ戦という最も大事な試合が控えている。しかし、それからは6ヶ月後にアンドラ戦のホームがあるだけだ。だから、コヴァチ兄弟はまだまだ助けることは可能なんだよ。彼らは最も重要な二人だし、チームに残るよう働きかけるつもりだ。けれども、我々は代わりを務められる選手も存在している。ニコの代わりはヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ、レコ。ロベルトはクネジェヴィッチ、ヴェイッチ、クリジャナッツ…。しかしながら、リーダーとして、誰からも尊敬を集める存在として、そしてピッチ上のバランサーやメトロノームという意味合いでニコの代わりを務めるのは難しいだろう」
この発言をテレビで聞き、それからコヴァチはビリッチ監督に電話を入れ、少なくとも今年いっぱいまでは代表に留まることを伝えると、いたくビリッチ監督は喜んだそうです。
「もちろん、この秋に本調子でなければ、ザルツブルクの新監督(コ・アドリアーンセ)の下でレギュラーにならなければ、監督には真っ先に"代表での私は終わった"と伝える。そこにはいかなるストレスはないんだ」
と述べているように、自分の立場をわきまえた上での代表続行となります。そろそろ世代交代が必要なのは事実ですが、ユーロ予選・本大会でのパフォーマンスやリーダーシップを考えれば、もう少しやって欲しいところだっただけにクロアチアにとっては好ニュースとなりました。この決定を受けて、弟ロベルトの代表続行も間違いないと思います。
クロアチア代表DFダリオ・クネジェヴィッチ(26・写真)が2008/09シーズンからユベントスにレンタル移籍することになりました。年間レンタル料は30万ユーロで、契約を買い取る際の移籍金は150万ユーロとされています。
所属のリボルノがセリエB落ちしたこともあって、パレルモ、トリノ、サンプドリア、ケルン、モナコといったクラブが次々と関心を示していたのですが、ユベントスが現れたことで移籍話が解決しました。ビッグクラブへの移籍にはクネジェヴィッチも驚いたようで
「その知らせを聞いた時には正直ショックだった。イタリアやフランスのクラブが関心を示していることは知っていたけど、その一つがユベントスだったなんて夢にも思わなかったよ。
でも恐れてはいない。昨シーズンはセリエAでプレーできる能力を僕が持っていることを証明したし、それは他の人々も気づいてくれたってことさ。どんなミスに対しても責任がクローズアップされるだろうけど、ある論理から考えればユベントスでプレーのは楽だろう。チャンスを得たならば、それをどう活かしていくかは分かっているしね」
とコメントしています。クネジェヴィッチはポーランド戦で左膝の靭帯を痛めましたが、10日もすれば治る模様です。
同じく大会中に怪我をしてしまったクロアチア代表FWイゴール・ブダン(28)ですが、こちらはパレルモが残り50%の共同所有権をパルマから買い取り、2008/09シーズンからパレルモでプレーすることが決まりました。50%のパスの価格は500万ユーロと言われ、契約期間は5年です。怪我の状態ですが、膝の半月板が損傷した部分を簡単に手術しており、3週間もすれば100%の状態で走ることが可能なようです。
クロアチア代表の選手には各クラブの注目が集まっており、とりわけ評価をとりわけ高めたDF/MFダニエル・プラニッチ(26・写真)にはユベントスやニューキャッスル、ウェストハムなどがオファーを出す勢いです。以前より噂のあったアヤックスの線は現時点では消滅したようですが、それでもヘーレンフェーンは650万ユーロ以上の移籍金で売却する模様です。
またFWイヴィツァ・オリッチ(28)にはリバプールがラブコールを送っており、イヴァン・ラキティッチ(20)にはインテルやユベントス、マンチェスター・シティ、トットナム・ホットスパーなどが注目しています。DFヨシップ・シムニッチ(30)にはフルハムが、ヴェルダー・ブレーメンとの契約延長を拒んだFWイヴァン・クラスニッチ(28)はどこでも移籍金ゼロで移れることもあって、ナント、ポルト、グラスゴー・レンジャース、グラスゴー・セルティック、ベティス、オススナ、オリンピアコス、ボルシア・ドルトムント、ケルンといった名前が挙がっています。またMFイェルコ・レコ(28)にはグラスゴー・セルティックが正式にオファーを送ったと報じられています。
これからクロアチア国内の動向についてです。
今週になり、ディナモが南米から獲得した選手たちがザグレブへと渡り、正式にサインを結んでいます。
注目はチリ代表MFペドロ・モラレス(23)。今年1月の日本との親善試合やツーロン国際ユース、そして先ほどのワールドカップ南米予選でもチリの司令塔としてプレーした彼はディナモと5年契約を結びました。背番号は彼女のラッキーナンバーという「77」を選んでいます。記者会見でモラレスは
「ディナモのようなビッグクラブに来られたことに満足しているし、嬉しいよ。僕のプレーでチームがチャンピオンズリーグに出場できるよう願っているんだ。ここのサポーターはとても熱いと聞いているだけに、彼らの期待に応えられるよう頑張るよ。
個人的にはカカやクリスティアーノ・ロナウドの選手が好きだ。何かしら彼らが持っているような個性が僕にもあるし、より似たような選手になれたらと思っている」
とコメントしています。
MFジェレルモ・スアレス(23)と左SBルイス・イヴァネス(20)も正式に5年契約を結び、これでディナモが抱える外国人は8人になりました。うち4人はクロアチア国籍を持っているため(MFチャゴ、MFサミール、DFエトー、DFカルロス)、外国人の同時起用が4人という規定のクロアチア・リーグでは全選手が同時にプレーすることが可能です(もう一人はMFグェラ)。ただし、外国人ばかりのチームに愛着が湧くかは別の話ではありますが…。事実、ザグレブの名門バスケチーム「チボーナ」はアメリカ人が同時に3人出るようになってから人気は落ちてしまっています。
ハイドゥク・スプリトはディナモ・ザグレブと契約解除したMFダリオ・イェルテツ(22・写真)と契約を結ぶことになりました。スピードとテクニックのあるMFとして2007年1月にヴァルテクスからディナモに移籍したものの、イヴァンコヴィッチ監督の下でアピールできずに終わり、昨季後半はリエカにレンタル移籍されました。リエカは買取オプションを実行せず、ディナモへと戻ってきたものの、ディナモも見切りをつけたようです。U-21の司令塔も務めていたイェルテツはMFポクリヴァチュとセットでディナモにやってきたのですが、当時はイェルテツの方が評価が高かったのにもかかわらず、わずか一年半でこうも差がつくとは思いませんでした。まだ若いだけにハイドゥクで才能を開花して欲しいものですが、プレーが単調気味になってしまったののが気がかりです。
MFヨシップ・スココには年俸40万ユーロを提示したものの、他のオファーの方が高かったことから獲得に失敗。またダビデ・チウメントは年俸30万ユーロと移籍金70万ユーロは実績を考えれば高すぎることもあって断念しています。
また昨季後半にレギュラーに定着したハイドゥクのDFマリオ・マロチャ(19)がプロ契約を結ぶのを拒否、チームの方針からスロベニア合宿に参加しておりません。
ハイドゥク・ユース出身の選手がプロ契約を結ぶ際の月給は額面で月10000クーナ(約23万円)という格安な条件。また先2年に発生した移籍金も全額ハイドゥクに納まることになっています。昨季のハイドゥクは選手難からユース選手がトップチームでデビューする機会が多いものの、それが仇となり、代理人にもそそのかされた選手たちがプロ契約を拒否。今年2月にはMFマテ・マレシュがディナモに移籍し、FW/MFデューイェ・チョップはポルトガルのナチオナルに移籍。その一方でDFゴラン・ヨジノヴィッチは契約を一時拒否していたものの、プロ契約に合意しました。このような育ててくれたチームに恩義を感じず、目先の金ばかりを考える選手が多い傾向も由々しき問題と言えましょう。
リエカはFWアフマド・シャルビーニ(24)と2年契約を結びました。シャルビーニは一年前にUAEのアル・ワフダに移籍し、それから半年後にスイスのルツェルンに在籍したものの出場機会に恵まれず、早くの帰還となりました。得点力はあるものの守備をしないことで何かと批判されるシャルビーニですが、弟のMFアナス・シャルビーニとのコンビは今季のリエカの目玉となるでしょう。また元ハイドゥクの右MFダルコ・ミラディン(29)もギリシャのエルゴテリスとの契約が切れ、リエカに移籍することが濃厚となっています。
そのリエカは21日にインタートトカップ一回戦でマケドニアのレノヴァとホームで対戦しており、内容も得点も伴わないスコアレスドローに終わりました。またこの試合を最後に元ブルガリア代表FW/MFのゲオルギ・イヴァノフがレフスキ・ソフィアに去っています。
前クロアチア代表監督のズラトコ・クラニチャールがオーストリア代表監督の候補になっていることが報じられています。クラニチャールは二部クロアチア・セスベッテの監督として一部昇格に成功したものの、選手たちへの給与未払がクラブ内で横行しているのに反発し、先ほど辞任を発表していました。オーストリア代表はヒッケルスベルガー監督が辞任したことを受けて新たな監督探しに走っているのですが、クラニチャールはかつてラピッド・ウィーンの主力だったこともあり、有力な候補なようです。ちなみに親馬鹿なのは相変わらずなようで、クロアチアvs.トルコ戦で息子のニコ・クラニチャールを途中で下げたのはビリッチ監督のミスだとコメントしています。
クロアチアvs.トルコ戦の記事を書こうと思い、ここ二日に渡ってDVDを見直そうとしているのですが、どうしてもマゾヒズムの世界になってしまって進みません。またウィーンから帰ってからというもの風邪による咳が止まらなかったのですが、ようやく落ち着きつつあります。
試合内容に関して今から触れようにも既に風化してしまっているため(というか心境的にも書き辛さがありまして)、試合後のコメントのみに留めようと思います。現在発売中のサッカー週刊誌
PK戦は特殊なものだ。ハートも必要だし、それに立ち向かう精神状態も必要だ。トルコの同点シーンにおいては、我々が状況を認識していなかったのと、十分に集中していなかったという二つの不幸なミスがあった。(ロスタイムの)トルコの最初の攻撃は上手く食い止めたが、マイボールになった際にもっと良い対応をすべきで、トルコがやれる全てを不可能にすべきだったんだよ。
(試合後、20分に渡ってドレッシングルームから誰もが外に出なかったことに)
我々は打ちのめされていた。多くが涙をし、ある者は嗚咽を出しながら泣いていた。信じられないほどのショックだったんだ。落ち着くには誰にとっても時間が必要だった。最大の喜びがあった1分間と、最大の苦しみがあった1分間の計2分間の出来事に関して、一生を通して我々が苦悶することは疑いない。
(選手個人について何か、との質問に)
全員が全てを出してくれた。ユーロにおけるサッカーは、チームに弱点が一つでもあれば相手はそこを突いてくる。オリッチがクラニチャールに依存していたのは明らかだし、ある選手がチームの中で優秀だったのは明らかだが、一人一人が成功に貢献してくれたんだ。
(ワールドカップ2010予選に向けて)
その質問はまだ早すぎる。それに向けて何ヶ月も前に準備するとはいえね。ただし、鍵となるポジションに人材はしっかりいるのは好都合だ。
(コヴァチ兄弟やシミッチなどの代表引退に関して)
誰が代表を引退するって言っているんだね? 精神的にも空虚感がある中、誰もがショックの状態にある。重要な決定をするタイミングではないんだ。夜が明ければ、夜の時よりも賢いというじゃないか。
チョルルカとスルナは平穏を取り戻すため、名も知らぬバーにでも逃げたいところだろう。モドリッチだってスパイクを投げ、クラスニッチは全てを忘れるためにできるだけ遠いところへ去りたいはずだ。私だって釣りにでも行って、決してそこから戻りたくはないんだけどね。しかしながら…。ゆっくりと時間だけが…。」
ちなみにこの記者会見の冒頭ではジャーナリストたちに感謝を述べ、最後はビリッチの申し出で全員で記念写真を撮りました。大会後はメディアと対立関係になって扱き下ろされる監督が多い中、最後までビリッチとメディアは友好関係にありました。
また試合後の記者会見で述べたビリッチのこの言葉が彼の性格を表しています。
「忘れるのはたやすくない。これは毎週あるようなリーグの試合じゃないのだから。忘れるなんて不可能だ。しかし、先へと進まねばならない。我々は若いチームだし、ワールドカップ2010予選も控えている。もう何日間か泣くだろうが、太陽だって顔を出すことで夜が明ける。我々の選手たちは特別なキャラクターを持っているんだ。もっと大きくなって帰ってくることだろう…」
常にメンバーを叱咤激励をしてきたキャプテンのニコ・コヴァチは改めて代表引退を口にしました。
「若者たちにはまだ時間があるが、私は終わりだ。私は最後の試合をプレーしたんだ。家へと帰ろう。全ては手中にあったのだけどね。しかし、これがサッカーだ。試合終了一分前に1-0とリードし、マイボールの状況だった。遠くに蹴ってしまうことはできたし、好きなことは何でもできた。しかし、常に相手のゴールに向かう攻撃性が我々のチームの個性なんだ。あのオフサイドがなければ様相は全く異なっていただろう。誰もが悲しみ、失望をしている。しかし、人生はそんなものさ。」
ゴールを演出したものの、第一キッカーとしてPKを外したモドリッチは
「悲しさ、惨めさ、哀れみ以外に何を言えばいいんだね。僕たちはトルコよりも優れていた。しかし、家へと帰らねばならないんだ。トルコがこうしてユーロを勝ち進むなんてまったく信じられないよ。PKの時は蹴る方向を決めて、上手くいくように願ったんだけど残念ながら失敗に終わった。勿体無い、本当に勿体無い。全員が本当に嘆いているよ。」
決勝ゴールを叩き込んだはずのクラスニッチは
「こんな敗北をするなんて恐ろしいよ。いいプレーをしていたし、全員が持てる力の全てを出した。まるで我々が勝ち進むことを嫌がったかのようだ。トルコは信じられないほどの幸運を持っているが、サッカーではこのようなことも起こるってことだよ。僕たちの方が優れていたけど、準決勝には勝ち進めなかった。終了一分前に得点を決めた時には僕たちが勝利を祝うものだと思っていた。しかし、まだ最後の一分間が残っていたんだ。PK戦はルーレットみたいで、ある時は当たり、ある時は外れるもの。全員が悲しんでいる。」
大会を通して好プレーを連発してきたGKのプレティコサは
「サッカーにおいて、いやスポーツ全般においてこのようなことが起こりえるなんて信じられない。そして、トルコのように三試合に渡って最後にゴールを決めることが信じられないんだ。僕たちは間違いなく全力を出した。しかし、一試合も敗北することなくユーロから去ることが決まったこの瞬間に言うべき言葉が見つからないんだ。」
とコメントしています。
私のユーロ取材も終わり、後はテレビで準決勝・決勝を見届けるのみになりました。ここ最近は本大会で期待外れの結果が多かっただけに、今大会のクロアチア代表は戦う素晴らしいチームだったと思います。チーム、サポーター、国民が一体化した二週間でありました。ユーロ1996の借りをワールドカップ1998で返したように、このユーロの借りを2年後のワールドカップで返して欲しいところですし、それができるチームのはずです。
カメラマンとして現地取材を計6試合しましたが、さすがオーストリアとスイスが開催国だけに運営は本当にしっかりとしていました。日本、クロアチアそれぞれのジャーナリストやカメラマン、また多くのサポーターと再会したり知り合ったり、と個人的にも収穫のある日々でした。気温差による風邪と夜行列車はきつかったですが…。
また期間中、コメント欄に書き込みして頂いた皆さん、本当に有難うございました。レスをつけるべきでしたが、なかなかできずにゴメンなさい。今後もクロアチア・サッカーをご贔屓にして頂ければ嬉しく思います。
もう一ヶ月もしたらクロアチア・リーグ、そしてディナモの欧州カップ挑戦も始まります。大国と比べたらマイナーとはいえ、また地道に現地のサッカー事情を伝えていきますので宜しくお願いしますね。
余りの結末に私もかなりヘコんでおります。ここの誰もがショックを受けていますが、チームスタッフや選手たちの心境を思いやると気の毒で溜まりません。クロアチアの決勝点が決まったのち、第4審判は三度に渡ってビリッチ監督の選手交代を認めず、あの同点弾に繋がったわけですが、90分で試合を決められなかったのも悔いが残る試合でした。「エドゥアルド不在」の中、ビリッチは工夫を凝らしてきたものの、最後はやはりエドゥアルドがいれば…と思わざるを得ません。でも、本当に選手たちはよくやってくれました。そしてビリッチの統率力には敬服します。
サポーターで埋め尽くされた帰りの電車はお通夜状態でしたが、ザグレブに到着すると元気に応援歌を歌いだすところをみると、またワールドカップ予選に向けてビリッチ監督の下で新たなストーリーが始まるのかな、と感じました。とりあえず、今は関係者の皆様にお疲れ様、と言いたいところです。
クロアチアvs.トルコ戦のレポートはいずれ…ということで。

