2010年09月25日

クロアチア代表メンバー発表/ビリッチ監督はサミールを招集せず

9月24日、ザグレブのホテル・シェラトンにてクロアチア代表監督のスラヴェン・ビリッチが記者会見を行い、ユーロ2012予選・イスラエル戦(10/9、テルアビブ)と親善試合・ノルウェー戦(10/12、ザグレブ)におけるクロアチア代表メンバー25名を発表しました。

nogomet-192109.jpgビリッチが史上最年少でクロアチア代表監督になって5年目。就任最初の選手選考を除けば、ドラスティックにメンバーを変えることはなく、世代交代も緩やかに進めてきたビリッチ監督ですが、今回は一人の選手を巡って国内世論が揺れました。その対象となった選手は、ディナモで覚醒中のブラジル人MFサミール(23)です。詳しくは前レポート「二人目のクロアチア代表ブラジル人となるか?/激しい論争を呼ぶサミール」を参考にして頂きたいのですが、結局のところ、今回は招集を見送られました。サミール自身はクロアチアのパスポートを所有するものの、過去にブラジルのユース代表歴があるため、もしクロアチアA代表に登録する際にはFIFAの手続が必要になります。しかしながら、ビリッチ監督の会見のコメントを聞く限り、サミールは彼の構想にないようです。

「私はこのリストをもってして自分の考え方、そしてコーチ陣の考え方を表にした。招集したのはイスラエル戦で最高の解決策となるクオリティある選手達で、そのグループはコンパクトだ。選手達は素晴らしいプレーをし、望ましい結果を引き出してくれるものだと確信しているよ。リストにない他の選手に関しては、話す必要はないと思っている」

しかし、記者陣からはもちろんサミール未招集の理由を聞かれ、こうビリッチ監督は答えました。

「サミールが良いプレーをしているのは事実だ。彼に最適なポジションはセカンドアタッカーか、ツートップの下だが、我々にはそのポジションができる選手としてクラニチャール、モドリッチ、エドゥアルド、ペトリッチ、ラキティッチがいる。現時点では彼らがサミールより優れた選手達なのだよ。どんな議論が始まろうと、これが結論だ。彼らは私の政権下で多くの勝利をもたらし、世界ランクのベスト10圏内を常に維持させてきたんだ」

現時点の調子やプレー水準を考えれば、ビリッチ監督が口にした5人よりもサミールの方が上。しかし、サミールに無関心なビリッチ監督に対し、ディナモのズドラヴコ・マミッチ副会長が「レイシスト」(人種差別主義者)と呼んだことは深く傷ついたようです。そしてマミッチ副会長の圧力には屈しない姿勢を見せました。

「人種差別は文明社会の歴史において最も酷いものだ。ホロコーストやファシズム、ナチズム以上にね。私や私の仲間をレイシスト呼ばわりしたことは完全に狂っているし、それに関してコメントなどしたくもない」

ビリッチ監督が新たに招集したのは、カイザースラウテルンで活躍中の攻撃的MFイヴォ・イリチェヴィッチ(24)。2年前にもビリッチ監督はイリチェヴィッチを招集したことがあり、先週末にビリッチ監督が現地視察に赴き、本人に代表復帰を打診。得意とするポジションはサイドMFになります。

また、イスラエル戦に関してはこのように答えています。
「この先の予選の行方を決めるだろう非常に難しい試合が我々を待っている。グループ首位という自信を持って試合に挑み、良いプレーをして勝利を収めるのは確実だ。
イスラエルは好チームだし、かつても好チームだった。我々と同じ勝点(4)だし、特別な雰囲気のホームにとりわけ強い。ベナユンが怪我で欠場しないことは我々にとって良いことかもしれないが、イスラエルはベナユンだけのチームじゃない。欧州のクラブで活躍する選手やチャンピオンズ・リーグに出場する選手もいる」

クロアチアが属するグループFは、予選前からギリシャとイスラエルがライバルと目されており、このイスラエル戦をモノにできるかできないかが今後を大きく左右します。ちなみにユーロ2008予選でもクロアチアはイスラエルと同グループで、7年ホーム負けなしだったイスラエルをエドゥアルドのハットトリックで4-3と勝利を収めています(レポート)。
しかしながら、今の代表メンバー、とりわけチーム一番売りの攻撃陣が所属クラブでぱっとせず、モドリッチも足首の負傷で離脱中。またスルナはイエロー累積でイスラエル戦には出場できません。もしクロアチアがギリシャ戦に続いてイスラエル戦でも勝ちきれないとなると、「なぜサミールを呼ばなかった!」の大合唱が始まることでしょう。

これが今回のメンバーです。MFラキティッチとDFロヴレンはイスラエル戦後、U-21クロアチア代表に合流。U-21欧州選手権プレーオフのスペイン戦第2戦(10/12、ヴァラジディン)に出場する予定です。

GK:
スティペ・プレティコサ     (トットナム・ホットスパー/イングランド)
ヴェドラン・ルニェ       (ランス/フランス)
ダニイェル・スバシッチ    (ハイドゥク・スプリト)
DF:
ダリヨ・スルナ          (シャフタール・ドネツク/ウクライナ)
ヨシップ・シムニッチ      (ホッフェンハイム/ドイツ)
ヴェドラン・チョルルカ      (トットナム・ホットスパー/イングランド)
デヤン・ロヴレン         (リヨン/フランス)
ゴルデン・シルデンフェルト  (シュトゥルム・グラーツ/オーストリア)
ユーリツァ・ブリャト        (ハイドゥク・スプリト)
イヴァン・ストゥリニッチ     (ハイドゥク・スプリト)
ムラデン・バルトゥロヴィッチ  (アーセナル・キエフ/ウクライナ)
MF:
ニコ・クラニチャール      (トットナム・ホットスパー/イングランド)
ルカ・モドリッチ         (トットナム・ホットスパー/イングランド)
イヴァン・ラキティッチ     (シャルケ/ドイツ)
ダニイェル・プラニッチ       (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
オグニェン・ヴコイェヴィッチ (ディナモ・キエフ/ウクライナ)
ニコラ・ポクリヴァチュ      (レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)
トミスラフ・ドゥイモヴィッチ   (ディナモ・モスクワ/ロシア)
ドラゴ・ガブリッチ         (アンカラ・ギュチュ/トルコ)
イヴォ・イリチェヴィッチ    (カイザースラウテルン/ドイツ)
FW:
イヴィツァ・オリッチ       (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
エドゥアルド・ダ・シルヴァ  (シャフタール・ドネツク/ウクライナ)
ムラデン・ペトリッチ      (ハンブルガーSV/ドイツ)
マリオ・マンジュキッチ    (ヴォルフスブルク/ドイツ)
ニキッツァ・イェラヴィッチ    (グラスゴー・レンジャース/スコットランド)


posted by 長束恭行 |06:22 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2010年09月21日

二人目のクロアチア代表ブラジル人となるか?/激しい論争を呼ぶサミール

フルネームはホルヘ・「サミール」・クルズ・カンポス。ディナモ・ザグレブに所属する23歳のブラジル人MFを巡って、クロアチア世論が大きく揺れています。クロアチア代表に入れるべきか否か。日刊紙ユタルニ・リストのネット投票によると(投票数1817)、「彼のプレーは代表に値するので入れるべき」が64%、「彼より優れた選手がいるので入れないべき」が36%。しかし、論争が激しくなる理由は、サミール自身のプレーとは全く別のところにあるのです。

nogomet-191105.jpgサミールがディナモに移籍したのは2006年11月。ブラジルに渡って逸材をつぶさに追っていた代理人ボジョ・スリシュコヴィッチの橋渡しで、彼が19歳の時にアテレティコ・パラナエンセからディナモにやってきました。レンタルだった初年度は11試合1得点止まり。しかし、その高い技術にズドラヴコ・マミッチ副会長は惚れ込み、200万ユーロの買取オプションを実行。オプション実行の際には当時のチームメイトだったFWエドゥアルド・ダ・シルヴァ(現シャフタール・ドネツク)、MFルカ・モドリッチ(現トットナム・ホットスパー)の後押しもあったと聞きます。2008年にモドリッチがディナモを去る際、
「サミールこそ僕のディナモにおける後継者だ!」
と口にしたほど、彼の潜在能力は認められていました。しかしながら、ピッチ上のサミールは好不調の波が激しく、とりわけ大事な欧州カップやハイドゥク戦では平凡なプレーに終始。それでもマミッチ副会長の圧力もあってスタメンは確保されたため、マミッチ副会長と対立するサポーターグループ「BBB」からサミールは敵視され、いつもブーイングを浴びせられました。同じブラジル人でも優等生だったエドゥアルドと異なり、サミールは夜遊びを好む性格だと頻繁に報じられたのも彼のイメージダウンに繋がったのです。

期待されたほどの成長が見られず、そろそろ見切りをつけても良さそうな存在のサミールが、5シーズン目の今季にいきなり覚醒します。もっぱらサイドのMFとして起用されていたサミールを、トップ下に固定したのが前任者のヴェリミール・ザイエッツ監督。得意のポジションを確約された彼は、まるで「水を得た魚」のようにプレー。俯瞰的に見渡せる視野、簡単に倒されない高速ドリブル、糸を通すようなラストパス、サボらないディフェンス、そして正確なシュート。全てのプレー要素が急にレベルアップし、昨季までとは全くの別人の活躍をしています。
夜遊びもやめてサッカーに専念したらしく、その変貌ぶりは数字にも表れており、今季は公式戦15試合で12得点・7アシスト(昨季が38試合で6得点・8アシスト)。今月11日のハイドゥク戦では同点ゴールを叩き込み(動画)、16日のEL第1節ビジャレアル戦でも強烈なプレーを見せつけたサミールは1得点1アシストでディナモを勝利に導きました(動画)。

nogomet-191117.jpg既にクロアチア国籍を所有しているサミールは、昨年5月のインタビューでこう答えています。
「クロアチア代表でプレーしたいんだ。スラヴェン・ビリッチ監督からの召集を夢見ているんだよ。それがディナモにおける僕のキャリアの絶頂点となるだろう」
当時は単なる戯言にしか聞こえなかった彼の希望が、実現してもおかしくないレベルに到達しています。むしろ、ギリシャ戦でスコアレスドローに終わり、国民に失望をもたらしたクロアチア代表の救世主的な存在になるかもしれないのです。"サミールは大物になる"と常に予言していたマミッチ副会長(写真)はハイドゥク戦後、
「もしサミールをクロアチア代表に呼ばないのならば、クロアチア・サッカー協会やスラヴェン・ビリッチは恥をかくぞ!」
と圧力を掛けます。しかし、誕生日を理由にクロアチア・ダービーを視察しなかったビリッチ監督は「ノーコメント」。これに業を煮やしたマミッチ副会長はビジャレアル戦後に
「私はたとえサミールにクロアチア代表召集の話が来ても、拒否せねばならないと考えている。クロアチア代表のユニフォームを着るのにふさわしくないほどの悪い選手であり、悪い性格の選手と考えられているのならばね。恐らく私のこの発言は皮肉に捉えられるだろう。でも、そう言わねばならないのだよ! サミールだって辛い状況なんだ」
とエスカレート。ビリッチ監督はビジャレアル戦も視察せず。激情家として知られるマミッチ副会長は、試合の翌日に強烈すぎるほどの暴言を放ちました。
「もうこれは完全な恥辱だ。ビリッチとコーチ陣、サッカー協会幹部たちよ、サミールのケースはお前達の恥だぞ。特別な選手かつ人間であり、クロアチア政府も国籍を与えたサミールを我々がお前達にプレゼントすることで、代表チームが更なる前進するのにもかかわらず、監督と彼の周りはレイシズム(人種差別主義)の賛同者となっている。ビリッチよ、私の話を聞いているのか? 恥を知れ、このレイシスト(人種差別主義者)が!」
"レイシスト"というレッテルは、ユニセフ大使も務めるビリッチ監督には相当な侮辱だったはず。民族戦争が起きたクロアチア内には過度な民族主義があり、同じく人種差別主義も存在するわけですが、U-21代表監督とA代表監督としてブラジル人のエドゥアルドをチームの主力に据え、彼を「クロアチア人以上のクロアチア人」として世に認知させたのもビリッチでした。

実はマミッチ副会長とビリッチ監督は蜜月関係の仲にありました。クロアチア・サッカー協会にも大きな影響力があるマミッチ副会長は、2006年にビリッチが代表監督に立候補した際にその後ろ盾となって当選。また、先のワールドカップ予選敗退で批判の矢面に立ったビリッチを弁護し、協会内にうずめく更迭論を払拭したのもマミッチ副会長でした。ビリッチが代表監督になってからというもの、エドゥアルド、モドリッチ、チョルルカ、マンジュキッチ、ヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュなどディナモの選手に出場機会が与えられることで、マミッチ副会長も「現代表」という付加価値のついた選手を高額に売却できる"旨味"がありました。しかしながら、ユーロ2012を最後に勇退するのが100%確実なビリッチ監督にとってマミッチ副会長のような後ろ盾はもう必要なく、「うちの選手を代表に呼べ」とプッシュする彼にも嫌気が差したと言われています。よって、この数ヶ月はビリッチもマミッチ副会長の電話すら取らない状態だそうです。

nogomet-191106.jpgクロアチア代表は10月9日にテルアビブでイスラエル戦を控えていますが、現実問題、クロアチアの攻撃陣は決定力不足と構成力不足に悩まされています。今年は親善試合も含めて7試合こなしており、3-0で勝利したラトビア戦を除けば6試合で得点5。ビリッチ監督(写真)は従来の4-4-2システムから4-2-3-1システムに移行したものの、これがしっくりと来ていません。
おまけに、多彩な攻撃陣を抱えるはずが、どの選手も今は所属クラブで冴えない働きをしています。オリッチは膝の怪我でフル出場できず、ペトリッチはベンチに追いやられました。モドリッチは足首の怪我で欠場し、クラニチャールは出番に恵まれず。エドゥアルドにかつての得点感覚は戻らず、マンジュキッチやイェラヴィッチは移籍したばかり。ラキティッチはシャルケと共に大不振…。
またトップ下を完璧にこなせる選手も存在しません。ここ最近の試合はエドゥアルドやペトリッチが起用されたものの、彼らは本来FWの選手。モドリッチはシュート力が低く、クラニチャールやラキティッチは動きが重過ぎます。となると、現時点で最高のトップ下を務められるクロアチア代表有資格者はサミールなのです。「適応に時間が…」という意見もありますが、ディナモで一緒にプレーした選手も多く、兄貴分として慕ったエドゥアルドやモドリッチとは抜群のコンビネーションを見せるでしょう。

エドゥアルドがクロアチア代表入りした際にはここまでの議論は起きませんでした。「サミールの代表入り反対! なぜなら彼はクロアチア人じゃないから」と反対意見をネット上でぶつける人が「エドゥアルドは特別」と書き連ねるのは、論理的に破綻しています。
また「クロアチア代表はドイツ代表やフランス代表みたいに移民だらけのチームなってはいけない」という意見もありますが、コヴァチ兄弟、シムニッチ、クラスニッチ、ラキティッチら他国で生まれ育ったクロアチア移民二世がここ10年のクロアチア代表を支えてきたのも事実。ブダンやラパイッチはセルビア系と言われますし、スルナも半分はムスリム人。ペトリッチやチョルルカもボスニア出身です。クロアチア移民に便宜を図ってクロアチア国籍を与えたケースがこれまで何度もあったことを考えれば、既にクロアチアのパスポートを所有する外国人を代表入りさせることは何ら問題はないでしょう。しかしながら背後に「マミッチ」のイメージが強すぎるが故、サミールの代表入りを拒む人々や反対勢力が存在するのです。
先週末にビリッチ監督が視察に向かったのはカイザースラウテルン。同クラブで活躍するFWスルジャン・ラキッチ(26)、MFイヴォ・イリチェヴィッチ(23)のピックアップを考えています。トップ下も務められるイリチェヴィッチはドイツ生まれの移民二世で、2008年にビリッチ監督も代表召集したことがあります。キッカー紙の平均採点で現在ブンデス最高(2.0)のイリチェヴィッチを選択することが、「サミール」拒否の返答となる可能性があります。

nogomet-191107.jpg騒ぎが大きくなる中、クロアチア語を流暢に操るサミール本人は20日、ディナモの公式ホームページを通して声明を発表しました。
「ここ数日、僕のクロアチア代表入りの議論が過熱するにつれて多くの論争を呼び、真実じゃないことまで報じられるようになった。だから国民に呼びかけることに決めたんだ。
僕は何度もクロアチア代表に入りたいと言ったし、この機会でもその希望は強調するつもりだ。どのクロアチア国民にとっても同じように、僕にとっても赤白チェックのユニフォームを着て、たくさんのサポーターに囲まれたスタジアムで走るのが特別な名誉となるかもしれないんだ。(中略)
クロアチア国籍を取得し、クロアチアは僕の第二の祖国となった。これは大きな宝だと考えているよ。世界中の人々の多くは祖国は一つしかないし、ある人は残念ながら一つも祖国がないだろう。でも、僕は二つも祖国があるんだ。僕が生まれたブラジル、そして僕に多くのものを与えてくれたクロアチア。ディナモのサポーターだけでなく、クロアチア全土に自分のプレーをもってして恩返しする可能性もあるのさ。
しかし、ここ数日で起こっていることは、僕がクロアチア代表に入るための道筋としては全く異なるものだ。僕の代表入りがこれほどの論争を作ってしまうことは、誰にとっても良くないだろう。ユーロ2012予選の真っ最中である代表チームにとっても、大事な試合を前にこの論争で平穏を乱してしまっては良くない。僕はクロアチアのユーロ2012本戦進出を助けたいけど、崩壊をもたらす存在になりたくないし、逆の成果をもたらしたくはないんだ。(後略)」

この声明はクラブ側が作成した可能性もあるとはいえ、クロアチア代表入りの希望がネガティブな方向に発展してしまった現状にサミール本人も悲しんでいるのは間違いありません。
ビリッチ監督がイスラエル戦のメンバーを発表するのは今月24日、もしくは25日。サミール選出の英断を下すか、それともマミッチ副会長の圧力に屈しないのか。どちらにしてもビリッチ監督にとっては大きな賭けとなります。


posted by 長束恭行 |03:17 | サッカーニュース | コメント(1) |
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2010年09月18日

ELでの「ジャイアントキリング」/ディナモ・ザグレブ、ビジャレアルに2-0で完勝

nogomet-190499.jpg9月16日からヨーロッパ・リーグ本戦が開幕。UEFAカップも含めれば4シーズン連続本戦出場となるディナモ・ザグレブは、同グループ最強のビジャレアルと対戦しました。クロアチアが独立した1991年以降、ディナモはいわゆる五大リーグ(イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス)のクラブに1勝4分20敗と散々たる成績。また歴史を通してもスペインのクラブに勝利したことがないため、試合前からディナモの敗戦フラグが立っていました。
1997年以前は一部経験すらなかったビジャレアルですが、ここ10年間における躍進は目覚しく、欧州の舞台でもUEFAカップとチャンピオンズ・リーグそれぞれでベスト4に進出。一方のディナモは、1967年にフェアーズ・カップ(UEFAカップの前身)に優勝経験はあるものの、1970年以降は一度も欧州カップで冬を越せないままに敗退を重ねました。
「今夜、ビジャレアルにディナモが負けたところでも、あまり悲しまないでくれ。火曜日のチャンピオンズ・リーグでスペインのクラブがどんな結果を残したか見ただろう? ヴァレンシアはブルサシュポールに4-0、バルセロナはパナシナイコスに5-1だ。欧州と世界の頂点に立ったスペインにおいて、ビジャレアルは上位クラスのクラブ。負けなかったら記憶に残る成功だ。そして、負けたところでも世界の終わりじゃない」
クロアチアのスポーツ紙「Sportske Novosti」のディナモ担当・オリヴァーリ記者はそう試合前から読者に戒めていました。それが試合翌日になると
「昨日はデビッド・カッパーフィールドの誕生日だが、ハリルホジッチも祝っていいだろう。こんな短期間でスペインの強豪を退けたハリルホジッチは、まるで万里の長城を抜けるカッパーフィールドのようだ」
つまり、就任一ヶ月の名将ハリルホジッチ監督に導かれたディナモは、予想だにしなかった「ジャイアントキリング」を成し遂げたのです。

nogomet-190500.jpgディナモは2日前からスロベニアのチャティジュでミニ合宿を張り、ビジャレアル対策を練りました。不動の王者として威風堂々と戦うクロアチア・リーグと異なり、予算も戦力も上回る格上とも戦う欧州カップでは求められるサッカーが異なります。リールやパリ・サンジェルマンで欧州カップの経験を持つハリルホジッチ監督(写真)は、試合前日にこう報道陣に語りました。
「常にビジャレアルのことは追っている。長い時間かけて分析をしたよ。パスサッカーという観点ではバルセロナに次いで最も成功しているクラブだ。ポジションチェンジが速く、相手を混乱させる能力もある。我々が過去最高のプレーをしない限り、相手は危険なチームだ。しかし、彼らの弱点も我々は知っているよ…。
ヨーロッパにおけるディナモの成績は悲惨なことは私も分かっている。でも、私は勝利するためのチームを持っているし、そう準備しているんだ! 常に私は勝利を求めるが、もちろん今回も。難しいのは分かっている。ただし、引き分けなんて結果に興味はない」
正GKロンチャリッチが先のハイドゥク・スプリト戦で左膝を痛めて年内絶望。先月末にレンタル先のロコモティーヴァから戻したU-21代表GKケラヴァがゴールを守ることになりました。また、右MFにはエトーではなく、攻撃性と俊足が売りの20歳トメチャクを起用。最終ラインを固める熟練のベテラン3人を除けば、平均年齢21.5歳のフレッシュなメンバーが揃いました。(システムは4-2-3-1)
GKケラヴァ-(右から)DFヴルサリコ、ビシュチャン、トネル、クフレ-MFバデリ、アデミ-トメチャク、サミール、モラレス-FWルカビナ

nogomet-190505.jpg対するビジャレアルは12日のエスパニョール戦に4-0と快勝したわけですが、ディナモ戦には「ローテーション」という理由で5人の主力を外しました。FWニウマールとSBアンヘルはザグレブ遠征すら同行せず。また2得点のFWロッシ、MFバレーロ、MFカソルラ(写真右)、DFマルチェナ(写真左)もベンチスタート。
「ジェール戦(ELプレーオフ)のビデオを見たけど、個人的にはディナモについて多くは知らない。クロアチアの王者だから楽な相手じゃないだろうけどね。でも勝点3は取りに行くよ」
昨季途中まではビジャレアルBチームを指導し、バルベルデ監督解任と共にトップチームの指揮官を任された40歳のガリード監督は、この試合を随分と甘く見ていたようです。試合前、カメラマンとしてピッチレベルにいた私は、控えに回る主力選手達の振る舞いを注視していたのですが、リラックスムードを通り越し、気が抜けたボール回しをしながら雑談している姿を目にすると「今夜はもしや…」と多少なりの期待感を抱かせました。ビジャレアルのスタメンは以下のようです(4-1-3-2)。
GKディエゴ・ロペス-DFペレス、ゴンザロ、ムサッキョ、カプデビラ-MFセナ-カニ、ブルーノ・ソリアーノ、ジェファーソン・モンテーロ-FWアルティドール、マルコ・ルベン

パス回しとコンビネーションに秀でたビジャレアル相手に、ディナモが選択した戦術はカウンター。相手が引いてしまう国内リーグでは滅多に使えない戦術ですが、サミールやモラレス、バデリといった優れたパッサー、そしてルカビナやトメチャクといった俊足のアタッカーをディナモは抱えています。残る課題は集中力。国内リーグの環境では90分通したハイテンポに慣れることのないディナモは、欧州カップの戦いになると終盤に集中力が切れ、無駄な失点を繰り返してきました。11日に行われたライバルのハイドゥク戦においても後半頭の15分は"ブラックアウト"状態に。明らかになった欠点は厳しい練習とミーティングで直ぐに修整を図るのが、ハリルホジッチ監督のスタイルです。ビジャレアルがスタメンを落としてきたことを知ったハリルホジッチ監督は、ドレッシングルームで選手達を煽ってモチベーションを高めさせ、「我々は勝てる状態にあるんだぞ!」と自信を植えつけました。

nogomet-190501.jpgビジャレアルの選手にボールを回させながら、自陣での縦パスを背後からのチェックで奪い、そこから高速カウンターを仕掛けるディナモ。フィジカルに強いビシュチャン(写真)がことごとく一対一で潰し、トネルは巧みに彼をカバー。左からドリブルで仕掛けるモンテーロには難儀したものの、18歳のヴルサリコがよくついていきました。
カウンターは弱者の戦術だと言われがちですが、パスサッカーに溺れるばかりに実効的なチャンスを作れないビジャレアルに対し、ディナモは相手の隙を突くだけでなく、高い技術で相手を惑わし、危険な場面を幾度と作り出しました。この試合もフロントと対立するサポーターグループ「BBB」がボイコットしたものの、マクシミール・スタディオンの21000人の観客は強者に真っ向に挑むディナモのサッカーに酔いしれました。

最初のシュートはディナモ。6分、トメチャクがエリア内で相手DFからボールを奪うと、ルカビナのヒールパスを経由してバデリがシュートするもゴンザロがブロック。流れの中でシュートが打てないビジャレアルも、15分にモンテーロが右コーナーの位置からドリブルで持ち込みシュートを放ちましたが、枠を捉えられません。
nogomet-190502.jpg先制点は18分、ディナモに訪れます。ブルーノのゴール前の縦パスをDF陣が跳ね返すと、サミールがボールを拾って自陣からドリブル。ブルーノのスライディングタックル、カニのショルダータックルを交わしながら縦に30mほど突き抜け、ゴンザロの背後を走り抜けたルカビナに完璧なまでのスルーパス。ルカビナのスピードに誰も追いつくことはできず、冷静にGKディアゴ・ロペスの左を抜くシュート。この先制点にスタンドの観客はトランス状態に陥ります。そんな中、ハリルホジッチ監督は大きな喜びを見せることなく、キャプテンのビシュチャンを呼び寄せて最終ラインをしっかりと上げ、守備をよりコンパクトにするよう指示(写真)。同点を恐れるばかり引き下がらないよう警告しました。
しかしながら、アグレッシブな守備でヴルサリコ(20分)、アデミ(23分)と続けてイエローカード。ビジャレアルはFKの機会を何度も得ながらもチャンスを活かせません。
32分、ディナモはモラレスが左からペナルティエリアに侵入。4人に囲まれながら放ったシュートはGKの正面に。その2分後にはサミールの大きな展開からトメチャクが右からシュートを放つものの大きく吹かしてしまいます。
良い場面を見せられなかったビジャレアルは、ロスタイムにセナが正面30mの位置からミドルシュート。目の前でワンバウンドする難しいボールでしたが、GKケラヴァが好反応でセーブ。非の打ち所のない試合運びをしたディナモが1点リードして前半を終えました。

ハーフタイム、控え選手も全員ドレッシングルームに引き上げさせたビジャレアル。ガリード監督は後半頭から慌ててFWロッシ(←マルコ・ルベン)、MFヴァレーロ(←ブルーノ)と主力級を投入。攻勢を強めるものの、ディナモの守備網をかいくぐることはできません。
54分、またしてサミールを基点にディナモのカウンターが発動し、右に開いたルカビナにパスを送って自らはゴール前へ。グラウンダーの折り返しをスライディングしながらシュートを狙いますが、ゴンザロがクリア。その直後にはサミールがカプデビラの裏をかくヒールキックでスルーパスを送り、ヴルサリコが中央に鋭いクロスを送るも合わせきれません。
nogomet-190503.jpgディナモは56分にモラレスを代え、守備的MFのチャゴを投入。空いた左MFの穴埋めが徹底されず、そのサイドをビジャレアルに攻略され、59分にモンテーロがシュートを放ちましたが、GKケラヴァの正面に終わります。63分にビジャレアルは最後のカードとしてMFカソルラを投入(←カニ)。69分、右のモンテーロからペナルティエリアのアルティドールにパスが通り、ビシュチャンのタックルも交わされて万事休すのところを、長い距離を走って戻ったチャゴがクリア。長く怪我に泣いてきたチャゴのビッグプレーでピンチを逃れます。仕返しとばかりに72分、途中交代で入ったディナモのMFイバネスが空っぽとなった相手ゴールにシュートを放ちますが、間一髪でカバーに入ったゴンザロにクリアされます。
ビジャレアル・イレブンが一様に焦っていることは、私のいるピッチ脇からはっきりと読み取れました。そんな彼らに終止符を打ったのは、ベテランでありキャプテンのマルコス・セナ(写真左)でした。74分、クフレへの危険なチャージで二枚目のイエローをもらって退場。帰化してスペイン代表に入り、ユーロ2008ではチームの牽引役を握ったブラジル人にもう全盛期のキレはなく、サミールの高速ドリブルに振り切られっぱなしで終わりました。
彼と同じくブラジル人でクロアチアに帰化したものの、民族主義的・政治的な観点からクロアチア代表入りが論議されているサミール(写真右)。本人はクロアチア代表入りを希望しているものの、ビリッチ代表監督は沈黙を続けています。しかし、サミール本人が自らのプレーで、その議論に片をつけました。80分、ロペスのパスをカットしたクフレが無人の左サイドを疾走。併走したサミールにラストパスを送ると、サミールはDFディエゴ・ロペスが届かないコースにシュート。このゴールでディナモの勝利は決まりました。86分に交代が告げられると、スタンドはスタンディングオベーションと共に「サミール」のコール。昨季までは交代の度にブーイングを浴びせられたサミールですが、今季とうとう覚醒した彼をクロアチア代表に呼ばないエクスキューズはもう存在しないでしょう。
ロスタイム4分を経てホイッスル。ピッチ上で喜ぶ選手達に向けて、ハリルホジッチ監督はベンチから温かい拍手を送っていました。
(試合のダイジェスト動画はこちら)

nogomet-190514.jpg「勝てると思ってザグレブに来ただけに痛いよ。ディナモは全てを持っていた。素晴らしいディフェンス、組織されたカウンター、強固な中盤…。彼らは自らのチャンスを活かすことで、我々の方がレッスンを受けるはめとなった。どの相手だろうとヨーロッパ・リーグ決勝のようにプレーせねばならないんだ。もし可能な限りの実力を出さねば、こんなことも起こってしまう。また、今夜に先発した選手だって最高レベルでプレーする能力を持った選手だ。しかし、日程を考えれば選手変更が強いられた。全員が完璧な状態にはなれないが、ビジャレアルの選手一人一人がなぜそのユニフォームを背負っているかの理由があるんだ」
憮然とした表情で記者会見を終えたビジャレアルのガリード監督(写真)は、入れ替わりでやってきたディナモのハリルホジッチ監督から手を差し出されると、目を合わせることなく握手だけして去っていきました。その行為に彼は「おや、何だね?」と首を傾げ、それから報道陣の拍手で壇上の席に着くと開口一番、こう言いました。
「彼はまだ若いな。まあ、学ぶ時間はまだあるだろうがね」

百戦錬磨のはずのハリルホジッチ監督もこの大勝利に幾らか放心状態でした。時々、クロアチア語(ボスニア語)が出てこずに困ることもありましたが、表情をさほど変えることなく淡々と御礼を述べました。
「皆さんの拍手に私は感動している。なぜなら、この拍手は私に対してではなく、チームに対する賞賛だからだ。試合後、選手達に『私は君たちを誇りに思う』とだけ口にした。私は本当に彼らを誇りに思っているんだよ。ビジャレアルは我々より強い相手とはいえ、勝利を信じていた。もっと得点差は広げられただろうが、今夜のマクシミールの出来事に私は満足だ。スタンドの"12番目の選手"はとても素晴らしい雰囲気を作ってくれた。そして選手達は力の最後の一滴まで振り絞って戦ったんだ。この勝利は全てのディナモ関係者、つまり選手やサポーター、フロントへのプレゼントだ。まず何より、頑張ってくれた選手に私は感謝したい」

nogomet-190504.jpg少しずつ自分を取り戻してきたハリルホジッチ監督は手振りも加えながら、こう試合を語ります。
「この結果は天から降ってきたものじゃない。欧州カップにおける過去のディナモの成績を見たが、それは最悪そのものだ。とりわけ、ここホームでの成績はね。我々は手を緩めることなく、数多くのトレーニングを積んできた。選手達にはこう言ったよ。『ここはお前達のスタジアムであり、庭なんだ。自分達が強いと思え。自信と勇気を持て!』と。そして我々は成功した。マクシミールの誰もが満足しただろう。私だって満足している。
何に満足しているかって? 幾つもあるよ。我々が偉大なチームを手にしたこともそうだし、今夜の選手たちはプレーだけでなく、その振る舞いにも満足している。この試合に立ち会った人々の顔を見ると、今夜は本当に素晴らしい夜だったようだね。しかし、今の我々は通過点にすらまだ距離がある。まあ、心配しないでくれ。選手達の足は地につけておくから。私には経験というものがあるのだよ。
最高の選手は誰かって? こんな英雄的な戦いに誰か一人を取り上げるなんて恥じる行為だ。今夜はディナモそのものが勝利したのだよ」

またビジャレアルに対してはこう言い放ちました。
「彼らは傲慢な気持ちでここにやってきた。監督が『ディナモについて何も知らないけど、勝ちにに来た』なんて口にするとはね。私はそれを利用し、選手のモチベーションを高め、彼らの"意地"をかきたてたのだよ。まあ、今の彼らは優れたサッカーをするクラブがザグレブに存在することを知っただろうな。私は言ったじゃないか。誰かが過小評価してくれることか一番好きだって。でも、ビジャレアルの監督のことも理解はできる。彼だってまだまだ学べるさ」

nogomet-190506.jpgビジャレアルにとって一番の強敵だったのは、やはりハリルホジッチ監督でした。これほどの短期間でチームに改革を施すことで、選手やフロントだけでなく、メディアや観客の圧倒的な支持を受ける名将です。スタジアムでは「ヴァハ(彼の愛称)、マイストーレ!」のコールがこだましました。過激なサポーターのBBBがボイコットしてくれているお陰で、UEFAに咎められる発炎筒や人種差別的なチャントもありません。南スタンドは近隣県から招待されたユースの子供達で埋め尽くされ、温かくかつ熱いサポートを受けたディナモ。中にはこっそり観戦に来ていたBBBもいたようですが、今の彼らはボイコットを決めたことに後悔し、自らの存在価値と無力さを嘆いているでしょう。ディナモはBBBやマミッチ副会長の私物ではなく、ようやくザグレブ市民の元へ戻ろうとしていてます。ハリルホジッチというボスニア人監督の到来をきっかけに、ディナモを巡る環境全てが変わり始めたのです。

ここクロアチアでは、チャンピオンズ・リーグやリーガ・エスパニョーラで毎日のようにハイレベルな試合やサッカーが存在するわけではありません。ビジャレアルにとっては長いシーズンにおける単なる一敗でしょうが、ここでは年に一回あるかないかの五大リーグのチームとの対決。そこで勝利したという事実は、ディナモ史の栄光として永遠に語り継がれるものでしょう。9年間ここでディナモを追ってきた私も、欧州カップでは常に「負け犬」感覚でいました。スペイン・サッカー隆盛の時代、ここまで溜飲を下げてくれ、一ファンとしても熱狂させてくれたディナモの選手達、そしてハリルホジッチ監督に感謝したい気分でいっぱいです。


posted by 長束恭行 |22:10 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2010年09月13日

火花が散る監督対決/クロアチア・ダービー「ハイドゥクvs.ディナモ」

1991年にクロアチアが独立し、翌年にクロアチア・リーグが創始して以来、常に覇権争いを続けてきたディナモ・ザグレブとハイドゥク・スプリト。クロアチア・リーグとしては57試合目、ユーゴスラビア・リーグを含めれば147試合目となる「クロアチア・ダービー」が、9月11日にハイドゥクの本拠地ポリュウド・スタディオンで行われました。このカードが欧州でも指折りのダービーマッチに数えられる証拠として、FootballDervies.comによる2008年度のダービーランクでは「バルセロナvs.レアル・マドリッド」に次ぐ2位にランクしたことがあります。今回はこのダービーを両監督のコメントを中心に追っていきましょう。

nogomet-189578.jpgボスニア人の名将ヴァヒド・ハリルホジッチ(写真)を迎えて以来、4戦4勝のディナモ。チャンピオンズ・リーグ予備戦三回戦でモルドバのシェリフ・ティラスポルに敗北し、どん底の精神状態だったチームを引き受け、選手との対話と厳しい練習で短期間にて立て直しました。(詳しくは8月29日のレポートにて)
4連勝の後、ディナモ一同はザグレブ市内の魚介レストラン「カラカ」で宴会の場を持ちました。新監督の手腕にすっかり心酔した選手達は「ヴァハ」(ハリルホジッチの愛称)の名前を連呼。そこでハリルホジッチ監督が放った台詞は
「君達、ありがとう。しかし、そんなコールができるのも今のうちだ。更に厳しいトレーニングが待っているからな」
この台詞を聞いた選手達が再び歓喜した、というエピソードを聞けば、彼によってチームの雰囲気がいかに好転しているかが伺えるでしょう。

そんなハリルホジッチ監督は、ハイドゥクに対して心理戦を仕掛けました。試合3日前の記者会見で彼はこう発言します。
「ハイドゥクは我々のことを少し過小評価しているみたいだな。しかし、そんなシチュエーションが私は最も好きなのだよ! でもハイドゥクにとっては、ディナモ戦はまるでチャンピオンズ・リーグの試合のようなものだろう」
ディナモはリーグ連覇を5シーズンも続けながら、ライバルのハイドゥクを相手には2年半もリーグで勝利を収めていません。ハリルホジッチ監督は過去のダービーや、直近のハイドゥクの映像を10試合ほどチェック。"現時点ではディナモよりハイドゥクの方が詳しいだろう"と冗談を述べるほど、彼は時間を掛けながらハイドゥクの分析を重ねました。

「ダービーにおけるハイドゥクのアグレッシブさは特別だ。モチベーションやヤル気も巨大だ。我々は感情をコントロールする必要がある。これほどの盛り上がりを見せる試合が私は大好きだし、どう準備するかも知っているさ。リールを率いてマンチェスター・ユナイテッドと対戦した際、選手達には"オールドトラフォードには勝つためにやってきたんだぞ。奴らを食べてしまえ"と鼓舞したものだ。このダービーにどっちが勝利するかって? その質問に答えるつもりはないよ」
また、移籍期限ぎりぎりに補強した元ポルトガル代表DFトネル、モンテネグロ代表FWベチライ、スロバキアU-21代表FWシルヴェストルに関しては
「チームに同行する可能性はあるが、試合に使うつもりはない。明日、世界最高の選手がディナモに来たところでも、ハイドゥク戦には使わないよ。自分なりの主義があるし、既に在籍している選手達に敬意を払う必要がある。どの選手も自分のポジションを賭けて戦うものだしね」
と構想外であることを言明。しかし、これもまたハリルホジッチ監督が仕掛けた罠でありました。

nogomet-189579.jpgライバルのディナモに勝点で上回り、ヨーロッパ・リーグ本戦進出も決めたことで盛り上がるハイドゥク陣営。
「ディナモはリスペクトすべき強い相手だし、我々もそのことをよく理解して準備している。ディナモも自分達がすべきプレーを準備しているだろう。しかし、勝利するのは我々だ」
そう自信を覗かせる老将スタンコ・ポクレポヴィッチ監督(写真)は、敵将について聞かれるとトーンが上がりました。
「私はハリルホジッチをリスペクトしているよ。しかし、まず彼が私をリスペクトすべきだ。私の方が年上なのだからね(ポクレポヴィッチ…72歳/ハリルホジッチ…57歳)。チームに変革をもたらし、選手との接し方も異なるとは聞いている。でも、彼のコメントには興味ないし、読まないようにしている。この試合で興味があるのはハイドゥクの選手のことだけだ」

ポリュウド・スタディオンのスタンドは、ハイドゥク・カラーの「白」を着たサポーターが押し寄せ、ほぼ満員の3万人の入り。一方、ディナモのサポーター「BBB」のほとんどが応援ボイコットを続けているため、ディナモ応援で駆けつけたのはたった30人ほど。そんなプレッシャーに囲まれながら、その軟弱なプレーぶりからポリュウドでは「お嬢さんサッカー」をやるとまで馬鹿にされていたディナモ・イレブンが奮起します。

nogomet-189580.jpgハイドゥクのキープレイヤー、ボスニア代表MFイブリチッチに対しては19歳のMFアデミがしつこくマーク。クロアチア代表の左SBストゥリニッチには、対面する18歳の右SBヴルサリコが突破を許しません。そして事前告知と異なるDFトネルの先発起用。トネルにとってはデビュー戦ながらも、冷静な判断と一対一の強さでハイドゥクの選手を前に立ちはだかりました。前線からの激しい守備と運動量で上回るディナモが次第にハイドゥクを凌駕し、42分、MFバデリの左クロスにMFサミール(写真)がジャンピングボレーを決めて見事に先制。前半をディナモが1-0のリードで折り返します。

「ディナモが激しく出てきた前半、うちの選手の出来には失望したよ。我を失った状況に陥り、MFトマソフもMFシャルビーニもピッチ上では思った働きをしなかった。ハーフタイムに私は選手に怒鳴り散らしたさ」

試合後にこう述べたポクレポヴィッチ監督ですが、そのハーフタイムにはハイドゥクのスヴァグシャ会長までドレッシングルームに乱入したよう。喝が入れられた選手達は後半開始と同時に攻撃を畳み掛けます。

nogomet-189581.jpg52分にイブリチッチのCKからDFマロチャが放ったボレーシュートは、ライン上に立つバデリが辛うじてクリア。この場面でディナモのGKロンチャリッチが膝を痛めて負傷し、控えのケラヴァに代わった直後の59分、攻め続けたハイドゥクに同点弾が生まれます。イブリチッチがヴルサリコをフェイントで振り切って左から放ったシュートをケラヴァがセーブするも、弾いたボールをそのままシャルビーニ(写真)が押し込んで1-1。試合を通じてみれば、ディナモがブラックアウト状態になったのはこの後半頭の15分間だけでした。ハリルホジッチ監督はこう振り返ります。

「勝利は我々の手中にあった。しかし、後半に入ると選手達は自ら引いてしまったんだ。選手を一人か二人交代させる必要があったが、GKロンチャリッチが怪我し、DFビシュチャンも痛みを訴えた。でも、あの時間帯以外はゲームを支配したと思っている。あんな風に引くことでリードを守るものじゃない。これについては選手と語り合おうと思っている」

同点弾を決めた直後、ゴール裏のハイドゥク・サポーター「トルツィダ」が次々と発炎筒を投げ込んだために試合は数分間中断。ハイドゥクが逆転できなかったことは、この中断が原因だとポクレポヴィッチ監督は考えているようです。

「折角、ゴールが決まって同点に追いついたのに、発炎筒による霧のせいで我々の勢いが止められてしまった。もっとやれると私は期待していた。つまり、勝利を期待していたのだよ。でも最終的に引き分けという結果には満足だね」

中断後のディナモは目が覚めたかのように前半の形を取り戻し、67分、SBクフレから放たれた左クロスにMFエトーがヘディングシュートを見舞うもわずかにポストの外。その1分後にハイドゥクはシャルビーニのロングパスがゴール前のトマソフに通りましたが、シュートがミートしません。最後はお互いが消耗し、直接対決の第一幕は1-1の引き分けで終了。挨拶なしで引き上げようとするポクレポヴィッチ監督にハリルホジッチ監督が呼びかける形で、二人は最後に握手を交わしました。
(試合のダイジェスト動画はこちら)

引き分けに満足と率直に語ったポクレポヴィッチ監督に対し、ハリルホジッチ監督は
nogomet-189582.jpg「本物のダービーマッチが見れたことに満員の観客は満足したことだろう。コンタクトの多い激しい試合だったが、いずれもスポーツの範疇内だった。結果に私は不満だよ。勝利を逃したと考えているし、ここで勝っておけば自信という面で良かったんだけどね。しかし、選手達は全力を出したし、試合後は主審も私に対してディナモの真面目なプレーと振る舞いを褒めてくれた。少し腹が立っているのは、あるハイドゥク選手の振る舞いだ。それが誰かは口にするつもりはないが…。まあいい。人間というのは決して満足するものじゃないけど、全てを通して見た時、今の我々は満足できるとも言えるだろう」
と狡猾な彼らしく、含みを持たせたコメントを試合後に発しました。

一方、好々爺でありながら本音がポロリと出てしまうポクレポヴィッチ監督は、"なぜ交代枠が残っていたのにDFではなくてFWアフマド・シャルビーニ(MFアナス・シャルビーニの兄)を出さなかったのか?"と質問を受けると
「なぜ彼をベンチに留めたかって私が聞きたいよ!」
と吐き捨てました。どちらも経験豊富な自信家ながら、コメントだけ見ても好対照な二人。しかし、それぞれが持ち合わせるメンタリティが、惰性的なディナモ、情熱的なハイドゥクというチームにマッチングし、好結果を導いているのも事実です。

7節を終わってハイドゥクが4勝3分・勝点15の2位。ディナモは4勝2分1敗・勝点14の3位。開幕以来好調だった首位のリエカ(勝点16)が今節に土がついたため、両者の間で本格的な首位争いが始まるのも時間の問題です。同時に今週木曜からヨーロッパ・リーグのリーグラウンドもスタート。過密日程の中で息切れせぬよう、リーグで格下相手にどう勝点を積み重ねていくか。再び両者が対決するのは3月19日の第22節。チームが成績不振に陥ると直ぐに辞任や解任に繋がるクロアチア・リーグで、両雄が激しいつばぜり合いを重ね、再び両監督の舌戦が実現することを祈らんばかりです。


posted by 長束恭行 |23:46 | サッカーニュース | コメント(2) |
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2010年09月09日

攻めるクロアチア、守るギリシャを崩せず/ユーロ2012予選

9月7日、ユーロ2012予選グループFの大一番「クロアチアvs.ギリシャ」がザグレブのマクシミール・スタディオンで行われました。ラトビアに3-0と快勝し、ワールドカップ予選敗退後の不安論を打ち消すことで自信を取り戻したクロアチア。グループ最大のライバルとなるギリシャは、3日のグルジア戦(H)をドローで終えており、ここでギリシャを倒せば予選は楽になることが間違いなし。しかし、3万人の観客に待っていたのは焦心であり、失望でありました。

nogomet-188736.jpg太股の負傷でラトビア戦を回避したモドリッチが復帰し、ベストメンバーを組むことが可能となりました。エドゥアルドと入れ替わる形で4-2-3-1のトップ下、もしくは左MFで起用されると思いきや、ビリッチ監督はモドリッチをラキティッチに代えてボランチに置き、初めて右MFに左利きのプラニッチを起用。ペトリッチとオリッチにツートップを組ませた4-4-2を採用しました。スタメンは以下のようです。
GKルニェ-(右から)DFスルナ、チョルルカ、シムニッチ、ストゥリニッチ-MFヴコイェヴィッチ、モドリッチ-プラニッチ、クラニチャール-FWペトリッチ、オリッチ

守備的スタイルでユーロ2004も制覇したオットー・レーハーゲルの長期政権はワールドカップをもって終焉。攻撃サッカーを信奉するポルトガル人のフェルナンド・サントス監督を新たに迎えたギリシャですが、彼の考え方がチームに浸透するには時間が必要です。グルジア戦での失態を挽回すべく、サントス監督はチームが慣れ親しんだレーハーゲルの守備的スタイルを踏襲しました(システムは4-5-1)。
GKシファキス-DFヴィントラ、パパドプロス、パパスタソプロス、ツァヴェラス-MFトロシディス、ツィオリス、カラグニス、カツラニス、サマラス-FWサルピギディス

序盤から猛攻を仕掛けるクロアチア。ビリッチ監督は狙いはギリシャの守備網をスピードある選手で突き抜く、もしくはミドルシュートで得点を奪うものでした。奇策とも思えるプラニッチの右MF起用の理由はそこにあり、ファウルを貰えば得意のセットプレーに持ち込めます。しかし、守らせれば天下一品のギリシャは自陣に篭り、クロアチアの攻撃をことごとく跳ね返します。強固な守備ブロックを崩すほどのアイデアは今のクロアチアになく、連動した攻撃は初めて組むようなスタメンに期待できず。トッテナムでベンチを温めるクラニチャールには試合感が無く、パスワークやクロス、プレスキックの精度は欠き、ミドルシュートも不発。また一人で数的優位を作れるモドリッチも、長い距離を走ってゴール前に来たら息切れしてしまいました。

それでも最初の15分間はクロアチアがチャンスを作ります。5分にモドリッチが中央から放ったグラウンダーシュートはGKシファキスが右手で掻き出し、8分のクラニチャール(写真)のミドルシュートは左ポストを惜しくも逸れました。
nogomet-188777.jpg「我々はアウェーでそうそう崩れることはないが、ホームでは観客の影響が多分にある。前半15分で我々がリードしない、もしくは相手がハーフウェーラインを越えられないほどの支配を我々がしないと、観客のナーバスさがピッチに伝染して攻撃が単調になるんだ。選手達にはこの問題を繰り返して語ってきた。我々には辛抱強さが必要だと」
熱狂的なサポーターに囲まれたホームで力を発揮してきたクロアチアですが、ビリッチ監督になってからというものユーロ2008予選のイングランド戦を除き、同格もしくは格上に結果を残せていません。ロシアとウクライナにはドローに終わり、一昨年のイングランド戦は予選で初めてマクシミールでの敗北を喫しました。格下が相手でも神経質に陥る戦いが多く、そんな問題を解決しようとこの10ヶ月間、ビリッチ監督が選手達に意識改革を促してきたのです。
しかしながら、15分を越えて魔の時間帯に入った途端、クロアチアは最終ラインがずるずると下がってコンパクトさを失い、ギリシャの反撃を食らいます。19分、スルナのトラップミスが左のサマラスに繋がると、ペナルティエリアに持ち込んでのドリブルシュート。ボールは右ポストを外れましたが、このピンチを機にクロアチアもリズムを失ってしまいました。
笛を吹いたデンマーク人のラルセン主審はペナルティ付近のファウルを流すタイプ。ギリシャの守備陣もそんな主審の特性をよく理解し、ピンチとなれば当然のようにユニフォームを掴み、手荒いタックルを浴びせれば、選手と観客のナーバスさは頂点に達します。そんなギリシャおあつらえの主審も一役買い、クロアチアは完全にギリシャの術中にはまってしまいました。

ビリッチ監督は後半頭からペトリッチを下げ、高さのあるFWイェラヴィッチを投入し、最終ラインをもっと上げるよう指示。47分、そのイェラヴィッチがクラニチャールのスルーパスをもらうと左からシュート。ネットを揺らしたものの、ちょっとのタイミングのずれでオフサイドに終わりました。
nogomet-188778.jpg57分、ヴコイェヴィッチに代え、MFラキティッチを入れ、攻撃を強化。2分後、ラキティッチが得意のミドルシュートを放つも、GKシファキスがボールに触れてコースを変えます。続くCKではチョルルカがヘディングで合わせるもボールはポストの左へ。
73分、ビリッチ監督はゴールを奪うべき最後のカードとして、オリッチに代えてFWエドゥアルドを投入。その直後にストゥリニッチ、プラニッチ、クラニチャール、再びプラニッチと途切れることなくシュートを浴びせますが、ギリシャの堅いブロックを破ることはできません。
88分にはラキティッチの左CKがファーポストでフリーのエドゥアルドに届くものの、エドゥアルドのポジショニングが悪くヒットせず。そしてロスタイム3分、ストゥリニッチの大きなクロスをプラニッチがヘディングで落としたところにエドゥアルド。右足でのトラップから素早くシュートに持ち込みましたが、パパスタソプロスが身体を呈してブロック。ユーロ2008予選のエドゥアルドならば間違いなくネットを揺らしただろう決定的チャンスでしたが、まだまだ本調子に戻れていないのでしょう。
そして試合終了のホイッスル。0-0という結果に不満なサポーターが容赦なくブーイングを浴びせました。
(ダイジェスト動画はこちら)

「勝点1でも満足だ」-試合前にそうも述べていたはずのビリッチ監督(写真)は、記者会見で悔しさを滲ませました。
nogomet-188737.jpg「立ち上がりは上手く入り、最初の15分間は要求した通りに選手達はプレーした。相手にプレッシャーを掛けたし、セットプレーやシュートの場面もあった。しかし、その後はギリシャのゆっくりとしたリズムに陥ってしまった。危険な場面は作らないが、ボールをキープし、相手をいらつかせるのがギリシャのプレーだ。前半の15~45分の出来に私は満足できないよ。ディフェンスも下がりすぎてしまい、思うように攻めることができなかったんだ。
後半はゲームを支配し、交代した選手も素晴らしいプレーをしてくれた。勝利するための手立ては充分に打ったと思うが、得点は決められなかった。この結果が不満という事実を隠すつもりはない。最初の2試合で勝点6を奪うプランだったからね。しかし、プランが実現することは難しいことは分かっていたし、警戒もしていた」

記者からは"プレーが用心深すぎたのでは?"との質問が飛ぶと、ビリッチ監督は表情を変えてこのように言い返しました。
「そんなことはない。サッカーを追う者ならば誰でも、我々の布陣は攻撃的だったと言うはずだ。とりわけ最後の30分は"超"攻撃的だった。DFは実質二人だけで、残り全員が攻撃的な選手じゃないか。モドリッチとラキティッチがボランチに入り、スルナとストゥリニッチはかなり攻撃的にプレーした」
また、試合後にバックスタンドを中心にブーイングが起きたことに対しては
「あのブーイングは我々のプレーのせいなのか、それとも結果のせいなのかは私に分からない。我々が勝利を追求したのははっきりしているし、勝点3を奪うために全てをやり遂げたと思っている。これ以上の攻撃的な布陣は何なのか私は知らないよ」
と疑問を投げかけました。

nogomet-188738.jpg選手達のコメントは決定機を逃した悔しさと、ギリシャの引き篭りサッカーに対する批判が多かったのですが、これまで常に熱烈なサポートをしてきたマクシミールのサポーターがブーイングを浴びせたことはショックだったようです。
「ゲームはコントロールしたし、チャンスも多く作った。しかし、得点が奪えなかったんだ。僕達にブーイングしたバックスタンドのサポーターには失望したよ。全力を出し切った僕達はブーイングに値しないはずだ」(モドリッチ/写真)
「僕達は成熟したプレーをやれたと思っている。もしかしたら前半は少し慎重すぎたかもしれないが、後半はオフェンシブだったし、チャンスも作った。そのチャンスを逃したのは後悔しているが、今は前進あるのみだ。ギリシャはゴールを狙おうとせず、0-0で終えようと図った。でもバックスタンドからのブーイングは遺憾だね」(スルナ)

また、貴賓席に座ったお偉方は一様に冷たいコメントを残しています。
「俺じゃなくて、他の人々がこの試合についてコメントしてくれ」(ヴラトコ・マルコヴィッチ/クロアチア・サッカー協会会長)
「前半のサッカーは臆病者のサッカーだ。3万人の観客を前にやるものではない」(ズラトコ・マテシャ/五輪委員会会長)
「モドリッチは何もプレーできなかった。そんな選手は偉大な選手になれやしない。しかし、残念なことに現時点では彼より優れた選手がいないんだよ。クロアチアはまるで引き分けで充分だ、なんて印象を抱いたが、最悪で危険な考え方だ。頼むからそんな考え方は直してくれ」(アントゥン・ヴルドリャク/国際五輪委員、映画監督、元政治家)

nogomet-188739.jpgトミスラフ・イヴィッチやオットー・バリッチといった老将からはビリッチ監督を擁護し、お偉方を「スポーツを少ししか理解してない」との逆批判が出ています。外野ではそんな論争も起こっている中、試合翌日になってビリッチ監督はこう振り返っています。
「貴賓席に座った彼らの考え方も分かるし、スタジアムやテレビで観ていた誰もがが空っぽ状態になったのは理解している。ラトビア戦が好ゲームだっただけに尚更さ。クロアチア人は良い結果が出ると直ぐに火がつき、幸福感に溺れる少し特別なメンタリティを持っているしね。その反動のせいで、人々は憂鬱というか空っぽになるのも私には理解できるんだよ。このグループはどこにもチャンスはあるし、レベルも高いものだ。テル・アビブでのイスラエル戦は難しい試合となるだろう」

グループで一つ頭を抜け出すことに失敗し、再び不安論が渦巻くクロアチア。これだけ欧州の名門でプレーする攻撃タレントが揃いながらも、最善のシステムやスタメンを見出せないビリッチ監督への不信感は高まりつつあります。とはいえ、現在は勝点4でクロアチアで首位に立っていることには間違いありません。
長丁場となる予選は残り8試合。どこの国もクロアチア相手に守備的なサッカーを演じてくるだけに、そんな相手を凌駕し、国民の不満を打ち消すような解決策をビリッチ監督は早く探す必要があります。と同時に、一人の選手の復活に期待を寄せています。
「エドゥアルドが10月のイスラエル戦までにトップフォームになると信じている。彼は典型的なゴールゲッターだし、そんな存在が我々には欠けているんだ」


posted by 長束恭行 |23:15 | サッカーニュース | コメント(0) |
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