2010年05月07日
先週土曜日にディナモ・ザグレブが5シーズン連続のリーグ優勝。そして今週水曜日にはクロアチア・カップ決勝第2戦が行われ、ハイドゥク・スプリトがシベニクを初戦に続いて下して(2-1、2-0)、5年ぶりのタイトルを獲得しました。(ちなみに第2戦ではオシムが観戦していました)
となると、続いて注目すべきはリーグの降格争いになるわけですが、驚くなかれ、いまだに幾つのクラブが降格するかが分かっていません。同時に幾つのクラブが二部から昇格するかも「?」。リーグ終了まで残る試合は2節だけ。日本人には理解不能なクロアチア人の無計画っぷりがサッカーを通しても垣間見えます。今日はそんなレポートを。
まず、現時点の下位の順位を記しておきましょう。
10位 イストラ (勝点31)
11位 ザダール (31)
12位 ザグレブ (30)
13位 ヴァルテクス (30)
14位 インテル・ザプレシッチ (30)
15位 メヂムリエ (26)
16位 クロアチア・セスヴェッテ (14)
昨季の一部リーグは12クラブ。そして今季から16クラブに拡大したクロアチア・リーグ。独立以降の19シーズンで、猫の目のようにレギュレーションを変更すること「13回」。リーグにおけるクラブ数の増減も目新しい話ではありません。
一部リーグの全クラブが加盟する「クロアチア一部リーグ協会」の当時の会長イゴール・シュティマッツ(写真)の主導の下、16クラブに拡大することが決まったのは昨年4月。表向きの理由は「小さな街のクラブでも一部リーグに参加し、また若手の出場機会を増えることでサッカーの裾野を広げる」というもの。少数精鋭でレベルの高いリーグを欲するディナモは「10クラブへ縮小」を主張したものの、ハイドゥク出身のシュティマッツが一部残留を欲する他の小クラブをとりまとめることでリーグ拡大の合意を取りつけたのです。
しかし、蓋を開けるとリーグのレベルは低下。スタジアムのインフラ状態も壊滅的なため、観客離れに拍車が掛かりました。例えばシーズン前半のデータを挙げれば、平均観客は昨年の3074人から2010人まで減少しています。スタジアムの多くが客席に屋根もなければ、常設のトイレもなし。粉吹く椅子に座れば服は真っ白。フーリガンとの危険も隣り合わせ…。
例えば、ディナモ・ザグレブの平均観客は下駄を履かせて3500人ほど。これはスタジアムのキャパシティの1/10に過ぎません。観客ははオーストリアのEBELリーグに加入したアイスホッケーのメドヴェドシュチャクに完全に奪われてしまいました。
(※メドヴェドシュチャクの試合では6000人のキャパシティの体育館が常に満員。これまでアイスホッケーに無知だったザグレブ市民が、スペクタクルと安全性を確保された会場に家族で足を運び、一大ブームとなっています。参考動画)
「揺れ戻し」はわずか一年で起こりました。動いたのはクロアチア・サッカー協会です。ヴラトコ・マルコヴィッチ会長は以前より「10クラブ制」を希望しており、今年2月、サッカー協会は「2011/12シーズンから12クラブ、2013/14シーズンから10クラブに縮小」というプランを提示。各クラブに対しては3月31日を期限として、一部リーグ参加のライセンス申請を求めました。
一部リーグ協会は「2011年以降のクラブ数削減」に反対の姿勢を示したものの、まずは来シーズンに向けて「16クラブ制」を維持できるよう各自がライセンス承認に励むことになりました。そして、もし16クラブが揃わないようならば、来季からでも12クラブに移行することに同意したのです。
ライセンス取得の条件は、インフラや運営・財政面など多岐に渡っています。現在一部リーグに所属する16クラブに加え、二部リーグのスプリト、フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツ、モソール、ソリンが申請。ただし、二部から一部への昇格条件は「5位以内に入ること」。最低でも1クラブを入れ替え、最大で3クラブを入れ替えるはずでした。
本当の混迷はここからです。まず最初の申請でライセンスが認められたのは、ディナモ、スラヴェン・ベルーポ、ザグレブ、インテル・ザプレシッチの4クラブのみ。思いのほか、サッカー協会の判断は厳しかったのです。落とされた各クラブは再申請し、一ヶ月間に渡ってあらゆる政治力を利用することで5月1日の最終判断を待ちました。その間もリーグは進行。当初の予定から遅れること3日後、5月4日に承認されたのは以下の16クラブでした。
(現在一部…14クラブ)
ディナモ、スラヴェン・ベルーポ、ザグレブ、インテル・ザプレシッチ、ハイドゥク、チバリア・ヴィンコヴチ、ザダール、オシエク、イストラ、カルロヴァッツ、ロコモティーヴァ、シベニク、リエカ、クロアチア・セスヴェッテ
(現在二部…2クラブ)
スプリト、フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツ
一部リーグで最下位のクラブ(※クロアチア・セスヴェッテに確定)は必ず二部降格を考えれば、来季はどうやっても16クラブが揃うことがありません。一部のクラブで申請を落とされたのは、ヴァルテクス・ヴァラジディンとメヂムリエ。それぞれが財政難で、選手やスタッフに未払給与を抱えているのが申請を弾かれた理由です。降格争いの中を戦う両クラブは直ぐにサッカー協会へ抗議したものの、承認されるかは微妙な状況です。
最終的に(その最終がいつかは不明ですが…)16クラブが揃わないとなった場合、当初の約束では12クラブまで減らされます。とばっちりを食らうのがその他の下位クラブ。つまり、11位以下(もしくは12位以下)がばっさりと落とされるわけです。
少なくとも「14クラブ制」にしてくれ、と嘆く声が下位のクラブから上がりつつあります。サッカー協会と対立し、16クラブ拡大の音頭を取った現ザグレブ監督のシュティマッツも
「こんな混乱から抜け出すためには、ヴァルテクスとメヂムリエにライセンスを認め、入れ替えは一チームずつにすればいい」
と、自ら率いるクラブが二部に落ちないよう主張しています。
また二部のクラブの間も悲喜こもごもです。首位のスプリトは昇格を決めたのに対して、フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツは現在6位。残る4試合で「5位以内」の条件を満たさねばなりませんが、財政面の問題を特別に見逃してくれました。フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツは名物会長スパイッチ(故人)が退役軍人の娯楽のために組織した"クロアチア愛国主義者"という名のクラブ。ですので、サッカー協会でも政治力がしっかりと働いたと言えましょう。今は5位以内に入ることのみに集中し、故スパイッチに報いるために8年ぶりの一部復帰を目指します。
最も気の毒なクラブがスプリト郊外にあるソリン。創設以来、二部で19シーズン戦ってきた唯一のクラブであり、現時点では3位。ようやく初昇格が目に見えたところでの承認拒否でした。理由はスタジアム。もし本拠地が承認条件に満たさない場合は、他のスタジアムを間借りすることも可能です。例えば、ロコモティーヴァはディナモのマクシミール・スタディオン、イストラはリエカのカントリーダ・スタディオン、スプリトはハイドゥクのポリュウド・スタディオンの使用が認められました。そんな中、ソリンの本拠地は一部開催の条件に見たず、4km離れた隣町のドゥーゴポーリェで昨年オープンした最新鋭スタジアム「Stadion Hrvatskih Viteza」を本拠地として申請。ソリンとドゥーゴポーリェの街は友好関係にあり、同じ郡に属しているわけですが、サッカー協会は「自治体が違う」という理由で申請を拒否してしまいました。ソリンのニンチェヴィッチ会長は
「これがクロアチア・サッカー界の現実だ。私達は小さなクラブだし、誰もサッカー協会で後ろ盾になってくれなかった。サッカー協会は大きなクラブよりも、小さなクラブにもっと気をかけてくれる必要があるのに…。マクシミールでプレーしているロコモティーヴァは何だって言うんだ。誰もがあそこも問題を知っているだろう?(※ロコモティーヴァはディナモ・ユースが多数送り込まれた"ディナモB"チーム)」
と肩を落としました。申請が認められなかったワケは色々と語られており、「10クラブ制」を望むディナモのズドラヴコ・マミッチ副会長の圧力が掛かったとも噂されています。ソリンは最初の申請拒否がされた時点で、余りの失望から再申請を諦めてしまいました。例えば、リエカとイストラは県すら違いますし、ロコモティーヴァとディナモは同じザグレブ市でも7km離れています。
ここまで頑張ってまとめてみましたが、私自身、この先どうなるのかさっぱり読めません。リーグ終了まで6日しかないのに来季のクラブ数すら決まらず、五里霧中で降格争いをする恐怖。誰もがクロアチア・リーグの運営ぶりを「アマチュアリズム」の一言で片付けます。比較することすら失礼千万ですが、いかにJリーグが優れた運営をしているかを分かって頂けることでしょう。
p.s.
Jリーグでは「秋春制」への移行が検討されていますが、クロアチアでは逆に「春秋制」への移行が、一部リーグ協会現会長ロベルト・マルクリンを中心に語られています。
冬の間、クロアチア・リーグは気候のせいで中断せねばならず、それがあらゆる活動の制約になっています。例えば、キャンプを年に二度も行わねばならないこと、クラブは中断期間もコーチや選手に給与を支払わねばならないこと、真夏でもナイター開催ならば観客増が見込めることなどが挙げられています。ところ変われば…の良い例ですね。
posted by 長束恭行 |03:40 |
サッカーニュース |
コメント(0) |
2010年05月05日
5月4日、今月後半に三試合の親善試合を控えるクロアチア代表メンバー21人が発表されました。
19日にオーストリア(会場:クラーゲンフルト)、23日にウェールズ(オシエク)、26日にエストニア(タリン)と対戦する予定です。
今回のメンバー発表において、ロベルト・コヴァチに続いてイヴィツァ・クリジャナッツの代表引退が明らかにされました。
ユーロ2008後に代表入りし、センターバックとして11試合に出場したクリジャナッツですが、代表活動で4度に渡って怪我をしてきた事実を彼が所属するゼニト・サンクトペテルブルクが好ましく思っておらず、本人も悩んだ末に"健康上の理由"で代表を退くことになりました。
その代わりにセンターバックで新選出となったのが、ハイドゥクのユーリツァ・ブリャト(写真)。ハードな守備が売りですが、心理面の抑制が効かずにカードをもらいがちなDFで、本人すらも驚く代表召集選出となりました。
より高く選手を売却したい古巣ハイドゥクのため、ビリッチ監督が配慮した可能性も充分に考えられますが、センターバックの層はやたらと薄いだけにブリャトにも出場チャンスはかなり得られるかもしれません。
またハイドゥクからは左SBのイヴァン・ストゥリニッチも召集。彼は昨年11月のリヒテンシュタイン戦で初召集が掛かったものの、怪我で参加することができませんでした。ですので、今回が実質の初召集となります。現在のクロアチア最大の弱点である左SBを埋められる選手は、もうストゥリニッチしかいないと思うだけに3試合を通してしっかりとテストして欲しいものです。
また、FWニコラ・カリニッチ、MFイヴァン・ラキティッチ、DFデヤン・ロヴレンはU-21代表に加わり、同カテゴリーの欧州選手権予選・対スロバキア戦(5/19、ヴァラジディン)に出場する予定です。またA代表召集の声が高く、レバークーゼンへの移籍が決まったばかりのDFドマゴイ・ヴィーダもU-21代表に加わりました。
FWイヴァン・クラスニッチは移植した腎臓の定期健診、MFニコ・クラニチャールとDFヴェドラン・チョルルカは怪我のために不選出。またGKのスティペ・プレティコサとヴェドラン・ルニェはメンバー入りしたものの怪我から完全に復調しておらず、状況次第では国内リーグからのGK追加召集を考えています。
またFWイヴィツァ・オリッチとMF/DFダニエル・プラニッチはCL決勝が22日にあるためにエストニア戦のみ合流。MF/DFダリヨ・スルナとMFオグニェン・ヴコイェヴィッチは、もしウクライナ・リーグがプレーオフに持ち込まれた場合はオーストリア戦を欠場。またFWマリオ・マンジュキッチは先のハイドゥク戦で膝の靭帯を痛めたため、メンバーに名を連ねながらも代表参加は微妙です。
会見でスラヴェン・ビリッチ監督は
「この時期の親善試合は重要でないように見えるかもしれないが、直ぐにユーロ2012予選が訪れる。その準備をするためにも鍵を握る試合となるだろう。この次の召集は8月の短い期間しかないからね。また対戦相手の国にとっても同じように予選準備のための重要な試合となるはずだ。それだけに我々はこの戦いに多くを期待している」
とコメントしています。
代表メンバーは以下になります。
GK:
スティペ・プレティコサ (スパルタク・モスクワ/ロシア)
ヴェドラン・ルニェ (ランス/フランス)
ダニイェル・スバシッチ (ハイドゥク・スプリト)
DF:
ダリヨ・スルナ (シャフタール・ドネツク/ウクライナ)
ヨシップ・シムニッチ (ホッフェンハイム/ドイツ)
ダリオ・クネジェヴィッチ (リボルノ/イタリア)
フルヴォイエ・チャレ (トラブゾンシュポール/トルコ)
ユーリツァ・ブリャト (ハイドゥク・スプリト)
イヴァン・ストゥリニッチ (ハイドゥク・スプリト)
MF:
ルカ・モドリッチ (トットナム・ホットスパー/イングランド)
ダニイェル・プラニッチ (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
オグニェン・ヴコイェヴィッチ (ディナモ・キエフ/ウクライナ)
ニコラ・ポクリヴァチュ (レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)
トミスラフ・ドゥイモヴィッチ (ロコモティーバ・モスクワ/ロシア)
ドラゴ・ガブリッチ (トラブゾンシュポール/トルコ)
FW:
イヴィツァ・オリッチ (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
エドゥアルド・ダ・シルヴァ (アーセナル/イングランド)
ムラデン・ペトリッチ (ハンブルガーSV/ドイツ)
マリオ・マンジュキッチ (ディナモ・ザグレブ)
マテ・ビリッチ (スポルティング・ヒホン/スペイン)
ニキッツァ・イェラヴィッチ (ラピッド・ウィーン/オーストリア)
本来はワールドカップから一新されるはずだったユニフォームですが、クロアチアは予選落ちで出場できず。そんな中、3日にホーム用の新ユニフォームがザグレブのナイキショップで、ビリッチ監督やチームスタッフをゲストにお披露目されました。今年からホーム用はこんなユニフォームになります
また同時に発表されたU-21代表のメンバーも記しておきます。今回は怪我人が多いため、ドラジェン・ラディッチ監督は現U-19代表の選手も追加させています。スロバキア戦は予選1位を賭けた重要な戦いで、私も都合さえ合えばヴァラジディンまで取材に行こうと思っています。
GK:
イヴァン・ケラヴァ (ディナモ・ザグレブ)
マリヤン・アントロヴィッチ (チバリア・ヴィンコヴチ)
DF:
デヤン・ロヴレン (リヨン/フランス)
ドマゴイ・ヴィーダ (オシエク)
トミスラフ・バルバリッチ (ディナモ・ザグレブ)
シーメ・ヴルサリコ (ディナモ・ザグレブ)
ゴラン・ヨジノヴィッチ (ハイドゥク・スプリト)
ロベルト・プンチェツ (ヴァルテクス・ヴァラジディン)
エルヴィス・コカロヴィッチ (スラヴェン・ベルーポ)
MF:
イヴァン・ラキティッチ (シャルケ/ドイツ)
イヴァン・ペリシッチ (ブルージュ/ベルギー)
マト・ヤヤロ (シエーナ/イタリア)
ミラン・バデリ (ディナモ・ザグレブ)
ズボンコ・パミッチ (カルロヴァッツ)
ダミール・クレイラッハ (リエカ)
ベサルト・アブドラヒミ (ザグレブ)
デヤン・シュコルニク (マリボル/スロベニア)
ミルコ・オレムシュ (ハイドゥク・スプリト)
FW:
ニコラ・カリニッチ (ブラックバーン/イングランド)
アンドレイ・クラマリッチ (ディナモ・ザグレブ)
アンテ・ヴクシッチ (ハイドゥク・スプリト)
イヴァン・サンティーニ (ザダール)
posted by 長束恭行 |04:10 |
サッカーニュース |
コメント(0) |