2010年05月22日

懸案だった左SB、ストゥリニッチ当確/親善試合「オーストリアvs.クロアチア」

遅れてしまいましたが、代表マッチのレポートを。

nogomet-162162.jpg19日、クラーゲンフルトのヴェルターゼー・シュタディオンで、クロアチア代表がオーストリア代表と親善試合を行いました。ユーロ2012予選に向けた準備として5月に3連戦を組むクロアチアにとって、この試合が初戦となります。これまでのオーストリアとの戦績は3戦全勝。クラーゲンフルトはユーロ2008でドイツとポーランドに勝った縁起の良い土地です。

(写真はユーロ2008のヴェルターゼー・シュタディオンにおけるクロアチア・サポーター)

クロアチアは、あらゆる理由でワールドカップ予選時のメンバーが13人も外れました。まずはコヴァチ弟、クリジャナッツが代表を引退。オリッチはプラニッチは土曜のCL決勝、ラキティッチ、ロヴレン、カリニッチはU-21代表に合流、クラニチャール、チョルルカ、ルニェ、クネジェヴィッチは怪我、クラスニッチは腎臓の定期健診で外れてしまいました。合宿中にエドゥアルドとブリャトが怪我。またプレティコサは怪我から復帰したとはいえ、調整不良でベンチ入りせず。台所事情が厳しい中で、ペトリッチ、モドリッチ、マンジュキッチは怪我を抱えながら出場を強いられました。スタメンは以下のようです(システムは4-2-3-1)。
GKスバシッチ-(右から)DFスルナ、シルデンフェルト、シムニッチ、ストリニッチ-MFドゥイモヴィッチ、ヴコイェヴィッチ-マンジュキッチ、ペトリッチ、モドリッチ-FWイェラヴィッチ

一方、オーストリア代表は、コンスタンティーニ監督の下で世代交代を進めています。ユーロ2008の主力で残ったのはマホ、ハルニク、コルクマツ、プレドゥル、フクスの5人のみ。代表メンバー23人のうち、キャップ数一桁が15人もいます。それでも今年3月にはワールドカップ出場国であるデンマークに2-1で勝利を収めました。セルビア系移民のDFドラゴヴィッチやMFユヌゾヴィッチといった新たな選手も台頭し、スタメンに名を連ねました(システムは4-4-2)。
GKマホ-DFプレドゥル、ドラゴヴィッチ、オルトレヒナー、フクス-MFハルニク、シーマー、ユヌゾヴィッチ、コルクマツ-FWヴァルナー、ヤンコ

nogomet-162159.jpg新顔の多いスタメンとはいえ、ビリッチ監督は彼らに所属クラブとなるべく同じポジションを任せることで調和と連携を図りました。前線から積極的にチェイスをかけてボールを奪うと、モドリッチやマンジュキッチがドリブルで仕掛け、ピッチを幅広くカバーするドゥイモヴィッチから速いグラウンダーパスが前線に通ることで、オーストリア守備陣を押し込んでいきました。
注目すべきは代表デビューを飾った左SBのストゥリニッチ(写真)。スプリト在住のビリッチ監督は何度もハイドゥクの試合に足を運び、彼の高いポテンシャルに惚れ込んでいました。
ワールドカップ予選ではイングランドが徹底的にクロアチアの左サイドを狙い、高さに欠けるプラニッチやスピードに劣るポクリヴァチュが餌食になったわけですが、ハイドゥクで急成長を見せるストゥリニッチの登場でようやく左SBの問題が解決しそうな勢いです。攻撃に積極的なストゥリニッチに対し、ビリッチはなるべく守備には神経を使うよう指示され、対面のハルニクをパーフェクトに押さえ込むと、チャンスとあらばモドリッチと絡んで積極的に縦に突破。開始5分にはドリブルで3人をぶっちぎってペナルティエリアに侵入し、いきなり実力をアピールしました。

序盤から主導権を握ったクロアチアの最初のチャンスは12分、エリア手前でボールコントロールにもたつくシーマーからボールを奪ったモドリッチが、ゴール左隅を狙ってシュート。コースは良かったものの、GKマホが好セーブを見せてゴールを割らせません。トットナムで任せられるようなボランチではなく、高い位置で攻撃に加わり、シュートまで持ち込むモドリッチに終始オーストリア守備陣は手こずりました。
オーストリアは15分辺りから落ち着き始め、技術に優れたトルコ系移民の左MFコルクマツを中心にチャンスを見出します。21分、ハルニクの左クロスをシムニッチがクリアミスすると、ボールはファーポストでフリーで待つヤンコへ。決定的なチャンスでボレーシュートを試みますが、昨季にレッドブル・ザルツブルクで見せたようなゴールマシンの片鱗は薄れており、シュートは枠を捉えきれませんでした。
クロアチアはその後もゲームをコントロールし、24分にはスルナの右CKからヘディングに優れるイェラヴィッチが合わせるもGKマホの正面。33分にはエリア内でフリーの形でパスをもらったモドリッチが右から強烈なシュートを放ちましたが、これまたGKマホに防がれます。
36分にもストゥリニッチの左クロスにマンジュキッチがヘディングて落とし、イェラヴィッチがダイビングボレー。しかし、この近距離のシュートもGKマホが足でブロック。LASKリンツでプレーするチーム最年長のマホ(32歳)がここまで頑張らなければ、前半で2~3点差がついてもおかしくない試合でした。

ベンチに抱える選手も少ないため、親善試合としては珍しく後半も同じメンバーでスタート。前半に引き続き、クロアチアがゲームを推し進めます。52分のスルナの直接FKはわずかに逸れると、55分にはスルナのFKからマンジュキッチがチャンスを迎えるもののシュートはDFにブロック。その直後にはストゥリニッチがモドリッチやイェラチッチとのワンツーを加えながら80mを疾走。シュート体勢のところをタックルで崩されましたが、ストゥリニッチのスプリント能力が発揮された場面でした。
内容は申し分ないのに、水を差したのはクロアチアのサポーターでした。57分に発煙筒をピッチに投げ込んでゲームは一時中断。クラーゲンフルトはクロアチアに近く(ザグレブから車で3時間)、本土からだけでなくオーストリアやドイツからのクロアチア移民も多く駆けつけてました。ウィーンで同じカードをゴール裏で観戦した際に私も経験しましたが、国外に住む移民二世はこういった舞台で本国クロアチアの悪い習慣すら真似したがる傾向があり(自らのアイデンティティの証明から?)、空気の読めない応援やトラブルを引き起こしがちです。しかし、クロアチアのユニフォームを着た彼らの会話はクロアチア語でなく、慣れ親しんだドイツ語が飛び交うのは奇妙なんですけどね。
nogomet-162160.jpg話を試合に戻しましょう。ビリッチ監督は、思い切りの悪いペトリッチを60分に外してFWマテ・ビリッチを投入。67分にはイェラヴィッチに代えて右MFガブリッチを送り込みます(マンジュキッチが左MFへ)。
74分、DFの裏のスペースを突くストゥリニッチにドゥイモヴィッチがパスを通し、ペナルティエリアに侵入。2人を背にしながらのループシュートはGKマホ(写真)が左手一本で掻き出します。77分にはマンジュキッチによる左からの折り返しに、ゴール前に詰めたビリッチがぴたりと合わせたものの、またしてGKマホがスーパーセーブ。85分には足が止まった相手にボールを回し続け、ストゥリニッチの左クロスにマンジュキッチが放ったヘディングシュートはGKマホの正面に終わります。
チャンスを数多く作りながらも、相手GKのお陰でスコアレスドローに終わる試合はよくありがちですが、86分にようやく念願のゴールが生まれます。右タッチラインでボールを貰ったガブリッチがドリブルで中央に絞りながら縦にスルーパスを通すと、スペースにビリッチが走り込んで滑り込みながらのシュート。ボールはGKマホの脇を抜き、オーストリアのゴールに吸い込まれました。ビリッチ監督の交代起用に二人が応えた決勝ゴール。3月のベルギー戦に引き続き、クロアチアは1-0の勝利でアウェーマッチを終えました。
(試合のダイジェスト動画はこちら)


勝利が決まって満面の笑みを見せたビリッチ監督ですが、試合後の記者会見で最初に質問を投げたのがジャーナリストではなく、単なる素人のサポーターであり(コネを使って入った移民と思われます)、そやつが"最低な試合だ"と言ったことに彼はこう反論しました。
nogomet-162161.jpg「もしこの試合が最低だというのならば、私はサッカーについて何も知らないことになる。私は君と全く反対の考えだ。これは親善試合だから、勝利したことに浮かれる必要はない。しかし、最初の1分から最後の90分まで素晴らしい試合を演じたと私は断言しよう。選手一人一人にも満足している。チームはしっかりとコンパクトに機能し、成熟したプレーを見せた。試合をコントロールしたのだよ。ゴールは比較的遅いものだったが、もっと早くにゴールを決める必要があったし、決めることも可能だった。
我々における満足度は大きいよ。スタメンの11人だけでなく、途中交代した全員が信頼に応えくれたし、アピールしてくれたからね。このチームは初めてピッチで一緒にプレーしたんだ。連携を深めるにも時間はなかったんだ。だから選手を所属クラブと同じポジションで起用することをコンセプトにし、そこから多少の変更を加えた上で4-2-3-1のシステムにはめ込んでいった。この試合から得たものは大きいよ。」
またデビューを果たしたストゥリニッチに関しては
「ストゥリニッチは運動量の多い選手だし、左サイドバックのポジションで攻守の両面において良いプレーができるのさ。高いテクニックも備えているし、我々にとっては今日の活躍は驚きではない。彼はチームにとって大きなプラスとなった」
と語り、同様にドゥイモヴィッチやマンジュキッチも褒め称えました。

一方、オーストリアのコンスタンティーニ監督は
「もし今夜、引分けで終われたのならば非常にハッピーだっただろう。率直に言ってクロアチアはこの勝利に値したチームだし、試合を通して我々を上回っていた。86分までは幸運が我々に味方したよ。マホも非常に調子が良かった。クロアチアは多くの選手が欠けていたとはいえ、ヨーロッパで最高の代表チームの一つなのははっきりしている。ワールドカップに出場しないながらもね」
とコメントを残しています。

次は23日、オシエクでウェールズを迎えてのホームゲーム。スロバキア戦を終えたU-21クロアチア代表からMFラキティッチ、DFロヴレン、そしてA代表初召集となるDFヴィーダとMFバデリがA代表に加わりました。当初、ビリッチ監督はオーストリア戦に出場した何人かを休ませるつもりでしたが、ウェールズの実力と地元開催を加味した上でベストメンバーを組むことを決断。しかし、エドゥアルドとブリャトの完治は間に合わず、モドリッチも足首の状態が優れない模様。オーストリア戦で負傷したマンジュキッチとストゥリニッチは既に本練習に参加しているそうです。


posted by 長束恭行 |05:13 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2010年05月15日

たった500人の祝福/ディナモ優勝でクロアチア・リーグ閉幕

最近はすっかりTwitterにハマりつつあり、頻繁にクロアチアのサッカー情報を提供しています。このブログの左上にも張ってありますが、速報性や小ネタが好きな方はどうぞ。ブログはこれまで通りに非定期的ですが、まとまった形でレポートを書いていこうと思います。


nogomet-160384.jpg5月13日の最終節(第30節)でクロアチア・リーグ2009/10シーズンも閉幕。リーグ5連覇を決めたディナモ・ザグレブはホームで祝福に包まれるどころか、わずか500人の観客に野次や失笑を浴びせられるという惨めな締め括りとなりました。

なぜ最終節が週末や水曜日でなく、木曜日に行われたかというと、独立戦争の始まりとも一説で言われる暴動事件がマクシミール・スタディオンで起きてちょうど20周年だったためです。1990年5月13日、ユーゴスラビア・リーグ最終節「ディナモ・ザグレブvs.ツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター・ベオグラード)」の試合前に両サポーターが衝突。それからディナモ・サポーターのBBBと警官隊が衝突し、ディナモの主将ズボニミール・ボバンが警官に飛び蹴りを食らわした例の事件です。日本でもメディアや書籍で紹介されたことでご存知の方もいるでしょうが、あれ以来、5月13日はディナモ関係者やBBBにとって特別な日となっています。日本では誤った話で紹介されていることが多く、私自身も8年前にホームページで検証記事を書いておりますので、関心のある方はご覧になって下さい(『検証-1990.5.13』)。


nogomet-160385.jpgディナモが優勝を決めたのは今月1日に行われた第28節・対ハイドゥク・スプリト戦。しかし、この試合でBBBは発炎筒を投げたサポーターを連行する警官隊に過度な反応を起こして暴徒化。警官一人が失明し、サポーター一人が銃弾で重傷を負うなど、近年で最悪の結末を迎えました。この事件を機にクロアチア警察は大規模な捜索をはじめ、メディアも警察が提供する容疑者の映像や写真を公開するなどフーリガニズム撲滅を手助け。これにBBBは20年前の時よりも酷い人権無視だと反発し、彼らにとっても祝うべき13日の対カルロヴァッツ戦をボイコットすることに決定しました。BBBのリーダーの一人は皮肉を込めてこんな発言をしています。
「我々"フーリガン"のせいでスタジアムに行くことができない人々のために、我々がボイコットすることで試合に行くチャンスを与えようじゃないか。フーリガンが来ないと聞けば、マクシミールは満員になるだろうな」
(写真はスタジアム前に立つ、志願兵でなくなったBBBの慰霊碑)

入場料はタダな上、ディナモの歴史を飾るOB達が「ディナモ82年組」と「ディナモ90年組」に分かれて戦う事前試合も企画されていました。ボバンやシュケルといった選手は参加しなかったものの、ザイェッツ、ムリナリッチといった名選手やパナディッチ、ムイチン、ツヴィタノヴィッチ、ムラデノヴィッチ、シュクリニャールといったJリーグ経験者まで昔のスターが勢ぞろい。しかし、キックオフ時にはわずか3人。60分間の試合終了時でも100人ほどしか見届けませんでした。クロアチア・リーグ史上126得点の記録を残すツヴィタノヴィッチがハットトリックを決めるなど、90年組が5-1で勝利しています(元Jリーガー達の写真はこちら)。

nogomet-160386.jpg17時のキックオフの頃に集まった観客はわずか500人。それも冷やかしで訪れた若者がかなりいました。ここ4節でディナモは2分2敗と勝利なし。この春は全ての歯車が狂い、ユルチッチ監督が何度もベンチから声を張り上げて指示を送ったところでも選手達には届きません。ベテランのロベルト・コヴァチはこうぼやきます。
「幾ら頑張ったところでも、どうもこうもいかないんだ。どの試合でも苦しみ、相手を上回れやしない。理由? そんなの分からないよ。タイトルが確定する以前から、どれだけチームメイトに叫んだところでも意味がないって分かったよ。こんなチームじゃ客観的に見てもヨーロッパの舞台じゃ勝てやしない」
建設的な報道など好まないメディアは連日のようにディナモのプレー内容を叩き、そしてユルチッチ監督を叩き続けることで勝利者のプライドをずたずたに切り裂きました。格下のカルロヴァッツ戦でも空中分解したチームを象徴するかのような失点を喫します。
開始3分、MFパミッチの左CKをニアでMFシュテファノヴィッチがダイビングヘッドで合わせると、ボールは誰にも遮られることなく、あっさりとディナモのゴールに吸い込ます(写真)。無警戒だったチームメイトに激怒するGKブティナに対してスタンドの若者は心無い野次を飛ばし、それにブティナが何度も激高する場面が見られました。観客が少ない分、あらゆる野次がストレートに選手に届くんですよ。幾らゲームをコントロールしても得点を奪えないディナモに痺れを切らし、相手カルロヴァッツの応援すら始まることも。この日はMFモラレスがチリ代表の遠征に参加し、FWマンジュキッチは膝の故障で欠場したことも得点力不足に影響しました。

nogomet-160387.jpg後半からFWスレピチュカに代えて、18歳のFWクラマリッチを投入。スピードのある彼が左に張ることでロングボールやドリブル突破などの変化が加えられ、58分、MFバデリがペナルティエリアでドリブルで3人を引きつけてから左でフリーのクラマリッチにラストパス。リーグ・カップ合せて10得点目となるゴールをクラマリッチが決めて同点に追いつきます(写真)。
「自分は監督が望むような"キラー"タイプのストライカーじゃない…」
と最近のインタビューでこぼすほど、クラマリッチはまだまだ自信の無さが目立つストライカーですが、期待の大きさから「9番」を背負う選手です。シーズン後半は結果を求めるメディアの圧力から、ユルチッチは彼に満足な出場機会を与えられずにいましたが、来季は安易な外国人獲得で彼の芽を潰すことなく飛躍させるのが監督の役目となりましょう。

選手達は勝利の意欲は見せたものの、それから30分間はネットを揺らすことはできず。一人一人のオフ・ザ・ボールの動きが少なく連携で崩す場面もなければ、クロス攻撃を仕掛けてもヘディングに強いストライカーおらずに跳ね返されてばかり。ミドルシュートの精度は低いか、相手GKの好セーブに阻まれる、といった光景はこの春に何度も繰り返されてきました。ホイッスルが鳴った後、ドローに喜ぶカルロヴァッツの選手達と対照的に、ディナモの選手達は一様に暗い表情を覗かせました。

nogomet-160390.jpg試合後はピッチに台座が設けられ、表彰式が始まりました。ユルチッチ監督に「ほら!」と促されて選手達は重い腰を上げ、クロアチア・サッカー協会のスレブリッチ事務総長からメダルを受け取りました。最後にキャプテンのコヴァチに優勝トロフィーが授けられ、一本のシャンパン以外は紙吹雪もなく、ささやかな拍手のみのエンディングとなりました。世界中探したところでも、ここまで寂しく惨めなリーグ優勝の祝福はないでしょう。
「私は四度、国内リーグ優勝を経験したが、これほど悲しい優勝は初めてだ。こんな終わり方をしてしまったことを驚いているし、ようやく終わってくれたことを神様に感謝しているよ」
このようにコヴァチはコメントを残しています。またセレモニーでも野次を飛ばされたユルチッチ監督は右手にメダルを高々と掲げ、"ほらどうだ。敬意を払え"とのパフォーマンスすら見せました。(写真)
試合後の会見でユルチッチ監督は続投の意思を見せ、報道陣も誰一人、辞任に関する質問を飛ばしませんでしたが、来週月曜日のフロントの会議をもってして彼の運命が決まります。既にフロントは後任監督探しを始めており、クロアチア代表アシスタントのニコラ・ユルチェヴィッチに打診したものの断られ、最新のニュースではジェリェズニチャールでボスニア二冠直前のアマル・オシムの名前が挙がっています。

今季のディナモ・ザグレブは30戦18勝8分4敗の、得点70失点20。弱小チーム相手に強く、上位4チーム相手には1勝2分3敗と散々な結果でした。貯金だけでタイトルを奪えた感の否めないシーズン。とりわけ後半の失速は酷く、優勝してもフラストレーションだけしか残らないラストだったかもしれません。

ライバルのハイドゥク・スプリトはシーズン前半は7位に甘んじたものの、年明けは高齢のポクレポヴィッチ監督がチームをよくまとめ、守備的なサッカースタイルは"塹壕"とまで揶揄されながら13試合で勝点30を奪うことで、カップ戦優勝と共に目標に掲げた2位でフィニッシュしました。来年はクラブ創設100周年を迎えることでリーグ優勝が命題ですが、フロントは殊勲者のポクレポヴィッチ続投をはっきりさせてないのが気がかりなところです。

来季のチャンピオンズ・リーグ予選出場権はディナモ、そしてヨーロッパ・リーグ予選出場権はハイドゥクと3位のチバリア・ヴィンコヴチが確定。あともう一チームは4位のシベニクになる予定ですが、クロアチア・サッカー連盟がスタジアムの不備を指摘してシベニクの欧州カップ出場を認めておらず、ドゥーゴポーリェにあるスタジアムを代替地にして申請中です。もし通らなければ5位のカルロヴァッツに出場権が渡されます。

そして降格争いでありますが、最終節で随分と順位に動きがありました。しかしながら、前のレポート「お笑いクロアチア・リーグ」で書いたように、来季のクラブ数が未だに決まっておりません。12クラブなのか、16クラブなのか、それとも14クラブなのか。あらゆる不確定要素が詰まっており、シーズンが終了しても何が何だか分かりません。
「こんなコメディは世界中を見渡したってクロアチアだけだ」
とメディアも嘲笑の的にしています。

最終結果はこちらです。

1. ディナモ・ザグレブ    (勝点62) 【CL予選出場】
2. ハイドゥク・スプリト        (58) 【EL予選出場】
3. チバリア・ヴィンコヴチ      (57) 【EL予選出場】
4. シベニク              (50) 【EL予選出場?】
5. カルロヴァッツ           (47) 【EL予選出場?】
6. オシエク              (47)
7. スラヴェン・ベルーポ       (43)
8. ロコモティーヴァ         (42)
9. リエカ                (40)
10.ヴァルテクス・ヴァラジディン (36) 【資格停止?】
11.イストラ1961           (35)
12.ザダール              (34) 【降格? 入替え戦?】
13.インテル・ザプレシッチ      (33) 【降格?】
14.ザグレブ              (33) 【降格?】
15.メヂムリエ              (29) 【降格?】
16.クロアチア・セスヴェッテ     (14) 【降格】


最後に得点ランクを紹介しておきましょう。

nogomet-160391.jpg18ゴールで得点王に輝いたのが、元クロアチア代表の35歳のベテランFW、ダヴォール・ヴグリネツ(ザグレブ:写真)。スナイパーというべきゴール感覚で、一年を通して降格争いをしてきた若いチームを引っ張り続けました。クロアチア・リーグ通算ゴールも歴代2位の116ゴールまで伸ばし、ツヴィタノヴィッチの記録まで残り10ゴールまで来ています。
悔やまれるのはディナモのMFペドロ・モラレス。シーズン前半は13ゴールで得点王を独走していたものの、後半は怪我や故郷チリの地震の影響で1ゴールも決められませんでした。また、元ガンバ大阪のニーノ・ブーレが14得点で4位タイにつけています。

18ゴール:ダヴォール・ヴグリネツ(ザグレブ)
17ゴール:セニヤド・イブリチッチ(ハイドゥク)
15ゴール:アシム・シェーヒッチ(イストラ)
14ゴール:ニーノ・ブーレ(ロコモティーヴァ)、マリオ・マンジュキッチ(ディナモ)
13ゴール:ペドロ・モラレス(ディナモ)、ボヤン・ゴルボヴィッチ(メヂムリエ)
11ゴール:ミラン・バデリ(ディナモ)、ミリエンコ・ムムレク(ディナモ)、エルミン・ゼッツ(シベニク)
10ゴール:アドミール・ヂャロヴィッチ(リエカ)


posted by 長束恭行 |00:59 | サッカーニュース | コメント(3) |
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2010年05月07日

お笑いクロアチア・リーグ

先週土曜日にディナモ・ザグレブが5シーズン連続のリーグ優勝。そして今週水曜日にはクロアチア・カップ決勝第2戦が行われ、ハイドゥク・スプリトがシベニクを初戦に続いて下して(2-12-0)、5年ぶりのタイトルを獲得しました。(ちなみに第2戦ではオシムが観戦していました)

となると、続いて注目すべきはリーグの降格争いになるわけですが、驚くなかれ、いまだに幾つのクラブが降格するかが分かっていません。同時に幾つのクラブが二部から昇格するかも「?」。リーグ終了まで残る試合は2節だけ。日本人には理解不能なクロアチア人の無計画っぷりがサッカーを通しても垣間見えます。今日はそんなレポートを。

まず、現時点の下位の順位を記しておきましょう。

10位 イストラ        (勝点31)
11位 ザダール          (31)
12位 ザグレブ           (30)
13位 ヴァルテクス        (30)
14位 インテル・ザプレシッチ  (30)
15位 メヂムリエ          (26)
16位 クロアチア・セスヴェッテ (14)

nogomet-158418.jpg昨季の一部リーグは12クラブ。そして今季から16クラブに拡大したクロアチア・リーグ。独立以降の19シーズンで、猫の目のようにレギュレーションを変更すること「13回」。リーグにおけるクラブ数の増減も目新しい話ではありません。
一部リーグの全クラブが加盟する「クロアチア一部リーグ協会」の当時の会長イゴール・シュティマッツ(写真)の主導の下、16クラブに拡大することが決まったのは昨年4月。表向きの理由は「小さな街のクラブでも一部リーグに参加し、また若手の出場機会を増えることでサッカーの裾野を広げる」というもの。少数精鋭でレベルの高いリーグを欲するディナモは「10クラブへ縮小」を主張したものの、ハイドゥク出身のシュティマッツが一部残留を欲する他の小クラブをとりまとめることでリーグ拡大の合意を取りつけたのです。

しかし、蓋を開けるとリーグのレベルは低下。スタジアムのインフラ状態も壊滅的なため、観客離れに拍車が掛かりました。例えばシーズン前半のデータを挙げれば、平均観客は昨年の3074人から2010人まで減少しています。スタジアムの多くが客席に屋根もなければ、常設のトイレもなし。粉吹く椅子に座れば服は真っ白。フーリガンとの危険も隣り合わせ…。
例えば、ディナモ・ザグレブの平均観客は下駄を履かせて3500人ほど。これはスタジアムのキャパシティの1/10に過ぎません。観客ははオーストリアのEBELリーグに加入したアイスホッケーのメドヴェドシュチャクに完全に奪われてしまいました。
(※メドヴェドシュチャクの試合では6000人のキャパシティの体育館が常に満員。これまでアイスホッケーに無知だったザグレブ市民が、スペクタクルと安全性を確保された会場に家族で足を運び、一大ブームとなっています。参考動画)

「揺れ戻し」はわずか一年で起こりました。動いたのはクロアチア・サッカー協会です。ヴラトコ・マルコヴィッチ会長は以前より「10クラブ制」を希望しており、今年2月、サッカー協会は「2011/12シーズンから12クラブ、2013/14シーズンから10クラブに縮小」というプランを提示。各クラブに対しては3月31日を期限として、一部リーグ参加のライセンス申請を求めました。
一部リーグ協会は「2011年以降のクラブ数削減」に反対の姿勢を示したものの、まずは来シーズンに向けて「16クラブ制」を維持できるよう各自がライセンス承認に励むことになりました。そして、もし16クラブが揃わないようならば、来季からでも12クラブに移行することに同意したのです。

ライセンス取得の条件は、インフラや運営・財政面など多岐に渡っています。現在一部リーグに所属する16クラブに加え、二部リーグのスプリト、フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツ、モソール、ソリンが申請。ただし、二部から一部への昇格条件は「5位以内に入ること」。最低でも1クラブを入れ替え、最大で3クラブを入れ替えるはずでした。

本当の混迷はここからです。まず最初の申請でライセンスが認められたのは、ディナモ、スラヴェン・ベルーポ、ザグレブ、インテル・ザプレシッチの4クラブのみ。思いのほか、サッカー協会の判断は厳しかったのです。落とされた各クラブは再申請し、一ヶ月間に渡ってあらゆる政治力を利用することで5月1日の最終判断を待ちました。その間もリーグは進行。当初の予定から遅れること3日後、5月4日に承認されたのは以下の16クラブでした。

(現在一部…14クラブ)
ディナモ、スラヴェン・ベルーポ、ザグレブ、インテル・ザプレシッチ、ハイドゥク、チバリア・ヴィンコヴチ、ザダール、オシエク、イストラ、カルロヴァッツ、ロコモティーヴァ、シベニク、リエカ、クロアチア・セスヴェッテ
(現在二部…2クラブ)
スプリト、フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツ

一部リーグで最下位のクラブ(※クロアチア・セスヴェッテに確定)は必ず二部降格を考えれば、来季はどうやっても16クラブが揃うことがありません。一部のクラブで申請を落とされたのは、ヴァルテクス・ヴァラジディンとメヂムリエ。それぞれが財政難で、選手やスタッフに未払給与を抱えているのが申請を弾かれた理由です。降格争いの中を戦う両クラブは直ぐにサッカー協会へ抗議したものの、承認されるかは微妙な状況です。

nogomet-158419.jpg最終的に(その最終がいつかは不明ですが…)16クラブが揃わないとなった場合、当初の約束では12クラブまで減らされます。とばっちりを食らうのがその他の下位クラブ。つまり、11位以下(もしくは12位以下)がばっさりと落とされるわけです。
少なくとも「14クラブ制」にしてくれ、と嘆く声が下位のクラブから上がりつつあります。サッカー協会と対立し、16クラブ拡大の音頭を取った現ザグレブ監督のシュティマッツも
「こんな混乱から抜け出すためには、ヴァルテクスとメヂムリエにライセンスを認め、入れ替えは一チームずつにすればいい」
と、自ら率いるクラブが二部に落ちないよう主張しています。

また二部のクラブの間も悲喜こもごもです。首位のスプリトは昇格を決めたのに対して、フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツは現在6位。残る4試合で「5位以内」の条件を満たさねばなりませんが、財政面の問題を特別に見逃してくれました。フルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツは名物会長スパイッチ(故人)が退役軍人の娯楽のために組織した"クロアチア愛国主義者"という名のクラブ。ですので、サッカー協会でも政治力がしっかりと働いたと言えましょう。今は5位以内に入ることのみに集中し、故スパイッチに報いるために8年ぶりの一部復帰を目指します。

最も気の毒なクラブがスプリト郊外にあるソリン。創設以来、二部で19シーズン戦ってきた唯一のクラブであり、現時点では3位。ようやく初昇格が目に見えたところでの承認拒否でした。理由はスタジアム。もし本拠地が承認条件に満たさない場合は、他のスタジアムを間借りすることも可能です。例えば、ロコモティーヴァはディナモのマクシミール・スタディオン、イストラはリエカのカントリーダ・スタディオン、スプリトはハイドゥクのポリュウド・スタディオンの使用が認められました。そんな中、ソリンの本拠地は一部開催の条件に見たず、4km離れた隣町のドゥーゴポーリェで昨年オープンした最新鋭スタジアム「Stadion Hrvatskih Viteza」を本拠地として申請。ソリンとドゥーゴポーリェの街は友好関係にあり、同じ郡に属しているわけですが、サッカー協会は「自治体が違う」という理由で申請を拒否してしまいました。ソリンのニンチェヴィッチ会長は
「これがクロアチア・サッカー界の現実だ。私達は小さなクラブだし、誰もサッカー協会で後ろ盾になってくれなかった。サッカー協会は大きなクラブよりも、小さなクラブにもっと気をかけてくれる必要があるのに…。マクシミールでプレーしているロコモティーヴァは何だって言うんだ。誰もがあそこも問題を知っているだろう?(※ロコモティーヴァはディナモ・ユースが多数送り込まれた"ディナモB"チーム)」
と肩を落としました。申請が認められなかったワケは色々と語られており、「10クラブ制」を望むディナモのズドラヴコ・マミッチ副会長の圧力が掛かったとも噂されています。ソリンは最初の申請拒否がされた時点で、余りの失望から再申請を諦めてしまいました。例えば、リエカとイストラは県すら違いますし、ロコモティーヴァとディナモは同じザグレブ市でも7km離れています。

ここまで頑張ってまとめてみましたが、私自身、この先どうなるのかさっぱり読めません。リーグ終了まで6日しかないのに来季のクラブ数すら決まらず、五里霧中で降格争いをする恐怖。誰もがクロアチア・リーグの運営ぶりを「アマチュアリズム」の一言で片付けます。比較することすら失礼千万ですが、いかにJリーグが優れた運営をしているかを分かって頂けることでしょう。


p.s.
Jリーグでは「秋春制」への移行が検討されていますが、クロアチアでは逆に「春秋制」への移行が、一部リーグ協会現会長ロベルト・マルクリンを中心に語られています。
冬の間、クロアチア・リーグは気候のせいで中断せねばならず、それがあらゆる活動の制約になっています。例えば、キャンプを年に二度も行わねばならないこと、クラブは中断期間もコーチや選手に給与を支払わねばならないこと、真夏でもナイター開催ならば観客増が見込めることなどが挙げられています。ところ変われば…の良い例ですね。


posted by 長束恭行 |03:40 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2010年05月05日

5月の親善試合を控えるクロアチア代表メンバー

5月4日、今月後半に三試合の親善試合を控えるクロアチア代表メンバー21人が発表されました。
19日にオーストリア(会場:クラーゲンフルト)、23日にウェールズ(オシエク)、26日にエストニア(タリン)と対戦する予定です。

今回のメンバー発表において、ロベルト・コヴァチに続いてイヴィツァ・クリジャナッツの代表引退が明らかにされました。
ユーロ2008後に代表入りし、センターバックとして11試合に出場したクリジャナッツですが、代表活動で4度に渡って怪我をしてきた事実を彼が所属するゼニト・サンクトペテルブルクが好ましく思っておらず、本人も悩んだ末に"健康上の理由"で代表を退くことになりました。

nogomet-157846.jpgその代わりにセンターバックで新選出となったのが、ハイドゥクのユーリツァ・ブリャト(写真)。ハードな守備が売りですが、心理面の抑制が効かずにカードをもらいがちなDFで、本人すらも驚く代表召集選出となりました。
より高く選手を売却したい古巣ハイドゥクのため、ビリッチ監督が配慮した可能性も充分に考えられますが、センターバックの層はやたらと薄いだけにブリャトにも出場チャンスはかなり得られるかもしれません。

またハイドゥクからは左SBのイヴァン・ストゥリニッチも召集。彼は昨年11月のリヒテンシュタイン戦で初召集が掛かったものの、怪我で参加することができませんでした。ですので、今回が実質の初召集となります。現在のクロアチア最大の弱点である左SBを埋められる選手は、もうストゥリニッチしかいないと思うだけに3試合を通してしっかりとテストして欲しいものです。

また、FWニコラ・カリニッチ、MFイヴァン・ラキティッチ、DFデヤン・ロヴレンはU-21代表に加わり、同カテゴリーの欧州選手権予選・対スロバキア戦(5/19、ヴァラジディン)に出場する予定です。またA代表召集の声が高く、レバークーゼンへの移籍が決まったばかりのDFドマゴイ・ヴィーダもU-21代表に加わりました。

FWイヴァン・クラスニッチは移植した腎臓の定期健診、MFニコ・クラニチャールとDFヴェドラン・チョルルカは怪我のために不選出。またGKのスティペ・プレティコサとヴェドラン・ルニェはメンバー入りしたものの怪我から完全に復調しておらず、状況次第では国内リーグからのGK追加召集を考えています。

またFWイヴィツァ・オリッチとMF/DFダニエル・プラニッチはCL決勝が22日にあるためにエストニア戦のみ合流。MF/DFダリヨ・スルナとMFオグニェン・ヴコイェヴィッチは、もしウクライナ・リーグがプレーオフに持ち込まれた場合はオーストリア戦を欠場。またFWマリオ・マンジュキッチは先のハイドゥク戦で膝の靭帯を痛めたため、メンバーに名を連ねながらも代表参加は微妙です。

会見でスラヴェン・ビリッチ監督は
「この時期の親善試合は重要でないように見えるかもしれないが、直ぐにユーロ2012予選が訪れる。その準備をするためにも鍵を握る試合となるだろう。この次の召集は8月の短い期間しかないからね。また対戦相手の国にとっても同じように予選準備のための重要な試合となるはずだ。それだけに我々はこの戦いに多くを期待している」
とコメントしています。

代表メンバーは以下になります。

GK:
スティペ・プレティコサ    (スパルタク・モスクワ/ロシア)
ヴェドラン・ルニェ      (ランス/フランス)
ダニイェル・スバシッチ   (ハイドゥク・スプリト)
DF:
ダリヨ・スルナ        (シャフタール・ドネツク/ウクライナ)
ヨシップ・シムニッチ    (ホッフェンハイム/ドイツ)
ダリオ・クネジェヴィッチ  (リボルノ/イタリア)
フルヴォイエ・チャレ    (トラブゾンシュポール/トルコ)
ユーリツァ・ブリャト     (ハイドゥク・スプリト)
イヴァン・ストゥリニッチ   (ハイドゥク・スプリト)
MF:
ルカ・モドリッチ         (トットナム・ホットスパー/イングランド)
ダニイェル・プラニッチ      (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
オグニェン・ヴコイェヴィッチ (ディナモ・キエフ/ウクライナ)
ニコラ・ポクリヴァチュ     (レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)
トミスラフ・ドゥイモヴィッチ   (ロコモティーバ・モスクワ/ロシア)
ドラゴ・ガブリッチ        (トラブゾンシュポール/トルコ)
FW:
イヴィツァ・オリッチ       (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
エドゥアルド・ダ・シルヴァ  (アーセナル/イングランド)
ムラデン・ペトリッチ      (ハンブルガーSV/ドイツ)
マリオ・マンジュキッチ    (ディナモ・ザグレブ)
マテ・ビリッチ          (スポルティング・ヒホン/スペイン)
ニキッツァ・イェラヴィッチ   (ラピッド・ウィーン/オーストリア)

本来はワールドカップから一新されるはずだったユニフォームですが、クロアチアは予選落ちで出場できず。そんな中、3日にホーム用の新ユニフォームがザグレブのナイキショップで、ビリッチ監督やチームスタッフをゲストにお披露目されました。今年からホーム用はこんなユニフォームになります


また同時に発表されたU-21代表のメンバーも記しておきます。今回は怪我人が多いため、ドラジェン・ラディッチ監督は現U-19代表の選手も追加させています。スロバキア戦は予選1位を賭けた重要な戦いで、私も都合さえ合えばヴァラジディンまで取材に行こうと思っています。

GK:
イヴァン・ケラヴァ      (ディナモ・ザグレブ)
マリヤン・アントロヴィッチ (チバリア・ヴィンコヴチ)
DF:
デヤン・ロヴレン       (リヨン/フランス)
ドマゴイ・ヴィーダ      (オシエク)
トミスラフ・バルバリッチ   (ディナモ・ザグレブ)
シーメ・ヴルサリコ      (ディナモ・ザグレブ)
ゴラン・ヨジノヴィッチ    (ハイドゥク・スプリト)
ロベルト・プンチェツ     (ヴァルテクス・ヴァラジディン)
エルヴィス・コカロヴィッチ (スラヴェン・ベルーポ)
MF:
イヴァン・ラキティッチ  (シャルケ/ドイツ)
イヴァン・ペリシッチ   (ブルージュ/ベルギー)
マト・ヤヤロ        (シエーナ/イタリア)
ミラン・バデリ       (ディナモ・ザグレブ)
ズボンコ・パミッチ    (カルロヴァッツ)
ダミール・クレイラッハ  (リエカ)
ベサルト・アブドラヒミ  (ザグレブ)
デヤン・シュコルニク  (マリボル/スロベニア)
ミルコ・オレムシュ    (ハイドゥク・スプリト)
FW:
ニコラ・カリニッチ     (ブラックバーン/イングランド)
アンドレイ・クラマリッチ (ディナモ・ザグレブ)
アンテ・ヴクシッチ    (ハイドゥク・スプリト)
イヴァン・サンティーニ  (ザダール)


posted by 長束恭行 |04:10 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2010年05月03日

誰も祝わぬディナモのリーグ優勝/サポーターは大暴動、監督はブチ切れ会見

5月1日、クロアチア・リーグ第28節で首位ディナモ・ザグレブが宿敵の2位ハイドゥク・スプリトと対決しました。
スコアレスドローの勝点1を拾ったディナモが5シーズン連続の優勝を決めたのにもかかわらず、スタジアムの内外で暴動が発生。試合後の監督会見も殺伐としたものになりました。本来は誰もが祝うべき優勝なのに、誰もが鬱憤を爆発をさせる狂乱のダービーとなりました。

nogomet-157581.jpg開幕以来、圧倒的な成績で首位を独走しながら、ここ二節は自力優勝を逃したディナモ。クロアチア・カップ準決勝でハイドゥクに敗れたこともあり、クロアチアのメディアはディナモのクルノスラフ・ユルチッチ監督を更迭させるべく一大キャンペーンを張りました。
「今のディナモはプレーそのものが存在しない」
「若手を育てるはずが一向に育たない」
「監督は自分のミスを全く認めない」
「彼のままでは来季の欧州進出は無理だ」
などなど。2位以下を多く引き離す状況下で選手のモチベーションづけは難しい一方で、ボールポゼッションを重視しながらも緩急の少ない今の攻撃パターンでは自陣を固める相手の守備を崩せずにいます。シーズン前半で得点とアシストそれぞれリーグトップだったMFモラレスが、祖国のチリ大地震以降は調子が取り戻せないのも昨今の不振に繋がりました。
ハイドゥクはクロアチア・カップ決勝を水曜日に控えており、このダービーは無理せずに5バックでゴール前を固めてのドロー狙い。その術中がズバリとはまり、シナリオ通りに試合はスコアレスドローとなりました。試合内容に関しては特筆すべきことがないため、今回は省略します。

優勝が決まった瞬間、ディナモの選手達はピッチ上で抱き合い、喜びから飛び跳ねましたが、ライバルに勝てなかったことと余りにお粗末な内容に観客は大ブーイングを浴びせました。優勝でブーイングって考えられますか? カップ戦を含めた今季のハイドゥク戦の成績は2分2敗。溜飲を下げるはずが煮え湯を飲まされたことに観客はいらだちは隠せませんでした。

フラストレーションが形になって現れたのは最後だけではありません。試合開始25分で既に「ホモ野郎たちめ、プレーしろ!」のコールが起こり、30分にはバックスタンドで発炎筒が炊かれます。ハーフタイムに入って間もなく、発炎筒を炊いたバックスタンドのBBB(サポーター)と警官隊の最初の衝突が発生。すると、より過激なBBBが集まる北側のゴール裏に伝染し、はがした椅子や発炎筒、爆弾と何ら変りない大型の爆竹を近くの警官隊に次々と投げつけました。
nogomet-157582.jpgこれまで私はあらゆるサポーターの暴動を目にしましたが、今回のものが最悪。警官隊の周囲は炎に包まれながらも警棒を使って応戦。20分間に渡って"戦闘"が続き、15人の警官と6人のBBBが負傷してしまいました。うち警官一人は炎が目に入って失明。鼓膜が破れた警官もいたとのこと。試合後はスタジアム北の道路で30分近くにわたって場外戦となり、パトカーや公共交通機関(トラム、バス)、カフェのテーブルや椅子、植込みなどを次々と破壊するBBBと警官隊が衝突。その際に割れたボトルを使って警官からピストル奪おうとBBBと警官が揉みあいとなり、誤射された銃弾がBBBの胸に当たって重傷を負うなど、かつてない結末を迎えました。
(バックスタンドとゴール裏で起きた暴動の動画はこちら。またクロアチア警察が公開した北スタンドにおける暴動の動画はこちら)

クロアチアではこの試合での暴動がトップニュースで伝えられ、ヤドランカ・コソル首相は
「クロアチア政府はサポーターのフーリガニズム問題に対して決断を迫られている。警察の権限を強めるよう法律を改正し、フーリガニズムを徹底的に取締るつもりだ」
と声明を出し、スタジアムで暴動を働いた者に対して罰金の引き上げと最大60日の懲役刑に処す方針を明らかにしています。

試合後の記者会見を終え、私がスタジアムを出た時には既に場外戦が終わっており、警官による交通整理と業者の掃除が行われていたのですが、その代わり、記者会見の場で「ユルチッチvs.メディア」との戦闘を目の当たりにしました。正しく言えば、これまで挑発を続けていたメディアに対し、ユルチッチ監督(写真右)が感情剥き出しに怒りをぶちまけたのです。"私の前にマイクを集めてくれ"と促したあと、強烈なモノローグが始まりました。
nogomet-157584.jpg「私はクロアチアの王者になった。この一ヶ月間、私に関して嘘ばかりを書いて侮辱し続けてきたが、今度はお前達が私の話を聞く番だ!
今から一年前、私はディナモの監督を引き受けた。誰もがハイドゥクを追い越して優勝するなんて信じてなかったチームを私は二冠に導いた。そして今回の優勝を含めて三冠だ! ヨーロッパでも良い戦いをした。アヤックスやアンデルレヒトといった強豪の中、ヨーロッパ・リーグにおけるの勝点6は今までにない成功だぞ! 無観客試合が3試合あったのも忘れるな。
またこの冬にはデヤン・ロヴレンを1000万ユーロで売却した。私が監督を引き受けた時の彼がどうだったから知っているか? 控え選手だったじゃないか! 今では3人の選手を500~700万ユーロで売ることすら可能だ。今日の試合を見るために集まった30人ものスカウトは愚かな奴らだと言うのかね?
今シーズン、一部リーグで初めてプレーする5人のユース選手を私はトップチームに送り込んだ。怪我人も多かったし、モラレスが地震の後でスランプに陥ったことをお前達は誰一人指摘しなかったじゃないか。ディナモの監督になるということは、完成された選手を指導することだけじゃないんだ。若い選手達を戦術的にも体力的にも育てる、地道な"炭鉱仕事"であることを理解しているのか? 彼らにチャンスを与え、第一の目標であるリーグ優勝を達成した。それなのにお前達は全てを忘れ、我々を侮辱し、踏みつけてきたんだ。嘘で塗りたくり、私の家族まで傷つけやがって…。誰も喜べないような今日の雰囲気を作ったのはお前達だ。一年間に渡り、私や選手達に関して何一つ良いことは書いて来なかったんだから!
nogomet-157585.jpgこんな会見の後、お前達がもっと私のことを嫌うのは分かっている。記者の中には友人もいるが、それでも嘘を書き立てるのを止めることはできないし、何も変えられやしない。我々はリアリティショーのような国に住み、君達の編集部も三ヶ月おきに新たな顔を必要としているのは認識している。古いものは退屈になるだろうしな。しかし、他人の仕事、他人の汗をちゃんと尊重してくれ…。適正がないのにサッカーを書くジャーナリストがたくさんいる。これまでサッカーもやったことがなく、サッカーで生きたことのないようなジャーナリストだ。自分が書いたことに責任を持っているのか? 批判は専門的なレベルでなく、個人的な恨み辛みしかない! ただし、ジャーナリストの中に例外はいる。彼らには感謝している」

5分以上は続いたでしょうか(動画)。ユルチッチ監督の迫力に押され、その後に反論するジャーナリストは一人もいませんでした。その代わりに隣のポクレポヴィッチ監督がこう助け舟を出しました。
「ここにシャンパンが運ばれないのが残念だ。ディナモはクロアチア王者になったのだから、そんな扱いこそが相応しいはずなのに。ジャーナリストは極端すぎると思う。批判はあって然るべきだが、非難であってはならない。ユルチッチがディナモで成し遂げた仕事を君達がまったく評価しないことが残念だ。チーム作りはプロセスであり、時間が掛かるものなんだよ。今は祝うべきなのに全員が不快な気持ちになってしまっている」

nogomet-157586.jpgユルチッチ監督の最終的な運命を握るのはズドラヴコ・マミッチ副会長(写真)ですが、彼も試合後にメディアを批判し、続投の姿勢を見せました。
「もうクロアチアから移住する必要がある! お前らメディアがクロアチアのスポーツ界と社会を潰したんだ。全てはメディアに罪がある。ディナモが5シーズン連続で優勝したのに、客席からはブーイングを浴びる理由を誰も私に説明できないだろう。スタジアムが壊され、試合後も外で暴動が起こる理由を誰も私に説明できないだろう。全てはメディアが悪いんだ。
誰一人タイトルを祝う気分になれなければ、スポーツを第一に考えることもしない。お前らには力があり、あっさりと私を叩ける。人々が書いたものを読むことで、常に悪意や対立意識を人々に刷り込んでいるんだ。
監督を変えるつもりはない。ユルチッチは二年間に渡ってチームをまとめた監督だ。監督交代ばかりが解決じゃない」

クロアチアの主要メディアは月曜から再びユルチッチ監督を叩き始めています。姑息なのは、市民の声やディナモの監督のポストに関心を持つ他の指導者の声を利用して、いかにも自分達が正論のように見せかけることです。そしてこのように批判を重ねています。
「悪いサッカーをしていることすら嘘だと言うのか?」
「観客を騙したのは監督や選手で、だからブーイングを受けたんだ」
「メディアを批判するユルチッチはまるで"小マミッチ"だ」
「破裂した風船のようなユルチッチを変えられるのはマミッチだけだ」

私の考えとしては、何があってもユルチッチ監督は続投すべき。手を抜くことを嫌う熱心な指導者で、今は幾ら停滞した内容であっても、継続こそが今のディナモに最重要だと思うからです。
クロアチア・リーグで2年連続優勝に導いた監督はユルチッチのみ。それほどクロアチアのサッカー界は継続性に欠けています。ユルチッチは若さ故にメディアと上手くやっていけませんが、彼を育てるのも、そして選手やサポーターを育てるのもメディアの役割です。短絡的な記事ばかりでなく、メディアこそが継続性を問われているのではないか? ユルチッチ監督の言葉を聞きながら、メディアの端くれとして自ら肝に銘じたダービーでありました。


posted by 長束恭行 |22:23 | サッカーニュース | コメント(2) |
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