2010年03月31日

日本代表に挑む今回のセルビア代表とは?

ここ2日間、キプロスのリマソールで行った元ボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFドゥシャン・ケルケズのインタビュー起こしを励んでいました。私が所属するクロアチア・メディアの「Sportnet」に向けたものだけにクロアチア語で原稿を書くという作業をしたのですが、日本語に訳すのと比べて一苦労も二苦労もありました。
nogomet-150639.jpgケルケズはセルビアの首都ベオグラード生まれで、父方がボスニア西部のボサンスキ・ペトロヴァッツ出身のセルビア人、母方がベオグラードのセルビア人ということで、生まれも育ちもセルビア語使用になります。セルビア語とクロアチア語は文法や表現に差はあれど日本でいう方言の範疇。ですが、テープ起こしでセルビア語→クロアチア語となると、さほど楽な作業ではありません(もちろん、方言が強いザクレブ周辺やダルマチア地方出身のクロアチア人や、きつめのボスニア方言と独特な言い回しをするオシムのテープ起こしも辛いですが…)。
今回はケルケズがはっきりとした口調で話してくれる人だったのと、Sportnetの編集者が上手く手直ししてくれたきっかけで、彼のロングインタビュー記事が表舞台に出ることとなりました。今回の記事はクロアチア人の同僚や読者コメントの反応も良く、それなりの達成感を覚えています。近いうちに"footballista"誌でもキプロス取材を取り上げてくれることになり、いずれは私のHPでも詳しくキプロス・レポートを書こうと思います。
(写真はキプロスのAELリマソールの練習光景)

さて、クロアチア以外にしばしば隣国の情報も収集しているのですが、今回はセルビアについて少し書きましょう。

4月7日にセルビア代表が来日し、日本代表と大阪で親善試合を行いますが、そのメンバーが代表歴の少ない国内組ばかりになりました。ラドミール・アンティッチ監督すらも来日しない、ということで日本では"舐めている"という論調も見られるものの、そもそも国際Aマッチデイではないタイミングで親善試合を組むことが無茶な話です。その時期は欧州カップの日程も組まれており、年が明けて欧州カップとは無縁の国ですら国内リーグや国内カップが佳境に入り、それら試合の平日開催は当然となっています。ですから、代表に国外組を呼ぶといった行為は100%不可能といっても過言でありません。
セルビアもツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター)とパルチザンとの優勝争いが激しくなっており、遠距離移動を伴う日本との親善試合をクラブ側も敬遠したかったでしょう。そんな中で、国内組ではベストに近いメンバーを組んできたセルビアにも敬意を払うべきだと思います(もちろん日本サッカー協会は彼らにそこそこの招待料は払っているでしょうが)。また、セルビア人のメンタリティを考えれば、観光気分で来ることはないはず。しかし、移動と時差による体力消耗と、1~2回しか合同練習ができない寄せ集めのチームである事実を差し引いた上で試合を見る必要があるでしょうね。「FIFAランク15位のセルビア~」と形骸にすぎないランクでしかチームの強弱を表現できないメディアは当然の如く、完全スルーです。

セルビアのニュースサイトから今回の代表メンバーに関しての情報を集めてみました。試合観戦の参考になれば幸いです。

nogomet-150637.jpg今回、代行で代表を指揮するのは、現在国内8位のヤヴォル・イヴァニッツァを率いるラドヴァン・チュルチッチ監督。彼はメンバー発表に際してこう述べています。
「スポットライトの下で国内リーグを紹介できることを私は望んでいる。これは我々の選手にとっても大きなことだ。多くの選手が初めて国際舞台でプレーするのだからね。メンバー作成の際にはアンティッチ監督のサポートを得た。現時点では最も受け入れられるメンバーだと思っているよ。
メンバー作成の際にはチームバランスについて考慮した。彼らは全ての要求に応えられるような選手たちだ。セルビア・サッカー界の将来でもあるし、近かれ遠かれいずれはA代表のユニフォームを背負っていく選手だろう。
また個人的にはこのチームを率いることが大きな名誉であり、義務だと感じている。セルビア・サッカー協会とアンティッチ監督、テクニカル・スタッフらの信用に応えられることを願っているよ」

今回の代表メンバー18人のうち、ズヴェズダが3人、パルチザンが6人選出されました。
首位ズヴェズダの正GKサーシャ・スタメンコヴィッチが外れたのは現時点でジェリコ・ブルキッチが上だとアンティッチが考えているからで(クラブが拒否したとか、パスポートに問題があるとの情報も)、日本戦での活躍次第ではブルキッチが控えGKとしてワールドカップ・メンバーに選ばれる可能性があります。ですので、彼のモチベーションは相当なものでしょう。
また元セルビア代表のベテラン二人も外れました。セリエで長くプレーしたズヴェズダの主将ニコラ・ラゼティッチ(MF/32歳)が外れたのは太股のケガのため、同じくブンデスで活躍したパルチザンの主将ムラデン・クルスタイッチ(DF/36歳)もケガのために外れました。今回のセルビア代表が年齢的に若いチームだけに、ワールドカップ・メンバーの選出云々に関係なく国際経験が豊富なリーダーを必要とされたのですが、これに関してはチュルチッチ監督の誤算だったようです。
またセルビア国内のメディアは「(メンバーは)最高ではないが、悪くもない」と今回の代表を表現しています。

nogomet-150638.jpgベオグラードで何度か試合観戦したり、昨年のU-21クロアチアvs.セルビア戦も取材したとはいえ、私もそんなに最新のセルビア事情に詳しいわけではありません。僭越ながら注目の選手を挙げるのならば、まず最初はFWデヤン・レキッチ(ズヴェズダ)。今季はリーグで19試合10得点で、昨年11月にA代表にピックアップされた、点で合わせるのが上手い長身FWです。
またU-21クロアチア戦で途中交代ながら印象的なプレーを見せたのが、攻撃的MFのドゥシャン・タディッチ。両足で自在にボールを操り、ドリブルを得意とするチャンスメーカーです。あとはイタリアのクラブが注目する右SBパブレ・ニンコフ、日本戦でキャプテンマークをつける予定の長身ボランチ、ラドサフ・ペトロヴィッチといった辺りです。
(写真の左から二番目がU-21代表でもある守備的MFリュボミール・フェイサ。クロアチア戦ではポジショニングの悪さとスピードのなさを感じました)

現在のクロアチア・リーグとセルビア・リーグは似通った実力にあるので、国内組のセルビア代表がどこまでやれるか、個人的にも興味があるところです。体格差と個人技術のある相手に、日本代表はスピードとコンビネーションを活かした攻撃でどうやって攻略するか。オランダやデンマークと似通った点はセルビアにそう多くないものの、どちらにしろ日本代表にとっては貴重なテストマッチになるでしょうね。


posted by 長束恭行 |19:00 | サッカーニュース | コメント(1) |
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2010年03月26日

狙い通りのスコアレスドロー/クロアチア・カップ準決勝「ディナモvs.ハイドゥク」

24日、クロアチア・カップ準決勝で国内二強のディナモ・ザグレブとハイドゥク・スプリトか対戦しました。初戦はディナモの本拠地、マクシミール・スタディオン。試合開始が平日の17時半ということで客足は伸びませんでしたが、それでも1000人近いトルツィダ(ハイドゥク・サポーター)を含む1万5000人ほどの観客が集まりました。

nogomet-149603.jpgディナモはリーグで4連覇、そしてカップ戦では3連覇するほど国内で牙城を築いているのですが、両チームの直近の10試合の直接対決ではハイドゥクが4勝3分3敗と勝ち越しており、直近の6試合にまで絞ればハイドゥクの4勝1分1敗と大きく勝ち越しています。そんな苦手意識をどう克服するか、ディナモは勇敢な戦いが必要とされるはずでした。

ウィンターブレイク開けのディナモはリーグで3勝1分けとまずまずの成績ですが、ここ3試合は1-0、0-0、1-0と得点力不足に悩んでいます。この日のツートップはマンジュキッチと前節のスラヴェン・ベルーポ戦で華麗な得点を決めたスレピチュカが組むことになりました。センターバックに定着していたクフレが太股を痛めて欠場。重要な試合に特化して起用されるロベルト・コヴァチ(写真中央)が先発出場し、キャプテンマークをつけました。スタメンは以下のようになります(4-4-2)。
GKブティナ-(右から)DFエトー、バルバリッチ、コヴァチ、イバネス-MFバデリ、ヴルドリャク-モラレス、サミール-FWマンジュキッチ、スレピチュカ

スタンコ・ポクレポヴィッチ監督の就任後、内容と結果を伴うサッカーをしているハイドゥク・スプリトですが、前節はDFルビルの信じられないオウンゴールとFWブーレのPKで格下ロコモティーヴァ相手に1-2と初の敗北。ロコモティーヴァが実質の「ディナモB」ということもあり、ハイドゥクとしては本家相手を前に揺らぎ始めました。ポクレポヴィッチ監督が選んだシステムは、いつもの4バックではなくて3バック。それも本職のFWを一人も置かないディフェンシブな3-4-2-1。スタメンは以下のようです。
GKスバシッチ-(右から)DFパンジャ、ブリャト、マロチャ-MFルビル、アンドリッチ、スココ、ストゥリニッチ-トマソフ、シャルビーニ-FWイブリチッチ

この両クラブが対戦する際は常にメディアを通して舌戦や心理戦が繰り返されますが、今回の標的は審判でした。前節にはクロアチアの有力審判がことごとく誤審をやらかしてしまい(ハイドゥクが許したPKシーンも微妙な判定)、どの審判を外すかで綱の引っ張りあいが行われたのです。前節でディナモvs.スラヴェン・ベルーポ戦の笛を吹いた、まだ経験の浅いイゴール・クリジャリッチが選出。彼は滅多にカードを出さず、ファウルも流す審判であることから激しい試合が予想されました。

nogomet-149604.jpg両クラブの選手が入場し、それからコーチ陣が席に付く中、遅れてやってきたハイドゥクのポクレポヴィッチ監督(写真左)がディナモの控え選手全員、そしてコーチ陣と握手する、という微笑ましい光景が見られました。
古き良き旧ユーゴを知る72歳の紳士は「私がこの戦いで望むことは、揉め事ではなく騎士道なのだよ」と語ります。ディナモのユルチッチ監督(写真右)にとってもポクレポヴィッチ監督は恩師の一人。1995年に地方クラブのイストラをポクレポヴィッチが率いた際の選手の一人がユルチッチで、それをきっかけにユルチッチは選手として大きなキャリアを築き始め、ワールドカップ・フランス大会ではクロアチア代表メンバーに選手されたわけです。再会に際しては二人がはち切れんばかりの笑顔を見せ、憎悪ばかりがクローズアップされるダービーマッチで一瞬の安らぎを感じたものです。

パッサーのモラレスとサミールを両サイドに置き、コンビネーション重視のサッカーをディナモは試みるものの、荒れ放題のピッチでは満足にパスが繋がりません。ハイドゥクはしっかりとラインを下げ、キーマンのマンジュキッチにはハードマーカーのパンジャをつけました。ボールは支配下に置けど打開策が見つからないディナモ。両サイドバックのイバネスとエトーも、対戦のトマソフとシャルビーニに気を取られてしまい、満足な攻撃参加ができません。守備を固められてしまうと打つ手がないのは今季のディナモの欠点であり、ユルチッチ監督も「うちにはキラーと呼べるストライカーがいない」と嘆きました。
nogomet-149605.jpg一方のハイドゥクは意図的に相手にイニシアティブに譲り、ゴール前の密集からボールを奪うと、下がり目のイブリチッチ(写真右)に当てて、ウィンガーのシャルビーニとトマソフに展開。テクニックに優れる二人の個人能力に任せようとしました。その策が最初に効を奏したのは13分、パスカットからのカウンターでイブリチッチが左前方のシャルビーニにパスを送ると、得意のドリブルで前へと突っかけ、ペナルティエリア手前から右足でミドルシュート。鋭い弾道でしたが、無失点を続けているGKブティナが弾き返しました。
その2分後、ディナモも反撃とばかり、右サイドのサミールがハーフウェーライン近辺でタックルをかわし、左前方のスペースに走り込むスレピチュカ(写真左)にスルーパス。ボールに追いつき、ペナルティエリアでの切り返しで追いかけてきたマロチャを交わすと右足でシュート。しかし、GKスバシッチが右手一本でシュートを防ぎます。29分にはサミールの右クロスにマンジュキッチがヘディングを試みるも、わずかにボールに届きません。
守りを固めるハイドゥクに空回りのディナモ。試合時間だけが無駄に過ぎていく中、前半41分にハイドゥクは決定的なチャンスを作り出します。ストゥリニッチがドリブルて左サイドを疾走すると、ペナルティエリアで倒されながらも中央フリーのイブリチッチへパス。イブリチッチはワントラップで打ちやすいポジションにボールをコントロールし、ゴール左端を目掛けてシュート。彼の決定力ならばネットに収まっておかしくないものの、ボールは左ポストを逸れてしまいました。

nogomet-149606.jpg後半頭からディナモはモラレスを外し、縦の突破力のあるトメチャクを右MFに投入。リーグでは得点王とアシスト王の両方に輝くモラレスですが、生まれ故郷のコンセプシオン(チリ)が大地震に見舞われ、クラブの許しを得て救援に向かい、チリから戻ってきた以降は身心両面で調子を崩してしまっています。今のディナモの決定力不足はモラレスの不調が陰を落としており、ビッグマッチになればなるほど貧弱さを露呈するサミール一人ではチャンスを作りきれないのが問題です。しかし、トメチャクも昨年末に鼠蹊部を手術したばかりで調子が戻せず、違いは生み出せませんでした。後半も前半とまったく同じ、じれったい展開が続きます。
その一方で両サポーターの応援は後半からヒートアップ。BBB、トルツィダそれぞれが発炎筒を大量に炊き、発炎筒がピッチに投げ込まれるだけでなく、爆弾と変わりない轟音が響く爆竹すらも投げ込まれました。
ディナモは64分、バデリとサミールが続けてミドルシュートを狙うもハイドゥクの守備陣が身体を張ってブロック。67分には新加入の長身FWプリモラッツを投入。その1分後、スルーパスに反応したプリモラッツの折り返しにマンジュキッチがシュートを試みるも枠内へと打ち切れません。
nogomet-149607.jpg逆にハイドゥクはロングボール一辺倒になってきますが、コヴァチが冷静に危険な状況を摘んでいきます。73分にはイブリチッチとの一対一をコヴァチが制したものの、こぼれ球をトマソフに拾われてゴールへと突進。これはイバネスが間一髪クリアに成功します。
78分、ハイドゥクはブリャトが反スポーツ行為で二枚目のイエローをもらって退場。昨年もディナモとのカップ戦決勝でブリャトはマンジュキッチの顔面を叩いて退場処分を受けており、今回も彼の愚行でハイドゥクが数的不利に立たされてしまいます。しかし、ハイドゥクは最後まで集中力が切れることなく、ロスタイムにはイバネス(写真)のゴール左上隅を狙ったFWをGKスバシッチが左手で掻き出すことに成功。ハイドゥクとしては狙い通りのドローに持ち込み、ホームの第二戦に望みを託すことになりました。BBBは不甲斐ないディナモの戦いぶりに堪忍袋の緒が切れ、応援していた選手に対して「ホモ野郎たち、プレーしろ!」のコールが繰り返されました。
(試合のダイジェスト動画はこちら)

この試合のテレビ放送では、国内リーグでは初めてコンピューターを利用して両チームのパスや走力などがリアルタイムで計算されました。これまで「走らない」と批判されたクロアチア・リーグの試合ですが、この試合に関しては予想外のデータが出ています。
例えば、全チームの走行距離がディナモは106,873mでハイドゥクが107,969m。先のチャンピオンズ・リーグ「チェルシーvs.インテル」ではそれぞれが102,078m、101,272mなので、それ以上に選手達は走っていることになります。ちなみに最も走った選手はディナモがバデリの11.68km、ハイドゥクはトマソフの11.51kmですが、そのうち"スプリント"がバデリが3%、トマソフは4%に過ぎず、トップクラスとは走りの質が違うとの指摘を得ています。
また驚くべきはパス成功率の低さ。ディナモは54%、ハイドゥクは何と30%しかありませんでした。チェルシーvs.インテルがそれぞれ70%台のパス成功率を誇り、バルセロナは80%を越えることを考えれば、笑ってしまうほど貧弱な数字です。


試合後の記者会見では、ポクレポヴィッチ監督(写真)の饒舌ぶりが目立ちました。
「0-0で終わったことには満足だと言えるだろう。両チームの選手は真剣に戦ったし、クオリティも見せてくれたと思っているよ。しかし、走力面では満足しているものの、戦術面には満足していない。最終ラインを3バックにし、両サイドにも蓋をすることで中盤のイニシアティブを相手に許した。しかし、何らカウンターの形を作れなかったのには文句を言いたいね」
とポクレポヴィッチ監督は自己批判を交えながらの感想を述べると、記者陣にこう不満を述べました。
nogomet-149608.jpg「ディナモの関係者全員を私は祝福したいよ。私は貴方たち記者にこう訴えたい。サッカーを本来のサッカーであるべき姿に戻してくれ。今の状況は全く異なる。私はサッカーというプレーを愛し、騎士道を愛する監督だ。ディナモを完璧に指導しているユルチッチを私は褒めたいんだ。"ユルチッチよ、出て行け!"なんてマミッチ副会長に言わせるような状況を作らないでくれ」
神妙な面持ちだったユルチッチ監督はこう振り返ります。
「このような彼の言葉には慣れているよ。彼は戦略家であるが、教師でもあるからね。試合に関していえば、これはカップ戦の準決勝だけにもう一試合残されている。もちろんホームゲームのアドバンテージに期待はしていたけれども。ただし、私は結果に不満を覚えていないと主張したのならば貴方達は驚くだろうね。
試合を落ち着かせるためのゴール、そして辛抱強さを選手達には要求した。ハイドゥクがどんなプレーをするかは分かっていたし、全ては予想済みだった。しかし、ゴールは決められなかったのは決定力に問題を抱えているからだ」
昨年は決勝で両クラブが戦い、ディナモがホームの初戦を3-0でモノにしながら、その結果に気が緩んでアウェーの第二戦を0-3で落とし、PK戦に持ち込まれてしまいました。それだけにユルチッチ監督にしてみれば
「3-0で勝つよりも0-0の方が楽だよ。次の試合は最大限のモチベーションと真剣さを持って挑めるからね」
と、このスコアレスドローをポジティブに捉えています。また、どのチームもディナモ相手に守り倒そうとすることには「サッカーにおけるデカダンス(退廃主義)」だと揶揄しました。
その後はポクレポヴィッチ監督の独演会となり、何度も記者陣の笑いを誘いました。記者会見が学ぶ場となったり、笑いの場となったりするのはオシムやブラジェヴィッチといった指導者と相通じる部分があるかもしれません。
「"72歳にもなるあの爺さんは何をぎゃーぎゃーと話してんだ?"と最後に言われてしまうだろう。しかし、誰も尋ねてこなくても私は話すよ(笑)」
こうまで言い切るポクレポヴィッチ監督。同席するもユルチッチ監督からも"どうぞ、どうぞ。私も聞いているから"と許しを得て、10分以上に渡ってクロアチア・サッカー界の問題について熱く語り続けました。若い記者は完全に圧倒されてましたが、会見後はベテラン記者と旧交を温め、想い出話を語り合う姿がとても印象的でありました。


準決勝のもう一試合、シベニクvs.ヴァルテクス・ヴァラジディンは、ヴァルテクスのGKドレヴェンが好セーブを連発したこともあり、こちらもスコアレスドローで終了しています。第二戦は共に4月7日に行われる予定です。


posted by 長束恭行 |20:33 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2010年03月24日

オシムとユーリッチのインタビュー

月曜日にキプロス取材から無事に帰国してきました。

nogomet-149200.jpg日曜日に観戦した「アポエルvs.オモニア」のニコシア・ダービーは想像を絶するほどの憎悪がうずまく対決でして、キプロスのサッカー熱の凄さに圧倒されてきました。人口76万人の国で2万3000人キャパのスタジアムがソールドアウト。両クラブがスタジアムを共有することもあってサポーターも真っ二つ。スタジアムの周囲はバリケードと特別警官隊ばかり、というシチュエーションでした。サポーターの応援度合いも凄まじかったです(試合結果は2-1でオモニアが勝利。動画はこちら)。
今日はクロアチア・ダービーとなる「ディナモvs.ハイドゥク」の撮影取材をしてきますが、全てのスタンドが狂喜乱舞するニコシア・ダービーを経験すると、凶悪ダービーだと思われたクロアチア・ダービーも可愛く思えてしまいます。


さて今回はお知らせです。

nogomet-149278.jpg明日発売の「2010 南アフリカ ワールドカップ体感マガジン」(日本経済新聞出版社)で、私が前日本代表監督イヴィツァ・オシムのインタビューを担当しています。一人でサラエボに赴き、1月中旬に行ったものですが、初めてオシム宅にお邪魔してのインタビューでした。
ちょうどアフリカ・ネーションズ・カップが始まった頃でして、ユーロ・スポーツで全試合が放送されることもあり、オシムはお孫さんを横にテレビに噛り付き。挨拶して最初のテーマはブルキナファソでありまして(笑)
ワールドカップと日本代表がテーマのインタビューとは別に、クロアチアのサッカー事情や旧ユーゴ時代の話、プライベートな話もできて充実した時間でありました。これまでオシムのインタビューを数多くこなしてきましたが、なかなか一人きりで会うことがなく、こういった機会は滅多にないんですね。遅めの夕食までご馳走になり、帰り際に「また遊びに来いよ」と言われた時は正直グッと来ました。こういった台詞も滅多に吐かない人でありますから。ほんと、ツンデレな人物です(笑)
宜しければ、本を手に取ってインタビューをご覧になって下さい。


あと昨日の放映になりますが、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀~プロサッカー選手・三浦知良」で、ディナモ・ザグレブ時代(当時クロアチア・ザグレブ)にカズのサッカー観を変えた選手としてゴラン・ユーリッチが取り上げられており、そのユーリッチへのインタビューを担当しました。
ディナモ広報や地元記者を当たっても連絡先が見つからずに大苦戦。もう時間がなくて諦めかけたところに、ディナモ広報の方がNKザグレブの試合会場でユーリッチを発見し、奇跡的に連絡先を入手した次第でした。
nogomet-149202.jpgユーリッチは糖尿病を抱えながら、黄金時代のレッドスター・ベオグラードとクロアチア・ザグレブの屋台骨となり、クロアチア代表でも貴重なバックアッパーを務め、38歳まで現役を続けた鉄人。ユーリッチから「君は偉大なプロフェッショナルだから、クレバーで有り続ければ、いつまででもプレーできる」との助言を受けたカズは、「君の言葉を大事にするよ。そして君のキャリアの年数を越えるつもりだ」と約束したそうです。その約束の年数を越え、カズが今でも現役を続けていることにユーリッチは嬉しそうでした。そして「50歳まで現役を続けてくれ」とメッセージを語っていたのが印象的でした。
私自身、カズに否定的な頃がありましたが、本当にサッカーが好きで現役にこだわる姿にはとても感服しています。ロベルト・プロシネチュキがここでボバンやシュケルよりも評価されるのは、彼もまたクラブの格に関係なく現役にこだわったことでした。そのプロシネチュキもまたカズとクロアチア時代はチームメイトで、カズを評価する人物でしたよね。


posted by 長束恭行 |19:02 | お知らせ | コメント(1) |
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2010年03月21日

キプロス取材に来ています

nogomet-148352.jpg現在、半分取材を兼ねた旅行でキプロスに来ています。地中海でキプロスはクロアチアと負けず劣らずの観光国ですが、こちらは更に温暖な気候な土地だけにプレシーズンだろうが多くの観光客が訪れています。日本からの観光客はまだまだ少ないものの、海洋リゾートや遺跡好きならば気に入る国のはず。とりわけ旧宗主国だったイギリスからの観光客(とりわけ年配組)が多いようで、移住向けに随分とお手頃に不動産物件が売買されているようです。

人口100万人にも満たない国ながら、アノルトシス・ファマグスタ、APOELニコシアと二シーズン連続でキプロスのクラブがチャンピオンズ・リーグ本選に出場しています。ちょうど手頃な航空券を手に入れたこともあって、この快挙の背景の裏にあるのは何か知るべくキプロスにやって来た次第です。メインは日曜日のAPOELニコシアvs.オモニア・ニコシアの首位決戦ですが、土曜日にAELリマソールでプレーする元ボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFドゥシャン・ケルケズ(33・写真)にインタビューすることに成功しました。彼は2005~2007年にリエカでプレーしたこともあって、どんな選手かは知っていたのですが、今ではキプロスで3番目に人気のあるAELリマソールで常時レギュラーかつキャプテンを務めています。アポなしだったとはいえ、練習後に30分以上に渡って話を聞けました。

また詳しくはレポートで書けたらと思っているのですが、キプロスという国がスポーツに投資した者(つまりスポンサー)に対して税金優遇を施しているのと、高額な放映権がクラブに入ることで潤沢な資金を抱えており、あちらこちらから外国人が流入しています。キプロスはEU加盟国であり、EU圏外の選手でも1年プレーすればEU圏の選手扱いを受けることから、11人全てが外国人になることは稀ではないようです。とりわけ最近は安い価格で若いポルトガル人を獲得するのがブームとなっており、彼らも更に有名なクラブに移籍するためのステップアップの場と考えている、と教えてもらいました。
ただし、フロントに辛抱強さがなく、成績が悪いと直ぐに監督のクビを切ってしまうのが問題のようです。結局は指導者も選手も外国人次第のところがあり、結果的にはインフラを含めた長期プランを実行してきた上位のクラブが着実に力をつけ、選手も売却せずに長くチームに留めてきたことで、欧州クラブシーンにおけるキプロス旋風に繋がっているそうです。

nogomet-148370.jpgしかし、なぜキプロス代表が比例して強くならないかと言うと、直ぐに強化を施したいクラブが外国人頼りになってしまうのと、キプロス人選手そのものが自惚れ屋で自己努力を励まないのが要因のよう。キプロス人は「自分は最高だ」と練習後に居残りすることなく、さっさとカフェに行ってしまう、とこの日も練習後に追加で筋トレを行っていたケルケズは嘆いてました。あとは北キプロス(占領したトルコ人勢力)の脅威から若い選手も2年間の兵役を行かねばならず、それが選手の成長に大きく阻害していると政治的な側面からも理由を教えてくれました。ちなみにケルケズはセルビアの首都ベオグラード生まれでパルチザン・ベオグラードのユースを経たのち、父親がボスニア生まれのセルビア人ということからボスニア・ヘルツェゴビナのリーグ、そして同国代表でプレー、更にクロアチアのリエカでもプレーしたという変り種です。各民族に友人がいるだけに、政治的テーマはキプロスでも好まないようでした。

ちなみにキプロスには旧ユーゴ系の選手が30人ほどプレーしています。同じくAELに所属するマケドニア現役代表MFヴラトコ・グロズタノスキからも同じ話を聞きましたが、気候に恵まれ、人々もフレンドリーで、給与も本国以上のキプロスはサッカー選手にとって天国のようです。人口が少なくともサポーターはギリシャ人やトルコ人と同じくサッカーに対して熱狂的で、ケルケズは"病的"とすら形容してました。また自分以上に家族がこの土地を好んでくれていることが夫として本望らしく、将来もキプロスでコーチ業に進む道を考えている、とも述べていました。

スタンドで行った彼へのインタビュー中に12位のアリス・リマソールと8位のエトニコス・アチナスの公式戦がありましたが、プレーそのものはクロアチア・リーグの同ランクのチームよりもレベルは高く、となると日曜の首位決戦はどんな戦いになるか楽しみであります(APOELとオモニアは政治的理由で分裂したこともあり、ライバル意識も強かったりします)。

旅行そのものは、ホテルがオーバーブッキングだったり、レンタカーが山中でパンクしたり、と何かとトラブル続きではありますが、月曜日には帰国する予定です。


posted by 長束恭行 |02:12 | サッカーコラム | コメント(0) |
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2010年03月16日

リーグ再開後におけるクロアチア両雄の戦いぶり

先月末にウィンターブレイクが空け、再開されたクロアチア・リーグ。この二週間余りで18~20節を終えました。私は計4試合を撮影取材しましたが、18節のザグレブvs.リエカ戦は90分間を通して雨に祟られ、20節のザグレブvs.ヴァルテクス戦は大雪の除去で生まれた泥んこの上で撮影を強いられるなど、この時期ならではの悪環境を味あわせられています。内陸部が雪ならば、海岸部は強風。そんな自然条件でもプレーしなければならない選手が一番大変ではありますけどね。

nogomet-147790.jpgいつもならば冬に選手の入れ替わりが多く、戦力の変化が顕著に見られる春ですが、ここのところの不況の影響もあり、国外への選手売却も滞れば、新たな選手獲得もさほど行わませんでした。ですので順位にも変化は起きてませんが、3節を終えた二強の様子をピックアップしましょう。まずは順位からです。
(【 】内はウィンターブレイク前の順位、そして今の順位とのアップダウン)

1. ディナモ・ザグレブ    (勝点46) 【 1 -】
2. チバリア・ヴィンコヴチ      (40) 【 2 -】
3. シベニク             (36) 【 3 -】
4. ハイドゥク・スプリト        (35) 【 7 ↑】
5. カルロヴァッツ          (34) 【 5 -】
6. オシエク             (32) 【 4 ↓】
7. ロコモティーヴァ         (31) 【 8 ↑】
8. スラヴェン・ベルーポ       (31) 【 6 ↓】
9. リエカ               (26) 【 9 -】
10.インテル・ザプレシッチ     (21) 【10 -】
11.ザダール             (21) 【12 ↑】
12.メヂムリエ             (21) 【13 ↑】
13.ヴァルテクス・ヴァラジディン  (20) 【11 ↓】
14.イストラ1961           (19) 【15 ↑】
15.ザグレブ              (18) 【14 ↓】
16.クロアチア・セスヴェッテ     (10) 【16 -】


●半年後のヨーロッパ・カップに向けて~ディナモ・ザグレブ

シーズン終了まで12試合残されているとはいえ、既にリーグ五連覇は手中にあるといっても過言のないディナモ・ザグレブ。彼らの目標は、来季のチャンピオンズ・リーグ本大会出場、もしくはヨーロッパ・リーグにおける決勝トーナメント進出にあります。近い将来を見据えたチーム作りを進めらようと、クルノスラフ・ユルチッチ監督は若手を積極的に活用し始めました。

nogomet-147784.jpg例えば、右サイドバックは6年目のブラジル人エトー(29歳)ではなく、ユース出身の18歳、シーメ・ヴルサリコ(写真)を全試合に先発起用。上下の運動量とクロスに優れることで「スルナの再来」とも呼ばれる彼はシーズン前半、レンタル先のロコモティーヴァで実力を認められ、今年からディナモのトップチームに加わりました。20節のザダール戦はプレーが冴えずに65分で下げられたものの、他の試合では合格点の働き。同じくディナモ・ユース出身で右サイドを主戦場とするMF/DFイヴァン・トメチャク(20)とどう併用するかが課題となりますが(ザダール戦は同時起用で失敗)、この先のディナモは右からの突破が武器となるはず。今まで右MFのポジションにはズドラヴコ・マミッチ副会長が溺愛するブラジル人MFサミール(22)の起用が多いのですが、調子の波が大きく、ヨーロッパ・カップでも3シーズンを通して活躍できてません。覇気のない選手を徹底的に嫌うサポーターのBBBも頻繁にサミールへブーイングを浴びせており、あらゆる批判を承知で使い続けていくかも注目されています。

シーズン再開前の悩みの種だったのが、FWマリオ・マンジュキッチ(23歳・写真)。欧州で戦い抜くため、彼の年俸を大幅に上げることで移籍を慰留させたものの、シーズン前半は調子が優れませんでした。一時は1500万ユーロと言われていた市場価格も半額近くに下がっていますが、これ以上留まらせたところでも"腐って"しまいます。この冬は売却しようにも買い手が見つからず。上層部は次の夏こそ彼を売却する予定で、マンジュキッチ本人は自分の価値を上げるため、この半年間はクロアチア・リーグを過小評価することなくアピールに徹しなくてはなりません。
nogomet-147785.jpgそんなモチベーションの下、今年の初戦となる第18節クロアチア・セスヴェッテ戦ではハットトリック(結果は6-0)。国内リーグでの得点は第10節のヴァルテクス戦以来、実に146日振り。続く第19節のオシエク戦では決勝ゴールを決めるなど(結果は1-0)、ようやくエンジンが掛かってきました。彼を獲得しようとスカウトも次第に増えているようです。またマンジュキッチは批判を交わそうと今までメディアに沈黙を続けてきたものの、3月6日のスポルツケ・ノヴォスティ紙で沈黙後初のインタビューに答えました。"俺様"的な態度は変わらないですが、国内でも影響力あるインタビュアーから"試合後にコメントも出さないのはプロとしてどうなのかね?"と釘を刺され、以来、試合後のミックス・ゾーンは報道陣の前に立つようになりました。

この春から新たにマンジュキッチとコンビを組むのが、インテル・ザプレシッチから獲得したブラジル人FWルイス・パウロ・イラーリオ・"ドドー"(22歳)。チーム内のブラジル・コミュニティよりも、アルゼンチン-チリ・コミュニティと親しい不思議な選手です。そんなドドーは、デビュー戦となるセスヴェッテ戦にて開始53秒で初ゴール。21分には前述のマンジュキッチのゴールをアシストするなど鮮烈なデビューを果たしました。しかし、28分には相手のタックルを受けて右膝の靭帯を損傷してしまい、退場するはめに。復帰まで一ヶ月は掛かると見られていますが、ユルチッチ監督は守備にも献身的なドドーの働きぶりに惚れ込んでおり、復帰次第、直ぐに再起用するでしょう。心配なのは、アンドレイ・クラマリッチ(18歳)、ミロスラフ・スレピチュカ(元チェコ代表・28歳)といった控え組に元気がないことで、しばらくはマンジュキッチ頼りとなりそうです。

nogomet-147786.jpgクロアチア・セスヴェッテ、オシエクを順調に下したディナモですが、第20節ではザダールをホームに迎えてのスコアレスドロー。不甲斐ない内容にマミッチ副会長(写真)は開始20分で席を立ってしまいました。
「試合があった夜、窒息死しそうになった。51年の人生の中で私は大きな理由もなく泣いたことはないが、この時は涙が流れた。あれが私が愛するディナモ、誰が愛するディナモなのかね? あんなプレーのためにどんな準備をしてきたのかね? 私が試合中に去ったのはおおっぴらな抗議だ。あんなプレーに対する抗議なのだよ!
考えてくれ。ディナモは昨年12月から8ヶ月間は国内リーグを気楽に戦いながら、ヨーロッパに向けた理想的なチーム作りができるんだ。これらの試合で連携を深めずして、いつやれると言うのだね? 選手自身が試合を選んでいるとしたら、いつやれるのだね? いつチームができると言うのかね? あの試合では自分が副会長であることに恥に思ったよ!」
と怒り心頭。いくら国内に敵無しのディナモであっても、悪い日はあるわけであって、それすら理解しようとしないマミッチ副会長の機嫌一つで雰囲気が荒れてしまうのがディナモの不安要素でしょう。


●新監督効果で復調の兆しあるも…~ハイドゥク・スプリト

リーグ再開を前にエドモンド・レーヤがラツィオ監督に就任したため、71歳のスタンコ・ポクレポヴィッチに指揮を任せたハイドゥク・スプリト。シーズン直前のジェリェズニチャールとの親善試合は不安を残す内容でしたが、さすが経験のある指導者だけあって調子を合わせてきました。
「攻撃的なサッカーで結果を残せ」というのがスプリトのメンタリティ。レーヤのサッカーは、"1-0"を良しとするイタリア人ならではのものだったため、サポーターは幾らか不満を抱いていたのですが、過去に二度ハイドゥクを指揮し、スプリト生まれのポクレポヴィッチは早くに選手とサポーターの心を掌握しました。ポクレポヴィッチはクロアチア最大の知将とされるトミスラフ・イヴィッチと最も親しい指導者であり、1980年代末にはモンテネグロのブドゥチノストの監督としてデヤン・サヴィチェヴィッチやプレドラグ・ミヤトヴィッチといった将来のスターを見出した人物であります。3ヶ月契約ながら彼に任されている仕事は、シーズン前半の不振で失った選手の自信を回復させること。とりわけハイドゥクに移籍し、萎縮した選手達を叩き直すことでした。

nogomet-147787.jpg初戦となる第18節のスラヴェン・ベルーポ戦、前半は攻めながらも得点を奪えない戦いでしたが、後半直ぐにMFスルジャン・アンドリッチ(28歳、元クロアチア代表)のミドルシュートが炸裂し、それから堰を切ったかのように得点が生まれます。4-2-3-1の右MFを務めるマリン・トマソフ(22歳・写真)は昨年に鳴り物入りでザダールから移籍したものの、決定機をことごとく外し、シーズン前半は戦犯の一人に祭りたてられました。春からポジションを左から右へと移してから、レフティーならではの内への動きも見せるトマソフ。その彼が53分、右から25mのFKを叩き込み、今季初ゴールを記録しました。64分にはトマソフのFKからFWアンテ・ヴクシッチがこぼれ球に食らいついてゴール。とりわけ層の薄いFW陣でポクレポヴィッチが「弾丸のよう」と評価し、全試合で先発起用するヴクシッチはまだ18歳です。
73分にはクロアチア代表の左SBのポジションに名乗りを挙げると期待されるイヴァン・ストゥリニッチ(22歳)が、果敢なオーバーラップから4点目。82分にはMFアナス・シャルビーニ(22歳)とのパス交換で、途中交代のMFフロリン・ツェルナト(30歳、元ルーマニア代表)がゴールを決め、5-0と文句なしの快勝を果たしたのでした。

第19節ではアウェーのインテル・ザプレシッチ戦をMFセニアド・イブリチッチ(24歳、ボスニア代表)の2ゴールとストゥリニッチのゴールで3-0と快勝。順位を7位から4位に上げ、ポクレポヴィッチ効果が現れてきました。「彼とは5年契約を結んでもいいぞ」と、スヴァグシャ会長もご機嫌。第20節、ホームにリエカを迎えての「アドリア海ダービー」では、強いハイドゥクを応援しようとサポーターが集まり、今季最高の観客となる1万人がポリュウド・スタジアムを埋めました。

主導権を握るものの得点が生まれない展開は第18節のベルーポ戦と同じ。しかし、自信を取り戻しているハイドゥクの選手達は後半にテンポを速め、リエカのゴールを襲います。51分にFWヴクシッチが無人のゴールを外す大失態があったものの、74分にMFヨシップ・スココ(34歳、元オーストラリア代表)のミドルシュートが炸裂して先制に成功。昨年から続く連勝記録も6まで伸ばせると思いきや、88分に油断から同点弾を奪われます。リエカが縦に放り込んだロングボールにFWヂャロヴィッチがヘディングで繋ぎ、ボールはGKダニエル・スバシッチ(25歳、クロアチア代表)の目の前に。しかしスバシッチがパンチングする直前にMFクレイラッハにヘディングで押し込まれてしまいました。盛り上がりに水を差すドローという結果にポクレポヴィッチ監督は
「非常に良い戦いをしたのにもかかわらず、不幸な形で勝点を失ってしまった。ペナルティエリアにおける不手際の失点だった。それがサッカーだと多くの人は言うが、私はそれに同意するつもりはない。残念ながら、あの場面で見せたものが我々の弱点だった」
と敗戦の弁を述べました。(試合の動画はこちら)

nogomet-147788.jpg足踏みしたとはいえ、ハイドゥクが調子を取り戻しているのは紛れもない事実。あとはシャルビーニ兄弟をどのようにフィットさせるか、です。シーズン前半はFW起用も多かった弟のアナス・シャルビーニ(23歳)は、本職である左MFを任され、股抜きドリブルやアウトサイドキックによるクロスボールなどテクニカルなプレーを見せるようになりました。守備に脆く、ポジションを中央に絞りすぎる欠点はありますが、そのお陰で左サイドの広大なスペースをストゥリニッチが活用できています。
ハイドゥクの悩みの種となるのがいまだにハイドゥクでノーゴールの兄、FWアフマド・シャルビーニ(26歳・写真)。リエカで63ゴールを決めてきたアフマドですが、3試合ともベンチスタート。古巣のリエカ戦ではアフマドに出場機会を与えなかったことにポクレポヴィッチ監督は
「彼の練習ぶりを見れば、若手以上のアドバンテージを得ることはない。もし同じ実力ならば、私は常に若い選手にアドバンテージを与えてきた」
とメディアに説明。これにアフマドは怒りを爆発させ、
「ハイドゥクでの地位に満足することはなかったが、この発言は行き過ぎだ。リスペクトが欠けた扱いを受けることは相手が監督だろうが許せない。ようやく健康面が万全で、全力が出せるというのに、この3試合の出場時間は10~15分ほどだ。もし補強選手として高い金銭を払って僕を獲得したならば、その元が取れるよう僕に継続的なチャンスを与える必要があると思う」
とインタビューで反論。これにポクレポヴィッチ監督は
「我々に必要なFWは、走る気力のある選手だ。なぜならばディフェンスをやるFWを私は探しているからね。そういった面がアフマドには見られない。だから彼の出場時間が少ないんだ」
とこれまたメディアを通して言い返し、直接に言い争わない両者の関係は修復が難しくなっています。

昨年8月にハイドゥクがシャルビーニ兄弟を獲得するためにリエカに払った移籍金は220万ユーロ。クロアチアのクラブ間の移籍では歴代上位に入る金額です。しかしながら、ハイドゥクは彼らが内面に抱えている精神的なムラっ気(ちなみに彼らの父親はパレスチナ人)に振り回され、現時点では本物の補強とは成りえていません。一昨年の株式化でハイドゥクが得たはずの潤沢な資金もどんどんと目減りしており、トップチームから追放したベテラン組を含めた不満組の人員整理がシーズン終了後に必要となってくるでしょう。


2連勝に続く引き分けで少しトーンダウンした感のある、ライバル関係のディナモとハイドゥク。そんな両雄の対決が近づいています。舞台はクロアチア・リーグではなく、クロアチア・カップの準決勝。初戦は3月24日、ディナモのホーム、マクシミール・スタジアムにて。第二戦は4月7日、ハイドゥクのホーム、ポリュウド・スタディオンにて行われます。


posted by 長束恭行 |23:53 | サッカーニュース | コメント(0) |
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