2009年09月29日

ビリッチ代表監督、ワールドカップ後の続投を示唆/クロアチア代表メンバー発表

nogomet-114436.jpg少し前の報道になりますが、9月24日にクロアチア代表メンバーが発表になりました。これは10月8日に予定されているカタールとの親善試合(会場:リエカ)、そして10月14日に予定されているワールドカップ予選・対カザフスタン戦(会場:アスタナ)のものです。

GK:
ヴェドラン・ルニェ     (ランス/フランス)
ダニイェル・スバシッチ   (ハイドゥク・スプリト)
マテイ・デラチュ      (インテル・ザプレシッチ)
DF:
ロベルト・コヴァチ     (ディナモ・ザグレブ)
ヨシップ・シムニッチ    (ホッフェンハイム/ドイツ)
ヴェドラン・チョルルカ    (トットナム・ホットスパー/イングランド)
イヴィツァ・クリジャナッツ (ゼニト・サンクトペテルブルク/ロシア)
ダニイェル・プラニッチ   (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
フルヴェイエ・ヴェイッチ  (ハイドゥク・スプリト)
フルヴォイエ・チャレ    (トラブゾンシュポール/トルコ)
デヤン・ロヴレン      (ディナモ・ザグレブ)
MF:
ダリヨ・スルナ         (シャフタール・ドネツク/ウクライナ)
ニコ・クラニチャール     (トットナム・ホットスパー/イングランド)
イヴァン・ラキティッチ     (シャルケ04/ドイツ)
イェルコ・レコ         (モナコ/フランス)
オグニェン・ヴコイェヴィッチ (ディナモ・キエフ/ウクライナ)
ニコラ・ポクリヴァチュ    (レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)
アナス・シャルビーニ      (ハイドゥク・スプリト)
FW:
エドゥアルド・ダ・シルヴァ   (アーセナル/イングランド)
イヴィツァ・オリッチ      (バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
ムラデン・ペトリッチ      (ハンブルガーSV/ドイツ)
イヴァン・クラスニッチ    (ボルトン/イングランド)
マリオ・マンジュキッチ    (ディナモ・ザグレブ)


メンバー的なサプライズはなく、MFルカ・モドリッチ、GKスティペ・プレティコサ、MFイヴァン・ユリッチは怪我のために外れました。サプライズとなったのは、メンバー発表の記者会見でスラヴェン・ビリッチがワールドカップ(予選)以後の代表監督残留の意思をほのめかしたことでした。
nogomet-114437.jpg「もしクロアチア・サッカー協会、ジャーナリスト、そしてまず何より国民が私の続投を望むのならば、もし南アフリカのワールドカップに進出して結果を残し、ポジティブな雰囲気が作られたのならば、続投という選択は現実的となるだろう」
とビリッチは会見で語りました。U-21代表監督を2年、そしてA代表監督を4年やってきたビリッチは、今回のワールドカップのサイクルを最後に代表監督から退くことをこれまでは明言してきました。その点を突かれたビリッチは
「続投の選択は常に存在している。その可能性が消えたなんて決してなかった。自分が去るまでの残りの日を数えてはないし、そうしたこともなかった。この仕事は自分に取って良い場所だ。もし人が自分の仕事に対してそう考えるのならば、続けることを敢えて反対しないのは当然のことだろう。どの他の仕事もこの仕事と比べることは不可能だ、と何度も私は言ってきた。これだけの選手達と一緒に仕事ができる代表監督の仕事は、金で買うことができない楽しさがあるんだよ。数日前まで公には続投の話をして来なかった。しかし、コーチ陣とは協力関係を続けていく可能性を毎日話し合ってきたんだ。だから、この2~3日で話が変わったというのは事実じゃないよ」
とコメントしています。

もちろん、この発言にはクロアチア・サッカー協会長のヴラトコ・マルコヴィッチをはじめ、選手達も歓迎ムードなのですが、ワールドカップ予選の大詰めを前にしてビリッチ監督は続投問題をひとまず棚上げにし、予選そのものに集中させるための発言なのでは、と推測されます。
「ビリッチ後」のポジションを明らかに狙っている人物は二人いますが、そのうちの一人、イゴール・シュティマッツ(現ザグレブ監督)はビリッチの続投示唆に関して
「素晴らしい。スラヴェンが監督として残ってくれるのは嬉しいし、クロアチアをワールドカップ、さらにユーロまで導いて欲しい」
とポジティブに語り、もう一人のブランコ・イヴァンコヴィッチは
「考えがなぜ変わったかは分からないが、なぜ君達ジャーナリストが私に聞くかは分かっているよ。でも、君達の中では既に後任として(私ではなく)シュティマッツが選ばれているじゃないのかね。いつも審判となるのは、ジャーナリストの基準なのだから…。私は対立候補になりたくはないよ」
と少し投げやりなコメントを残しています。

このメンバー発表後、GKマテイ・デラチュが伝染性単核球症に感染したことが判明し、代表メンバーから離脱することになりました。17歳でチェルシーと5年契約を結んだばかりのデラチュですが、思いもしなかった病に冒されてしまい、まだ復帰時期がいつになるかは見込めません。ただし、症状はさほど重くなく、10日ほど安静したのちに再検査を受ける予定です。過去にズボニミール・ボバンやテニス選手のロジャー・フェデラー、マリオ・アンチッチらもなった病気ですが、比較的発見が早かった分、最悪なケースは逃れたようです。
GKの追加召集はない代わりに、リボルノのDFダリオ・クネジェヴィッチが召集されることになりました。


posted by 長束恭行 |22:52 | サッカーニュース | コメント(1) |
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2009年09月29日

泥沼の開幕9連敗~NKザグレブ

nogomet-114270.jpg「開幕9連敗」。
クロアチア・リーグ第9節でNKザグレブ(以下、ザグレブ)はシベニクに0-2で敗れ、一昨シーズンにヴァルテクス・ヴァラジディンが記録した開幕8連敗を上回る不名誉なリーグ新記録を打ち立てました。欧州に存在する52リーグの今シーズンでザグレブの9連敗は、ポーツマス(イングランド)の7連敗、グルノーブル(フランス)の7連敗を上回るトップの開幕連敗記録。ただし、ザグレブの場合は昨季と比べて大きく戦力ダウンしたわけではありません。クロアチア・リーグが1992年に創設されて以来、ザグレブ一度も二部に落ちたことがなく、またディナモ、ハイドゥクの二強以外で唯一リーグ優勝を果たしたクラブです(2001/02シーズン)。昨シーズンは5位。本来ならばディナモ、ハイドゥクに次ぐ二番手グループに属すはずのザグレブに何が起こったのでしょうか?

常にディナモの陰に隠れながらも、質の高いユースシステムで次々と優秀な選手を輩出するザグレブ。現在のチームのおおよそがユースから上がってきた若手、もしくは若いうちにザグレブへと引っ張られた20歳前後の選手たちです。そんな中、チームの骨格となるセンターラインには元代表FWダヴォール・ヴグリネツ(34歳・写真)を筆頭に、MFマルコ・カルテロ(28歳)、DFヴェドラン・イヴァンコヴィッチ(26歳)、GKヨシップ・シュコリッチ(28歳)といった経験ある選手を並べています。
nogomet-114268.jpg2006年から2シーズンに渡って「全監督における監督」ことミロスラフ・ブラジェヴィッチ(現ボスニア代表監督)が率い、資金力が無いながらも侮れないチームを形成したのち、昨シーズンからユース監督だったルカ・パヴロヴィッチがトップに昇格。それによりユース出身の選手を重用する方針が更に強くなり、シーズン当初は低迷したものの、最終的にはリーグ5位、カップ戦ベスト4とまずまずの成績を残しました。

開幕前に右MF/DFのメンスール・ムイジャをフライブルクに売却した以外、ドラジェン・メディッチ会長は他のオファーを拒否。パヴロヴィッチ監督の下、若手とベテランを上手くミックスさせたチームの更なる積み上げを図ったわけでした。一部リーグが12クラブから16クラブへ拡張したとはいえ、3~5位は十分に狙えると開幕前は予想されていたのです。
しかし、ヴグリネツが肩の負傷で開幕に間に合わず、開幕戦のスラヴェン・ベルーポ戦(アウェー)は0-2で敗北。第2節はザグレブ郊外の格下インテル・ザプレシッチを迎えてのホームゲームでしたが、0-3とまさかの敗北。それからは第3節・リエカ戦(1-3/アウェー)、第4節・ロコモティーヴァ戦(2-4/ホーム)と連敗が続き、ヴグリネツが復帰した第5節・ヴァルテクス戦(アウェー)も0-1で敗北。第6節・イストラ戦(1-2/アウェー)を落とし、パヴロヴィッチ監督の進退を賭ける試合がホームの第7節、対チバリア・ヴィンコヴチ戦となりました。

nogomet-114269.jpgこのチバリア戦は、序盤からゲームを支配しながらも一向にチャンスをモノにできないザグレブの悪循環が顕著な試合となりました。クラニチェヴィチェヴァ・スタディオンの観客はわずかに500人。ザグレブの集客力は平均1000人ほどで、サポーターの「ビエリ・アンジェリ(写真・"白天使"の意)」は90分間に渡って声を出し続けるとはいえ、いつも20人前後しかいません。つまり、アウェーの地で一番プレッシャーの掛からない楽な場所がここだと言われています。
時間が経つにつれ、自信の無さから訪れる消極的なプレーや、意思の疎通が取れないチグハグなプレーが目立つようになり、85分、不用意なドリブルを自陣内でチバリアのFWバラバンにカットされると、最後は4人で囲みながらもシュートを叩き込まれて敗北。勝点1すらも奪えなかった惨めな結果に、試合終了後の選手達はピッチ上で亡霊かのように立ち尽くし、ベンチには涙にくれる若手もいたのでした。

この敗北後、「もう監督を続ける意味がない」と言ってパヴロヴィッチ監督は辞任。誰もがやりたがらないような後任を引き受けてもらおうと、メディッチ会長が頼み込んだ相手はイゴール・シュティマッツ(写真)でした。
nogomet-114271.jpg一般から見ればシュティマッツはクロアチア代表のイメージが強いでしょうが、アクの強さとコワモテ度ではディナモのズドラヴコ・マミッチ副会長と双璧です。ハイドゥクのディレクターとしてニコ・クラニチャールのディナモ→ハイドゥクの電撃移籍を実現させたのも彼ですし、今年はクロアチア一部リーグ協会会長の立場でリーグの16チーム拡張をほぼ強引に実現させました。指導者としては2004/2005シーズンに残り8節でハイドゥク監督を任させられてリーグ優勝に導き、2005/2006シーズンには二部降格に瀕したチバリア・ヴィンコヴチを残留に導くなどの業績を残しています。つい最近は次期クロアチア代表監督に関心を示しており、もし現職のスラヴェン・ビリッチがワールドカップ予選(本大会)を最後に退任したら、次期代表監督のポストをブランコ・イヴァンコヴィッチと争うことになりそうです。
「友人であるメディッチ会長の頼みは断れない。最も辛い時こそ助ける存在が友人なのだ」
とシュティマッツは一肌脱いだのでした。裏を返せば、ザグレブの降格は順当になりつつある状況で、もしシュティマッツがザグレブを救ったならば、今後の代表監督レースにおいてプラス要素に転じる可能性があるのです。彼にとっては「失うものは少ないゲーム」と言えましょう。

しかし、容易いゲームではないのは火を見るより明らかです。就任して最初のゲームはアウェーのハイドゥク戦。シュティマッツとは縁の深いクラブです。イタリア人監督エドアルド・レーヤの下で堅固なサッカーに取り組み、ここのところ調子を上げつつあるハイドゥクは、いくらシュティマッツが劇薬とはいえ高いハードルでした。後半にMFアナス・シャルビーニとDFボリス・パンジャのゴールで敗北。0-2で8連敗を記録してしまいました。

nogomet-114277.jpgチームの第一の問題は、8試合でわずか4得点という決定力にあります。そこでチームはFWクルノスラフ・ロヴレク(写真)の復帰を画策。トルコのエスリセヒルシュポールと契約を解消し、既にザグレブの練習に参加しているものの、まだ移籍に必要な書類が届いていません。トルコ・サッカー協会とパイプのあるミラン・ラパイッチを利用し、シュティマッツは早い解決を進めています。またDF陣にも怪我人が多いため、ルビン・カザン(ロシア)との契約が切れたブラジル人DFジェフトンも獲得。ジェフトンがボスニアのポスシェでプレーしていた時代をシュティマッツは知っており、計算できる戦力として見込みました。9月22日のカップ戦では二部のオリエントを2-1下して、公式戦初勝利。クラブは25日のホームでの第9節・対シベニク戦は入場無料にして、観客の更なるサポートを期待したのでした。

クラニチェヴィチェヴァ・スタディオンに集まった観客は、普段の倍以上の2000人。シュティマッツは最終ラインを4バックから3バックに変更し、俊足FWエルミン・ゼッツ(写真)のケアを図ります。しかしながら、選手達に染み付いた負け癖は、戦術やシステムで解決できるようなシロモノではありませんでした。
nogomet-114272.jpg最初の失点は前半終了前という最悪なタイミングで訪れます。MFフスマニのミドルシュートにGKシュコリッチがセーブを試みるも、ボールはクロスバーを叩き、そこをゼッツに押し込まれてしまいます。後半も自分達のサッカーなどできないザグレブに対し、82分にロングボール一発からまたしてゼッツ。ロスタイムを入れた10分間のうちに形勢を引っくり返すのは無理な話でした。平穏なはずのサポーター、ビエリ・アンジェリも貴賓席に近寄り、「メディッチ、出てけ!」とシュプレヒコールを繰り返したのです。
ちなみにこの日のシベニクは特別なモチベーションがありました。試合2日前に匿名でクラブ宛に「ザグレブ戦では八百長を仕組み、シュティマッツに勝点を許すつもりだろう」と疑いの手紙が届き、シベニクのフロントはその手紙を公開した上で八百長を否定。しかし、ブックメーカーは疑いを掛けて、このカードを賭けの対象外としました。それだけにシベニクはザグレブに負けるわけにいきませんでした。

試合後、シュティマッツ監督は
nogomet-114273.jpg「全ての問題は若い選手達に圧し掛かるプレッシャーの結果で、それだけに経験ある選手を連れてこなければならない。ポジティブなことを挙げるならば、諦めることなく最後の一分まで何とかしようとチャレンジしたことだ。しかし、この危機を脱するためにはたくさんのハードワークが我々の待っている。それでも次のカルロヴァッツ戦ではポジティブな結果を残せるものと信じているんだ」
と一縷の望みを語りました。カルロヴァッツは初の一部昇格ながら、現在は2位と大活躍している好チーム。どこもザグレブには負けじと、変な疑いは持たれたくないと戦ってくるでしょう。

「私がやらねばならぬのは、選手達が意地を持ってくれることだ」
就任当初からそう願うシュティマッツ。どうやって彼はザグレブを立ち直らせられるのか、これからもウォッチングしていきます。
ディナモという巨大な存在が市内にある中、ザグレブに特別なシンパシーを抱くのはスタジアム近郊に住む人たちです。私もスタジアムから歩いて5分のところに住んでいるだけに、ザグレブにはあっさりとは二部に落ちて欲しくないものです。


posted by 長束恭行 |05:56 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2009年09月24日

チェルシーと5年契約を結んだ17歳GKマテイ・デラチュ

イングランド戦の悪夢が覚めやらぬ9月12日、驚くべきニュースが国内で報じられました。

「クロアチアの17歳GK、マテイ・デラチュがチェルシーに移籍」

nogomet-113306.jpgクロアチア国内でも国内リーグを丹念に追ってない人しか知らないデラチュという名前。彼がクロアチア・サッカー界で最初に脚光を浴びたのは、2009年2月22日のクロアチア・リーグ第19節「インテル・ザプレシッチvs.ザグレブ」戦でした。正GKの欠場もあり、16歳182日というリーグ史上最年少でゴールを守ったデラチュは85分、元クロアチア代表FWダヴォール・ヴクリネツのPKを防ぎ、1-0の勝利に貢献したのです(動画)。あどけなさが残るデラチュは試合後にこう語りました。
「震えはあった。無いなんて嘘はつけないよ。でもカップ戦で守ったこともあったから、少しは楽だった。これほど良いデビューはないだけに、僕は本当に嬉しいよ」

ボスニア・ヘルツェゴビナ中部のウスコプリェに生まれたデラチュは4歳の時、戦争で家が破壊されたため家族と一緒に親戚の住むザプレシッチに身を寄せました。二人の兄と同じくサッカーの道を選び、6歳になって地元ユースでも年上のクラスに通い始めた彼は、一番年下ながらチーム内で最も身長が高かったこともあり、誰もやりたがらないGKを任させられました。その後も常に年齢より上のクラスでプレーし、2008年8月、16歳になったと同時にトップチームに加入。規定により15歳以下の選手はトップチームに加入できないという条件が阻んだわけですが、トップチームに加入するや否や直ぐにベンチ入り。監督のボニミール・ぺルコヴィッチも彼のポテンシャルを認め、機会があれば早いデビューを目論んでいたのです。

ザグレブ戦のデビューで早くも定位置を確保し、その後は全試合に出場。昨シーズンは老獪なヴグリネツのPKを止めただけでなく、当時の得点王だったニコラ・カリニッチ(当時ハイドゥク)のPKも二度止める活躍を見せました。クロアチアU-17代表、U-19代表でもゴールを守った彼には国外のクラブも関心を寄せており、トップデビューする以前の昨年夏にはベンフィカのキャンプに呼ばれ、テストには合格したものの、クラブ間で移籍の合意に達しませんでした。その後、ディナモ・ザグレブも積極的に勧誘したものの、地元の商業高校に通うデラチュは18歳になるまでザプレシッチに残ることを決意します。

今年8月20日に17歳となり、2009/10シーズンもインテル・ザプレシッチのゴールを守り続ける彼に、U-21代表監督で元クロアチア代表GKのドラジェン・ラディッチは召集しなかったものの、9月のワールドカップ予選・対ベラルーシ戦と対イングランド戦を控えたA代表監督のスラヴェン・ビリッチがサプライズ召集を掛けます。直前のスティペ・プレティコサの怪我が召集理由になりましたが、史上最年少のクロアチア代表入りという事実に変わりはありません。スレブリッチ・サッカー協会事務局長からの電話で召集を知った彼は
「我を忘れてしまったよ。今日(8月30日)は人生において一番幸せな日だよ」
と喜びに暮れました。

nogomet-113309.jpgしかし、彼の一番幸せな日は8月30日だけで終わりそうにありません。密かにデラチュのプレーぶりを追っていたチェルシーが、ワールドカップ予選でロンドンにやってきたデラチュに接触。代表一向を乗せてザグレブに戻るチャーター機にデラチュの姿はありませんでした。デラチュはチェルシーでメディカルチェックを受けていたのです。ペトル・チェフに取って代わる将来的な正GKとして17歳のデラチュに白羽の矢を立てたのでした。

ご存知のようにチェルシーは、選手移籍の違反をしたためにFIFAから2011年1月まで新たな選手を獲得できません。デラチュの家族、そしてインテル・ザプレシッチの幹部との間で様々な交渉が進められ、最初の移籍報道から6日後、クラブで記者会見が行われました。明らかになった内容は以下になります。

●デラチュはチェルシーと5年契約を結んだ。デラチュはチェルシーから給与を貰いながら、インテル・ザプレシッチでプレーを続ける。
●チェルシーはこの先3年のうちにデラチュを引き取るオプションを、インテル・ザプレシッチに対して行使できる。最初のオプション行使が可能なのは、彼が18歳になる2010年8月。
●英語を事前にマスターするよう、デラチュに英語の家庭教師を付ける。
●チェルシーのコーチが定期的にザプレシッチに訪れ、彼の働きぶりをチェック。また時間が許した時には、インテル・ザプレシッチのコーチと一緒にロンドンで講習を受ける。

金銭面は明らかにされませんでしたが、移籍金は300万ユーロとされ、分割でインテル・ザプレシッチに入ることになっています。またデラチュが守ったホームゲームにおける経費もチェルシーが払うという太っ腹ぶり。インテル・ザプレシッチは財政難に喘ぐクロアチアの典型的な小クラブで、選手の給与の支払いも遅れていました。チームディレクターのブランコ・ラリャクも正直に語ります。
「これで再びクラブは息ができる。再び立ち上がれるのだ。3ヶ月前に私は選手達を呼び、オープンにこう言った。"誰かを売却しない限りは問題は解決できない"と。その時はまさかデラチュを売却するとは思わなかった。お金はなかったとはいえ、選手達は真面目に練習したんだ。いつも私は"明日には給与が払える、明日には…"と言ってきたが、誰も文句の一言も言ってこなかった。
チームの誰もがデラチュに何が起きているかは知っていたけど、彼らは誰にもチームの秘密を明かさなかった。そんな選手たちを祝福するよ。最初の給与は直ぐに払えるだろうし、今後も定期的に給与を払っていけるだろう」

nogomet-113308.jpg私もデラチュの背後で試合を撮影したことがあります。身長190cmの恵まれた体格に非常に落ち着いたセーブはベテランの域に達し、後ろ姿だけで観察すれば30歳とも言えるGKです。しかし、チームメイトを指示する声は若く、少しの遠慮が感じられましたす。常日頃から「遠慮するな」とアドバイスを送っているというリーグ最年長のDFダミール・クルズナール(37)が、試合中にウォーミングアップを忘れて、デラチュの後ろから見守っている姿が印象的でした。そして試合後、近寄ってきたボールボーイと気さくに話すデラチュ。ビッグクラブと契約したとはいえ、彼自身は変化がないようです。
「なぜ、自分自身が変わらねばならないんだい。そうはしたくないよ。チェルシーと契約したけど、僕はまだチェルシーの選手じゃないんだ。期待されているレベルに達するよう、もっと練習しなくゃならないよ。(金目当ての)女性がこれから近寄ってくるって? もう彼女はいるし…」

これからデラチュが守る一試合一試合が注目されます。12日、ホームでリーグ王者のディナモを迎えた第7節ではシュートの雨あられの中、好セーブを連発。0-1で敗れながらもマン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。
しかし、契約直後の18日の第8節、アウェーのメヂムリエ戦では無駄な飛び出しもあって失点を喫してしまって1-2で敗北。23日のクロアチア・カップ、対スーホポーリェ戦では前半で0-2とリードしながら、後半に35mのロングシュートを叩き込まれ、更に近距離のシュートを弾いてしまったところを押し込まれて同点に。PK戦で勝利したものの、今は特別なプレッシャーが掛かっているようです。

「リバプールのペペ・レイナのようなプレースタイルが好きだし、彼が一番好きなGKだ」
と語るデラチュ。この先も成長を続ければ、近い将来にはプレミアリーグの舞台でそのレイナと相対するかもしれません。


posted by 長束恭行 |21:41 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2009年09月19日

ディナモ・ザグレブ、お約束の展開/ヨーロッパ・リーグ第1節・対アンデルレヒト

「アンデルレヒトは弱かった。それだけにこんな失態をしてしまったことが本当に悔やまれる…」
試合後、GKブティナと口論となったベテランDFのロベルト・コヴァチ(写真)は記者のマイクにこうぼやきました。

nogomet-112274.jpg新たに設けられたヨーロッパ・リーグ第1節「ディナモ・ザグレブvs.アンデルレヒト」が9月17日、マクシミール・スタディオンが行われました。ここ2年、前身のUEFAカップではリーグラウンドで敗退。リーグ戦を突破し、40年ぶりに欧州カップで年越しすることがディナモの念願ですが、いずれのシーズンも決定力の無さ、そして終了間際のつまらない失点で涙を飲みました。
そんな「つまらない失点」を食い止めるべく、今年の頭に獲得したのが現役クロアチア代表のコヴァチです。今季は怪我で出遅れてしまった分、ディナモのユニフォームを着ての初めての欧州カップ戦がこのアンデルレヒト戦でした。しかし、彼をもってしても「伝統」は破れませんでした。

この日のディナモはDFビシュツァンを欠いたものの、ほぼベストメンバー。ここ最近はクロアチア・リーグでも固定メンバーで戦っており、連携面をアップさせてきました。
GKブティナ-(右から)DFエトー、ロヴレン、コヴァチ、クフレ-MFサミール、ヴルドリャク、バデリ、モラレス-FWパパドプロス、マンジュキッチ

開始から完全にゲームを支配したディナモ。対するアンデルレヒトは本来は攻撃的なチームながら、ワントップのスアレスを除けば、ほとんどの選手でゴール前を固めます。そんな状態をこちらの表現で「ペナルティエリアにバスを停めたような」と例えますが、クロアチア・リーグの下位クラブがディナモと相対するほどの徹底した守りぶりでした。
しかし、アンデルレヒトがクロアチアの下位クラブと違うのは、よりハードな当りとしつこいディフェンスでした。ディナモにほぼ45分攻めさせながら、決定的なチャンスを作らせません。また、ディナモを泣かせたのはハンガリーの審判団。ヨーロッパ・リーグでゴール裏のそれぞれに審判2人を追加した「6人制」を新たにテストしているわけですが、これがプラスには働かなかったのです(※私はカメラマンとしてこのゲームを撮影取材したのですが、このゴール裏の審判は撮影にとって邪魔で仕方ありません)。

nogomet-112275.jpg21分、モラレスから左に展開し、マンジュキッチ(写真)が疾走してペナルティエリアに入り込んだところを、背後からDFマズフが手を掛け、更に左足、右足とで引っ掛けて倒しましたが、ゴール裏の審判は3mほどの近さに立っていながらもファウルを取らず(動画)。怪しい判定をこれだけでなく、おおよそがアンデルレヒト有利に笛が吹かれていました。チャンピオンズ・リーグ予備戦のレッドブル・ザルツブルク戦でもそうでしたが、ヨーロッパの舞台でディナモが判定に泣くのはお決まりとなっています。ゴール裏の審判に関してはコヴァチも試合後、「何のために審判を置いているのかさっぱり解らない。無駄に金を使っているだけじゃないか」と文句を飛ばしています。

しかしながら、ディナモは審判だけに文句を押し付けられないい致命的なミスを犯します。34分、右サイドのサミールからオーバーラップしたエトーにパスが通り、折り返しはペナルティエリア中央で"ど"フリーのマンジュキッチに。簡単なシチュエーションにもかかわらず、マンジュキッチはシュートをクロスバーへと吹かしてしまいます。こんなシーンもヨーロッパの舞台では繰り返し見てきた光景。前半のディナモは内容がすこぶる良かっただけに、この決定機を外したツケは後半に訪れます。

nogomet-112276.jpg前半は守り一辺倒だったアンデルレヒトですが、後半から多少なりとも攻撃も意識するようになります。ディナモのペースがガクッと落ちたこともあるのですが、それでもディナモにコントロールされる時間が続き、カウンターのチャンスとなればコヴァチに冷静にかわされます。
ゴールの形をなかなか作れないディナモとはいえ、アンデルレヒトはシュートすら打てない状態であった74分、またして馬鹿げた失点が生まれます。
正面30mの位置でアンデルレヒトがファウルで直接FWを得ると、キッカーはDFベルナルデス(写真)。彼の前に立ったディナモの壁は4人。ベルナルデスはグラウンダーのシュートを放つと、壁に加わったマンジュキッチとFWスレピチュカが誤ってジャンプしてしまい、ボールは彼らの足元を通過。GKブティナも判断に誤り、そのままネット左下へと突き刺さりました。絵に描いたような愚かな失点。アンデルレヒトの初シュートが得点に繋がったのです。

nogomet-112277.jpg失点の直後、空から大粒の雨が一気に振り出します。夜は天気がもつと言われており、また傘は安全性の面から持ち込み禁止だったため、予想外の雨に2万人の観客はびしょ濡れに。それでも上半身裸となったディナモのサポーター「BBB」が激しい応援を続けます(写真)。
けれども、この雨は涙雨でありました。88分、アンデルレヒトは途中交代で入った16歳のFWルカクが左サイドをドリブルで60m近くを突進すると、マーカーのヴルドリャクを振り切ってペナルティエリアで折り返し。右から併走したMFレゲアルが押し込んで0-2。極々わずかなチャンスで「2点」を奪ったアンデルレヒトが、アウェーの地で貴重な勝点3を奪いました。
(クロアチア国営放送のニュース動画はこちら)

アンデルレヒトは名門とはいえ、ディナモにとって「勝たねばならない相手」ではなく「勝てるだろう相手」と評されていたわけですが、試合前から私は悲観的でした。しかし、審判の怪しい判定だ、100%決めねばならぬシュートを思い切り外すだ、終盤の情けない失点だ、と「お約束」のオンパレードで負けてしまったのには空いた口が塞がりませんでした。取材仲間とは溜息を付きながら、「ほんと毎年、いつも同じ話だよな」と惨めな気分でこぼし合いました。
また帰り際にはザグレブまで1時間掛けてやってきた高校生のグループに呼び止められ、帰りの電車代のカンパを頼まれたのですが(※クロアチアではよくあるケースです)、
「こんな酷い雨で何もかもがビショビショになっちまった。おまけに遠く足を運んだのにこんな酷い試合を見せられて…」
と愚痴られると、素直に協力する気持ちになるものです。お金をカンパし、お互いにこの日のディナモに文句を言い合ったわけでした。まだリーグラウンドは5試合残っているわけですが、こんな負け方は慣れっこだけに期待はとても持てません。

nogomet-112278.jpgもちろん、この人の怒りは大爆発です。「(余りの怒りとストレスで)死にそうになった」と語る副会長のズドラヴコ・マミッチは「全ての責任は選手たち」とし、今季にクロアチア・リーグやクロアチア・カップに優勝しようともプレミア(報奨金)は出さないことに決定。さらにマンジュキッチに対しては、チャンピオンズ・リーグ予備戦でのレッドブル・ザルツブルク戦(第1戦)で無駄なレッドカードをもらった責任に遡り、何と10万ユーロ(約1340万円)もの高額な罰金を科すことになりました。
「マンジュキッチはゴールを決めると、ユニフォームのエンブレムにキスをするが、あれはデマゴギーだ。我々が彼を必要とする時にはいつも使えない。彼一人が悪いわけではないが、彼に最も期待していただけに失望は大きいよ」
とマミッチは語っています。
またレッドブル戦に続き、アンデルレヒト戦でも審判に泣かされたことは「強盗に遭った。クラブと私に処分があるかもしれないが、敢えてこの表現を使わせてもらう。いや、言わねばならない。"強盗に遭った"のだと」と強烈に批判しています(マミッチの会見動画はこちら)。

(写真は、壊されてピッチに投げ捨てられたゴール裏の椅子)

このマミッチ副会長も行動パターンはもはや「お約束」です。年内には監督の首が切られ、新たな監督の下でクロアチア・リーグを優勝。そして次の欧州カップに向けて選手を整備し、失望のまま敗北、マミッチぶち切れ……。ストーリーはおおよそ同じとはいえ、今季もディナモの結果ではなく、大暴れする「マミッチ劇場」の展開に期待です。


posted by 長束恭行 |06:43 | サッカーニュース | コメント(0) |
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2009年09月16日

フットボリスタにW杯予選のレポートを書いています

更新が滞ってしまい、どうもすみません。今は再びクロアチアの外へと取材に出ています。

nogomet-111789.jpgもう試合から一週間が経ちましたが、クロアチアはイングランドに完敗どころか木っ端微塵でありましたね。ウクライナがベラルーシに引分けたことで、次のウクライナvs.イングランド戦でウクライナが勝点3を取らないようだと、クロアチアはカザフスタンに勝利すれば2位確保となります。
ここ最近のクロアチア代表の低調ぶりには、モドリッチ不在の影響だけでなく、ニコ・コヴァチのようなリーダーの不在が挙げられており、また選手起用に失敗したビリッチ監督にも矛先が向けられています。彼の右腕で、チーム一の頭脳と評されるプロシネチュキ(写真)が、ここずっと耳の病気でバランス感覚を失い、しばらくコーチ陣から外れているのも、ビリッチの迷走に繋がっているかもしれません。
国内ではあの負けっぷりによって「カザフスタン相手でもヤバいのでは…」と悲観論が漂っています。頭を冷やすのに一ヶ月あるのはアドバンテージかもしれませんね。

ここのところ忙しくて時間が経ってしまったのと、日本でも試合は放映されたので改めてここでレポートを書くつもりはありませんが、今日発売の海外サッカー専門誌「フットボリスタ」で「ボスニア・ヘルツェゴビナvs.トルコ」のマッチレビューと、「イングランドvs.クロアチア」の現地コラム、それに加えてヨーロッパリーグに挑むディナモ・ザグレブの記事を書いています。宜しかったらご覧になって下さい。


posted by 長束恭行 |14:37 | お知らせ | コメント(1) |
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