2008年06月19日
クロアチア・リーグ2008/09シーズン/各クラブの移籍動向
ユーロ2008の盛り上がりで隠れてしまってますが、クロアチアの各クラブが始動しています。選手の移籍話を幾らかピックアップしてみましょう。 チャンピオンズ・リーグ予備予選一回戦から戦う昨季のリーグ王者ディナモ・ザグレブは、ブランコ・イヴァンコヴィッチ監督の下、18日から始動しています。一年前の同時期と比較したら、FWエドゥアルド、MFモドリッチ、MFヴコイェヴィッチ、MFポクリヴァチュ、DFチョルルカ、DFチャレ、DFシルデンフェルト、FW/MFヴグリネツ、GKコッホと多くのレギュラー陣が抜けていったわけですが、新たな補強選手をブラジル以外の南米に求めていきました。 まず目玉はチリ代表の攻撃的MFペドロ・モラレス(23)。ツーロン国際ユース大会のコートジボアール戦では40mのロングシュートを決め、日本戦でも得点を決めた新鋭の司令塔で、現在南米W予選を戦うチリA代表でもレギュラーを務めています。これまではウニベルシアタード・チリに所属し、2007年シーズンは13得点でリーグ2位につけました。競争の中、モドリッチの後釜として5年契約にて獲得。更にアルゼンチンのティグレから攻撃的MFジェレルモ・スアレス(23)、ボガ・ジュニオルスから左SBルイス・イヴァネス(20)も獲得しています。 またレンタルからMFダリオ・イェルテツ(←リエカ)、MFアンテ・トミッチ(←ザンティ[ギリシャ])、DFデヤン・ロヴレン(←インテル・ザプレシッチ)が復帰。GKは元代表のトミスラフ・ブティナが復帰した一方で、2006/07シーズンに正GKだったフィリップ・ロンチャレヴィッチが戦力外となっています。ちなみに去就の際にクラブ幹部と揉めたドイツ人GKゲオルグ・コッホは、契約を破棄したのちラピッド・ウィーンに移籍しています。 財政難の救済策として株式化を進めているハイドゥク・スプリトですが、こちらも16日から始動しています。ヴチェヴィッチ新監督の下には18人の選手から集まらず、未だに選手補強に苦しんでいるところ。昨季にレンタルでディナモ・キエフからやってきて、司令塔を務めた元ルーマニア代表MFフロリン・チェルナトですが、買取オプションを使用しようにも200万ドルの資金の目処が立たずに断念。代わりにオーストラリア代表MFヨシップ・スココ(32・昨季はヴィガン・アスレチック所属)の復帰を画策中です。またザダールのU-21代表MFマリン・トマソフ(20)も新たな司令塔候補として名前が挙がっています。 外国人選手としては、元ルーマニア代表MFのアリン・ストイカ(28・昨季はムスクロンに所属)、ユベントスが所有するスイス人MFダヴィデ・チウメント(23・昨季はヤング・ボーイズにローン)、インテルが所有するマケドニア人FWゴラン・スラヴコヴスキ(19・昨季はシェフィールド・ユナイテッドにローン)の獲得の打診があると言われていますが、いずれも具体化した話ではありません。 また獲得済みの選手にはフルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツから左SBのイヴァン・スティリニッチ(21)、また将来の代表候補と言われるザダールのGKダニエル・スバシッチ(23)が挙げられます。 逆にチームを離れた選手としては、昨季にトップチームのデビューを果たしたユース選手のデューイェ・チョップ(18)が、ハイドゥクとはプロ契約を結ばずにポルトガル一部のナチオナルと契約しました。 また移籍希望を公表していたFWアンテ・ルカビナは練習に参加、また足首の怪我に悩むDFイゴール・トゥドールは、リハビリは順調とはいえ、まだボールを扱った練習はできない状態です。 ブラジェヴィッチ監督が去り、パブロヴィッチ氏が新たに率いるNKザグレブは、ディナモと契約が切れた元代表FW/MFダヴォール・ヴグリネツ(33)と2年契約を結びました。ディナモとは契約延長の話があったものの、出場機会の少なさに不満を持っており、ザグレブとしては若手を引っ張る存在として期待されています。 しかし、ザグレブは主力の移籍が続くのが予想されており、既にチームを離れることが決まったGKドラガン・ストイキッチ(32)に続き、ボスニア代表DFサフェト・ナダレヴィッチ(28)が新たにトルコ一部に昇格するエスキセヒルシュポールに25万ユーロの移籍金で移籍。3年契約を結ぶことになっています。


既にオーストリア戦、ドイツ戦の二連勝でグループリーグ突破を決めたクロアチア。この状況はブラジェヴィッチ監督が率いたユーロ1996、ワールドカップ・フランス大会と一緒なわけですが、ユーロ1996ではブラジェヴィッチ監督が「ドイツの方が楽な相手だ」と豪語し、第3戦のポルトガル戦でスタメンを落として0-3で敗北。クロアチアが勝てばデンマークが抜ける可能性があっただけに、スウェーデン主審が笛を吹いた準々決勝ではドイツにやたらと偏った判定で敗れたという経緯がありました。その2年後のアルゼンチン戦では逆にほぼベストメンバーで戦い、0-1で敗れています。
今回は既にグループリーグ1位が確定しており、グループリーグで受けたイエローカードが決勝トーナメントでは帳消しになること、また疲労や軽い怪我のある選手がいることから、論理的にもメンバーを入れ替えてきました。ドイツ戦と比べると、ラキティッチとプラニッチを除く実に9人がスタメンに。ビリッチは23名を決定する際には各ポジションを2人でカバーできるよう考えており、今回出場した選手たちは基本的に自分の得意な、もしは経験のあるポジションにつきました。スタメンは以下のようです(4-4-2)。
GKルニェ-(右から)DFシミッチ、ヴェイッチ、クネジェヴィッチ、プラニッチ-MFレコ、ヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ、ラキティッチ-ペトリッチ、クラスニッチ
ベーンハッカー率いるポーランドは、グループリーグ突破にはクロアチアに勝利するだけでなく、ドイツにオーストリアが勝利した上でオーストリアと得失点差を上回るという厳しい条件しか残されていません。オーストリア戦に続き、ブラジルからの帰化選手ロジェールが先発出場。その一方でエースのスモラレクがベンチスタートだったのは意外で、DFバク、DFゴランスキも先発から外れました(システムは4-2-3-1)。
GKボルツ-DFワシレブスキ、ゼブラコフ、ドゥドカ、バブジニャク-MFムラブスキ、レバンドブスキ-ロボジンスキ、ロジェール、クルジノベク-FWサガノブスキ
今回のスタメンを、あるメディアは「Bチーム」どころか「Cチーム」とまで揶揄し、ビリッチの師匠格に当たるブラジェヴィッチ監督もこのスタメンでは勝てないだろうと悲観的だったわけですが、一緒でプレーするのは最初で最後であろうイレブンはAチームと遜色ないプレーをします。コンパクトなサッカーを意識しながら、とりわけプラニッチ(写真)が果敢に左サイドをオーバーラップします。
とはいえ、試合の序盤10分はポーランドがペースを握ります。ポーランドがプラニッチが上がった隙を狙い、9分にロボジンスキの危険な右クロスが入るものの、ルニェがパンチング。この際にクネジェヴィッチがルニェと衝突して左足膝の靭帯を痛めてしまいます。その後もクネジェヴィッチは痛みに耐えながらプレーしましたが、27分にチョルルカと交代。チョルルカは右SBではなく、そのままセンターバックの位置に入りました。ちなみにクネジェヴィッチの大会中の復帰が無理となり、ビリッチ監督は「大きなハンディキャップ」と嘆いています。
試合に戻りましょう。クロアチアは中盤のボールの奪い合いを制し、10分過ぎからゲームをコントロールするようになると、攻撃の形を次第に作っていきます。とりわけ、唯一の司令塔とも言えるラキティッチがリズムを与えていきました。シュートに結びつかなったとはいえ、14分にはクラスニッチのスルーパスからプラニッチが左サイドのスペースを突いてクロス。20分、ラキティッチの右FKにヴェイッチがヘディングシュートを試みますが、ボールはわずかに左ポストを逸れていきます。
ビッグチャンスは32分に訪れます。ペトリッチとのワンツーで抜け出したクラスニッチがGKボルツと一対一となり、左足でシュートするもののボルツがセーブ。37分にも左のスペースに走り込んだプラニッチがペトリッチのパスを受けてシュートするも、これもボルツがセーブします。39分にはペトリッチ、44分にはレコがミドルシュートを放つものの、それぞれポストを逸れていきます。
「ボルツが素晴らしいGKでなければ、既に前半で2-0とリードできていた」
こうビリッチ監督が語ったように(ちなみに試合後、ビリッチは息子に頼まれてボルツのユニフォームをお願いしていました)、ロスタイムにもクラスニッチが縦のボールを前にして二人のDFを背にし、それぞれをかわして最後はマイボールにしてボルツと一対一になったものの、これまたボルツが足を伸ばしてセーブします(写真)。幾つものチャンスを作ったとはいえ、スコアレスで前半を折り返します。
後半に入って直ぐ、ドイツがオーストリアに先制したことがスタジアムの大画面に表示されます。これでポーランドは気落ちしたのか、53分、とうとうクロアチアに先制点が訪れます。ルーズボールの競合いでクラスニッチがワシレブスキに倒されるものの、審判はアドバンテージを取り、ボールを拾ったプラニッチが左から持ち込んで、最後は立ち上がったクラスニッチへラストパス。「キラー」の愛称にふさわしい彼らしいゴールでした。ノートラップで左足を振り抜くと、ボールは高スピードで右ネットに突き刺さります。腎臓移植の困難を乗り越え、代表における2年ぶりのゴールでした(写真左から二人目)。
「ネットにボールが収まったのを見た時、健康を勝ち取るための力とモチベーションを与えてくれた妻子や両親、弟のことを思い浮かべた。僕は自分の幸運をサポーターと分け合いたかった。彼らもまた応援してくれただけにね。人間は再び戻ってこれること、希望はいつも存在することを僕は世界に示すことができたんだ」
クラスニッチは試合後、声を震わせながらミックスゾーンで語ったそうです。このゴールは単なる一点ではなく、クラスニッチが決めたということでチームの士気を特別に高める一点となりました。
このままでは引き下がれないポーランドはスモラレクを投入します。63分、ペナルティエリアでロジェールがトラップで相手をかわしてシュートするもボールは左へ。67分にはサガノフスキがどんぴしゃでヘディングシュートをするも、ルニェがしっかりとキャッチ。
74分、拍手で送られながらクラスニッチとペトリッチがピッチを去り、カリニッチとクラニチャールを投入。なるべく守備を意識して、逃げ切りに入ります。ポーランドは81分、スモラレクがバイタルエリアで次々と選手をかわして左足でゴール左上隅をシュートで狙ったもののわずかに外。88分にはスモラレクの縦パスに、チョルルカのクリアミスも手伝ってザホルスキがGKルニェと一対一に。クロアチアにとっては危機一髪でしたが、ルニェは左足一本でシュートを止めます(写真)。
主力を温存しながらポーランドを1-0で退け、グループリーグ全勝で決勝トーナメント進出に入ることとなりました。この試合におけるチームの喜びよう、またサポーターの熱の入れようも特別。「Bチームだから来て損した」-そんな考えが微塵も起こらないほどのゲームでありました。「クロアチアAチームvs.Bチームだ」とか、「むしろBチームが強いのでは」なんて冗談話が起こっているほどです。
試合後、ビリッチ監督は
「非常に良いプレーをしたね。唯一のピンチも調子の良かったルニェがエレガントに処理してくれた。走力、テクニック、戦術の全てが素晴らしかったし、クオリティがあった。最高レベルだよ。このポーランド戦は、これから続く人生のテストのために準備していた。そう、トルコ戦のための準備だ。ただ、今は少し落ち着かなければならない。何でも起こりえるのだからね。とはいえ、我々は偉大なチームだ。とりわけ選手たちを誇りに思っているし、この先も誇りに思うことだろう。少しだけの幸運は必要だ。けれども、私たちは幸運を得るに値すると考えている」
とコメント。またゴールを決めたクラスニッチに関して外国メディアに聞かれると
「彼がどれだけ健康のためにドラマティックな戦いをしたかというのを外国人は知らないはずだ。イヴァン(クラスニッチ)のためにクロアチア全国民が祈った。その信念というのは恐ろしいほどだった。彼がいなかった時でさえも、彼は我々を元気づけてくれたんだ。今、彼はクラブでも代表でも輝きを持って帰ってきてくれた。これは完璧なストーリーだよ」
と答えています。
いよいよ決勝トーナメントへと突入します。準々決勝の相手はトルコ。過去の戦績は1勝2分で、トルコには怪我人とサスペンションが多いだけにクロアチアに分がありますが、スイス戦とチェコ戦をひっくり返した勢いは本物。しかしながら、準決勝まで勝ち進む可能性は十分にあるはず。きっと激しい試合になるでしょう。
試合は20日、会場はウィーンのエルンスト・ハッペル・スタディオンです。先ほどUEFAからパスが下りたというメールが届いたので、この試合も夜行列車を絡めて取材してきます。
ドイツ戦とは9人を入れ替えたわけですが、押し込まれた時間帯はあったとはいえ、ポーランドをよくコントロールし、腎臓移植から復活したクラスニッチの"復活弾"で1-0で勝利しました。チームの士気を高めるだけでなく、これでクラスニッチが自信を高め、これからは切り札として計算できることは素晴らしい展開です。
ゴールを決めたクラスニッチは
「このチームの一部であることを嬉しく思う。ジャーナリストたちはCチームだと馬鹿にしたけど、このユーロの舞台にいること、そして監督が僕たちを計算に入れていることを証明できた。彼らと一緒にプレーできたことはハッピーだし、感謝しているよ。
再びサッカーをプレーする幸せを感じているし、以前にも言ったけどこれは私にとって第二の人生なんだよ。今日、ピッチを走って、ゴールを決めたことは僕にとって夢のようだ。」
と喜びを口にしています。
次はトルコとの準々決勝。20日、舞台はウィーンのエルンスト・ハッペル・スタディオンです。選手を十分に休ませられたとはいえ、落とし穴があるとしたら次のトルコ戦かもしれません。それでも今は勝利の高揚感を味わいたいと思います。
そろそろ帰りの夜行列車があるので、写真と一緒の詳しいレポートはまたザグレブに戻り次第アップします。
ちなみにクロアチア人とポーランド人は同じスラブ民族であり、お互いが親近感を抱いている関係にあります。唯一問題を挙げるとしたら、ポーランド国歌がかつてのユーゴラビア国歌と同じメロディというのがあったのですが(クロアチア人はユーゴ嫌いですので)、それをネタにクロアチアのサポーターがポーランドのサポーターとコミュニケーションを図っているのを見ると、それすらも問題にはならないようです。
クロアチアのビリッチ監督は昨日の記者会見でスタメンを明かすことをしませんでした。
「君たちが布陣に関心を持っているのは分かっているが、それは月曜日に明かすつもりだ。代用の一つとはいえ、可能性をもった素晴らしい布陣となるだろう。なぜならば全員が自分本来のポジションでプレーすることで、コンパクトで落ち着きがあり、スピードもあって高さにも強い布陣となるからだ。ポーランド相手に勝利を望んでいる、と私が繰り返して口にするのは愚かなことだよ。そう望むのは当たり前の話だからね。
レギュラー組と控え組というようにチームを二つの分けてはいないんだ。ある選手がレギュラーになれない、なんて完全に決定づける理由なんてあるのかね? 全員が100%準備をしているんだ。相手は強いだけに、今日、彼らが素晴らしいプレーをするための必要条件はあるのさ」
とビリッチは語っています。
ユーロ1996ではグループリーグでトルコ、デンマークと二連勝したのち、当時のブラジェヴィッチ監督は準々決勝でドイツと対決することを望んで、ポルトガル戦に控えを出して惨敗。チームの士気にも影響し、ドイツ戦でも破れてしまったことがありました(ちなみにビリッチはポルトガル戦でスタメン出場した数少ないレギュラー)。ですので、控え中心に出すことに否定的な意見も挙がっているのですが、既にグループリーグ一位が決まっており、準々決勝で対戦するトルコよりも中日が一日少ないこと、また決勝トーナメントではグループリーグのイエローは帳消しになることを考えれば、選手を温存するのは懸命な策と言えます。
スタメンは以下のように予想されています。レコはイエローを一枚持っていますが、クルジノベク対策で起用すると見られています。
GKプレティコサ-(右から)DFシミッチ、クネジェヴィッチ、ヴェイッチ、プラニッチ-MFレコ、ポクリヴァチュ、ヴコイェヴィッチ、ラキティッチ-FWペトリッチ、クラスニッチ
一方のポーランドはオーストリア戦の時と左SBを変えた布陣になりそうです。
GKボルツ-DFワシレブスキ、ゼブラコフ、バク、ゴランスキ-MFドゥドカ、レバンドブスキ-サガノブスキ、ロジェール、クルジノベク-FWスモラレク
見所としては、アンドラ戦以来のツートップとなるペトリッチとクラスニッチが今大会のジョーカーとして生まれ変わるのか、またディナモで素晴らしいコンビを組んでいたポクリヴァチュとヴコイェヴィッチの両ボランチのバランス、左サイドのプラニッチとラキティッチの連携の熟成などが挙げられましょう。キックオフは20時45分(日本時間翌日3時45分です)。
今回のユーロは好試合が続いていますが、各国のサポーターもその盛り上げに一躍買っています。個人的にはルーマニア・サポーターの暑苦しさがクロアチア・サポーターと近くて親近感が湧きました(写真は爽やかですけど(笑))
昨日のルーマニアのサッカーは猛攻を防ぎながら、鋭い攻撃を何度を見せましたよね。1999年にルーマニアを訪れた際にディナモ・ブカレストの試合を観戦した際に印象に残った右MFのフローレンティン・ペトレがチーム最年長でプレーしているのに気づき、懐かしさを覚えました。グループCも面白い展開になりましたね。
試合後、夜行列車でザグレブへと戻ります。気温の変化や疲れで多少風邪気味ですが、まだまだ取材は続くのでザグレブで仕切り直しし、それから16日はまた日帰り(帰りは夜行列車ですが)でクロアチアvs.ポーランド戦を撮影取材する予定です。クロアチア関連の記事は

