2011年07月13日
ヨーロッパで「ユーロ」(欧州選手権)はワールドカップと並ぶほどの盛り上がりをみせ、グループリーグからハイレベルな戦いとなる一大サッカーイベントです。ポーランド・ウクライナ共催となった「ユーロ2012」の開幕まで一年を切り、現地では着々と準備が進められています。
ウクライナは2008年に訪れ、ユーロ開催の準備が遅れている状況をレポートしていますが(「ユーロ開催は大丈夫? ウクライナの現状」、今回はもう一つの開催国ポーランドを取り上げます。私が滞在するリトアニアはポーランドの隣国にあり、6月中旬に友人訪問がてら同国のサッカーどころを巡ってきました。インフラ整備が着々と進むポーランド事情を写真と共にお伝えします。
ワルシャワの文化科学宮殿前にはユーロの幟(のぼり)が立てられる。
開幕戦が行われるのが、ポーランドの首都ワルシャワ。ユーロ開催に合わせて改修が進められる中央駅の東に、高さ237mの文化科学宮殿が高くそびえています。宮殿の正面にはこうして幟が飾られていました。ポーランドの開催地はワルシャワのほか、ポズナン、ヴロツワフ、グダニスク。それぞれのスタジアムが花に見立てられています。
文化科学宮殿の西側面には巨大なプラカードが。
この宮殿はスターリンから贈られた共産主義時代の象徴としてワルシャワ市民に嫌われた存在ですが、どこからも目に入るランドマークでもあることから、ユーロのプラカードがこうして掲げられています。
建設が進められるワルシャワの国立スタジアム。
ポーランド語では「Stadion Narodwy」。老朽化して一時は闇市場と化していた「10周年スタジアム」(7万人収容)を取り壊し、ユーロ開催権を獲得した翌2008年から新スタジアムの建設が進められています。収容は58,145人。開幕戦を含むグループリーグ3試合、準々決勝と準決勝の会場となります。
国立スタジアムの建設は半年の遅れ。
キエフの国立スタジアムは建設遅れが批判されていますが、ここワルシャワの国立スタジアムも建設が遅れ気味。設計ミスや死亡事故も発生し、本来は今年6月のフランス戦が柿落としとなるはずが間に合いませんでした。9月のドイツ戦すらも間に合わず、いずれもグダニスクで代替開催。遅れに遅れた工期は今年11月に終了する予定です。
改修が終わったレギア・ワルシャワの本拠地「ポーランド陸軍スタジアム」。
レギア・ワルシャワはリーグ優勝8度、カップ戦優勝14度を誇る同国随一の名門。1916年、軍人によって創設された歴史の名残はスタジアム名から読み取れます。長年に渡って論議を重ねられたのち、2008年にスタジアム再建がスタート。半完成状態でも使用されながら、今年5月に最終的な完成となりました。真新しいのにもかかわらず、レギア・サポーターのシールが至るところに張られています。収容は31,103人。
スタジアムに隣接されたファンショップ。
レギア・ワルシャワの人気の高さはグッズが充実したファンショップに入れば分かります。ディナモ・ザグレブでは地味な存在だったクロアチア人MFイヴィツァ・ヴルドリャク(27)が主将を務め、今や人気選手の一人として写真やユニフォームが店内に掲げられていました。隣接のミュージアムは入場無料。ミュンヘン五輪の得点王カジミエシュ・デイナの特別展示があります。スタジアム向かいにはサポーターショップもあり、ディープなマフラーやシャツも購入可能。レギア・サポーターは非常に熱狂的で、2007年のインタートトカップのヴァトラ戦(リトアニア)で2500人のサポーターが大暴れ(動画)。UEFAからレギアは欧州カップ追放の処分を受けました。ポーランドはフーリガン問題が未だに根強く残っており、国家的問題となっています。
世界遺産に指定されたワルシャワ旧市街。
第二次世界大戦で徹底的に破壊された旧市街は昔と全く同じように再現され、1980年にはユネスコ世界遺産にも指定されました。広場にはカフェが並び、ユーロ開催中はサポーターで賑わうはず。私は売店で缶ビールを買い、飲みながら旧市街を歩いていたところ、ビラ配りのお姉さんに「気をつけなさい! 警察に見つかったら罰金よ」と忠告されました。新法律では公共の場所でアルコール飲料を飲むことは許されないそうで、大会開催中は多くのサポーターが罰せられるかもしれません。
ポロニア・ワルシャワの本拠地「スタディオン・ポローニー」。
旧市街を抜けて北に10分ほど歩けば、1911年創立の古豪ポロニア・ワルシャワの本拠地に到着します。「スタディオン・ポローニー」は収容7,230人と小さいものの、戦時を連想させる迫力のこもった壁画に圧倒されました。木陰でこっそり飲んだ缶ビールで私はホロ酔い状態。レギア・ファンショップの土産袋を隠すのを忘れてスタジアム周辺をうろついたところ、ポロニアのサポーターと思わしき若者が「お前、こんなものぶら下げてここを歩くな! ボコボコに殴られるぞ!」と怒られてしまいました。宿敵レギアを侮辱する落書きも至るところに。サポーターは人種差別を嫌っており、のちにポーランド代表に登り詰めたナイジェリア人FWエマヌエル・オリサデベが活躍したクラブでもあります。
王者ヴィスラ・クラクフの本拠地「スタディオン・ミエイスキー」。
21世紀になってから7度のリーグ優勝を誇り、昨季もリーグを制したヴィスラ・クラクフの本拠地。残念ながらユーロ開催地から漏れ、予備地止まりになってしまいました。2004年が増築・改修が始まり、私が訪れた際にはほぼ完了。残るは正面スタンド周辺の整備が残されていました。収容33,268人。かつてのヴィスラの名選手にちなみ、スタディオン・ヘンリク・レイマンという名前もあります。
これまた最新のクラコヴィアの本拠地「ピウスツキ元帥スタジアム」。
ヴィスラの本拠地から1kmもない距離にも2010年完成の最新スタジアムがあります。ここを本拠地とするのがクラコヴィア。ヴィスラと宿敵関係にある中、1999年に4万人収容の共同スタジアム建設の構想が挙がったものの、両サポーターの反発によって流れてしまいました。ポーランド共和国建国の父の名前がついた最新スタジアムの収容は15,500人。ヴィスラの陰に隠れがちなクラコヴィアのサポーターは、同じくレギアの陰にあるポロニア・ワルシャワのサポーターと友好関係にあり、クラブそのものも1860ミュンヘンと提携を結んでいます。
この数年間でポーランド全土において13ものスタジアムが新築・再建されたとのこと。ユーロ開催が手伝って急速にインフラが向上しており、クラブ間の競争も激化しています。昨季のヨーロッパ・リーグでマンチェスター・シティに勝利し、ユベントスを差し置いてグループ突破を果たしたレフ・ポズナンが今季の欧州カップの出場枠を取れなかった事実一つとっても、その激しさが分かるというものです。リーグの関心も高く、レギア・ワルシャワで平均観客が2万人。またウクライナやロシアのように一部の選手年俸が突出せず、レギアで最高50万ユーロと、チーム経営も地に足がついています。現在のポーランド・リーグはUEFAランクで24位に甘んじていますが、ユーロ開催を契機に今後最も発展していく東欧リーグだと私は見ています。
最後にもう一枚、ワルシャワでの写真を。ユーロ2012のロゴでデザインされた花壇です。これからますますポーランドもユーロ一色になっていくでしょう。
posted by 長束恭行 |21:21 |
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2010年03月21日
現在、半分取材を兼ねた旅行でキプロスに来ています。地中海でキプロスはクロアチアと負けず劣らずの観光国ですが、こちらは更に温暖な気候な土地だけにプレシーズンだろうが多くの観光客が訪れています。日本からの観光客はまだまだ少ないものの、海洋リゾートや遺跡好きならば気に入る国のはず。とりわけ旧宗主国だったイギリスからの観光客(とりわけ年配組)が多いようで、移住向けに随分とお手頃に不動産物件が売買されているようです。
人口100万人にも満たない国ながら、アノルトシス・ファマグスタ、APOELニコシアと二シーズン連続でキプロスのクラブがチャンピオンズ・リーグ本選に出場しています。ちょうど手頃な航空券を手に入れたこともあって、この快挙の背景の裏にあるのは何か知るべくキプロスにやって来た次第です。メインは日曜日のAPOELニコシアvs.オモニア・ニコシアの首位決戦ですが、土曜日にAELリマソールでプレーする元ボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFドゥシャン・ケルケズ(33・写真)にインタビューすることに成功しました。彼は2005~2007年にリエカでプレーしたこともあって、どんな選手かは知っていたのですが、今ではキプロスで3番目に人気のあるAELリマソールで常時レギュラーかつキャプテンを務めています。アポなしだったとはいえ、練習後に30分以上に渡って話を聞けました。
また詳しくはレポートで書けたらと思っているのですが、キプロスという国がスポーツに投資した者(つまりスポンサー)に対して税金優遇を施しているのと、高額な放映権がクラブに入ることで潤沢な資金を抱えており、あちらこちらから外国人が流入しています。キプロスはEU加盟国であり、EU圏外の選手でも1年プレーすればEU圏の選手扱いを受けることから、11人全てが外国人になることは稀ではないようです。とりわけ最近は安い価格で若いポルトガル人を獲得するのがブームとなっており、彼らも更に有名なクラブに移籍するためのステップアップの場と考えている、と教えてもらいました。
ただし、フロントに辛抱強さがなく、成績が悪いと直ぐに監督のクビを切ってしまうのが問題のようです。結局は指導者も選手も外国人次第のところがあり、結果的にはインフラを含めた長期プランを実行してきた上位のクラブが着実に力をつけ、選手も売却せずに長くチームに留めてきたことで、欧州クラブシーンにおけるキプロス旋風に繋がっているそうです。
しかし、なぜキプロス代表が比例して強くならないかと言うと、直ぐに強化を施したいクラブが外国人頼りになってしまうのと、キプロス人選手そのものが自惚れ屋で自己努力を励まないのが要因のよう。キプロス人は「自分は最高だ」と練習後に居残りすることなく、さっさとカフェに行ってしまう、とこの日も練習後に追加で筋トレを行っていたケルケズは嘆いてました。あとは北キプロス(占領したトルコ人勢力)の脅威から若い選手も2年間の兵役を行かねばならず、それが選手の成長に大きく阻害していると政治的な側面からも理由を教えてくれました。ちなみにケルケズはセルビアの首都ベオグラード生まれでパルチザン・ベオグラードのユースを経たのち、父親がボスニア生まれのセルビア人ということからボスニア・ヘルツェゴビナのリーグ、そして同国代表でプレー、更にクロアチアのリエカでもプレーしたという変り種です。各民族に友人がいるだけに、政治的テーマはキプロスでも好まないようでした。
ちなみにキプロスには旧ユーゴ系の選手が30人ほどプレーしています。同じくAELに所属するマケドニア現役代表MFヴラトコ・グロズタノスキからも同じ話を聞きましたが、気候に恵まれ、人々もフレンドリーで、給与も本国以上のキプロスはサッカー選手にとって天国のようです。人口が少なくともサポーターはギリシャ人やトルコ人と同じくサッカーに対して熱狂的で、ケルケズは"病的"とすら形容してました。また自分以上に家族がこの土地を好んでくれていることが夫として本望らしく、将来もキプロスでコーチ業に進む道を考えている、とも述べていました。
スタンドで行った彼へのインタビュー中に12位のアリス・リマソールと8位のエトニコス・アチナスの公式戦がありましたが、プレーそのものはクロアチア・リーグの同ランクのチームよりもレベルは高く、となると日曜の首位決戦はどんな戦いになるか楽しみであります(APOELとオモニアは政治的理由で分裂したこともあり、ライバル意識も強かったりします)。
旅行そのものは、ホテルがオーバーブッキングだったり、レンタカーが山中でパンクしたり、と何かとトラブル続きではありますが、月曜日には帰国する予定です。
posted by 長束恭行 |02:12 |
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