2010年08月11日

ディナモのマミッチ副会長、わずか2ヶ月でザイエッツ監督を解任

8月9日、ディナモ・ザグレブのヴェリミール・ザイエッツ監督が、最近の不振ぶりに機嫌を損ねたズドラヴコ・マミッチ副会長によって解任されました。監督の首をすげ替えることはディナモにとって恒例行事みたいなもので、ザイェッツの在任期間はわずか76日という短期間でした。

nogomet-180697.jpgクルノスラフ・ユルチッチの辞任により、5月25日にディナモ監督に就任したザイエッツ(写真)は、1980年代のディナモにおける伝説的なDF。ディナモ、パナシナイコス、ポーツマスを指導したとはいえ、監督経験の年数は2年に満たず、彼がチームを率いることにフロント内では反対意見が湧き上がりました。そんな中、ザイエッツ就任を一人押し通したのがマミッチ副会長。クラブを我が物とするマミッチを敵対視し、昨季の最終節も応援ボイコットしたサポーターグループ「バッド・ブルー・ボーイズ(BBB)」への懐柔策として、人気のあるザイエッツを起用した、というのが背景でした。(弟のゾラン・マミッチですらも監督起用に反対したという噂)

ザイエッツは失われた観客やサポーターを取り戻すべく、魅力あるパスサッカーを構築しようとしました。まずはスーパーカップでハイドゥクに勝利してタイトルをもたらし、チャンピオンズ・リーグ予備戦二回戦第1レグのルカ・コペール戦では5-1の快勝。順風満帆と思われた滑り出しでしたが、フロントはFWマンジュキッチをヴォルフスブルクに売却。その後はやたらと決定力不足に泣き、1勝3分2敗とチームは低迷しました。チャンピオンズ・リーグ予備戦三回戦でモルドバのシェリフ・ティラスポルを相手によもやの敗退。クロアチア・リーグでも3試合で勝点4の8位に甘んじています。

7日のヴァラジディン戦(1-1)の後、ザイエッツ監督の首はそろそろ危うくなっているのでは、とメディアは黄信号を灯したのですが、マミッチ副会長(写真)の行動は予想以上の早さでした。8日に経営委員会の各メンバーに電話で承認を得た上でザイエッツ解任を決め、そして翌日にメディアを集めてからいつものようにモノローグを展開しました(会見はこんな感じです→動画)。

「私が責任を取る準備は出来ているし、決して隠れるつもりはない。ここではっきりと簡単に言おう。ヴェリミール・ザイエッツはもうディナモのの監督じゃない。昨日の会議の結果、このまま続けさせるのは無理だと判断した。経営委員会の大部分のメンバーは海へとバカンスに出てしまっているが、電話で会議をし、今の状態を全会一致で断ち切ることに決めた。新たな解決策を探す時が来たんだ。

nogomet-180698.jpgコペールとの初戦は5-1で勝利したが、既にその時から問題は見えていた。そして問題は第二戦でエスカレートしてしまった(ザイエッツは視察のために指揮せず0-3で敗北)。もっと彼に責任感というものあったのならば、今頃はチャンピオンズリーグ出場を賭けて戦っていたはずだ。不幸のせいでシェリフに敗れたのじゃない。それはディナモを愛しているが、サッカーをまったく知らない人々が言う台詞だ。シェリフなんてコソボのテレプチェ・ミトロヴィチェ(昨季のコソボ・リーグ王者)と同レベルのチームじゃないか。第二戦では7人も選手を入れ替え、同じくポジションも入れ替えるなんて有り得ない。まるでリンゴと洋ナシを入れ替えたようなものだ。あの試合は人生を賭けるべき試合だろ。

我々の選手の欠点を考慮したところでも、今のチームが過去最弱なんて嘘は認めるわけにはいかない。マンジュキッチとヴルドリャクは去ったが、チームの骨格は維持したじゃないか。ハイドゥクなんて選手が放出する一方で、誰も連れて来ていない。しかし、我々は放出の一方で獲得もあった。FWがいないとの批判もあるようだが、ここ2年で11人のFWを抱え、新たに獲得したルカビナで12人目だ。それ以上のものはないだろ。ならば、ディナモに新たに連れて来るべき補強選手が誰か私に言ってくれないか? モラレスが1分もプレーしてないのは普通のことと言えるのかね? 残念だが今の私はマミッチじゃなく、蚊みたいになってしまった。私がサミールを何年間も擁護した時だって君達は叩いてきたが、今のサミールはブラジル代表に近い存在だ。なのに君達は再びマミッチは愚かなことを話していると言うのかね?

ザイエッツを連れてきたことに関しては、単に私が悪かった。私一人が経営委員会でも賛成したんだ。しかし、私は臆病者じゃないから、その失敗は認めよう。これまで1000もの失敗をやらかしたことも認めようじゃないか。しかし、私には経験があり、あらゆるものを理解しているのだ。
この決定は最良の意図の下で引き出したものだ。勇敢に責任を引き受けることでね。ザイエッツはクラブの崇拝対象であるだけに、替えてしまうのは非常に難しい。しかし、経済的な損失も問題となった。チャンピオンズリーグで数百万ユーロを獲る必要があったんだ。シェリフに敗れることなんて許されない、というのが我々の評価なのだ」

nogomet-180699.jpgこれはモノローグのほんの一部で、まだまだ独演会は続いたわけですが、実はザイエッツ本人への解任通告を完全に済ませていませんでした。前日、ザイエッツはヨーロッパリーグのプレーオフで対戦するジェールを視察するためハンガリーに赴いており、解任決定直後にディレクターのヴルバノヴィッチがザイエッツに電話を入れても通じず、結局は情報を掴んだメディアから本人の耳へと伝えられました。ザイエッツは携帯メールでこのようにコメントを残しています。

「ディナモを指導することで獲られた支持に対し、私はサポーターとメディアには感謝している。残念ながら私が作ろうとしたプレースタイルの試みは受け入れられなかった。私のディナモにこの先も多くの幸運が訪れるよう願っている。御機嫌よう。ヴェリミール・ザイエッツ」

マミッチ副会長がディナモの経営に加わった2001年以降、犠牲となった監督は12人(うちイヴァンコヴィッチは2度交代)。今のディナモに一貫性はなく、継続的な強化など不可能なクラブです。なのに高い目標ばかりを掲げ、「お金を生み出しているのは誰というのだ?」と迫るマミッチ副会長に誰も口答えできないのが現状です。

さすがに今回の一件はBBBも許すことができず、中心となる二団体ともがディナモの試合における応援ボイコットを決定。マミッチとの闘争を表明しています。

また新たな監督に関しては迷走中です。イゴール・パミッチが最右翼とされ、ディナモがオファーを送ったものの、本人がカルロヴァッツの監督に留まることを決意し、契約を2013年に延長したことを表明。マミッチ副会長は10日の記者会見で新監督を発表するでしたが、ダリオ・シミッチを連れての現役引退の記者会見となってしまいました(シミッチは選手としての限界を感じての引退)。

クルノスラフ・ユルチッチの再起用や、シベニクの監督を辞任したばかりのブランコ・カラチッチといった国内候補もいますが、現時点では外国人監督が濃厚とささやかれています。セルビアで監督経験のあるローター・マテウスやウォルター・ゼンガ、スロベニアやマケドニアの代表監督を努めたスレチコ・カタネッツといった名前が挙がっているようです。またマミッチ副会長がイヴィツァ・オシムを敬愛していることから、以前にも噂のあったアマル・オシムの線もあるのでは、とも個人的には推測しています。


posted by 長束恭行 |05:51 | サッカーニュース | コメント(0) |
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