2010年07月21日
佐藤寿人のディナモ・ザグレブ移籍を考察する
幸先良いスタートを切ったかと思われた今季のディナモ・ザグレブですが、3戦目にして化けの皮が剥がれてしまいました。昨日、チャンピオンズ・リーグ予備戦2回戦の第2レグ「ルカ・コペールvs.ディナモ・ザグレブ」が行われたのですが、ディナモは0-3の完敗。初戦のホームで5-1と勝利していたことで、かろうじて3回戦進出を決めたものの、GKブティナの好セーブが無ければ「0-4」で敗退、という最悪なシナリオも起こりうる試合でした。 中盤でプレスがかからず、ディフェンスラインの動きもチグハグ。シヴォニッチ、ドドー、スレピチュカのFW陣に存在感はなく、MFサミールが攻撃で一人空回りするのみ。 ザイェッツ監督は3回戦の相手が決まる「ディナモ・ティラナvs.シャリフ・ティラスポル」を現地視察したため、采配をアシスタントに任せたのも士気に影響したですが(ザイェッツ監督のこの行動に関しても批判あり)、攻守に渡ってここまでバラバラなディナモは久しぶりに見ました。 このチーム状況は、エースFWのマリオ・マンジュキッチのヴォルフスブルグ売却が大きく陰を落としています。"予想よりも移籍話が早く進んでしまった"(ザイエッツ談)ために、彼の代わりを務められるストライカーをフロントは準備してなかったのです。 フロントは直ぐにパナシナイコスに所属するクロアチア人FWアンテ・ルカビナ(24)の獲得に動きます。ザイエッツ監督はパナシナイコスの元選手・元監督・元スポーツディレクターとして深いパイプを持っており、クラブ間では移籍に合意したものの、ルカビナ本人が拒否してしまいました。 「オファーを出してくれたディナモには感謝しているよ。でも僕の全プランはパナシナイコスと繋がっているんだ。ポジション争いが厳しいのは分かっている。けれども、今季の僕は昨季よりも調子が良いし、今のチームでアピールしたいんだ。チャンピオンズ・リーグ本選に出場することも残留の理由の一つだ」 2005/06シーズンにシベニクで活躍した頃は、そのスピードと嗅覚で国内外を騒がせた逸材も、フランス代表FWシセ、ギリシャ代表FWスルピンギディスの陰に隠れてくすぶり気味。この夏から新たにフランス代表FWゴブが加入したことで、ルカビナの立場は厳しくなっています。すんなりディナモに加入すればコンスタントに出場機会が得られただけでなく、クロアチア代表入りも早かっただけに、彼の意固地にサッカー関係者も残念がります。断った背景の一つには、彼の代理人ショーショ氏とディナモのマミッチ副会長の関係が悪いことも囁かれています。 そんな中、日本ではサンフレッチェ広島の佐藤寿人(28)にディナモがオファーを出した、と報じられました。ディナモ側で情報が出てないため、その真偽は定かではないのですが、広島のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は80年代のディナモの選手としてフロントとパイプはありますし、冬のトルコのアンタルヤ合宿では毎年のようにトレーニングマッチを組んでいます。ディナモのフロントも佐藤選手を直に見る機会があり、2008年と2009年の試合で得点も決めているので、「関心を持っている」可能性は間違いないでしょう。 長年に渡ってディナモを現地で追っている立場として、佐藤選手が移籍することはプラスなのか、マイナスか考察してみました。 【ポジション争い】…評価◎ ザイエッツ監督が「うちにFWが必要なのは当然の話だ」と言明するように、今のディナモで最も薄いポジションです。現在、以下の4人のFWをディナモは抱えています。 ○ミロスラフ・スレピチュカ(28) 昨季:15試合4得点 ※元チェコ代表 ○アンドレイ・クラマリッチ(19) 昨季:24試合7得点 ※U-19クロアチア代表 ○ドドー(22) 昨季:26試合7得点 ※ブラジル人、昨季前半はインテル・ザプレシッチ所属 ○イリヤ・シヴォニッチ(23) 昨季:24試合9得点 ※昨季後半はインテル・ザプレシッチ所属 それぞれ長所・短所があるのですが、共通して言えるのは「いずれも本物のストライカーではない」ということです。スレピチュカはポストプレーが巧みですが、シュートを打つ姿勢に欠ける選手です(柳沢タイプ)。その上、怪我を抱えているために無理はさせられません。ドドーはフィジカル能力は高いものの、戦術理解が余りに未熟。シヴォニッチは時にセンスが光るものの、その柔和すぎる性格(言ってしまえばチキン)のために大一番で活躍できません。 チームが最も期待を寄せるのがクラマリッチ。ストライカーナンバー「9番」の伝統を受け継ぐ選手として、昨季からプッシュし始めたディナモ・ユース出身のストライカーです。一年目の成績としては充分ですが、連携面に問題があり、ピッチから消えてしまうのもしばしば。開花するにはもうしばらく待たねばなりません。 生粋の点取り屋であり、怪我に強い佐藤選手は今のチーム状況ならば、レギュラー獲得は間違いないでしょう。 【試合】…評価△
「Jリーグとクロアチア・リーグはどちらが上か?」-この質問に私は、"やっているサッカーが違う"とよく答えます。攻守の切り替えが速いJリーグに対し、クロアチア・リーグはもったりとしたサッカーをします。とりわけディナモが相対するチームは、ライバルのハイドゥクも含めてガチガチに守ってくるため、ディナモはボールを回しながら相手の隙を探さねばなりません。ザイェッツ監督になってから更に速いパス回しが要求されるようになりましたが、その精度はまだまだ未熟。それでも国内で勝利できるのは、個人能力の差によるものです。MFサミール、MFモラレス、MFバデリ(写真)はボールテクニックに優れ、ミドルレンジからのシュートも持っています。 逆に欧州カップで格上に挑むと中盤を制圧され、何とか守備で持ちこたえるものの、後半に集中が切れて負けるケースがしばしば。攻撃に転じても相手スペースを有効に使えません。国内外で戦いが異なるのがディナモのジレンマで、「国内リーグでは70分で試合が決まるが、欧州カップは70分から試合が始まる」は言いえて妙です。 つまり、佐藤選手は普段の国内リーグの試合だと、スペースのないペナルティエリアで190cm前後の屈強なDF陣と相対することになります。相手の裏を取る動きは有効でしょうが、そこにパスが出てくるかは限りません。サンフレッチェのような連動性はなく、インスピレーションに頼るMFが多いため、相互理解には時間が掛かるはず。その一方で欧州カップでは、目の前にスペースがあってもインターナショナルクラスのDFが待ち構えることになります。 国内リーグは現有戦力でも制覇できるので、外国からの補強選手に問われるのは欧州カップで貢献することです。昨季は元ギリシャ代表FWディミトリオス・パパドプロース(28・現セルタ)を連れてきたものの、結果を残せないまま半年でお払い箱となりました。佐藤選手は予想以上に少ない時間で、予想以上の要求に応えていかねばなりません。 【環境】…●
ディナモはここ数年、選手の売却で莫大を資金を得ており、スポンサー難とはいえ経営は比較的安定しています。佐藤選手ならば年俸50~60万ユーロは提示されるのではないでしょうか。サンフレッチェへの移籍金も200万ユーロは提示できるはずです。 ただし、欧州カップや国内リーグで無様な結果が出ると名物副会長ズドラヴコ・マミッチの一声で「年俸削減」が命じられることがあります。現に元アルゼンチン代表レアンドロ・クフレは昨季途中にその条件を呑み、60万ユーロ→30万ユーロに年俸が下げられました。日本の常識では考えられないことでしょうけどね(苦笑) チーム内の雰囲気は悪くないものの、「ベテラン組」「外国人組」「ユース出身組」で派閥があると聞きます。リーダーと呼べる存在がいないのも原因の一つでしょう。1999年に三浦知良選手が所属していた頃はプロシネチュキやユリッチ、ラディッチといった親分肌の選手がいました。とりわけスペイン語を話すユリッチには人生観を変えるほどの影響を受け、親友の間柄になったと聞きます。佐藤選手の場合、言語の壁に加え、派閥のために孤独を感じる可能性はあるかもしれません。 あと生活環境は誰もが思うほど悪くありません。治安はヨーロッパの中でも良いほう。異なるメンタリティから腹が立つことは勿論ありますが、ここで10年間生活した私がその点は保証します。 【観客・サポーター】…評価×
これがチームの抱えるネックの一つです。ザグレブ市が100億円相当の改修費を掛けながら、杜撰な工事のためにスタジアム環境は劣悪。ディナモはザグレブ市民のアイデンティティながら、屋根もなく、トイレも満足にない廃墟のようなスタジアムを訪れるのを嫌がり、平均観客は3500人ほどに留まっています。欧州カップやハイドゥク戦となれば1~2万人ほどの観客が来るものの、普段は閑古鳥が鳴くスタジアムでどうモチベーション付けをするのか選手としても難しいところです。ユース上がり、もしくはクロアチア人ならばディナモのトップチームでプレーすることだけで喜びと誇りを感じますが、果たしてディナモと縁もゆかりもない選手が…と考えると、外国人選手には厳しい場所です。 またサポーターの「バッド・ブルー・ボーイズ」(写真)は欧州でも生粋のフーリガングループです。クラブへの忠誠心は強いものの、選手に対する敬意はありません。Jリーグのように選手の横断幕は一つもなく、毎試合のようにBBBが大きく掲げるのが 「フロントと選手は通り過ぎる存在で、残るのはディナモと俺たちだけだ」 と書かれた横断幕。サポーターから過保護扱いされるJリーグから来るとカルチャーショックを受けるでしょう。ただし、クラブのために常にファイトを見せる選手は外国人だろうと愛されるのも事実です。 【移籍のステップとして】…評価× 海外移籍を決意するには、ディナモは一つの踏み台として考えるのは当然の話です。欧州カップの戦いを通して知名度は上がりますし、リーグ戦でも国外からのスカウトは頻繁に訪れます。「ディナモ・ザグレブ」は移籍市場で一つのブランドとなっており、ここ数年の売却益だけ見れば、アヤックスやポルトと並んで最高水準。しかしながら、過去の移籍を見ると国外のスカウトが注目し、お金を払って獲得したのはクロアチア人だけなのも事実です。(※エドゥアルドはブラジル人ですが、ディナモ・ユース出身)
(2007/08シーズン) FWエドゥアルド・ダ・シルヴァ →アーセナル (移籍金1500万ユーロ) DFヴェドラン・チョルルカ →トットナム (1300万ユーロ) MFニコラ・ポクリヴァチュ →モナコ (300万ユーロ) DFゴルドン・シルデンフェルト →ベシクタシュ (170万ユーロ) (2008/09シーズン) MFルカ・モドリッチ →トットナム (2100万ユーロ) MFオグニェン・ヴコイェヴィッチ →ディナモ・キエフ (600万ユーロ) DFフルヴォイエ・チャレ →トラブゾンシュポール(220万ユーロ) MFミハエル・ミキッチ →サンフレッチェ広島 (80万ユーロ) (2009/10シーズン) DFディノ・ドゥルピッチ →カールスルーエ (95万ユーロ) FWヨシップ・タディッチ →グルノーブル (50万ユーロ) DFデヤン・ロヴレン →リヨン (850万ユーロ) (2010/11シーズン) MFイヴィツァ・ヴルドリャク →レギア・ワルシャワ (100万ユーロ) MFマリオ・マンジュキッチ →ヴォルフスブルク (900万ユーロ)
クロアチア人の主力を売却した穴を埋めるため、かつてはクロアチアの小クラブから有力選手を購入していたのですが、クロアチア選手の評価が欧州内で上がるにつれ、小クラブはディナモではなく国外のクラブにより高い値で売却するようになりました。そのためにディナモは外国人選手に手を出し始め、それが今のチーム混迷の要因の一つになっています。 現在、ディナモに所属する外国人選手は9名(ブラジル3名、アルゼンチン3名、チリ1名、チェコ1名、カメルーン1名)。誰もがディナモでステップアップすることなく、表現は悪いのですが「不良在庫」として残ってしまったのです。佐藤選手が「ディナモを欧州の足掛かりに」と考えるならば、それは危険な考えだと、私は切に唱えたいと思います。 私自身、クロアチアで、それもディナモで佐藤選手の活躍を見てみたい、という思いが大いにあります。日本人の活躍は在留邦人にとっての誇りになりますから。 しかしながら、彼はサンフレッチェの看板選手であり、まだ日本代表にピックアップされる可能性が十分に見込める選手です。それにかかわらず、「海外挑戦」の言葉に惑わされ、その移籍先で才能が埋没してしまったのならば、本人も、送り出したサポーターも、そして迎えるサポーターも悲しむ話です。全ては個人の意思に委ねられますが、私の意見としてはディナモ移籍は拒否した方が賢明なのでは、と思います。
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posted by 長束恭行 |22:11 |
サッカーニュース |
コメント(3) |
この記事に対するコメント一覧
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佐藤寿人のディナモ・ザグレブ移籍を考察する
コメント投稿者ID : NID00013619
素晴らしい文章ですね。興味深く拝見させていただきました。こっちの報道では、正式なオファーはなく、佐藤選手の意思表示をディナモ側からペトロビッチ監督経由で求められたというもので、連日報道がありましたが、今日、残留濃厚といった記事が載っていました。これを機に、初めてクロアチア・サッカーの詳細を知りました。特にB.B.Bの考え方には驚きました、これからもちょくちょく見に来ます。ありがとうございました。
posted by 広島 | 2010-07-22 13:51
佐藤寿人のディナモ・ザグレブ移籍を考察する
コメント投稿者ID : OOH00013631
論理的・客観的な分析に頭が下がります。ありがとうございました。
佐藤寿人は、その得点能力のみならずチームのリーダーとして、クラブの顔として既に不可欠な存在です。かつてはJ2降格のその瞬間に残留を明言するなど、サポーターとしても盤石の信頼を置く選手です。だからこそ、無下に残留を希望するのではなく、その可能性を世界で試して欲しいという想いも同時に強くありました。こちらのレポートで、今回の移籍話が必ずしもそうしたチャンスともなりえないことがよくわかりました。
あとは、彼自身の決断を待つのみです。
posted by yasu | 2010-07-22 18:24
佐藤寿人のディナモ・ザグレブ移籍を考察する
コメント投稿者ID : OOH00002503
「フロントと選手は通り過ぎる存在で、残るのはディナモと俺たちだけだ」
…なかなか酷い話ですね。
posted by とーる | 2010-07-24 04:11
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昨日、チャンピオンズ・リーグ予備戦2回戦の第2レグ「ルカ・コペールvs.ディナモ・ザグレブ」が行われたのですが、ディナモは0-3の完敗。初戦のホームで5-1と勝利していたことで、かろうじて3回戦進出を決めたものの、GKブティナの好セーブが無ければ「0-4」で敗退、という最悪なシナリオも起こりうる試合でした。
中盤でプレスがかからず、ディフェンスラインの動きもチグハグ。シヴォニッチ、ドドー、スレピチュカのFW陣に存在感はなく、MFサミールが攻撃で一人空回りするのみ。
ザイェッツ監督は3回戦の相手が決まる「ディナモ・ティラナvs.シャリフ・ティラスポル」を現地視察したため、采配をアシスタントに任せたのも士気に影響したですが(ザイェッツ監督のこの行動に関しても批判あり)、攻守に渡ってここまでバラバラなディナモは久しぶりに見ました。
このチーム状況は、
「Jリーグとクロアチア・リーグはどちらが上か?」-この質問に私は、"やっているサッカーが違う"とよく答えます。攻守の切り替えが速いJリーグに対し、クロアチア・リーグはもったりとしたサッカーをします。とりわけディナモが相対するチームは、ライバルのハイドゥクも含めてガチガチに守ってくるため、ディナモはボールを回しながら相手の隙を探さねばなりません。ザイェッツ監督になってから更に速いパス回しが要求されるようになりましたが、その精度はまだまだ未熟。それでも国内で勝利できるのは、個人能力の差によるものです。MFサミール、MFモラレス、MFバデリ(写真)はボールテクニックに優れ、ミドルレンジからのシュートも持っています。
逆に欧州カップで格上に挑むと中盤を制圧され、何とか守備で持ちこたえるものの、後半に集中が切れて負けるケースがしばしば。攻撃に転じても相手スペースを有効に使えません。国内外で戦いが異なるのがディナモのジレンマで、「国内リーグでは70分で試合が決まるが、欧州カップは70分から試合が始まる」は言いえて妙です。
つまり、佐藤選手は普段の国内リーグの試合だと、スペースのないペナルティエリアで190cm前後の屈強なDF陣と相対することになります。相手の裏を取る動きは有効でしょうが、そこにパスが出てくるかは限りません。サンフレッチェのような連動性はなく、インスピレーションに頼るMFが多いため、相互理解には時間が掛かるはず。その一方で欧州カップでは、目の前にスペースがあってもインターナショナルクラスのDFが待ち構えることになります。
国内リーグは現有戦力でも制覇できるので、外国からの補強選手に問われるのは欧州カップで貢献することです。昨季は元ギリシャ代表FWディミトリオス・パパドプロース(28・現セルタ)を連れてきたものの、結果を残せないまま半年でお払い箱となりました。佐藤選手は予想以上に少ない時間で、予想以上の要求に応えていかねばなりません。
【環境】…●
ディナモはここ数年、選手の売却で莫大を資金を得ており、スポンサー難とはいえ経営は比較的安定しています。佐藤選手ならば年俸50~60万ユーロは提示されるのではないでしょうか。サンフレッチェへの移籍金も200万ユーロは提示できるはずです。
ただし、欧州カップや国内リーグで無様な結果が出ると名物副会長ズドラヴコ・マミッチの一声で「年俸削減」が命じられることがあります。現に元アルゼンチン代表レアンドロ・クフレは昨季途中にその条件を呑み、60万ユーロ→30万ユーロに年俸が下げられました。日本の常識では考えられないことでしょうけどね(苦笑)
チーム内の雰囲気は悪くないものの、「ベテラン組」「外国人組」「ユース出身組」で派閥があると聞きます。リーダーと呼べる存在がいないのも原因の一つでしょう。1999年に三浦知良選手が所属していた頃はプロシネチュキやユリッチ、ラディッチといった親分肌の選手がいました。とりわけスペイン語を話す
これがチームの抱えるネックの一つです。ザグレブ市が100億円相当の改修費を掛けながら、杜撰な工事のためにスタジアム環境は劣悪。ディナモはザグレブ市民のアイデンティティながら、屋根もなく、トイレも満足にない廃墟のようなスタジアムを訪れるのを嫌がり、平均観客は3500人ほどに留まっています。欧州カップやハイドゥク戦となれば1~2万人ほどの観客が来るものの、普段は閑古鳥が鳴くスタジアムでどうモチベーション付けをするのか選手としても難しいところです。ユース上がり、もしくはクロアチア人ならばディナモのトップチームでプレーすることだけで喜びと誇りを感じますが、果たしてディナモと縁もゆかりもない選手が…と考えると、外国人選手には厳しい場所です。
またサポーターの「バッド・ブルー・ボーイズ」(写真)は欧州でも生粋のフーリガングループです。クラブへの忠誠心は強いものの、選手に対する敬意はありません。Jリーグのように選手の横断幕は一つもなく、毎試合のようにBBBが大きく掲げるのが
「フロントと選手は通り過ぎる存在で、残るのはディナモと俺たちだけだ」
と書かれた横断幕。サポーターから過保護扱いされるJリーグから来るとカルチャーショックを受けるでしょう。ただし、クラブのために常にファイトを見せる選手は外国人だろうと愛されるのも事実です。
【移籍のステップとして】…評価×
海外移籍を決意するには、ディナモは一つの踏み台として考えるのは当然の話です。欧州カップの戦いを通して知名度は上がりますし、リーグ戦でも国外からのスカウトは頻繁に訪れます。「ディナモ・ザグレブ」は移籍市場で一つのブランドとなっており、ここ数年の売却益だけ見れば、アヤックスやポルトと並んで最高水準。しかしながら、過去の移籍を見ると国外のスカウトが注目し、お金を払って獲得したのはクロアチア人だけなのも事実です。(※エドゥアルドはブラジル人ですが、ディナモ・ユース出身)

