2010年04月07日

セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

nogomet-152160.jpg私もここクロアチアで「日本vs.セルビア」戦をネット観戦していました。世の中は便利になったもので、日本テレビとセルビア国営放送(RTS)の両方を立ち上げることが可能です。
もっぱら音声はセルビア国営放送を中心にしてましたが、解説者は置かず、日本テレビが作った国際映像をモニターで見ながらアナウンサーが実況していきます(こういったスタイルはここでは一般的です)。アナウンサーはよく日本代表と選手のことを調べており、本田や長谷部、森本ら海外組が欠けただけでなく、ピッチ上の日本選手の情報をも逐一述べておりました。まだ0-0の時点で岡田監督が映った際には、「オカダはワールドカップでベスト4進出を目標としています」と苦笑もせずにきちんと語っていたほどです。
(ちなみにハーフタイムは前半のハイライトを含めたスポーツニュースで、EXILEは出てませんでしたw)

今回のセルビア代表は国内選抜だったことから、試合開始前から「イェレン・スーペル・リーガ代表」(イェレンはスポンサーのビール会社)との表現も使用していたアナウンサー。日本のアナウンサーのように肩入れ系でなく、絶叫系でもない比較的中立な実況を続けていましたが、FWムルジャが15分、23分と得点を奪い、40分にハーフウェーラインからドリブルで中央突破を図った際のコメントが印象に残りました。
「日本の選手はスピードがあるというイメージだったが、この場面を見てもセルビアの選手の方が速い。これは驚きだ」
急増チームのセルビアに連携面は期待できず、ロングボールでムルジャを走らせるのは数少ない攻撃パターンなわけですが、あっさりとゴールを許した守備陣のスピード不足はこの試合で致命的となりました。

後半は交代選手を次々と使い切りながら、3-0で日本を下したセルビア。試合後の実況のコメントはこんな感じです。
「アジア最強の日本をセルビア代表は3-0で勝利しました。ワールドカップに向けた良い流れを断ち切ることはなく、またアンティッチ監督にとっても代表選出の幅が広がりました」
自宅のあるスペインを拠点にするアンティッチではなく、国内リーグのヤヴォルを率いるチュルチッチ監督が今回のセルビア・リーグ選抜を指揮したのは必然の流れでした。彼らの中でワールドカップ代表に残るのは2~3人でしょうが(セカンドGKが定まっていないたけに、前半で好セーブを連発したGKブルキッチは当確)、爆発的なエネルギーをアンティッチ監督が高く評価するMFフェイサが膝を故障してしまったことが、このゲームにおけるセルビア代表では損失となった、ともコメントしていました。
日本の岡田監督は親善試合やアジアカップ予選を通しながら、少数精鋭主義で選手の幅を狭めてきた感があるのですが、この敗北は更に自分の首を絞めてしまったのではないのでしょうか。

試合直後のセルビア・メディアの報道は以下のようです。
「オルロヴィ("鷹"という意味のセルビア代表の愛称)、カミカゼを倒す」(セルビア国営放送)
「大阪におけるセルビアの軽い3発」(B92)
「今回は自分の役割をチュルチッチに託したアンティッチ代表監督にとって、ワールドカップを前に勇気づける結果となった」(ブリッツ紙)

またセルビア人が現地の掲示板の書き込みの一部を拾ってみました。日本人の我々には耳が痛い言葉も多いですが、セルビア人はどのようにこの試合を捉えていたのかを知ることができるでしょう。

「我々のリーグをコケにし、日本のリーグを賞賛してきたストイコヴィッチやジュロフスキの言葉を今、聞いてみたいよ」
「勝利、おめでとう。チームの半分は見たこともない選手だったけど、ここまで良かったなんて知らなかったね」
「素晴らしい結果だ。選手達よ、おめでとう。しかし、プレー面で見るものはほとんどなかった。まるで(チュルチッチ監督率いる)ヤヴォルのプレーを代表に持ち込んだかのように見えた。しかし、満足はしているよ」
「何年か前には、絶望的な結果に終わっても専門家達は"結果が重要ではなく、プレーが重要なのだ"といつも話していた。そのプレーさえも我々には無かったけどね。今はどれだけ一つ一つの結果が重要か、一つ一つの親善試合が重要かを私は感じている」
「国内リーグにも優れた選手達がいることが知られたね」
「国内リーグは弱いなんて誰が言っていたんだろうね(笑) ご存知、セルビア人の意地が働けば、こうなるものだよ」
「ブラボー、選手達を尊敬するよ。初めて一緒にプレーし、おそらくアジアで最強の代表チームに対して最高の結果を残してくれた。セルビア、前進あるのみ!」
「このチームが南アフリカに行った方がいいんじゃないか?」
「アルゼンチンにはメッシがいるけど、我々にはムルジャがいる!」
「おめでとう! でも成功するなんて信じてなかったことを素直に認めるよ」
「我々のリーグをコケにした奴ら、出て来い! 我々は三軍で日本の一軍を3-0で下したんだ!」
「日本代表監督はワールドカップ準決勝進出が目標って言っているんだって。ハハハハハハ」
「ドラガン・ムルジャは日曜までにガンバ大阪と契約するかもね(笑) 代表にとってこの地球規模のプロジェクトは上手くいったかも」
「日本人の表情が悲しそうだった。殺し屋であるセルビアのサッカー選手が来てしまっては…」
「セルビアもサッカーをやる、って世界へのメッセージだよ」
「フェイサが怪我してしまったことはパルチザンにとって恐ろしい損失だ。こんな時期にこんな意味のない試合を企画した人々に対する意地として、我々パルチザンは王者となるだろう。神が我々についている」
「まず最初に選手達に謝らなければならない。もし我々が負けたならば、私も集団的なヒステリーと失望の中に落ちていただろうからだ。選手達が最高の形でそんな私を否定してくれたことを嬉しく思うよ」
「ベオグラードでこの試合をやったならば、5000人も集まらないだろう。僕達はもう少し国内リーグを評価し、敬意を払うべきじゃないか。またホームで0-3となったのにもかかわらず、日本人の誰もスタジアムから帰ろうとしなかった。もしセルビアでやったならば、半分以上が帰ってしまうかも。日本人は文化を持った人々だよ。彼らが応援の仕方を知らないのは確かだ。しかし、壊された椅子を一つも見ることはなかった…」


posted by 長束恭行 |23:46 | サッカーニュース | コメント(6) |
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この記事に対するコメント一覧
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セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

コメント投稿者ID : NID00002078

はじめまして。

とてもありがたい記事でした。とくにコメントの訳は面白く拝見しました。

最後のコメントがとくに印象的でした。日本人も怒りは感じているのでしょうけれど、やっぱりだからといって椅子は壊したりしない人々ではありたいです。一方、今の戦い方では、ベオグラードでやったのと同じような集客になる日も近いのかもしれません。

スピードがないというアナウンサーの指摘もその通りですね。どこかで「今やDFにこそ最もスピードがある選手を持ってくるのが常識になってきた」と聞いたのですが、日本は(人材の問題か、選択か)、そうなってはいないようです。

posted by がrrrrrrrrふ | 2010-04-08 01:14

セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

コメント投稿者ID : OOH00006635

「日本人が応援の仕方を知らない」というセルビア人の言葉は、他の外国の友人からも聞いたことがある。
迫力と緊張感に欠ける応援歌は、ホームアドバンテージをまったくいかしていないなぁ、といったような内容だったかな。
相手や審判にもプレッシャーをかけるほどの凄まじさは、確かにないね。

posted by K | 2010-04-08 02:44

セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

コメント投稿者ID : NID00000858

> がrrrrrrrrふさん
コメント、有難うございます。
こちらのスタジアムは老朽化しており、資金難から修復もままならないことが観客減に繋がる原因ともなっています。ですので、椅子の一つや二つを壊しても問題ないかもしれませんね(笑)
オシムとも日本のDFに関する話をしたことがありますが、スピードと展開力のある選手が生まれないことを危惧してました。センターバックとして加地を起用することも構想にあり、実際に練習試合で加地と駒野のツーバックをテストしたそうです。

> Kさん
日本代表は応援歌のバリエーションが決定的に少ないですよね。例えば、クロアチアだと常時20種類近くあるでしょうか。それも誰かがリードを取ることなく、自然に応援が発生していきます。
横断幕に関しても選手個人を応援するものは皆無です。国家、代表、クラブに対する愛情度の違いと言ってしまってはそれまでかもしれませんが…。監督や選手に対するプレッシャーが低いのはJリーグで指揮やプレーした外国人からも指摘されますが、サポーターが持つ敬意や従順を賞賛する声も大きいですよ。

posted by 長束恭行 | 2010-04-08 16:30

セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

コメント投稿者ID : ELG00006803

今現在の日本代表の応援は、Jリーグのファン・サポーターから見ても単調で迫力のないものになっていますよ。
 
かつての日本代表(フランスW杯後くらいまで)は、鹿島や浦和といった熱狂的なJクラブのサポーターが応援に行っていまいたので、応援歌も各クラブの応援歌を相互に繰り出したり呼応したり、情熱的なファンが多くて指定席からもコールや歓声が響いてきたりと、緊張感・迫力のある応援をしていたと思います。ですが現在は、Jリーグを熱心に応援しているような人や情熱的にサッカーが好きな人ほど、今の代表の応援には行かないような傾向になってしまいました。
 
代表戦が協会のビジネス化しチケッが高騰したこと(それが見透かされたこと)、サッカー文化が成熟化してJクラブのファンは代表よりもクラブ優先という傾向が強まったことも背景にありますが、
それ加えて、一部の代表サポーターと称する人たちが代表の応援をビジネスにするようになってしまい、「応援歌」と称して勝手に曲を作りCD発売したり、その歌をむりやり延々と歌わせ一定の方向に誘導しようとしたしり、それが嫌われたというのもあります。
その結果、日本代表戦とは「代表サポーター」なる特定の人達がリードし、普段はあまりスタジアムに行かないライトなファンがそれに盲従するという特殊な雰囲気が成立してしまいました。それを見て、ますます観戦慣れ・応援慣れしたファンほど敬遠し、嘲笑すらするという悪循環になっています。
 
今回のセルビア戦も、代表戦をやらない関西だったから満員に近く集客しましたが、関東でやっていたら、あのマッチメイクと日本代表のメンバーではたぶん半分くらいしか席が埋まらなかったのではないでしょうか。
私の周囲も「週末のリーグ戦に疲れが出ないかの方が心配」と言っていましたし。

posted by YG | 2010-04-09 13:17

セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

コメント投稿者ID : ELG00006803

「日本人が応援を知っているか」は、日本のファンの中でも議論されるテーマですね。欧州的でないから日本の応援はダメだという人もけっこういます。
ですが、Jリーグだけでも世界でトップ10に入る平均集客なわけですし、それに加えてプロ野球の集客や歴史は世界でも有数。また高校野球や高校サッカーにまで数万人があつまりますし、日本人のスポーツ好き・観戦好き・応援好きの実績は、欧州の大半の国を上回ります。
 
誰かが音頭を取ったり取らなかったりしながら、集団で協調した応援をする(のが好き)というのは、サッカーに限らずプロ野球や高校野球、バレー、大学スポーツなどにも共通する、ある種の「日本の応援の伝統スタイル」のようなところもあります。これは日本的文化や気質から来る部分もあるので、欧州的でないから「応援を知らない」というほど単純な話ではないと思います。
 
また、日本のサッカーの応援に関しては、所謂「欧州サッカー通」に批判されることが多いのは事実です。日本の選手や協会会長も、そのようなことを発言したことがありますね。
ですが、実際に応援を作っているサポーターの目線からいうと、初期Jリーグのクラブや代表の応援が、欧州ではなく、日本人の応援気質やスタイルの合うアルゼンチンの応援を手本としていたところが少なからずあり、そういう背景も影響していると思います。私は仕事の関係で南米の人と日本のサッカーを見に行くことが多いのですが、めざとく「アルゼンチン」を見て取り好感を持ってくれる人も少なくありません。「雑種文化」は日本文化のお家芸ですから、そういったミックスが日本的と言えなくもないようにも思いますね。

また、スタイルの好き嫌いと、迫力や緊張感があるかないかとも別物だと思います。私の知る範囲での欧州人にも、浦和レッズや阪神タイガースの日本的な応援の迫力などは、欧州にはない味としてポジティブな評価を聞くことの方が多いです。
要は、緊張感のある客層とマッチメイク、緊張感のない客層とマッチメイクがあるだけだ、という気もしますね。近年、代表戦は、緊張感のない方のサンプルになるケースが多くなってしまったのは残念です。 

ただ、元来日本人は、相撲にしろプロ野球にしろ、緊張感のないマッタリとしたスポーツ観戦も、わりと好きなんだという事実もありますね。その辺は欧州の人にはピンと来ないかもしれません。

posted by YG | 2010-04-09 14:26

セルビア視点で見た「日本vs.セルビア」

コメント投稿者ID : NID00000858

> YGさん
最近の代表とクラブの応援事情に関する考察、参考になりました。サッカー文化の成熟が進行しているのに加えて、そして代表ビジネスが一部のサポーターは見透かされたというのは実に的を得ている意見だと思います。

あとはクラブ優先の方向が、一部の欧州のようにライバルへの憎悪と愛情の裏返しによるフーリガニズムに進まないことを願わねばなりませんね。
例えば、クロアチアでは成熟ではなくて腐敗の方向に進んでいます。「スタジアムは子供にとって危険な場所だから行かせられない」-そんな意見もよく聞きます。家族連れで安心して行ける日本は、世界からもっと参考にされるべきスポーツ愛好国なのではないでしょうか。ストイコヴィッチらJリーグ経験者が祖国に戻って強調するのが、自分の国に欠如している日本のインフラの高さであり、安全性の高さであったりします。

応援スタイルに関しては、欧州や南米を意識せず、日本独自のスタイルを追求すれば良いと思います。Jリーグでもオリジナルを追及するサポーターもあれば、単調なサポーターもありますが(例えば私も通った名古屋グランパスとか)、その応援で選手を鼓舞できるかどうかが大事ですよね。Jリーグでプレーした選手から言わせれば、日本のサポーターの献身ぶりはプラスに働くようです。例えば、4年前にインタビューした元浦和のトミスラフ・マリッチに"日本のサポーターとヨーロッパのサポーターの違いは?"と尋ねたところ、以下のような返答をもらいました。
「私が眼にした違いというのは、日本のサポーターは90分間応援してくれるということだ。チームが思うようにいかない時こそ彼らは応援に力を入れてくれるのさ。
ヨーロッパは少し違っててサポーターは直ぐに自分のチームの選手へブーイングし、攻撃しようとする。チームが機能しない時は20分の段階でもブーイングされるからね。でも人間はどんなことでも慣れるものだよ。ブーイングは一つの圧力でもあるし、そのような状況で生きていくことも学ばなければならない。
ただ選手としては日本のサポーターの方が良い気分でポジティブにプレーができるよ。選手がミスをしたとしても関係なく、彼らはチームを応援で90分間助けてくれている。そのスタイルがとても気に入ったし、魅力に感じたよ。」
http://homepage2.nifty.com/hrvgo/report/maric.htm

しかし、今の日本代表のように結果が伴わず、観戦しても応援しても意味がない、という風潮が生まれるのが一番怖いです。

posted by 長束恭行 | 2010-04-09 19:17

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