2010年03月05日
クラニチャールのミドル一発でクロアチア、ベルギーに勝利
3月3日、ブリュッセルのキング・ボードワン・スタジアムで親善試合「ベルギーvs.クロアチア」が行われました。今年最初の親善試合であり、とりわけワールドカップ出場を逃した両国にとってはユーロ2012予選に向けた大事な準備となる試合です。一人の人物がロングタームで代表監督を務めるのが極めて稀なクロアチアで、スラヴェン・ピリッチ監督はミロスラフ・ブラジェヴィッチと並ぶ三期目に入りました。ワールドカップ出場を逃し、この予選は言い訳から逃れられない立場になりましたが、監督慰留を願っていた選手達の信頼関係は強く、今年に入ってからはコーチらと手分けして各国を回り、選手に新たなオプションを説明してしました。 その新たなオプションとは「3-5-2」システムの導入です。ディフェンスのリーダーだったロベルト・コヴァチが代表から引退。そして左サイドバックの適任者が見つからない中、ビリッチはシステム変更案を温めてきました。振り返れば、クロアチアは3バックの歴史が長いチームです。ブラジェヴィッチは自ら「3-5-2」を考案したと語るほどこのシステムにこだわり、後任のミルコ・ヨジッチ、オットー・バリッチは併用したものの3バックを使うことが多く、ズラトコ・クラニチャールは息子をトップ下に置いた「3-4-1-2」をひたすら使い続けました。 ビリッチ監督は就任以来、そんな3バックの伝統をばっさりと断ち切り、世界の本流である4バックに変更した監督です。選手も所属クラブで4バックに慣れていることもあり、クロアチアはあっという間にコンパクトなチームへ変貌しました。しかしながら、上記に挙げたチーム事情が重なり、今が3バックをテストするタイミングだと判断したのです。ビリッチ監督はこう語ります。 「何も革命的なことをするわけじゃない。しかし、可能な変更とは言える。これまで試合で試すことがなかったが、実際にやってみて上手くいくか見てみようじゃないか。もちろん、続けて5~6回練習できるのならばもっと楽なんだけどね」 FWムラデン・ペトリッチが先週のヨーロッパ・リーグでゴール直後にタックルを受け、足首を負傷。無理して週末のバイエルン戦にフル出場したため、治療のために今回は召集を見送りました。小さな怪我や病気を抱えている選手もいましたが、ほぼフルメンバーが揃いました。また特筆すべきは、耳の難病でコーチを外れていたチームの頭脳、ロベルト・プロシネチュキが現場に戻ってきたことです。 ハムストリングスの怪我から復帰したばかりのFWエドゥアルドはベンチスタート。代わりにマテ・ビリッチがオリッチとツートップを組みました。二列目の攻撃的MFには、203日ぶりの代表復帰戦となるルカ・モドリッチ、そしてニコ・クラニチャールを横に並べ、ワンボランチにはヴコイェヴィッチが。また左アウトサイドのMFにフルヴォイエ・チャレを起用。U-21代表監督の時からビリッチが寵愛する選手ですが、これまでパッとした結果を残せておらず、メディアはチャレが代表で使えるか使えないかの最後のテストとなるだろうと予測されています。スタメンは以下のようです(3-5-2)。 GKルニェ-(右から)DFチョルルカ、クリジャナッツ、シムニッチ-MFスルナ、クラニチャール、ヴコイェヴィッチ、モドリッチ、チャレ-FWビリッチ、オリッチ 一方のベルギーはワールドカップ予選を4位で終えたのち、新たにオランダの名将の一人、ディック・アドフォカートを代表監督に招聘しました。チームの若返りを図る中、目玉なのがFWロメロ・ルカク。今季のヨーロッパ・リーグで彼が所属するアンデルレヒトとディナモ・ザグレブが対戦したこともあり、16歳の少年とはいえ、強烈なフィジカルを要する彼の怖さは重々承知しています。DFダニエル・ヴァン・ブイテン(バイエルン)、MFマルアン・フェライニ(エバートン)といった主力を怪我で欠いてはいるものの、クロアチアにとっては申し分のない相手となりました。スタメンは以下のよう(4-4-2)。 GKバイリー-DFコルパールト、コンパニ、ヴェルマーレン、ヴァン・ダメ-MFアザール、ヴィツェル、ヴェルトンゲン、マルテンス-FWデンベレ、ルカク ユーロ予選が始まるまでは親善試合であらゆるテストが試める時期とはいえ、初っ端は勝利で飾りたいクロアチア。それはベルギーにとっても変わりなく、親善試合という事実を忘れさせる激しい当たりの試合となりました。
「このシステムチェンジで有益に働くのは、クラニチャールとモドリッチの二人」(ビリッチ監督)のはずが、両サイドの活かし方が徹底されておらず、ツートップもDFとボランチに挟まれたため窮屈な攻撃となりました。いつもならばモドリッチがサイドのスペースに走り込み、選手がなだれ込むゴール前へと折り返す、というのが一つ攻撃パターンなものの、そういった局面は作れません。 ディフェンスに関していえば、ルカク(写真)の動きにDFが常に引っ張られる分、他の選手が飛び込むスペースを作られやすく、とりわけポジショニングに難のあるチャレの左サイドが弱点に。立ち上がりは高く攻めたものの、相手にボールを持たれた場合に止めるポイントがなく、結局は全体が引くしかありません。そのため、攻撃に転じてもリズムのない個人技頼みの遅攻となりました。 お互いにチャンスが作れない序盤でしたが、最初のチャンスはクロアチアに訪れます。22分、クラニチャールが右サイドでキープしながら、左からDFの裏に走り込んだチャレに浮き玉のパスがピタリと届きます。チャレはGKと一対一になり、絶好のシュートチャンスを迎えておきながら、3人のDFを抱えながら接近したオリッチの呼び声に戸惑ってしまい、パスを選択。それも足元に送ればゴールだったものの、シュートなど不可能なオリッチの上半身にぶつけるようなパスでした。ディナモ時代からポテンシャルが評価されながら、チャレがいつまで経っても評価されないのは、こういった大事な場面で賢明な判断力が欠けてしまうことです。 間延びしたクロアチアに対し、パスを通しながら相手ゴール前に近づこうとするベルギー。36分、ヴァン・ダメの左クロスをクリジャナッツがクリアし損ねると、ボールは最も危険なルカクに。胸トラップからシュートに入るまでにGKルニェが飛び込むことで難を逃れます。 クロアチアは40分、ヴァン・ダメのパスをモドリッチがカットし、ペナルティエリアへドリブル。フリーのビリッチへ折り返しますが、ノートラップのシュートはポスト右へ。前半はスコアレスドローで終えます。 後半はシムニッチに代えてDFロヴレンを左ストッパーに入れたのみで、前半と同じ3-5-2にてスタートします。クロアチアのボールポゼッションは高くとも、決定的なチャンスは作れない中、53分にクリジャナッツが負傷退場。その直後のセットプレーから、コルパールトの右クロスをヴァン・ダメがヘディングで落とし、ヴェルマーレンがトラップからシュートを試みるも、ボールはクロスバーを越えていきます。 クロアチアもその2分後、ビリッチがポストとなって右のスペースに飛び込むスルナにボールを送ると、ペナルティスポット付近に一人立つモドリッチへ折り返しのパス。モドリッチの技術ならば正確にシュートを叩き込めるはずが、シュートは大きく吹かしてしまいました。 クロアチアは56分、クリジャナッツに代えてMFラキティッチを投入、またオリッチに代えてFWエドゥアルドが入ります。スルナとチャレがサイドバックの位置に下がって4バックにチェンジし、中盤は右からラキティッチ-ヴコイェヴィッチ-モドリッチ-クラニチャールの並びになりました。 60分、ベルギーの左クロスがヴコイェヴィッチの背中に当たり、ボールはニアポストの方向に向かったところをルカクが抜け出してシュート。これはポストに救われましたが、改めてルカクは末恐ろしい選手なことを思い知らされました。ベルギーのセットプレーはGKルニェがことごとく救ってくれたものの、ここにヘディングの強いファン・ブイテンやフェライーニがいたら失点は免れなかったことでしょう。
なかなかクロアチアにプラス要素が見つからない試合でしたが、呆気なく先制点が転がり込みます。63分、クラニチャール(写真)が左からドリブルで切り込んでいくと、25mほどの距離から右足で強烈なミドルシュート。無回転のボールはGKバイリーの目測を誤り、ネット右上に突き刺さりました。 「どのようにボールがGKに向かっていったかは分からない。けれども強いシュートだったよ。それだけにネットを揺らすものだと蹴った瞬間に感じたのさ」(クラニチャール) ミドルシュートを武器としながら、よく枠を外すことが多かった彼ですが、トットナムでの成長度合いは目覚しく、彼のスーパープレーでクロアチアは均衡を破りました。 (シュート動画はこちら) 64分からはモドリッチに代えてMFプラニッチ(左MF、クラニチャールがセンターへ)、ビリッチに代えてFWマンジュキッチがピッチに送り込まれます。 73分、ペナルティエリア手前やや右の位置でベルギーが直接FKを得ると、アザールが狙い済ましてシュート。これもまたクロスバーを叩き、同点に追いつくことができません。 リードを守るべくゴールを固めてカウンターを狙うクロアチア。79分、後方からのロングボールをエドゥアルドが巧みにボールを操って2人のDFを惑わすと、左から飛び込んだプラニッチにスルーパス。シュートはGKバイリーに当たり、逆サイドに浮いたボールをマンジュキッチが押し込めばゴールだったのですが、脚がボールに届きません。83分にもエドゥアルドの技術の高さでカウンターの形を作るものの、独りよがりなプレーに走りがちのマンジュキッチが台無しにしてしまいます。 クロアチアは83分にヴコイェヴィッチに代えてMFドゥイモヴィッチ、90分にスルナに代えてMFガブリッチを試しつつ、ベルギーのプレッシャーに耐えながらも一点を守り切り、アウェーにて勝利を収めました。 (クロアチア国営放送のダイジェスト動画はこちら)
試合後、ビリッチ監督は 「この勝利は、私と選手達にとって大きな意味がある。監督は常に重圧と生きるものだが、代表監督となると試合数が極めて少ないだけに更に辛いものだ。ワールドカップ出場を逃したあと、私のミスはクローズアップされた。しかしながら、それは私を傷つけるものではなかった。どんな仕事を引き受けたかを私、そしてコーチ陣は分かっているのだよ。 この試合でミスもあったが、悪い点よりも良い点の方が多くあった。チームは新システムに上手く適応したよ。のちに4-4-2に変更させたが、これはシムニッチが前半で引き下がったのとクリジャナッツの怪我のため変更せざるえなかったんだ。とりわけ前半終わりの15分はミスが多かった。ベルギーはその時間帯を支配したが、決定的なチャンスまでに辿り着くことはなかった。 ベルギーは同点に追いつくこともできただろう。クロスバーを叩いた場面もあったし、後半は良いチャンスを作っていた。けれども、我々が作ったチャンスよりも数は少なかったじゃないか。チャレとマテ・ビリッチは前半の決定機を逃したし、後半はモドリッチとプラニッチがチャンスを活かせなかった。ベルギーのような好チームに対してこれほどのチャンスを作るのは楽じゃないのだよ」 とコメントしています。 一方のアドフォカート監督は 「両チームとも負けたくないという意図の下、ピッチに立った。リスクは極めて少なくプレーしたし、彼らも我々も計算しながらの戦いだった。私自身は引き分けが正当な結果だと思うよ。クロアチアはクラニチャールの素晴らしいシュート一本で勝利したが、GKの処理もまずかった」 と試合を振り返っています。 ビリッチ監督は今回の「3-5-2」導入をポジティブに捉えているようですが、現時点では3バックが強い相手に対して使えるオプションではありません。もちろんオプションの一つとして取っておくのは良案でしょうが、クロアチアは上手くいってきた4バックを将来的にも通すべきでしょう。 ならば守備も攻撃もできる左サイドバックを探せ、というテーマになりますが、ロベルト・ヤルニ以降、このポジションのエキスパートがクロアチアで生まれていません。プラニッチは守備に難があり、チャレも今日のパフォーマンスでは代表に生き残るのは微妙。チョルルカ、ロヴレン、シムニッチも左サイドバックを務められますが本職ではありません。 となると、次のオーストリアとの親善試合(5月19日)は、ハイドゥク・スプリトのイヴァン・ストゥリニッチ(22)を試すタイミングが来ているはず。昨年11月のリヒテンシュタイン戦で代表初召集されたものの、怪我のため見送り。今は怪我も完治し、先週末のスラヴェン・ベルーポ戦でも果敢なオーバーラップからゴールを決めました。彼をこの一年間で代表としても使える左サイドバックに成長させるのが、ビリッチ監督にとっては得策なのではと私は思います。
posted by 長束恭行 |00:18 |
サッカーニュース |
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一人の人物がロングタームで代表監督を務めるのが極めて稀なクロアチアで、スラヴェン・ピリッチ監督はミロスラフ・ブラジェヴィッチと並ぶ三期目に入りました。ワールドカップ出場を逃し、この予選は言い訳から逃れられない立場になりましたが、監督慰留を願っていた選手達の信頼関係は強く、今年に入ってからはコーチらと手分けして各国を回り、選手に新たなオプションを説明してしました。
その新たなオプションとは「3-5-2」システムの導入です。ディフェンスのリーダーだったロベルト・コヴァチが代表から引退。そして左サイドバックの適任者が見つからない中、ビリッチはシステム変更案を温めてきました。振り返れば、クロアチアは3バックの歴史が長いチームです。ブラジェヴィッチは自ら「3-5-2」を考案したと語るほどこのシステムにこだわり、後任のミルコ・ヨジッチ、オットー・バリッチは併用したものの3バックを使うことが多く、ズラトコ・クラニチャールは息子をトップ下に置いた「3-4-1-2」をひたすら使い続けました。
ビリッチ監督は就任以来、そんな3バックの伝統をばっさりと断ち切り、世界の本流である4バックに変更した監督です。選手も所属クラブで4バックに慣れていることもあり、クロアチアはあっという間にコンパクトなチームへ変貌しました。しかしながら、上記に挙げたチーム事情が重なり、今が3バックをテストするタイミングだと判断したのです。ビリッチ監督はこう語ります。
「何も革命的なことをするわけじゃない。しかし、可能な変更とは言える。これまで試合で試すことがなかったが、実際にやってみて上手くいくか見てみようじゃないか。もちろん、続けて5~6回練習できるのならばもっと楽なんだけどね」
FWムラデン・ペトリッチが先週のヨーロッパ・リーグでゴール直後にタックルを受け、足首を負傷。無理して週末のバイエルン戦にフル出場したため、治療のために今回は召集を見送りました。小さな怪我や病気を抱えている選手もいましたが、ほぼフルメンバーが揃いました。また特筆すべきは、耳の難病でコーチを外れていたチームの頭脳、ロベルト・プロシネチュキが現場に戻ってきたことです。
ハムストリングスの怪我から復帰したばかりのFWエドゥアルドはベンチスタート。代わりにマテ・ビリッチがオリッチとツートップを組みました。二列目の攻撃的MFには、203日ぶりの代表復帰戦となるルカ・モドリッチ、そしてニコ・クラニチャールを横に並べ、ワンボランチにはヴコイェヴィッチが。また左アウトサイドのMFにフルヴォイエ・チャレを起用。U-21代表監督の時からビリッチが寵愛する選手ですが、これまでパッとした結果を残せておらず、メディアはチャレが代表で使えるか使えないかの最後のテストとなるだろうと予測されています。スタメンは以下のようです(3-5-2)。
GKルニェ-(右から)DFチョルルカ、クリジャナッツ、シムニッチ-MFスルナ、クラニチャール、ヴコイェヴィッチ、モドリッチ、チャレ-FWビリッチ、オリッチ
一方のベルギーはワールドカップ予選を4位で終えたのち、新たにオランダの名将の一人、ディック・アドフォカートを代表監督に招聘しました。チームの若返りを図る中、目玉なのがFWロメロ・ルカク。今季のヨーロッパ・リーグで彼が所属するアンデルレヒトとディナモ・ザグレブが対戦したこともあり、16歳の少年とはいえ、強烈なフィジカルを要する彼の怖さは重々承知しています。DFダニエル・ヴァン・ブイテン(バイエルン)、MFマルアン・フェライニ(エバートン)といった主力を怪我で欠いてはいるものの、クロアチアにとっては申し分のない相手となりました。スタメンは以下のよう(4-4-2)。
GKバイリー-DFコルパールト、コンパニ、ヴェルマーレン、ヴァン・ダメ-MFアザール、ヴィツェル、ヴェルトンゲン、マルテンス-FWデンベレ、ルカク
ユーロ予選が始まるまでは親善試合であらゆるテストが試める時期とはいえ、初っ端は勝利で飾りたいクロアチア。それはベルギーにとっても変わりなく、親善試合という事実を忘れさせる激しい当たりの試合となりました。
「このシステムチェンジで有益に働くのは、クラニチャールとモドリッチの二人」(ビリッチ監督)のはずが、両サイドの活かし方が徹底されておらず、ツートップもDFとボランチに挟まれたため窮屈な攻撃となりました。いつもならばモドリッチがサイドのスペースに走り込み、選手がなだれ込むゴール前へと折り返す、というのが一つ攻撃パターンなものの、そういった局面は作れません。
ディフェンスに関していえば、ルカク(写真)の動きにDFが常に引っ張られる分、他の選手が飛び込むスペースを作られやすく、とりわけポジショニングに難のあるチャレの左サイドが弱点に。立ち上がりは高く攻めたものの、相手にボールを持たれた場合に止めるポイントがなく、結局は全体が引くしかありません。そのため、攻撃に転じてもリズムのない個人技頼みの遅攻となりました。
お互いにチャンスが作れない序盤でしたが、最初のチャンスはクロアチアに訪れます。22分、クラニチャールが右サイドでキープしながら、左からDFの裏に走り込んだチャレに浮き玉のパスがピタリと届きます。チャレはGKと一対一になり、絶好のシュートチャンスを迎えておきながら、3人のDFを抱えながら接近したオリッチの呼び声に戸惑ってしまい、パスを選択。それも足元に送ればゴールだったものの、シュートなど不可能なオリッチの上半身にぶつけるようなパスでした。ディナモ時代からポテンシャルが評価されながら、チャレがいつまで経っても評価されないのは、こういった大事な場面で賢明な判断力が欠けてしまうことです。
間延びしたクロアチアに対し、パスを通しながら相手ゴール前に近づこうとするベルギー。36分、ヴァン・ダメの左クロスをクリジャナッツがクリアし損ねると、ボールは最も危険なルカクに。胸トラップからシュートに入るまでにGKルニェが飛び込むことで難を逃れます。
クロアチアは40分、ヴァン・ダメのパスをモドリッチがカットし、ペナルティエリアへドリブル。フリーのビリッチへ折り返しますが、ノートラップのシュートはポスト右へ。前半はスコアレスドローで終えます。
後半はシムニッチに代えてDFロヴレンを左ストッパーに入れたのみで、前半と同じ3-5-2にてスタートします。クロアチアのボールポゼッションは高くとも、決定的なチャンスは作れない中、53分にクリジャナッツが負傷退場。その直後のセットプレーから、コルパールトの右クロスをヴァン・ダメがヘディングで落とし、ヴェルマーレンがトラップからシュートを試みるも、ボールはクロスバーを越えていきます。
クロアチアもその2分後、ビリッチがポストとなって右のスペースに飛び込むスルナにボールを送ると、ペナルティスポット付近に一人立つモドリッチへ折り返しのパス。モドリッチの技術ならば正確にシュートを叩き込めるはずが、シュートは大きく吹かしてしまいました。
クロアチアは56分、クリジャナッツに代えてMFラキティッチを投入、またオリッチに代えてFWエドゥアルドが入ります。スルナとチャレがサイドバックの位置に下がって4バックにチェンジし、中盤は右からラキティッチ-ヴコイェヴィッチ-モドリッチ-クラニチャールの並びになりました。
60分、ベルギーの左クロスがヴコイェヴィッチの背中に当たり、ボールはニアポストの方向に向かったところをルカクが抜け出してシュート。これはポストに救われましたが、改めてルカクは末恐ろしい選手なことを思い知らされました。ベルギーのセットプレーはGKルニェがことごとく救ってくれたものの、ここにヘディングの強いファン・ブイテンやフェライーニがいたら失点は免れなかったことでしょう。
なかなかクロアチアにプラス要素が見つからない試合でしたが、呆気なく先制点が転がり込みます。63分、クラニチャール(写真)が左からドリブルで切り込んでいくと、25mほどの距離から右足で強烈なミドルシュート。無回転のボールはGKバイリーの目測を誤り、ネット右上に突き刺さりました。
「どのようにボールがGKに向かっていったかは分からない。けれども強いシュートだったよ。それだけにネットを揺らすものだと蹴った瞬間に感じたのさ」(クラニチャール)
ミドルシュートを武器としながら、よく枠を外すことが多かった彼ですが、トットナムでの成長度合いは目覚しく、彼のスーパープレーでクロアチアは均衡を破りました。
(シュート動画は
試合後、ビリッチ監督は
「この勝利は、私と選手達にとって大きな意味がある。監督は常に重圧と生きるものだが、代表監督となると試合数が極めて少ないだけに更に辛いものだ。ワールドカップ出場を逃したあと、私のミスはクローズアップされた。しかしながら、それは私を傷つけるものではなかった。どんな仕事を引き受けたかを私、そしてコーチ陣は分かっているのだよ。
この試合でミスもあったが、悪い点よりも良い点の方が多くあった。チームは新システムに上手く適応したよ。のちに4-4-2に変更させたが、これはシムニッチが前半で引き下がったのとクリジャナッツの怪我のため変更せざるえなかったんだ。とりわけ前半終わりの15分はミスが多かった。ベルギーはその時間帯を支配したが、決定的なチャンスまでに辿り着くことはなかった。
ベルギーは同点に追いつくこともできただろう。クロスバーを叩いた場面もあったし、後半は良いチャンスを作っていた。けれども、我々が作ったチャンスよりも数は少なかったじゃないか。チャレとマテ・ビリッチは前半の決定機を逃したし、後半はモドリッチとプラニッチがチャンスを活かせなかった。ベルギーのような好チームに対してこれほどのチャンスを作るのは楽じゃないのだよ」
とコメントしています。
一方のアドフォカート監督は
「両チームとも負けたくないという意図の下、ピッチに立った。リスクは極めて少なくプレーしたし、彼らも我々も計算しながらの戦いだった。私自身は引き分けが正当な結果だと思うよ。クロアチアはクラニチャールの素晴らしいシュート一本で勝利したが、GKの処理もまずかった」
と試合を振り返っています。
ビリッチ監督は今回の「3-5-2」導入をポジティブに捉えているようですが、現時点では3バックが強い相手に対して使えるオプションではありません。もちろんオプションの一つとして取っておくのは良案でしょうが、クロアチアは上手くいってきた4バックを将来的にも通すべきでしょう。
ならば守備も攻撃もできる左サイドバックを探せ、というテーマになりますが、ロベルト・ヤルニ以降、このポジションのエキスパートがクロアチアで生まれていません。プラニッチは守備に難があり、チャレも今日のパフォーマンスでは代表に生き残るのは微妙。チョルルカ、ロヴレン、シムニッチも左サイドバックを務められますが本職ではありません。
となると、次のオーストリアとの親善試合(5月19日)は、ハイドゥク・スプリトのイヴァン・ストゥリニッチ(22)を試すタイミングが来ているはず。昨年11月のリヒテンシュタイン戦で代表初召集されたものの、怪我のため見送り。今は怪我も完治し、先週末のスラヴェン・ベルーポ戦でも果敢なオーバーラップからゴールを決めました。彼をこの一年間で代表としても使える左サイドバックに成長させるのが、ビリッチ監督にとっては得策なのではと私は思います。

