2010年02月16日
困難な小クラブからの移籍/中国で騙されたムヤノヴィッチ
シーズン再開後の戦力分析としてディナモとハイドゥクをお伝えしましたが、今回は残るクラブを統括的・トピック的に取り上げましょう。どのクラブも抱えている問題が慢性的な財政不足です。それに加えてこのところの世界不況が追い打ちをかけ、新たなスポンサーがつかないどころか既存のスポンサーが契約通りに支払ってくれないケースも見受けられます。 また、各スタジアムを多元生中継で結ぶことで人気の高かったクロアチア国営放送の番組「Volim nogomet」(僕はサッカー好き)も打ち切りが決定。それまで脚光を浴びなかったクラブや選手の知名度がこの番組を通して上がったのにもかかわらず、各クラブが番組制作の経費を半分被らねばならない現状を渋り、全クラブが加盟する一部リーグ協会が一方的にクロアチア国営放送との契約を破棄してしまいました。各クラブに配給される放映権が年間380万円しか配られないのに、この番組の存在で客足が伸びず(シーズン前半で前年比35%ダウンの平均1950人)、各クラブの財政も逼迫。選手に毎月きちんと給与を払っているクラブも稀であります。 (写真は、広告となるクロアチア一部リーグのロゴタイプ) となると、残された道は選手の売却。しかしながら、ある外国のクラブが一人のクロアチアの選手に関心を抱くと、ハイエナの如く代理人(もしくは代理人を偽る人物)が何人もしゃしゃり出てしまい、混乱のまま移籍話そのものをパーにするクロアチア"定番"の問題が生じてしまいます。ならば、クラブ間で直接交渉だ、と試みたところでも、ディナモを除くクラブのフロントはどこも交渉下手。市場価格を無視した移籍金の要求にあっさりと外国から袖にされるのです。 例えば、シベニクが3位で終える原動力となったFWエルミン・ゼッツ(21・写真)。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表に名を連ね、昨季は14ゴール、今季は前半だけで8ゴールを決める俊足FWですが、昨年夏に続き、この冬も移籍話がまとまりませんでした。
シュトゥットガルト、ヴェルダー・ブレーメン、ハンブルガーSV、ハノーバー、アヤックス、PSV、フルハム、ポーツマス、レッドブル・ザルツブルク…。関心を持つクラブは枚挙にいとまがないものの、どれ一つも正式なオファーが届かず。シベニクが要求する移籍金は、小クラブとしては法外と言える300万ユーロ。ディナモは適正価格の150万ユーロでオファーを送りましたが、シベニクはこれを拒否してしまいました。 ウィンターブレイク直前の試合をお別れムードで終え、年明けの合宿にも参加する予定のなかったゼッツ。2010年になってからシャフタール・ドネツクの移籍寸前と報じられましたが、シャフタールが補強対象を長身FWに急遽転換したことから流れてしまいました。 「もう移籍話なんて一切耳に入れたくない。完全に話がまとまった時に俺を呼んでくれ!」 と本人はおかんむり状態。遅れてチームの合宿に合流することとなりました。フロントは"エディン・ジェコがミランに移籍すれば、ヴォルフスブルクがゼッツを欲しがる"などと淡い期待をしたようですが…。 似たような迷走はオシエクにも言えます。ユースから育ててきた若手達が花開き、魅力的な攻撃サッカーでシーズン前半で4位につけたオシエクですが、実は財政難で昨年8月から選手達に給与を払えていません。元在籍選手からも未払給与を巡って訴えられており、現有戦力を誰か売らねば破産に追い込まれます。 そんな中、チーム内で最も市場価値が高いのが、U-21クロアチア代表で主将のDFドマゴイ・ヴィーダ(20)。彼に対してはディナモがリヨンに移籍したDFデヤン・ロヴレンの後釜として獲得に動いたものの、ディナモが考える移籍金(100万ユーロ)とオシエクが設定する移籍金(200万ユーロ)に開きがあり、その溝が埋まることはありませんでした。ならば彼を外国のクラブへ、と目論んだオシエクですが、どこからもオファーは届かず。ポテンシャルを考えれば、リヨンが850万ユーロの価値をつけたロヴレンよりもヴィーダの方が上。しかし、外国のクラブの大きな判断基準となるのは所属クラブの格であり、欧州カップにおける活躍度です。 ヴィーダ本人も移籍を急がないことから、オシエクのフロントは現在の彼の契約を厚くし、移籍金も高く設定しようと試みていますが、ヴィーダ側の条件として未払給与の解決がサインの大前提。中には未払給与を諦めることでオシエクとの契約を破棄し、退団した選手もいます。FWカルロ・プリモラッツ(25)はそのようにしてディナモへ、DFスロボダン・ストゥラナティッチ(23)はイストラへ去りました。
これだけ厳しい財政下なのに今年のオシエクはトルコのアンタルヤ合宿を敢行しました。理由は一つ、アンタルヤに集結するクラブに自前の選手を売却するためです。実際に使えるか判断してもらうため、交渉相手のチームの練習や試合に選手を直接参加させることも可能です。しかし、オシエクのフロントは"売却"命で、選手の気持ちまで思いやれるフロントではありません。 オシエクのスポーツ・ディレクター、ドラガン・ヴコヤはFWアントニオ・フルンチェヴィッチ(25)をカザフスタンのシャフチョール・カラガンダへ売却する話をまとめました。しかし、辺境地でプレーしたくないフルンチェヴィッチは、シャフチョールのテストマッチでわざと監督に気に入られないプレーをすることで移籍話を潰してしまいました。これにはヴコヤ・ディレクターも"クラブに恥をかかせやがって!"と激怒。重い罰則を科す、なんて顛末も起きました。 この冬に唯一移籍がまとまった選手が、ヨシップ・クネジェヴィッチ(21・写真)。左足の技術に優れ、昨季は7アシストで同ランクのリーグ2位につけ、今季は5ゴールも決めている司令塔です。当初はアンタルヤ合宿に来ているロシア一部のFCモスクワと70万ユーロの移籍金で移籍に合意しました。しかし、FCモスクワはメインスポンサー撤退のため、一部リーグ参加を急遽諦めたことで移籍話は頓挫。チームメイトが去った後もアンタルヤに残ったクネジェヴィッチは、最終的にアンタルヤに来ているロシア一部のアムカル・ペルムへ50万ユーロで移籍することが決まり、4年契約を結びました。それに対するヴコヤ・ディレクターのコメントが何とも印象的です。 「彼がFCモスクワに移籍することで我々が得るはずだった金よりも少ないが、これも悪くはない」 最後にもう一つのケースを紹介しましょう。 クロアチアの超名物監督、ミロスラフ・"チーロ"・ブラジェヴィッチが今年から中国の上海申花の監督に就任しましたが、国内の多くの選手が抱いていた想いは「チーロは俺を連れて行ってくれるのか?」でありました。この10年間でクロアチアの6クラブを渡り歩き、あらゆる選手の実力を把握しているからです。ディナモやハイドゥクを除けば、選手は年俸500万円貰えれば良い方。助っ人として中国に渡れば、もう一桁多い年俸が手に入ります。 上海におけるチーロの片腕(アシスタント)に選ばれたのが、ヴァルテクス・ヴァラジディンの監督ドラジェン・ベセクでした。そのベセクの推薦もあって、ヴァルテクスの主将で司令塔のMFムリエンコ・ムムレクが候補に挙がったのですが、上海のフロントは彼の37歳という年齢を嫌がりました。そこで上海に渡ることになったのが、FWのゴラン・ムヤノヴィッチ(27・写真)。昨季は11ゴールを挙げた、スピードが魅力のアタッカーです。ヴァルテクスとの契約は昨年末で切れ、契約更新をせずに自由移籍選手となりました。 最初はギリシャ一部のラリッサのテストに合格し、交渉の席を持ったものの、ギリシャは国家そのものが経済危機に陥り、年俸の提示額も低くて破談。その一方で中国は驚異的な経済成長を成し遂げ、サッカー界にも潤沢な金が回っています。渡航前にムヤノヴィッチに提示されたオファーも満足な額。しかし、間もなくしてムヤノヴィッチは失望と怒りと共に中国から戻ることになります。彼の叫びを綴ってみました。 「簡単に言ってしまえば、渡航前に合意していたことと、現地で起きたことが全く異なっていたのさ。中国に渡る際、周囲からは"プロサッカーに携わっている中国人達の手管には気をつけろ"と言われていたよ。ただし、信用するベセクがコーチでいることが保証だと僕は考えていたんだ。特別な存在のチーロ・ブラジェヴィッチもいるわけだし。チーロも僕を獲得することを懸命に主張してくれたんだ。
しかし、上海空港に到着するや、僕はホテルに泊るのではなく、地元選手が寝泊りする合宿所へと連れていかれることを知った。そんな話は当初なかったよ。"中国人はそんな感じで、時間が幾らか必要である人種だから"とベセクは私を宥め、初日は彼も一緒に合宿所で寝泊りしてくれたんだ。 すると、この移籍をまとめたはずのブラジェヴィッチJr.(チーロの息子で代理人)は、"まだ移籍話が完全にまとまっていない。翌日まで我慢してくれ"と渡しに言ってきた。そして彼は"契約書はできており、中国語から英語に訳すだけだ"と説明したんだ。 3日目にようやくホテルに移ったが、もらったカードキーは全く使えない。レセプションに聞くと、僕が宿代を払わないと駄目だと言われた。ブラジェヴィッチJr.に連絡したものの、またして言い訳だ。しかし、彼は"会長との交渉の席がもたれることになった。それから契約書にサインだ"と説得してくれたのさ。 しかしながら、その後、中国人が僕に提示した年俸がかなり少なくなっていることをブラジェヴィッチJr.が伝えてきた。僕は聞く耳を持たず、荷物をまとめ、国に戻ろうとしたよ。ベセクはもう少し我慢するよう頼んできた。ブラジェヴィッチJr.も僕のために戦うと約束してくれた。けれども日々は過ぎるだけで何も起こらなかった。 最初の時点から他の誰かが金銭の一部を奪おうとしているのがハッキリした。あそこではフロントで働く人々が報酬を得る代わりに、選手の移籍から金をかすめ取るんだ。その輪に4人の人物がいて、奪った金額が70万ユーロにも上る一方で、僕への年俸は価格破壊を試みる。それを知った僕は怒り狂ったよ。許すことができず、もうサインなどしないと伝えたのさ。 クロアチアでは4回に渡る練習試合で、僕が得点を決められなかったことでチーロが構想外にしたとも報じられているそうだが、第一、僕は4試合も出ておらず2試合のみ。それもチーロならではの3-5-2システムで、2試合とも右アウトサイドでプレーした。中央へ行けないのにどうやって点を取るのと言うのだね?! 僕に中国に来るよう勧めたことをベセクは最後に謝罪をした。目に涙を溜めながら。もう誰にも苦情を言うつもりはない。ブラジェヴィッチ親子に対してもね」 これぞ中国。サッカー界の幹部が八百長に携わる国ならではのエピソードです。上海では毎日2~3人の選手がテストに来たそうですが、合否の判定は監督やコーチではなくフロント。そこでは代理人が対戦相手のDF陣に賄賂を渡し、テスト対象の選手にゴールを決めさせることで契約に導かせるとか。なにしろ、ムヤノヴィッチが上海で見た6試合の練習試合全ての相手が同じだったそうで(笑) この話を聞くと、移籍金を高く吊り上げるだ、給与が未払いだ、フロントが勝手に移籍がまとめるだ、といったクロアチアのサッカー界はまだまだ可愛いものに思えてしまいます。 ちなみにムヤノヴィッチはレギヤ・ワルシャワのテストを受けるべく、合宿地のキプロスに渡っているようです。
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posted by 長束恭行 |08:40 |
サッカーニュース |
コメント(1) |
この記事に対するコメント一覧
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困難な小クラブからの移籍/中国で騙されたムヤノヴィッチ
コメント投稿者ID : NID00001379
いつも楽しく読ませて頂いてます。
上海ひどいですね。
同じアジアの国として恥ずかしく思います。
不運な目に合われた選手達、へこたれずに頑張ってほしいです。
posted by 虎の子ちゃん | 2010-02-16 15:04
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また、各スタジアムを多元生中継で結ぶことで人気の高かったクロアチア国営放送の番組「Volim nogomet」(僕はサッカー好き)も打ち切りが決定。それまで脚光を浴びなかったクラブや選手の知名度がこの番組を通して上がったのにもかかわらず、各クラブが番組制作の経費を半分被らねばならない現状を渋り、全クラブが加盟する一部リーグ協会が一方的にクロアチア国営放送との契約を破棄してしまいました。各クラブに配給される放映権が年間380万円しか配られないのに、この番組の存在で客足が伸びず(シーズン前半で前年比35%ダウンの平均1950人)、各クラブの財政も逼迫。選手に毎月きちんと給与を払っているクラブも稀であります。
(写真は、広告となるクロアチア一部リーグのロゴタイプ)
となると、残された道は選手の売却。しかしながら、ある外国のクラブが一人のクロアチアの選手に関心を抱くと、ハイエナの如く代理人(もしくは代理人を偽る人物)が何人もしゃしゃり出てしまい、混乱のまま移籍話そのものをパーにするクロアチア"定番"の問題が生じてしまいます。ならば、クラブ間で直接交渉だ、と試みたところでも、ディナモを除くクラブのフロントはどこも交渉下手。市場価格を無視した移籍金の要求にあっさりと外国から袖にされるのです。
例えば、シベニクが3位で終える原動力となったFWエルミン・ゼッツ(21・写真)。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表に名を連ね、昨季は14ゴール、今季は前半だけで8ゴールを決める俊足FWですが、昨年夏に続き、この冬も移籍話がまとまりませんでした。
シュトゥットガルト、ヴェルダー・ブレーメン、ハンブルガーSV、ハノーバー、アヤックス、PSV、フルハム、ポーツマス、レッドブル・ザルツブルク…。関心を持つクラブは枚挙にいとまがないものの、どれ一つも正式なオファーが届かず。シベニクが要求する移籍金は、小クラブとしては法外と言える300万ユーロ。ディナモは適正価格の150万ユーロでオファーを送りましたが、シベニクはこれを拒否してしまいました。
ウィンターブレイク直前の試合をお別れムードで終え、年明けの合宿にも参加する予定のなかったゼッツ。2010年になってからシャフタール・ドネツクの移籍寸前と報じられましたが、シャフタールが補強対象を長身FWに急遽転換したことから流れてしまいました。
「もう移籍話なんて一切耳に入れたくない。完全に話がまとまった時に俺を呼んでくれ!」
と本人はおかんむり状態。遅れてチームの合宿に合流することとなりました。フロントは"エディン・ジェコがミランに移籍すれば、ヴォルフスブルクがゼッツを欲しがる"などと淡い期待をしたようですが…。
似たような迷走はオシエクにも言えます。ユースから育ててきた若手達が花開き、魅力的な攻撃サッカーでシーズン前半で4位につけたオシエクですが、実は財政難で昨年8月から選手達に給与を払えていません。元在籍選手からも未払給与を巡って訴えられており、現有戦力を誰か売らねば破産に追い込まれます。
そんな中、チーム内で最も市場価値が高いのが、U-21クロアチア代表で主将のDFドマゴイ・ヴィーダ(20)。彼に対してはディナモがリヨンに移籍したDFデヤン・ロヴレンの後釜として獲得に動いたものの、ディナモが考える移籍金(100万ユーロ)とオシエクが設定する移籍金(200万ユーロ)に開きがあり、その溝が埋まることはありませんでした。ならば彼を外国のクラブへ、と目論んだオシエクですが、どこからもオファーは届かず。ポテンシャルを考えれば、リヨンが850万ユーロの価値をつけたロヴレンよりもヴィーダの方が上。しかし、外国のクラブの大きな判断基準となるのは所属クラブの格であり、欧州カップにおける活躍度です。
ヴィーダ本人も移籍を急がないことから、オシエクのフロントは現在の彼の契約を厚くし、移籍金も高く設定しようと試みていますが、ヴィーダ側の条件として未払給与の解決がサインの大前提。中には未払給与を諦めることでオシエクとの契約を破棄し、退団した選手もいます。FWカルロ・プリモラッツ(25)はそのようにしてディナモへ、DFスロボダン・ストゥラナティッチ(23)はイストラへ去りました。
これだけ厳しい財政下なのに今年のオシエクはトルコのアンタルヤ合宿を敢行しました。理由は一つ、アンタルヤに集結するクラブに自前の選手を売却するためです。実際に使えるか判断してもらうため、交渉相手のチームの練習や試合に選手を直接参加させることも可能です。しかし、オシエクのフロントは"売却"命で、選手の気持ちまで思いやれるフロントではありません。
オシエクのスポーツ・ディレクター、ドラガン・ヴコヤはFWアントニオ・フルンチェヴィッチ(25)をカザフスタンのシャフチョール・カラガンダへ売却する話をまとめました。しかし、辺境地でプレーしたくないフルンチェヴィッチは、シャフチョールのテストマッチでわざと監督に気に入られないプレーをすることで移籍話を潰してしまいました。これにはヴコヤ・ディレクターも"クラブに恥をかかせやがって!"と激怒。重い罰則を科す、なんて顛末も起きました。
この冬に唯一移籍がまとまった選手が、ヨシップ・クネジェヴィッチ(21・写真)。左足の技術に優れ、昨季は7アシストで同ランクのリーグ2位につけ、今季は5ゴールも決めている司令塔です。当初はアンタルヤ合宿に来ているロシア一部のFCモスクワと70万ユーロの移籍金で移籍に合意しました。しかし、FCモスクワはメインスポンサー撤退のため、一部リーグ参加を急遽諦めたことで移籍話は頓挫。チームメイトが去った後もアンタルヤに残ったクネジェヴィッチは、最終的にアンタルヤに来ているロシア一部のアムカル・ペルムへ50万ユーロで移籍することが決まり、4年契約を結びました。それに対するヴコヤ・ディレクターのコメントが何とも印象的です。
「彼がFCモスクワに移籍することで我々が得るはずだった金よりも少ないが、これも悪くはない」
最後にもう一つのケースを紹介しましょう。
クロアチアの超名物監督、
しかし、上海空港に到着するや、僕はホテルに泊るのではなく、地元選手が寝泊りする合宿所へと連れていかれることを知った。そんな話は当初なかったよ。"中国人はそんな感じで、時間が幾らか必要である人種だから"とベセクは私を宥め、初日は彼も一緒に合宿所で寝泊りしてくれたんだ。
すると、この移籍をまとめたはずのブラジェヴィッチJr.(チーロの息子で代理人)は、"まだ移籍話が完全にまとまっていない。翌日まで我慢してくれ"と渡しに言ってきた。そして彼は"契約書はできており、中国語から英語に訳すだけだ"と説明したんだ。
3日目にようやくホテルに移ったが、もらったカードキーは全く使えない。レセプションに聞くと、僕が宿代を払わないと駄目だと言われた。ブラジェヴィッチJr.に連絡したものの、またして言い訳だ。しかし、彼は"会長との交渉の席がもたれることになった。それから契約書にサインだ"と説得してくれたのさ。
しかしながら、その後、中国人が僕に提示した年俸がかなり少なくなっていることをブラジェヴィッチJr.が伝えてきた。僕は聞く耳を持たず、荷物をまとめ、国に戻ろうとしたよ。ベセクはもう少し我慢するよう頼んできた。ブラジェヴィッチJr.も僕のために戦うと約束してくれた。けれども日々は過ぎるだけで何も起こらなかった。
最初の時点から他の誰かが金銭の一部を奪おうとしているのがハッキリした。あそこではフロントで働く人々が報酬を得る代わりに、選手の移籍から金をかすめ取るんだ。その輪に4人の人物がいて、奪った金額が70万ユーロにも上る一方で、僕への年俸は価格破壊を試みる。それを知った僕は怒り狂ったよ。許すことができず、もうサインなどしないと伝えたのさ。
クロアチアでは4回に渡る練習試合で、僕が得点を決められなかったことでチーロが構想外にしたとも報じられているそうだが、第一、僕は4試合も出ておらず2試合のみ。それもチーロならではの3-5-2システムで、2試合とも右アウトサイドでプレーした。中央へ行けないのにどうやって点を取るのと言うのだね?!
僕に中国に来るよう勧めたことをベセクは最後に謝罪をした。目に涙を溜めながら。もう誰にも苦情を言うつもりはない。ブラジェヴィッチ親子に対してもね」
これぞ中国。サッカー界の幹部が八百長に携わる国ならではのエピソードです。上海では毎日2~3人の選手がテストに来たそうですが、合否の判定は監督やコーチではなくフロント。そこでは代理人が対戦相手のDF陣に賄賂を渡し、テスト対象の選手にゴールを決めさせることで契約に導かせるとか。なにしろ、ムヤノヴィッチが上海で見た6試合の練習試合全ての相手が同じだったそうで(笑)
この話を聞くと、移籍金を高く吊り上げるだ、給与が未払いだ、フロントが勝手に移籍がまとめるだ、といったクロアチアのサッカー界はまだまだ可愛いものに思えてしまいます。
ちなみにムヤノヴィッチはレギヤ・ワルシャワのテストを受けるべく、合宿地のキプロスに渡っているようです。

