2009年12月23日

ディナモ・ザグレブ、40年ぶりの欧州冬越えならず

遅れましたが、ヨーロッパリーグ最終節を中心にディナモ・ザグレブのレポートを。

nogomet-132064.jpgクロアチア・リーグは12月6日の第17節を最後にウィンターブレイクに入りました。12勝3分2敗の勝点39で首位に立ち、2位のチバリア・ヴィンコヴチに勝点差6をつけて「秋の王者」(ブレイク前のリーグ首位)となりました。まだシーズン半分とはいえ、リーグ5連覇は堅いとされており、クロアチア・カップも順調に準決勝進出を決めています。
国内無敵のディナモにとって最大の目標となるのは、欧州カップ戦で年をまたいで勝ち残ること。60年代のディナモは欧州の強豪であり、1966/67シーズンはフェアーズ・カップ(UEFAカップの前身)を制覇。しかしながら、1969/70シーズンのカップ・ウィナーズ・カップを最後にディナモは「ヨーロッパの春」を迎えておらず、今年は40年ぶりの冬越え実現を目標としておりました。

チャンピオンズ・リーグは予備戦3回戦でレッドブル・ザルツブルクに敗れ、新設のヨーロッパ・リーグへ。スコットランドのハーツを下してリーグラウンドに進出を決めたものの、アヤックス、アンデルレヒト、ティミショアラが同居するグループではあらゆる困難を味わいました。サポーターグループ「バッド・ブルー・ボーイズ」の暴動、それに伴うUEFAの制裁、偏った審判の判定……。そして最終節のホームのティミショアラ戦を残し、ディナモは3位で勝点は6。ディナモがこの試合に勝利し、裏のカードのアヤックスvs.アンデルレヒトでホームのアヤックスの勝利すれば、ディナモが2位に浮上することが可能でありました。

nogomet-132065.jpgディナモは大一番を前になると何かしらのショック療法を施すチームです。14日、ズドラヴコ・マミッチ副会長を中心とする経営委員会は、元ギリシャ代表FWディミトリオス・パパドプロス(写真)と元アルゼンチン代表左SBレアンドロ・クフレの契約解消を発表。この夏、欧州カップを戦い抜くために高額な年俸を払って連れてきた二人ですが(それぞれ年俸65万ユーロと60万ユーロ)、期待に応えられる活躍は見せられませんでした。
彼らの失敗と放出はチームとしての方針転換を決定づけることとなり、今後は外国人に闇雲に年俸を払うよりも、ユース育ちの選手を活用、もしくは国内選手の獲得を進めていくことになります。


希望と不安、それに重圧が加わりながら17日に迎えたのが、ヨーロッパ・リーグ最終節、ティミショアラ戦。開催はホームのマクシミール・スタディオンでしたが、UEFA制裁でアヤックス戦に続く無観客試合となりました。ザグレブの冬は欧州でも厳しい方であり、試合開催時の気温はマイナス8度。凍ったピッチでバランスを崩しやすい悪条件です。ディナモのスタメンは以下になります(システムは4-4-2)。
GKブティナ-(右から)DFエトー、ロヴレン、コヴァチ、イバネス-MFサミール、ヴルドリャク、バデリ、モラレス-FWスレピチュカ、マンジュキッチ

nogomet-132067.jpgディナモはアウェーの地でティミショアラを3-0と粉砕したこともあり、そうそう負ける相手ではないと思われていましたが、圧し掛かるプレッシャーの差がピッチに現れます。
とにかく早い得点で試合を決めたいディナモは開始2分、サミールからパスをもらったスレピチュカがゴール右隅に向けて鋭いシュートを放つも、ポルトガル人GKタボルダが好セーブ。マンチェスター・シティも関心を示すルーマニア人正GKパンティリモンが前節のレッドカードで欠場し、控えのタボルダがゴールマウスに立ったわけですが、この代役が幾度となくスーパーセーブを連発しました。
絶対に勝たねばならぬディナモに対し、既にリーグ敗退が決まっているティミショアラは悪コンディションを気にすることなく伸び伸びとプレー。フィジカルに優れたコスタリカ代表FWパークス(写真左)を中心にカウンターを仕掛けますが、ディナモもDFコヴァチ(写真右)の冷静な対応やGKブティナの好セーブによってチャンスを摘みました。

チームの意向でアムステルダムの試合経過はスピーカーで伝えないことになっていたものの、私がいたゴール裏でも前半途中でアンデルレヒトが2-0でリードしていることが人づてで伝わってきました。勝ち抜けが既に決まっているアヤックスは「アンデルレヒト戦で手を抜くことはない」と期待を膨らませるような現地発の事前報道が連発していたわけですが、結局のところはワールドカップ予選でウクライナに挑んだイングランドと同じ話。はじめから"あわよくば"が付くようなフェアプレーなどに過度な期待をしてはいけません。
ディナモはエトーが右サイドから突破し、決定機を続けて演出するも、ゴール前に詰めた選手にボールは渡らず。欧州の数あるビッグクラブがマンジュキッチ目当てで視察に訪れていたものの、当のマンジュキッチは何でも一人でやろうと空回りする場面が目立ちます。前半はスコアレスドロー。選手達やコーチ陣はドレッシングルームでアンデルレヒトが3-0でアヤックスにリードしていることを知らされ、絶望的な思いで後半を挑むことになりました。

nogomet-132070.jpg後半もディナモが押しながら、チャンスを幾度となく作ったところでもGKタボルダに防がれる展開。攻め疲れで集中力が切れた67分、MFボウルチェアヌの左クロスが右のMFスタンチュに渡ってシュート。ボールはネットではなく、ゴール前でフリーのブクルに届き、方向を変えてシュートを流し込み、先制点を奪われます。
グループリーグでのディナモはホーム2連敗、それも無得点による敗北を喫しているわけですが、このままでは引き下がれないディナモは80分に同点に追いつきます。サミールの縦パスに抜け出したFWシヴォニッチがシュートしたところ、カバーに入った相手DFスクタルがクリアし損ねてオウンゴール。このゴールがリーグラウンドにおけるディナモのホーム唯一の得点となりました。
これから逆転劇だという矢先、わずか4分後にティミショアラはあっさりと決勝点を決めます。MFマクシムの左クロスをFWパークスがポストとなり、バイタルエリアから走りこんできたFWゴガがシュートをずどんと決めて1-2。ディナモはグループリーグ敗退しただけでなく、この試合そのものを落としてしまったことは、来季以降のUEFAランキングに大きく響く失態を犯してしまいました。
(試合のニュース動画はこちら)

記者会見に現れたディナモのユルチッチ監督(写真)は魂が抜けた表情でこうコメントを残しました。
nogomet-132068.jpg「不幸というよりも失望している。アムステルダムがポジティブな結果になるなんて私自身は期待してなかったよ。でも、この試合はどんな形であれ勝利を望んでいた。序盤にプレッシャーを掛けることで相手を脅かそうとしたが、チャンスがありながらもまたして決定力不足に終わってしまった。クロアチア・リーグではそれでもいけるだろうが、ヨーロッパでの戦いでは罰せられるのだよ」
と語りながらも、この半年間の戦いに関しては
「美しいプレーを見せたゲームも多くあったし、国際舞台での成果に関しては満足している。個人的に一番辛かったのはザルツブルク相手の敗北だったがね。もしヨーロッパ・リーグで勝点9を稼げたなのならば本当に満足したことだろう。しかし、(チャンピオンズ・リーグ予備戦を含めて)3試合に渡って無観客試合を戦ったことを忘れてはならない」
と満足なコメントを残しています。

これで今季のディナモに残されたのは国内タイトルのみ。かねてより移籍を希望しているFWマリオ・マンジュキッチに関しては、マミッチ副会長が「1000万ユーロの移籍金が提示されれば売却する」と述べており、これまでの希望価格を下げてでもこの冬の売却が確実とされています。(現時点ではヴェルダー・ブレーメンが濃厚とされ、現在ドイツにて交渉中とも)
マンジュキッチ以外では、MFイヴィツァ・ヴルドリャク(移籍金200万ユーロ)、DFエトー(150万ユーロ)、MFアンテ・トミッチ(30万ユーロ)もオファーがあれば売却する姿勢を示しています。ちなみにこれまで拒否したオファーは、DFデヤン・ロヴレンに対するトットナム・ホットスパーの700万ユーロ、DFトミスラフ・バルバリッチに対するボルドーの400万ユーロ、DFルイス・イバネスに対するスタンダール・リエージュの200万ユーロと報じられています。

補強に関しては、前述したように外国人に走る考えはフロントにありません。例外としてシベニクに所属するボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWのエルミン・ゼッツ(写真)は候補に挙がっていますが、一ヶ月前に150万ユーロの移籍金をシベニクに蹴られており、移籍の実現は微妙なところです。
nogomet-132069.jpgまた左SBの補強として夏にレンタル移籍で獲得したデニス・グラヴィナは、レンタル先のヴォルスクラ・ポルタヴァ(ウクライナ)に返却。よって、計算できる左SBはイバネスとDFカルロスの二人だけとなっています。マミッチ副会長はこの二人で半シーズンは乗り切る考えでおり、補強はFWに絞られました。ただし、今季はロヴレン、バルバリッチ、トメチャク、バデリ、クラマリッチといったユース組の台頭が見られたこともあり、ここ数年にみられた積極的な売買は控えることになるでしょう。一部リーグのロコモティーヴァをBチームのように利用できていることから(レギュレーション的に首を傾げるとはいえ)、脈々と注目すべきユース選手が育っています。
ここ数年、ディナモはエドゥアルド、モドリッチ、チョルルカ、ヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュらを売却して得た利益を、実力不足な外国人やベテラン、監督に対しての高額な年俸や違約金で湯水のように使ってきたわけですが、ユースを重視した本来あるべき姿に変貌しつつあります。去年の今頃ならば「監督はクビだ」「ビッグな補強をする」と叫んでいたマミッチ副会長も今回はおとなしめ。ようやく健全なクラブ経営に走りそうな雰囲気です。
しかしながら、欧州冬越えが可能なチームを作るならば、2~3年の辛抱は必要。そこまでマミッチ副会長が我慢できるかは甚だ疑問です。辛抱はサポーターのバッド・ブルー・ボーイズにも要求されるもの。次に彼らが暴動を起こしたならば、今度こそ欧州カップから締め出しを食らいます。困ったことにバッド・ブルー・ボーイズとマミッチが対立関係にあり、マミッチの野望を破壊すべく意図的に暴動を起こす輩がいるのが、ディナモが患う"癌"であります。果たして来季の今頃は、欧州でどんな結末を迎えることになるのでしょうか…。


posted by 長束恭行 |06:41 | サッカーニュース | コメント(0) |
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