2009年11月16日
新たな戦力を発掘/親善試合「クロアチアvs.リヒテンシュタイン」
14日、クロアチア東部のヴィンコヴチのNHKチバリア・スタディオンで親善試合「クロアチアvs.リヒテンシュタイン」が行われました。不成功に終わったワールドカップ予選のあと、最初の代表試合となります。 ヴィンコヴチでのA代表マッチが行われるのは初めて。チバリアは今年がクラブ創立90周年、そして近郊にはクロアチア独立戦争の激戦地ヴコヴァルがあるということで、代表一向のヴコヴァル詣でを兼ねてのヴィンコヴチ開催となりました。スタジアムはほぼ満員の1万人の観客が集まっています。 クロアチア代表は相変わらず怪我人に悩まされています。MFルカ・モドリッチ、FWイヴィツァ・オリッチ、FWムラデン・ペトリッチ、GKスティペ・プレティコサに加えて、DFヴェドラン・チョルルカも足に問題を抱えているために見送り。MFイヴォ・イリチェヴィッチ、DFイヴァン・ストゥリニッチも召集のチャンスを与えられたのにもかかわらず直前のリーグ戦で負傷。手薄のDFにはムラデン・バルトゥロヴィッチ(クリフバス所属/ウクライナ)、ゴルドン・シルデンフェルト(シュトゥルム・グラーツ所属/オーストリア)を新たに召集しました。また合宿中にはGKヴェドラン・ルニェが怪我で戦列離脱し、GKがダニエル・スバシッチ一人になったために急遽、シベニクからGKゴラン・ブラジェヴィッチも呼んでいます。 悪意のあるメディアからは「誰でも代表に入れるのか?」と批判が出ていますが、人口450万人足らずのクロアチアに厚い選手層は期待できず、スラヴェン・ビリッチ監督も「19歳から36歳までのクロアチア人は誰でも潜在能力を持った代表候補だよ!」と会見でジョークを飛ばしています。本来ならば14日と18日それぞれに代表マッチを組み、弱い相手と強い相手それぞれにテストをしたかったビリッチ監督ですが、サッカー協会の交渉と準備のまずさと金の出し惜しみが重なり、呼べた相手はFIFAランク143位の弱小国リヒテンシュタインのみ。しかしながら、新たな戦力をテストできる点では絶好の機会となりました。4-4-2のプレーコンセプトはあくまで維持し、新たなパーツをどうはめて行くか、もしくは既存の戦力のコンバートを視野に入れた布陣となりました。スルナやクリジャナッツは負傷を我慢しながらの先発起用となっています。 GKスバシッチ-(右から)DFスルナ、クリジャナッツ、シムニッチ、ムラデノヴィッチ-MFガブリッチ、ヴコイェヴィッチ、クラニチャール、プラニッチ-FWエドゥアルド、ビリッチ この試合で一番のパフォーマンスを見せたのは、スポルティング・ヒホン所属のFWマテ・ビリッチ。ワールドカップ予選最終戦のカザフスタン戦で怪我により壊滅状態となったFW陣の数を揃えるためにチームに呼ばれ、29歳にしてようやく初キャップを刻んだ彼ですが、「リーガ・エスパニョーラで結果を残しているのに、代表で無視され続けるのに納得がいかない」と以前はメディアに何度も不満をぶちまけていました。同姓の監督による初先発の期待に応えるよう、いきなり先制ゴールを決めます。クラニチャールから右サイドのガブリッチに50mものロングパスが通ると、左足でクロス。ボールにビリッチがスライディングで食らい付き、ボールはネット右下に吸い込まれます。開始から44秒のゴールはクロアチア代表史上、最短のゴールとなりました。 ビリッチはフィジカルが強い分、前線で身体を張ることも可能で、しばしば中盤まで下がるエドゥアルドとのコンビネーションも良好。10分にはビリッチが倒されて直接FKを得ると、正面左20mの距離からスルナがGKを欺く無回転のシュートをゴール右に叩き込みます。スルナといえば回転を加えて鋭く落ちるFKを放つイメージがありますが、無回転という新たな武器も手に入れたようです。 ゴールラッシュは続き、23分、スルナの右クロスにファーサイドでビリッチがヘディングで落とし、エドゥアルドがワンタッチの後、シュートを流し込んで3-0と試合を決めます。 33分にロングボールをスルナが不注意でリヒテンシュタインのMFブルグメイエーにかっさられ、ペナルティエリアに侵入される場面がありましたが、GKスバシッチの素早い飛び出しで救われました。 後半もまた前半と同じく早い段階でゴールが決まります。47分、シムニッチが蹴り出したロングボールを相手DFが処理に誤り、ボールを奪ったビリッチがゴール前のエドゥアルドにラストパス。難なく決めて4-0とリードを広げます。 ビリッチは49分にも正面右20mからの直接FKを叩き込んで5-0。ビリッチは2ゴール・2アシストの文句なしの活躍となりました。74分にお役御免となったビリッチは試合後、 「これで自分の数字は2試合で2ゴールだ。もちろん嬉しいし、満足せねばならないね。FW陣には優れた選手ばかりだけど、ポジション争いには決して恐れることはなかったんだ。スペインでも強豪相手にプレーしてきたし、そこでポジション争いもしてきた。代表でレギュラーを奪うのが目標だけど、最終的には監督が決めることだし、監督をリスペクトすることは学んできた。でも、自分は代表を助けることができると信じているんだ」 と自信を覗かせました。 46分にクリジャナッツ→クネジェヴィッチ、58分にエドゥアルド→クラスニッチ、スルナ→シルデンフェルト、65分にヴコイェヴィッチ→ドゥイモヴィッチ、74分にビリッチ→イェラヴィッチと、限度となる6人の交代選手を次々と切りながらテストを重ねました。スコアは5-0から動くことはなかったのでずか、交代選手で一番の輝きを見せたのが、ボランチのトミスラフ・ドゥイモヴィッチ(ロコモティフ・モスクワ所属/ロシア)。クロアチアでは小クラブを渡り歩き、ロシアで開花、28歳で代表初召集となった大型ボランチですが、フィジカルの強さだけでなく、ボールをもらう前に周囲を把握し、ワンタッチもしくはツータッチで正確なパスを次々と通し、その後もさぼることなくリターンを受けられるポジションに走り込んでいくプレースタイルにベタ惚れしてしまいました。強い相手にどこまでやれるか見たいですが、間違いなく即戦力となる逸材でしょう。試合後、ビリッチ監督も 「ドゥイモヴィッチはニコ・コヴァチが代表引退した以降、我々の頭の中にあり、リストアップしていた選手だ。まるで50試合を我々と一緒にこなしてきたかのようなプレーをした。しかし、もっと早くデビューさせるべきだったのだろう。もしデビューさせていたならば、決して彼は不当な扱いを受けなかったと言えるかもしれない」 と述べています。 また懸案となる左サイドバックを務めたバルトゥロヴィッチですが、スピードを活かした攻撃力は見せたものの、リヒテンシュタインが相手ではディフェンス能力を確かめることができませんでした。ビリッチ監督も"彼の守備力は練習で確認できたが、リヒテンシュタインが相手では60%の真実しか目にすることができない"と語っています。それでも合格点は与えられるプレーをしたと言えましょう。 あと、右MFに入ったガブリッチは、アグレッシブさを活かした彼らしいプレーを随所に見せてくれました。左利きの彼は内へと切れ込むプレーも得意としており、今までにないタイプのサイドアタッカーとなります。 こう考えるとリヒテンシュタイン戦は決して無駄な試合ではなく、新たな戦力を発掘する絶好の機会となりました。年内の親善試合はなく、来年以降の対戦相手もまだ未定ですが、3月には強豪国を呼ぶという話も出ています。 ユーロ2000の予選で敗退した後は代表人気が急落し、ホームのフランス戦でも数千人しか集まらなかったなんてケースもありますが、仕切り直しの場としてサポーターの熱いヴィンコヴチを選んだのは正解だったかもしれません。ビリッチ監督も 「この試合は"さようなら(zbogom)"ではなく、"また会おう(dovidenja)"だ。近いうちにここヴィンコヴチで再び会えることを願っている」 とメッセージを送っています。 (試合動画はこちらで見られます)
同日にはU-21欧州選手権予選の「キプロスvs.クロアチア」が行われています。予選の初戦ではホームでキプロスに0-1の敗北を喫したクロアチアU-21代表ですが、その後は次々と新たな戦力が加わり、10月にはセルビア相手に3-1で勝利。今回のキプロス戦にはA代表からMFイヴァン・ラキティッチ、FWニコラ・カリニッチまでもが加わりました。ラキティッチ(写真)はスイスのユース代表(~U-19)を経験した後にクロアチアのA代表へと引き抜かれたため、この世代の選手達とは一緒のプレーをしたことがないのですが、自分の立場に奢ることなく、チームに溶け込もうと努力しました。キプロスに到着し、バスに飲料水がないと知るや、30本近くのミネラルウォーターを自分一人で購入してバスまで運んだ、なんでエピソードも語られています。 試合は劣悪なピッチ・コンディションと、スペインの審判団によるホームタウン・ディシジョンで苦しめられます。ラキティッチに対するペナルティエリア内でのファウルは見逃され、26分にはロングボール一発にDFロヴレンが目測を誤り、FWクリストフィにシュートを決められて0-1。その後もキプロスは審判にオフサイドが見逃されたを機にクリストフィがGKケラヴァと一対一になりますが、これはケラヴァがセーブします。 しかしながら、後半60分、ラキティッチが放ったFKにDFヴィーダがヘディングで押し込んで同点に追いつくと、65分にはカリニッチが競合いに勝ってゴール前に走り込んだラキティッチにラストパス。近距離から豪快にラキティッチが決勝ゴールを叩き込んで2-1と逆転勝利を収めました。 ドラジェン・ラディッチ監督もラキティッチをこうベタ褒めしています。 「サッカーはどうすべきものかを彼は示してくれたよ。ストリートサッカーでも彼は同じほどのヤル気でプレーするだろう。もしかしたら誰かはラキティッチのことを"A代表だからってスター気取りでやってくる"と予想していたかもしれない。しかし、彼は見るからに素晴らしい若者だ。彼が我々と一緒にいてくれることは本当に嬉しいし、他の選手達もどう試合で振る舞うべきか彼を見習うことができるよ」 クロアチアは18日に勝点1差で首位に立つスロバキアとアウェーで対戦。これに勝利すれば単独首位へと浮上します。
posted by 長束恭行 |20:09 |
サッカーニュース |
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本来ならば14日と18日それぞれに代表マッチを組み、弱い相手と強い相手それぞれにテストをしたかったビリッチ監督ですが、サッカー協会の交渉と準備のまずさと金の出し惜しみが重なり、呼べた相手はFIFAランク143位の弱小国リヒテンシュタインのみ。しかしながら、新たな戦力をテストできる点では絶好の機会となりました。4-4-2のプレーコンセプトはあくまで維持し、新たなパーツをどうはめて行くか、もしくは既存の戦力のコンバートを視野に入れた布陣となりました。スルナやクリジャナッツは負傷を我慢しながらの先発起用となっています。
GKスバシッチ-(右から)DFスルナ、クリジャナッツ、シムニッチ、ムラデノヴィッチ-MFガブリッチ、ヴコイェヴィッチ、クラニチャール、プラニッチ-FWエドゥアルド、ビリッチ
この試合で一番のパフォーマンスを見せたのは、スポルティング・ヒホン所属のFWマテ・ビリッチ。ワールドカップ予選最終戦のカザフスタン戦で怪我により壊滅状態となったFW陣の数を揃えるためにチームに呼ばれ、29歳にしてようやく初キャップを刻んだ彼ですが、「リーガ・エスパニョーラで結果を残しているのに、代表で無視され続けるのに納得がいかない」と以前はメディアに何度も不満をぶちまけていました。同姓の監督による初先発の期待に応えるよう、いきなり先制ゴールを決めます。クラニチャールから右サイドのガブリッチに50mものロングパスが通ると、左足でクロス。ボールにビリッチがスライディングで食らい付き、ボールはネット右下に吸い込まれます。開始から44秒のゴールはクロアチア代表史上、最短のゴールとなりました。
ビリッチはフィジカルが強い分、前線で身体を張ることも可能で、しばしば中盤まで下がるエドゥアルドとのコンビネーションも良好。10分にはビリッチが倒されて直接FKを得ると、正面左20mの距離からスルナがGKを欺く無回転のシュートをゴール右に叩き込みます。スルナといえば回転を加えて鋭く落ちるFKを放つイメージがありますが、無回転という新たな武器も手に入れたようです。
ゴールラッシュは続き、23分、スルナの右クロスにファーサイドでビリッチがヘディングで落とし、エドゥアルドがワンタッチの後、シュートを流し込んで3-0と試合を決めます。
33分にロングボールをスルナが不注意でリヒテンシュタインのMFブルグメイエーにかっさられ、ペナルティエリアに侵入される場面がありましたが、GKスバシッチの素早い飛び出しで救われました。
後半もまた前半と同じく早い段階でゴールが決まります。47分、シムニッチが蹴り出したロングボールを相手DFが処理に誤り、ボールを奪ったビリッチがゴール前のエドゥアルドにラストパス。難なく決めて4-0とリードを広げます。
ビリッチは49分にも正面右20mからの直接FKを叩き込んで5-0。ビリッチは2ゴール・2アシストの文句なしの活躍となりました。74分にお役御免となったビリッチは試合後、
「これで自分の数字は2試合で2ゴールだ。もちろん嬉しいし、満足せねばならないね。FW陣には優れた選手ばかりだけど、ポジション争いには決して恐れることはなかったんだ。スペインでも強豪相手にプレーしてきたし、そこでポジション争いもしてきた。代表でレギュラーを奪うのが目標だけど、最終的には監督が決めることだし、監督をリスペクトすることは学んできた。でも、自分は代表を助けることができると信じているんだ」
と自信を覗かせました。
46分にクリジャナッツ→クネジェヴィッチ、58分にエドゥアルド→クラスニッチ、スルナ→シルデンフェルト、65分にヴコイェヴィッチ→ドゥイモヴィッチ、74分にビリッチ→イェラヴィッチと、限度となる6人の交代選手を次々と切りながらテストを重ねました。スコアは5-0から動くことはなかったのでずか、交代選手で一番の輝きを見せたのが、ボランチのトミスラフ・ドゥイモヴィッチ(ロコモティフ・モスクワ所属/ロシア)。クロアチアでは小クラブを渡り歩き、ロシアで開花、28歳で代表初召集となった大型ボランチですが、フィジカルの強さだけでなく、ボールをもらう前に周囲を把握し、ワンタッチもしくはツータッチで正確なパスを次々と通し、その後もさぼることなくリターンを受けられるポジションに走り込んでいくプレースタイルにベタ惚れしてしまいました。強い相手にどこまでやれるか見たいですが、間違いなく即戦力となる逸材でしょう。試合後、ビリッチ監督も
「ドゥイモヴィッチはニコ・コヴァチが代表引退した以降、我々の頭の中にあり、リストアップしていた選手だ。まるで50試合を我々と一緒にこなしてきたかのようなプレーをした。しかし、もっと早くデビューさせるべきだったのだろう。もしデビューさせていたならば、決して彼は不当な扱いを受けなかったと言えるかもしれない」
と述べています。
また懸案となる左サイドバックを務めたバルトゥロヴィッチですが、スピードを活かした攻撃力は見せたものの、リヒテンシュタインが相手ではディフェンス能力を確かめることができませんでした。ビリッチ監督も"彼の守備力は練習で確認できたが、リヒテンシュタインが相手では60%の真実しか目にすることができない"と語っています。それでも合格点は与えられるプレーをしたと言えましょう。
あと、右MFに入ったガブリッチは、アグレッシブさを活かした彼らしいプレーを随所に見せてくれました。左利きの彼は内へと切れ込むプレーも得意としており、今までにないタイプのサイドアタッカーとなります。
こう考えるとリヒテンシュタイン戦は決して無駄な試合ではなく、新たな戦力を発掘する絶好の機会となりました。年内の親善試合はなく、来年以降の対戦相手もまだ未定ですが、3月には強豪国を呼ぶという話も出ています。
ユーロ2000の予選で敗退した後は代表人気が急落し、ホームのフランス戦でも数千人しか集まらなかったなんてケースもありますが、仕切り直しの場としてサポーターの熱いヴィンコヴチを選んだのは正解だったかもしれません。ビリッチ監督も
「この試合は"さようなら(zbogom)"ではなく、"また会おう(dovidenja)"だ。近いうちにここヴィンコヴチで再び会えることを願っている」
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ラキティッチ(写真)はスイスのユース代表(~U-19)を経験した後にクロアチアのA代表へと引き抜かれたため、この世代の選手達とは一緒のプレーをしたことがないのですが、自分の立場に奢ることなく、チームに溶け込もうと努力しました。キプロスに到着し、バスに飲料水がないと知るや、30本近くのミネラルウォーターを自分一人で購入してバスまで運んだ、なんでエピソードも語られています。
試合は劣悪なピッチ・コンディションと、スペインの審判団によるホームタウン・ディシジョンで苦しめられます。ラキティッチに対するペナルティエリア内でのファウルは見逃され、26分にはロングボール一発にDFロヴレンが目測を誤り、FWクリストフィにシュートを決められて0-1。その後もキプロスは審判にオフサイドが見逃されたを機にクリストフィがGKケラヴァと一対一になりますが、これはケラヴァがセーブします。
しかしながら、後半60分、ラキティッチが放ったFKにDFヴィーダがヘディングで押し込んで同点に追いつくと、65分にはカリニッチが競合いに勝ってゴール前に走り込んだラキティッチにラストパス。近距離から豪快にラキティッチが決勝ゴールを叩き込んで2-1と逆転勝利を収めました。
ドラジェン・ラディッチ監督もラキティッチをこうベタ褒めしています。
「サッカーはどうすべきものかを彼は示してくれたよ。ストリートサッカーでも彼は同じほどのヤル気でプレーするだろう。もしかしたら誰かはラキティッチのことを"A代表だからってスター気取りでやってくる"と予想していたかもしれない。しかし、彼は見るからに素晴らしい若者だ。彼が我々と一緒にいてくれることは本当に嬉しいし、他の選手達もどう試合で振る舞うべきか彼を見習うことができるよ」
クロアチアは18日に勝点1差で首位に立つスロバキアとアウェーで対戦。これに勝利すれば単独首位へと浮上します。

