2009年06月17日

ウクライナ戦を前にクロアチア代表の士気を下げた新参者~イヴァン・ユリッチ

「私は代表に呼ばれることを期待してなかった。スラヴェン・ビリッチとコーチ達に何があったのか私には分からない。私は特別な選手ではないし、自分がブランドだとは信じられない。多くのものが自分には欠けているけど、完璧になるよう努力するつもりだ」
「クロアチア代表は良いチームだが、強くはない。トップの位置には少し足らない。ヨーロッパでスペインやイタリア、オランダ、イングランドと比較などできない」
「ディフェンシブハーフの選手としては、マスケラーノ、セナ、エシェンを評価しているし、デ・ロッシも世界的なクラスだ。ニコ・コヴァチ? 彼は代表で素晴らしいキャリアを築いたけど、私と同じく、限界のある選手だ。」

nogomet-95004.jpgこれらはウクライナ戦当日、Sportske Novosti紙のインタビューでMFイヴァン・ユリッチ(写真)が語った言葉です。ワールドカップ予選における大一番を前に、ネガティブな発言が試合の士気に影響したと言われています。試合は2-2のドロー。勝利せねばならないホームでは負けに等しい結果でした。
ニコ・コヴァチの引退を受けてビリッチ監督がディフェンシブハーフの後継者と選んだのは、A代表歴のなかった33歳のMFユリッチでした。ユーロ2008以来、ポジションを耽々と狙っていたヴコイェヴィッチ、レコ、ポクリヴァチュといった選手を押しのけて先発に選んだのには、ビリッチなりの理由があったわけですが、これまでのプレーを見ればチームにフィットしていないのは明らか。A代表3試合目となったウクライナ戦でも中盤の穴は埋められず、シェフチェンコのヘディングシュートも追いかけずにあっさりと許してしまいました。そして前半でお役御免となったのです。

試合後、ユリッチに真っ先に矛を向けたのは、この試合でキャプテンを務めたロベルト・コヴァチでした。
「"限界のある選手"がチームにいるというのに、どうやって勝つことができるんだね? 自分の選手キャリア、とりわけ代表キャリアにおいて、スタメン選手がこのように自分のチームやチームメイトを語るなんて経験したことがない。もう何も話す気はないし、コメントもしたくない。私が何について話しているのか、何を指しているのか察して欲しい」
ロベルトにとっては、兄を侮辱されたのも気に食わなかったのでしょう。

これを受けてユリッチはこのようにインタビューで反論しました。
「(あのインタビューに関して)誰も私に直接文句を言って来なかった。時間も機会もあったというのに。このように他人を介した反応や、背後からささやかれるのは好きじゃない。
私は自分に対して最も批判的に語ったまでだ。それは自分を過小評価したり、他の選手を過小評価したわけではない。より優れた存在があるとだけ主張したんだ。それは誰もが知っていることだし、秘密じゃなければ、全くもって非難でもない。誰も侮辱するつもりはなかったし、代表チームのムードを壊すつもりもなかった。事実ならば誰も痛みを感じることはないだろう。とにかく、自分が悪いなんて感じていない。考えることへの権利はあるし、誰に対しても謝る必要性はないと信じている」
と開き直りました。ニコ・コヴァチに対する発言も撤回せずに「何が問題だったのかね?」と述べ、今後の代表召集に響くと思うかの質問に対しても
「代表が私のキャリアにとって今さらステップアップになるとは思わないし、高額なオファーが届くきっかけになるとは思わない。助けるためにチームにいるんだ。もし監督が私を必要ないと思うのならば、それでもいいさ。私は悪くないだろうから」
とあくまで自分を肯定しました。

これまでチームの和と同時に規律を重要視し、2006年には合宿中に夜遊びに出掛けた3選手(スルナ、オリッチ、バラバン)に対して代表追放まで決めたビリッチ監督でしたが、今回は後手に回ってしまいました。
「これまでの選手グループにとっては不慣れで不注意な発言だったとはいえ、事は始まりの時点から大きく膨れ上がりすぎてしまった。ユリッチはしっかりとした好人物だ。少し普通ではないかもしれないが、彼の振る舞いが問題になることはなかったし、悪気は無かったのは間違いないと私は考えている。ロベルト(・コヴァチ)はこの状況下でチームを守ろうとしたわけで、彼にも悪気はなかった。我々はこの緊張状態を和らげ、これまでと同様にチーム内の不協和音を解決させるつもりだ」(ビリッチ監督)

そんな中、ウクライナ戦では解説ゲストとして呼ばれ、勝利に対するスピリットに欠けたチームに地団駄を踏んでいたニコ・コヴァチ(写真)はこう答えています。
nogomet-95005.jpg「このような重要な試合を前に、代表チームには完全な平穏と集中が必要だった。一体化すべくはチーム内だけでなく、メディアもサポーターも含めてだったと私は確信している。誰かにとっては陳腐に聞こえるかもしれないが、選手とってはこれほどの緊張下ではちょっとした事柄でも調子を狂わせてしまうものだ。エネルギーが二次的なものに流れないよう、後で問題になることがないよう、準備の段階では全てやるべきだと思う。
私もそのインタビューは読んだよ。選手達はインタビュー内容に驚き、試合前に話題にしていたようだがね。それが、あのようなインタビューが誤ったタイミングであったか知るのに充分な事実だ。ユリッチの態度に関してだが、誰もが自分の考えを持つ権利を持っている。しかし、唯一私が非難するとしたら、このような種の発言をするタイミングはいかがなものかということだ」
移民二世としてクロアチアという国家、クロアチア代表という重みをとりわけ知るニコ・コヴァチにとってはユリッチの行動は信じがたいものだったでしょう。"33歳という経験ある選手ならば、試合当日にこんな状況に陥れるような発言は慎むべきだった"というのが、誰よりも熱かった元キャプテンの率直な批判でした。ちなみに"限界のある選手"という発言に関してはこのように一笑に付しています。
「偉大なテクニシャンとそれ以外の選手について語る時の永遠のテーマだよ。ディフェンシブハーフの選手を、得点を決めるFWや美しいパスを通すMFと比較した場合、なぜ最初から"限界のある選手"となるかね? なぜある選手は私より走力が無く、プレーにおける義務を常に果たさないのにもかかわらず、"限界のある選手"のカテゴリーに入らないというのかね?」

この一件でユリッチが代表から追放されるのは間違いないでしょう。ビリッチは決して「追放」という言い方をしないでしょうが、二度と呼ぶことはしないはずです。また、ビリッチ監督は彼を召集し、信用して使い続けたことに対する「責任」を払わねばなりません。それにしては余りにも大きな代償でありました。
現にワールドカップ出場までのシナリオはかなり厳しくなっています。ワールドカップ予選で失敗した場合、どこがターニングポイントになったのかと単に問われれば、ユリッチの召集と彼のインタビューに集約されてしまうのでしょう。ちなみにそのインタビューを行ったのが、クロアチア代表の試合を最も現場で追っているジャーナリスト、ブランコ・スティプコヴィッチ氏。インタビューが悪影響を及ぼすのは重々承知な上、発信してしまったのもジャーナリストの性(さが)とも言えましょう。残念ながら。今回のドローは、実は全てにおいて一体化していなかったクロアチアを具体化した結果なのかもしれません。


posted by 長束恭行 |01:59 | サッカーニュース | コメント(5) |
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この記事に対するコメント一覧
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ウクライナ戦を前にクロアチア代表の士気を下げた新参者~イヴァン・ユリッチ

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記事でも言われているとおり、タイミングの問題であって、発言そのものは悪いことを言っているようには思えません。ビリッチはイヴァン・ユリッチとしっかり対話しておけば防げたかと思います。

posted by TT | 2009-06-17 15:37

ウクライナ戦を前にクロアチア代表の士気を下げた新参者~イヴァン・ユリッチ

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悪いことは言っていない…本当にそうでしょうか?
選手個人の資質はともかく、代表チームに対するコメントはいただけませんね。去年のユーロを観た人であれば、クロアチアが準優勝したドイツを上回るプレーをしていたことはご存知のはず。
日本代表監督が堂々とベスト4狙いを公言しているくらいなのですから、クロアチアの目標は優勝だ!くらい言ったっていいと思います(ダ・シルバの完全復活が絶対条件ですが・・・)。
マスコミ・評論家が冷静な分析を元に発言するならまだわかりますが、やってる本人がこの向上心の無さでは、私が監督ならまず使おうとは思えないですね。

posted by T.M | 2009-06-18 00:10

ウクライナ戦を前にクロアチア代表の士気を下げた新参者~イヴァン・ユリッチ

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発言の良し悪しで揉める前に私なりの解釈を。

基本的にクロアチア人はポジティブ、それも好戦的なポジティブさでチームが一体化し、数々の大物食いを成し遂げてきたわけですが、ユリッチの発言というのはそんなクロアチア人の性格の真逆を行く発言でありました。
それがチームのムードをぶち壊したのは間違いないでしょうし、新たに来た年上相手に直ぐに文句を言えるチームメイトがいえず、戸惑いがあったのは間違いないでしょう。

スペインやイタリアの下部リーグから苦労しつつキャリアを築いたユリッチにとってみれば、彼なりのプライドも加わって、「スペインやイタリア~」と客観的なつもりで発言したつもりなのかもしれません。ただ、強豪相手にこれまで真っ向と戦ってきたチームメイトへのリスペクトが余りにも足りませんでした。

遅い年齢で代表チームに入ってきた選手としてプルショが挙げられますが、彼はチームメイトから一目置かれた存在でした。もちろん直ぐに結果を残せた、というのもありますが、勝利への信念が人一倍あり、周囲にポジティブな影響をもたらせる選手だったのです。ユーロ2004予選プレーオフの対スロベニア戦で窮地に立たされたチーム(メイト)を奮い立たせ、決勝ゴールを決めたのが彼でした。

そう考えると、ネガティブな影響を与えるような選手の人選はどうだったのかと。TTさんが言うとおり、ビリッチはしっかりと対話をしておけはれば防げたのでしょうね。

個人的には、最初からヴコイェヴィッチを起用すべきだったと思っています。ウクライナ戦はともかく、今年の始めから。彼然り、レコも然り、ニコ・コヴァチが引退してようやくチャンスを訪れたと思いきや、チームに来たばかりのベテランを直ぐにスタメン抜擢したことへの反発は彼らのインタビューから読み取れます。ユリッチが圧倒的に良いプレーをしているならまだしも、そうではなかったのですから。

日本代表のベスト4云々に関しては、ちょっとマスコミが岡田監督の発言をキャッチ的に煽りすぎているかと思います。先日、オシムにインタビューする機会があったのですが、ベスト4発言に関しては
「それが公約となってはならない。後から発言の責任を問われ、どうすれば分からずに去ってしまっては意味がない」
と釘を刺していました。

posted by 長束恭行 | 2009-06-18 02:13

ウクライナ戦を前にクロアチア代表の士気を下げた新参者~イヴァン・ユリッチ

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「限界のある選手」って表現を初めてみました。
詰めの一手の発想が凡庸ってことでしょうか?

ユリッチの自己肯定を信じてみるならば、メディアやチームを煽らなければならないという判断でしょうか。
未だこのチームは何も得ていない、と。

また、「私は代表に呼ばれることを期待してなかった。…」とあるので、チームの和になじめなかったのかも知れません。

しかし、公言することではないですね。
チームに言いたいことがあるなら、直接言って、終いにするべきです。
メディアに対しては…黙して語らずが無難。

そんなことはプロ選手なら常識だし、しっかりとした好人物ならなおさら。

話を聞いた記者に対しては、同様の件であれば今後は発表するなら試合後にすれば良いのではないかと思います。
勝つにせよ負けるにせよ、試合の後ならチームに対するネガティブな影響はより少なく、本懐を遂げられる。
いささか結果論ではありますが、その記者がクロアチアチームのファンなら「悪影響を承知で」なんて考えないでほしかった。

posted by ohinawa | 2009-06-18 02:47

ウクライナ戦を前にクロアチア代表の士気を下げた新参者~イヴァン・ユリッチ

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精神的に弱すぎ。結局言い訳を探して一人に責任おっかぶせてるだけじゃん

posted by . | 2009-06-19 18:16

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