2009年01月16日

離日後初のクロアチア紙のオシムのインタビュー記事

1月4日に離日した前日本代表監督イヴィツァ・オシムが、クロアチアの日刊紙ユタルニ・リスト紙のジャーナリストの重鎮トミスラフ・ジダクのインタビューをグラーツの自宅に受け入れ、1月15日の紙面に「ディナモは間違った選手を買っている」のタイトルでインタビュー記事が掲載されました。1990年ワールドカップの時はスポルツケ・ノボスティ紙の代表担当だったジダクと、ユーゴ代表監督だったオシムとのテーマは全般に渡っています。そこまで目新しさはありませんが、全記事を訳してみました。


オシムの苗字の前にはよく接頭語として「最大の」という言葉が置かれる。ジェリェズニチャール最大の監督、1990年のユーゴスラビア代表監督、最も栄光たる日々となったシュトゥルム・グラーツ、日本代表監督。そして彼をベンチに"縫いつける"と、かつて呼ばれた"シュワーボ"とか"シュトラウス"と愛称ではなく、"あの世界の…"と既になったものだ。死の寸前から復活し、今はグラーツで生活している。もっぱらテレビの数々のチャンネルを回しながら、並外れた情報収集をしているのだ。

「"あの"ドゥルピッチを追い出したのは何だったんだ?(※近頃、規律違反でディナモのDFドゥルピッチがチーム追放されたばかり)」
-マクシミールの話題を完全に知っていた上で、彼は私を門で迎えた。

いつものように彼の言葉はゆっくりと流れる。どんなことについてもよく考え、重みを計ろうとする。日常で神経質になる必要がない今だろうが、サッカーの監督の時だろうが、それは簡単なことではない。
「日本から"三本足"で帰るなんて望んではいなかったさ。杖は空港に置いてきたよ! けれども、ストレスはまだ私の中にある。サッカーの深みに一度でもはまったら、そこから自由にはなれないんだよ。ほら、マンチェスター・ユナイテッドとガンバ大阪の試合を見ながら、どれだけクリスティアーノ・ロナウドが私をいらいらさせ、試合から帰ろうとさせたことか」

-あなたはユーゴスラビアと日本の代表監督、ジェリェズニチャール、パルチザン、パナシナイコス、シュトゥルムの監督を務めた。どこが最も良かったか?
「故郷さ、ジェーリョ(ジェリェズニチャール)だよ。故郷ではどこだろうが重荷はないし、プレッシャーは自分に対してだけ掛かるものだ! しかし、故郷も他と一緒だと思っていたら、直ぐに駄目になってしまうものだけどね」

-シュトゥルムの100周年記念日にあなたはクラブ史上最高の監督の称号を受けたが。
「まあ、私はシュトゥルムに"100年間"ともいうべき8年間もいたからね。私の下では何においても8という数字がつきまとうんだ。8歳で選手になり、フランスに8年間、(ユーゴスラビア・サッカー)協会に8年間、シュトゥルムに8年間、日本に7年半だ」

-どの試合は忘れることがない?
「いつも悪い結末を迎えた試合を覚えるものだ! 私が唯一残念なのは、(UEFAカップで)レアルとの決勝に行けなかったあのジェーリョでの試合だよ(※1985年準決勝第2戦・対ビデオトン)。あのチームは何か成し遂げる状況にあった。とても速く、機敏性もあり、才能のあるチームだった」

-最高の試合はチャンピオンズリーグでのシュトゥルムの時?
「ディナモ戦だと私が言うなんて思っているのならば、それは間違いだ!(1999年、1-0でシュトゥルムが勝利) コツィヤンが君たちを"殺した"わけだが、私は彼に今でもこう言うよ。"お前がゴールを決めたのではない。相手がお前にゴールを決めさせたのだ!"と。ザグレブでの記者会見で、"我々は誰かを騙すことだろう"と私が言ったことを覚えているよ。我々がディナモを騙すことになったわけだけどね」

-どの監督をとりわけ評価をしているか?
「この監督を評価している、あの監督は評価しないと言うのは醜いことだ。なぜならどの監督も何かしらの野心に燃えているわけだからね。ある者は本物のクラブに来る幸運があったし、ある者は野心に満ち溢れた会長や街、政治を持つ幸運があった。会長とサポーターが何を欲し、何を望んでいるか、選手が何をできるかを知らねばならない。政治も非常に重要だ。貴賓席に現れることが好きな人々が一度にこれほど集まるのは驚きだよ。話を監督に戻すと、"何かを作り出す"監督はいるということだ」

-例えば?
「現在、監督はおおよそがマネージャーだ。彼らはどんなプレーをすべきかというアイデアがあり、選手を選んでいる。ヴェンゲルは優れた鼻を持っているが、ボロ・プリモラッツ(アシスタントコーチ)も持っている。ほら、サミール・ナスリをマルセイユから連れてきて、直ぐにマンチェスター・ユナイテッド相手に二得点決めたじゃないか。それを"フィットした"と君たちは言うだろうが、なぜフィットしたのかね? ボロ・プリモラッツは優れたアドバイザーで、ヴェンゲルをプリモラッツ抜きでは考えられないだろう。彼はヴェンゲルの右手であり、背中に吹く風なのだ…」

-指導したきた中でどの選手が最も優れていた?
「誰も侮辱したくはないな」

-例えば、プロシネチュキは最高のクロアチア選手では?
「それは誰かに確認したらどうだ。チーロ(ブラジェヴィッチ)、もしくは自分に…」

オシムは続けた。
「プロシネチュキは様々なシチュエーションで見てきた。ズヴェズダでは他のどこよりも優れたプレーをしていたよ。客観的に見て彼は能力以上に走っていたからね。観客やジャーナリストが見えないものが見える選手を私は熱愛しているよ。最後になって、彼らが天才的だと知ることになる。あるボールを送り出す時のジェラードのようにね。"ピクシー"ストイコヴィッチはよく走ることができた。しかし、天才はサヴィチェヴィッチだった。とはいえ、最も私が評価しているのはズラトコ・ヴヨヴィッチさ! 誰もが彼を攻撃したけど、彼は常にチームの中にいた。彼が更なる批判や戦いに耐えられたどうかは分からないが、国家がそれを耐えられなかっただろう。彼と話し合う必要はなく、何が必要かは彼自身が分かっていた。ボシュニャク人から選ぶのならばサフェト・スシッチか…」

-現在、あなたを興奮させてくれるチームは?
「アーセナルは速くて美しく、そして賢いプレーをしていた。ペナルティエリアで囲まれたら、ゴールを決めさせてくれるまでは外へ出られないものさ。バルセロナは落ちてしまったよ。必要のない選手を連れてきてしまった。アンリはバルセロナに必要なかった。嫉妬が生まれるなんて、賢い者なら誰もが分かったことだ。彼らは自分で足かせを作ってしまったよ」

-かつて選手としてディナモを訪れたのに、チームはあなたをサラエボに帰してしまった。マミッチ副会長は全力でマクシミールにあなたを呼んだが、あなたが受け入れなかった。なぜ?
「日本で何度かアルディレスと話をした。ビッグクラブにいた偉大な選手だ。ディナモでは非常に良かったと彼は言っていたものさ。三浦にも会った。まだクロアチア語での汚い言葉を知っていたよ」

-あなたが来なかったのは残念だ。もしかしたらヨーロッパ(・カップ)で春を迎えられたかもしれない。
「ヨーロッパでディナモのような好条件を持っているチームは少ない。もっと良くて然るべきだ。ディナモにとって選手を買うことは問題ではない。しかし、間違った選手を買っているのは明らかなことだ。もし頻繁に監督を追いやるのならば、選手が一夜で新たな中心人物に変わるなんて期待はできないものだ。最高だとか一番賢いなどと選手を賞賛せねばならないものだが、監督は時にはそれを真面目に理解しているんだよ。控え選手まで賞賛を受けるようならば、もっと良いんだけどね…」

-あなたはユーロを観戦していた。最も印象に残ったのは?
「サッカー面では全く新しいものはなかったよ! チャンピオンズリーグでプレーする選手が最も集まるのが代表のトレンドで、彼らが全てを指揮っている。戦術プランで特別新しいことがないならば、まず何よりしっかりとした規律と走力だ。現在のチームは相手に戦術を合わせている。負けないように。より速くて強いチームを陥れる罠に落ちてはいけないように。今のサッカー哲学の基本原理は、我々もやらないが、相手にもやらせないことだ! 誰もが勝点1に生き、一人の監督もリスクを犯すことに熱狂的ではない」

-現在のサッカーと、あなたのユーゴスラビアがヒットとなった90年代のサッカーには大きな差があるのか?
「サッカーは全て自らに反してやっているんだ! お金がますます絡み、多くの金が意味をなすことは、サッカーにとって自殺に近いということだ。人々が惑星で頭をやられようというのに(?)、サッカーでは何もないというのかね? お金を非常に掛けた素晴らしいチームが世界中にたくさん存在する。プレーしなくともやたらと高い選手もいれば、中にはクラブにとってもサッカーにとっても利用されない者もいる。ほら、インテルは二チームを構成できる。どっちが強いかは分からず、どちらだってイタリア王者になれるのさ」

-チーロとボスニアの間の現象を我々に説明して欲しい。(※現在、ボスニアは代表監督ブラジェヴィッチとサッカー協会の一部が対立中)
「ある者は後ろ向きに生き、ある時に誰が何を言ったかを覚えている。後で自分で自分を分析しようものなら恥だと思うだろう。なぜなら、あれはスローガン的なことだからだ。チーロも何かを言った時、結末がどうなるかなど考えていなった。しかし、誰がチーロをどれだけ評価しているかは関係なく、彼は非常に賢い人間だ。何を言おうとも、それがどれだけ人にとって痛いのかを分かっている。もしこの場所に彼が来たかったならば来ることは可能だっだろう。なぜなら"彼ら"(ボスニア)はチーロをいつでも受け入れられたからだ」

-予選で彼は何かを成し遂げられるのか?
「可能だ。なぜなら普通の人々が信じないようなことを彼は信じているからね。チーロが信じた時は、残る全員も信じるのさ! ディナモでも人々が信じていなかったことを彼は成し遂げた。代表でも選手たちを素晴らしいグループへと仕立てた。全てをコントロールし、異議を唱えるようなジャーナリストが横にいるのは楽ではないが、チーロはクロアチアでもそんな中で成功した。おそらくボスニアでも成功するだろう」

posted by 長束恭行 |02:35 | サッカーニュース | コメント(4) |
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離日後初のクロアチア紙のオシムのインタビュー記事

コメント投稿者ID :

翻訳ありがとうございます。
オシムの口が元気なのが、よくわかります。

posted by オレンジ | 2009-01-16 23:05

頼りにしてます

コメント投稿者ID :

日本からオシムが去ってしまい、
今後のオシム情報は
「クロアチア・サッカーニュース」がメインになりそうです。

これからもオシムを追いかけ続けますので、
よろしくお願いします。

http://manaitanouenoosim.web.fc2.com/index.html

posted by 直木 | 2009-01-18 02:47

離日後初のクロアチア紙のオシムのインタビュー記事

コメント投稿者ID :

情報、翻訳ありがとうございます。
相変わらずのオシム節が伝わってきて楽しく読ませていただきました。
オシムさんの情報源はココだけですので、今後も楽しみにしています。

posted by イサタン | 2009-01-21 12:35

オシム節が

コメント投稿者ID :

聞けたことは元気そうで素直に嬉しいのですが、
日本代表でオシムさんが目指したサッカーの完成系がどうなるはずだったのか。。

まだまだ復帰してもらいたい気持ちをひきずっています。。

でもここでしかオシムさんの詳しい情報はわからないと思いますので楽しみです。

posted by たけぞう | 2009-01-30 01:46

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