2008年11月01日

オシムのクロアチア誌「90minuta」インタビュー

10月27日に発売されたクロアチアのスポーツ雑誌「90minuta」に、イヴィツァ・オシムのインタビュー記事が掲載されました。

旧ユーゴに係わるサッカーが話題になっていますが、9月初めにテレビ取材で本人にお会いした際にも「クロアチアを始め、きちんとユーゴ各国をチェックしているよ」と語っていました。ザグレブから引き連れたカメラクルーが大のサッカー好きということもあって、取材後は彼らを交えてユーゴサッカーの話題に盛り上がったのを思い出します。
最初に監督願望の話が出てきますが、奥さんのアシマさんと話をした際には「イヴィツァがやりたいと言うのならば…」と肯定的に語っていたことのを記憶しています。これからの動向が気になりますね。

それではコメント部分の完全訳を紹介します。


「あのような恐ろしい脳梗塞が起きた後だが、今は大丈夫だと言えるよ。注意を払わねばならないとはいえ、しっかりと歩いている。
正直、再びベンチに座りたいという願望に引かれているのだが、直ぐに私の心臓が強く鼓動し始め、医者たちはベンチのことは忘れるように忠告してくるんだ。
もちろん、この先も試合を観ることに最も時間を費やすが、それがいわゆる私の愛すべき時間なんだよ。それ無しでは生きていけないものがサッカーだ。けれども今は神経質になる理由がないだけで、試合を観て、フォローをして、そして楽しんでいるのさ」

nogomet-54283.jpg-クロアチア・リーグにに関する貴方の考えは?
「何とか進んでいる。ゆっくりだが、進んでいるよ。昔のように一流選手はいない。それははっきりしているさ。しかし、幸運なのは代表が良いプレーをしていることだね」

-つまり、クロアチア代表はフォローしているのか?
「スロベニア、マケドニア、セルビア、モンテネグロ、もちろんボスニア・ヘルツェゴビナのことも追っているよ。どこにもタレントはいるからね。クロアチア(代表)にはディシプリンがあり、プロフェッショナリズムの点では最も先を進んでいる。本大会を終えたところでもサーカスは起こさず、次も本大会出場を成し遂げようという義務を感じているんだ。そのような考え方は外国から彼らにもたらされ、秩序を保ち、いかなる大きなスキャンダルもない。選手たちとコーチ陣は相互にリスペクトしている。選手が他の選手を攻撃するなんてことが起こったボスニアには、そんなケースはないんだよ(※数年前にボリッチとバルバレスが喧嘩している)」

-イングランド戦の敗北がクロアチアを少し動揺させたとは考えているのか?
「ああ、しかし短期間だけだ。コメントの中に少し不注意があった。イングランドはイングランドなんだよ。イングランドを過小評価することなんて許されないのさ。とりわけカペッロが率いるイングランドをね。好きなことを口に出来るかもしれないが、ならばそれを証明する必要がある。
カペッロは世界的な監督で、最高の監督の一人だ。プレミアリーグのほとんど全てのダービーを視察し、フォローし、そして彼が働いていることは貴方たちを目にしているだろう。自分が目にしたものを彼は信じており、だからいつも新しい選手が代表に現れるのだ」

-スラヴェン・ビリッチのことは気に入っているか?
「彼は選手として良いキャリアを持っており、良い監督になることだろう。彼の理路整然としたところ、余りに急ぎすぎないところは気に入っているよ」

-ディナモとハイドゥクについてどう考えているか?
「ここ数年は二つの異なるストーリーだ。マミッチ(ディナモ副会長)は選手売却においてノーベル賞に値する存在だね。彼が成し遂げたことは信じ難い。本当に信じ難いことなのだよ。私が知る限り、ハイドゥクは回復してきている、それは良いことだ。やはりディナモとハイドゥクはクロアチア・サッカーの骨格なのだからね」

-1998年のクロアチア代表と2008年のクロアチア代表ではどちらが優れている?
「もちろん、1998年。彼らはより優れた選手たちだ。(私がそう言ったところでも)誰も怒って欲しくはないね。それは今の代表選手たちも分かっているものと思う。今の彼らが優秀なのは、イングランドやドイツで大勝利を収めた後ですら、1998年のチームと自分たちを決して比較しなかったことだ。それは良いことなのだよ。ボバンやプロシネチュキ、シュケルを認めなかったとしたら、見えを張りすぎることになる。ラッキーなことに彼らをきちんと評価しており、だから自分の立場を理解しているものと私は考えているよ」

-チーロ(ブラジェヴィッチ)率いるボスニア・ヘルツェゴビナ代表をどのように見ているか?
「彼は他人が信じないようなことを信じている。それが無くては進まないんだ。もし監督が信じないのならば、選手たちも信じることはできない。また彼が代表監督に承諾したこと自体が大きなことだ。モチベーションを与えられる人物だし。彼が承諾し、我々(ボスニア・ヘルツェゴビナ)のことを信じているのならば、なぜ選手たちが精一杯プレーできないなんて言えるのだね? 彼が信じてくれるのならば、我々も信じなければならないのさ。
選手に関していえば素材はある。私はブンデスリーガでプレーする選手たちをフォローしているが、本当に良いプレーをしているんだ。サリホヴィッチ、リーグ得点王のイビシェヴィッチ、ジェコ、ミシモヴィッチは素晴らしい。今は彼らを余りにも持ち上げ、腐らせてしまうことだけが許されないんだよ」

-1990年のワールドカップでアルゼンチンで敗北したことがユーゴスラビア崩壊の序章だったのか?
「もし我々が世界王者になったところでも、ユーゴスラビアは崩壊していただろう。もしかしたら少し崩壊が遅かったかもしれないがね。情勢や全てに反して、代表チームは素晴らしい選手たちを抱えていた。
難しい時代だったよ。ジャーナリストのため、四つの共和国のため、四つに分けた記者会見をやらねばならなかった。どの共和国にも出身選手がいて、(ジャーナリストは)自分の選手たちを押していたんだ。彼にパスを出してはいけない、なんて主張があったのさ。選手を操作しようとしたけど、あの若者たちは素晴らしかった。ありがとう。今の私はそれを口にしたいんだ。ジャーナリストはあらゆる方面から我々を欺こうとし、我々が酒に溺れていると語った。醜いことだったが、我々は一緒に持ちこたえたのさ。
アルゼンチンを突破することは我々の運命ではなかった。(前半でサバナゾヴィッチが退場し)10人の選手でも我々の方が良かったとはいえね。このようなことを言うのは決して好まないのだけれども、もし我々がフルメンバーだったとしたらアルゼンチンに勝利したことだろう。スシッチ、サヴィチェヴィッチ、ストイコヴィッチ、プロシネチュキ、ズラトコ・ヴヨヴィッチ…。彼らを数えることすら恥と思える、そんな選手たちだった。残念。本当に残念だ」

-ジェリェズニチャールに対するビデオトン戦(※1985年UEFAカップ準決勝第二戦で終了間際の失点で敗北)とアルゼンチン戦のどちらが貴方により重く圧し掛かったか?
「ビデオトン戦だ。ダビデがゴリアテと戦うまでには少し足らなかった。あれは恐ろしいほど残念だったよ。(決勝で)レアル・マドリッドと戦えるチームを持っていた。(そう言うと)今は誰かが笑うかもしれないだろうが。
けれども、我々はスピードのあるチームだったんだ。もちろん、レアルが(我々を)過小評価してくることは君も計算できるだろう。そして(我々の)意地だ。時に意地は最悪のアドバイザーとなる。なぜなら、いつも意地ばかり考えては駄目だからね。しかし、あの時は意地が意味をなしたかも知れない、確実に。レアルに勝てたかどうかは分からないが、恥を掻くなんてことはなかったと考えている」

-現在のジェリェズニチャール、そしてこの地域全般のサッカーに関しては?
「それは大きな伝統だ。サラエボ、ジェリェズニチャール、ディナモ、パルチザン、ズヴェズダ、ハイドゥク。しかし、伝統は買うことができないのだよ。アブラモヴィッチはチェルシーを買ったし、今はマンチェスター・シティも買われた。しかし、彼らは決してリバプールやマンチェスター・ユナイテッドは買えない。
サラエボやジェリェズニチャールの立場で懸命に戦っている人々がいる間は、何らかの価値があるという意味だ。あとは彼らが本物の人たちかどうかが問題だね。あのクラブたちから伝統しか残らなかったのならば危険なことだ」

-チャンピオンズリーグはどこへ進むのか?
「チャンピオンズ・リーグは豊かなクラブによるものだ。それも非常に早いスピードで進んでいる。最もお金がある者たちのリーグだが、なぜ彼らのうち誰かはあれだけ投資したのにもかかわらず、例えばクルージュで地雷を踏みにも行くのだね。ビッグクラブ間でも間もなく完全に差が開いていくだろう」

-サラエボにいはいつやって来るのか?
「正直行きたかったんだけれども、まず日本に行かねばならない。(日本の)人々はとても礼儀正しかったんだ。そして医者にかからねばならない。ちょっとした刺激でも肩や膝などあらゆるところが痛む。もしや気象予報士になれるかもしれないな。けれども、上手くいくことを私は願っているよ。
古い傷を抱えながら少し腰をかけて、アコーディオンを弾いてみたいものだ。私はかつてアコーディオンを弾いていたのさ。ディノ・メルリンの最新アルバムが気に入っているよ」


posted by 長束恭行 |01:05 | サッカーニュース | コメント(4) |
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オシムのクロアチア誌「90minuta」インタビュー

コメント投稿者ID :

いいですよねぇ、オシムのインタビュー。
なんて含蓄のある言葉の数々。

「もちろん、1998年。彼らはより優れた選手たちだ。(私がそう言ったところでも)誰も怒って欲しくはないね。」

こんなこと、いまの日本サッカー協会の人だったら、誰も言えないです。

もうひとつ。

「そして(我々の)意地だ。時に意地は最悪のアドバイザーとなる。なぜなら、いつも意地ばかり考えては駄目だからね。しかし、あの時は意地が意味をなしたかも知れない、確実に。」

メンタルを過大評価せず、でも、時にはそれが重要となる。

なんて素直でいい言葉なんでしょうね。

やたら精神面ばかり声高に叫ぶJサポや、一方で選手を駒のように戦術面の話をする評論家と比べて、サッカーに対する発想が豊かです。

家族のことと身体のことを考えて、二度とイビチャ・オシムには現役監督をやっていただきたくないですが、彼が日本サッカーを少しでも気にして頂いてると感じるだけで、とても勇気が沸きます。

札幌になんて、来ないでねーーー。

posted by ジダ | 2008-11-01 06:40

オシムのクロアチア誌「90minuta」インタビュー

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とても興味深く、拝見しました。ありがとうございます。
心情的には、もう一度、指揮を執られているチームを見たくもあり、でも体のことを考えると、、、。
まだ、サッカーに関わっている姿、インタービューには琴線に触れるものがあります。

ひとつ質問なのですが、
文章中にマミッチ副会長のことについて、発言されているところがありました。ここでの、彼が成し遂げたのことというのは、どういったことなのでしょうか。
もし分かれば教えてください。手腕を評価しているのか、それとも暗にやり方を批判しているのかが気になりまして。

>マミッチ(ディナモ副会長)は選手売却においてノーベル賞に値する存在だね。彼が成し遂げたことは信じ難い。本当に信じ難いことなのだよ。

posted by nAri | 2008-11-01 17:07

オシムのクロアチア誌「90minuta」インタビュー

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> nAriさん
マミッチ副会長は2007年夏から一年間で、エドゥアルドやチョルルカ、モドリッチ、ヴコイェヴィッチ、ポクリヴァッツらを次々と有名クラブに売却し、総額6000万ユーロ近くをクラブにもたらした人物です。
ここのブログで「マミッチ」と検索すれば、いかにハチャメチャな人物か分かると思いますが、選手売却の手腕に関してオシムは本当に認めていますね。これは批判ではなく、オシム本人と話をした際もマミッチの経営手腕を褒め称えていました。

posted by 長束恭行 | 2008-11-01 20:49

オシムのクロアチア誌「90minuta」インタビュー

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ありがとうございます。

マミッチ副会長を、今回の記事で知り、どんな人物かを少しですが、長束さんのクロアチア・サッカーニュースなどで調べて見たら、どの部分を評価するかで評価が分かれそうなことをやっている方だったので気になっていました。

クラブも健全な経営のためには運転資金が必要ですから、そこはマミッチ副会長の手腕は、やはりすごいのですね。
すっきりしました。ありがとうございました。

posted by nAri | 2008-11-02 06:35

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