西の落伍家

【大相撲】今日の結びの一番について

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 大相撲春場所13日目。結びはここまで12戦全勝の横綱稀勢の里と9勝3敗の横綱日馬富士の一番。稀勢の里は横綱になってから初めての対横綱戦であった。

 稀勢の里はここまで何度か危ない場面があったものの星を落とすことなく二場所連続優勝へ歩みを進めていた。日馬富士は成績こそピリッとしないものの弟弟子の大関照ノ富士が1敗で優勝争いを演じており勝てば兄弟子として援護射撃が可能であった一番であった。

 結果から言うとこの一番は日馬富士の完勝であった。あれよあれよと土俵外に落ちた稀勢の里は左肩の辺りに痛みを感じたのか立ち上がることができず、取組後は救急車で病院に搬送された。ネット上では稀勢の里の休場を残念がる声があがった。それと同時に怪我をさせてしまった日馬富士に対する非難も見られた。

 稀勢の里は「無事是名馬」を地で行く力士であった。本場所での休場は平成26年初場所千秋楽の右足親指負傷による1日しかない。そんな稀勢の里があれだけ痛がるということはあまり思わしくない怪我をしてしまったと考えるのが普通だろう。解説の北の富士勝昭氏も「これは明日はもう無理かもねえ」と怪我が深刻なものであるという見方を示していた。

 ここまで優勝争いを引っ張ってきた新横綱の怪我は多くのファンにとって残念な結果となった。もちろん筆者も同じ思いだ。しかしそんな中であえて私は結果として怪我をさせてしまった日馬富士の取り組みを讃えたいと思う。

 今年に入ってからの日馬富士は精彩を欠いていた。初場所の成績は4勝3敗8休。軽量が故に得意とする速攻相撲も怪我の一因となったのだろう。春場所から四横綱時代に入ったが、一番最初に脱落するのは日馬富士であると考えていた。今場所もこの一番の前までは9勝3敗。特に初日に大関を陥落した琴奨菊に負けたことでその思いは一層強くなった。

 しかし今日の日馬富士は違った。ロケット弾のような勢いの立ち合いから相手を有無を言わさず土俵外に寄り切る、過去幾度も賜杯を手繰り寄せてきた取り組みがそこにはあった。日馬富士の身上でもある「真っ向勝負」が取り組みの中で体現されており、「この取り組みができるなら、まだまだ綱を張れるぞ」と私はそれまでの考えを恥じるとともに素直に日馬富士を称賛した。

 今場所は新横綱が誕生して初めてとなる場所。当然新横綱である稀勢の里に注目が集まり半ば「主人公」のような扱いを受けてしまうことは仕方がない。しかしその稀勢の里を下し先輩横綱の矜持を示した日馬富士の渾身の取り組みが見逃され、ましてや怪我をさせてしまったことによって非難されるのはお門違いも甚だしい。この一番は自分より体躯が勝る稀勢の里に真っ向からぶつかった日馬富士とそれを真っ向から受け止めた稀勢の里のガチンコの勝負であったのだ。決して怪我をさせることを目的とした一番ではない。ましてや日馬富士は長年怪我と向き合ってきた力士でもあるのだ。現に日馬富士は取り組みが終わった後「稀勢、大丈夫ですか」と稀勢の里を気遣う言葉を残している。

 とにもかくにも稀勢の里が怪我をしてしまったという事実はもう変わることはなく、昨日まで視界良好だった賜杯の行く先は分からなくなってしまった。全勝力士がいなくなったことで3敗の力士にもまだ可能性が残されている。賜杯がどの力士の元へ行くのか皆目見当がつかないが、見当がつかないなりにも「荒れる春場所」の千秋楽の青写真をまた撮りなおさなくては。



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「【大相撲】今日の結びの一番について」へのコメント

仰る通りだと思います。
日馬富士を非難するのは全くのお門違い。
今日の取り組み内容を鑑みず、そんな発言をする人には相撲について発言してほしくないですね。

間違いないことは、日馬富士の相撲が素晴らしかったということです。

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