ニコ小鉢その2(仮)

FC岐阜 × 町田ゼルビア (2012年度J2リーグ第21節 長良川)

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周知のとおり、今年度からJ2も「残留争い」が始まります。リーグ戦下位に沈んだチームは、J昇格基準を満たしたJFLチームと入れ替え戦を戦い、これに敗れるとJFL降格となってしまうという、各クラブ・サポーターにとっては異常な緊張感を伴うルールが制定されました。
筆者は同ルールの導入に、14年前のJリーグ2部制導入当時のことを思い出します。あのJ1残留決定戦の死闘(福岡×川崎)が、今年度のどこかのクラブで再現されることになるのかと思うと、第3者的立場の筆者でさえ戦慄を覚えてしまいます。

現在J2リーグの下位は、富山・鳥取・岐阜・町田の4チームが勝ち点1差で一つのグループを形成しています。その内2チームの直接対決は、筆者にとっては見逃せないカードでした。


<岐阜・スターティングメンバー>

 FW            佐藤洸一
 MF    染矢一樹  樋口寛規  井上平
          服部年宏  李漢宰
 DF 野垣内俊 関田寛士 田中秀人 野田明弘
GK            時久省吾
監督 行徳浩二


<町田・スターティングメンバー>

FW           平本一樹
MF    鈴木崇文        北井佑季
    ドラガン・ディミッチ 庄司悦大 
          コリン・マーシャル
DF 藤田泰成 加藤恒平 太田康介 三鬼海
GK           修行智仁
監督 オズワルド・アルディレス

************************************************************

試合は開始直後から、かなり激しい展開になります。
開始3分、岐阜は遠目からのFKでボールを相手陣内に入れ込み、これを相手守備陣がPA外にを跳ね返したところを、染矢一樹が拾ってミドルシュート。ボールの軌道はゴールマウス左上を正確に捉えていましたが、町田GK修行智仁の懸命なセービングに阻まれます。

一方の町田は、上記シーン直後のCKを防ぐと、返す刀でロングカウンター攻撃を仕掛けます。ルーズボールを拾った庄司悦大が長いドリブルでアタッキングゾーンまでボールを持ち運び、3対3の決定的数的有利の構図を作ります。岐阜の最終ラインがずるずると下がるのを見た庄司は左斜め方向にスルーパス。これを受けたコリンマーシャルが相手GKと一対一の局面を得てシュート。しかしこれは岐阜GKの時久省吾に弾かれました。

続く5分は岐阜の攻撃でした。右サイドの李漢宰のアーリークロスから、大外にいた染矢がダイレクトボレー。しかしこれはサイドネットの外を揺らすのみでした。


この後は、サイドからボールをしっかりつないで崩していく岐阜の攻勢が目立ちました。
対する町田の守備は、特に右サイド側の連携に不安を抱えていました。SH・SB・ISH(インサイドハーフ)と、システム上の人数は揃っているのですが、岐阜の染矢・野垣内俊2人のスピーディーな崩しに対応が遅れてしまいます。町田のISHとアンカーがもっとボールサイドに寄って守備をしなければいけない、と筆者は感じました。町田はここまでのリーグ戦累計で31失点。鳥取に次ぐリーグブービーの数値になります。


しかし、試合開始から10分ほど経過すると、お互いの派手な攻勢は収まり、町田のボールキープの時間が増えていきます。
町田のサッカーは、予想通りにして聞いていたとおりのポゼッションサッカーで、最終ラインでのビルドアップを入念に行います。岐阜の前線選手からのフォアチェックを受けるシーンも多いのですが、町田の最終ラインの選手はそれを平気でかわしてくと、逆サイドのSB目掛けて大胆な横パスを繰り出していったりします。傍目には非常に危なっかしいポゼッションなのですが、町田の選手は落ち着いていて、ミスからピンチを招くようなシ-ンは殆どありませんでした。

ただ、この日の町田のビルドアップは、とにかく縦にパスが入りませんでした。庄司やドラガンディミッチといったISH陣が前を向いてボールを持つ構図を殆ど作ることができず、攻撃をスピードアップさせることができません。
ここでは岐阜の辛抱強いディフェンスが光りました。前線の選手は町田のビルドアップに左右に振り回されながらも、懸命に長い距離を走ってパスコースを限定し、また服部年宏・李漢宰のダブルボランチ陣は、町田のISH陣への縦パスに対して、厳しい監視の目を休ませることがありませんでした。


ボールを前につなげない町田の攻撃は次第にロングフィードが多くなりますが、そこでボールを受ける平本一樹は周囲のサポートを得られずに孤立する場面が目立ちました。

前半26分の町田、ディミッチが降りてきてパスを受けて前を向くと、素早く鈴木崇文に縦パス、さらにボールは鈴木からバイタル目掛けて走り込む北井佑季に渡り、岐阜守備陣はたまらず彼をファールで止めます。
これがこの試合初めてかと思われるほど、ディミッチが前を向き、町田がパスをつないで崩せたシーンでしたが、以後このようなシーンが続くことはありませんでした。


なかなかボールを前に運べず、攻撃が停滞した町田は、次第にビルドアップの正確性にも悪影響が出始め、岐阜のフォアチェックにボールを奪われるシーンが出始めてきます。
43分の岐阜。染矢が樋口寛規のワンツーで中央を突破してシュート。これは枠上に外れますが決定的なシーンでした。

************************************************************

前半はこのままスコアレスで終了。
50分の町田、北井がドリブルで左サイド深くまでボールを持ち運んで基点を作り、そこから幾つかのパス交換を経て再び左サイドでボールを持った北井はカットインのドリブルからシュート。これは枠上に外れますが、停滞した自軍の攻撃を何とか活性化させようとします。

しかし、ここまで我慢強く守備に徹していた岐阜が満を持したように攻勢に転じたのは54分でした。右サイドを基点にして中央にパスを送り、相手守備陣にカットされてもしっかりセカンドを拾いながら攻勢を続けていきます。最後は井上平のスルーパスから、右サイド裏のスペースを完全に破った野田明弘が速いグラウンダーのクロスを送ります。
「佐藤選手がしっかり見えていたので、DFの間を通すことがうまく出来た。トレーニングの成果が出た。」と試合後に語ったのは野田。「シュートシーンはほとんど野田のパスで決まっていた。ミスしないように触るだけだった。」と語ったのはFWの佐藤洸一でした。野田のクロスは町田の最終ラインとGKの間の狭い空間を正確に切り裂いていき、これがファーサイド裏のスペースに飛び込む佐藤の左足に合ってシュート・ゴールとなりました。
【岐阜 1×0 町田】


先行された町田・アルディレス監督は、ディミッチを諦めて柳崎祥兵を投入。右のISHに彼を据えると、そこから積極的に前のスペースに飛び込ませて、なんとかチーム全体の攻撃を活性化させようとします。
65分、その柳崎が期待に応えて右サイドをドリブル突破。彼のプルバック気味のクロスを受けた北井がシュート。さらにそのこぼれ球を平本がヘディングで合わせますが、これはオフサイドの判定。

75分、アルディレス監督はさらに動きます。左SHの鈴木崇文に代えてFWの鈴木孝司を投入。スタート時の布陣が4-1-4-1だった町田は、この交代で4-4-2のオーソドックスな布陣となり、FW・SH・ボランチの選手間でベーシックなトライアングルの構図が作れるようになり、ようやくにしてパスがつながっていくようになります。

一方の岐阜も町田の攻勢に屈せず、服部を中心とした強固な守備ブロックを築いて町田のパスワークを引っ掛けてはカウンター攻撃を仕掛けていきます。
77分、岐阜はカウンターで得たCKのチャンスから、こぼれ球を李漢宰がシュートしますが枠外。
続く83分、染矢の突破からCKのチャンスを得ると、樋口の蹴ったボールをファ-サイドの服部が折り返し、さらにそれを田中秀人が折り返して、最後は関田寛士がヘディングシュートを放ちますが、クロスバーに当ててしまいました。

85分は町田の最後の攻勢だったでしょう。ゴール前の混戦から鈴木孝司が抜け出しますが、岐阜の関田がファール覚悟でブロック。そこからこぼれたボールを平本が反転しながらコントロールしてシュートを放つというアクロバチックなプレ-を見せますが、これは相手GKにキャッチされました。
【岐阜 1×0 町田 試合終了】

************************************************************

岐阜はJ2残留に向けて、価値ある一勝を得ました。
試合後の行徳浩二監督は「相手の攻撃パターンも想定した通りだった。自分たちのゲームプラン通りに入れた。」と会心の勝利を語っていました。
「大体のチームと互角に戦える力はついてきた。耐えて耐えて1発を狙うのではなく、ちゃんとサッカーをして戦っているということは出来ていると思っています」と行徳監督は、ここまで21試合の戦いについて総括していました。まだリーグ19位という低位置ながら、このような前向きな自己評価を語れるのも、この日の一勝があってのことでしょう。
この言葉の説得力を確立していくためにも、大事なのは次の試合でしょう。一つの勝ちに一喜一憂するのではなく、戦略的なサッカーを続けていくことが、これからの岐阜にとっての重要な課題になります。

選手個々については、この試合では野田のパフォーマンスが光りました。決勝点のアシストも殊勲でしたが、その他の場面でも、精力的なオーバーラップとドリブルでボールを持ち運んでいっては攻撃のダイナミズムを作っていました。
岐阜はWボランチが守備上の役割に徹しており、彼らがPA付近までオーバーラップを仕掛けていくシーンはあまりありません。その中で攻撃に厚みを持たせていくためには、SBの広範な動きが重要なファクターになります。その意味でもこの日の野田の活躍は今後の岐阜にとって心強い要素になったでしょう。


一方、重要な試合を落としてしまった町田です。
「個人的に絶不調で、チームも近い距離のつなぎが今日は全然なかった。」と、30歳のベテランとなったFWの平本一樹は敗戦の責任を感じていました。試合後のアルディレス監督も「このチームの緊急事態の時にこそ、ベテランに力を発揮してもらわねば。今日の試合で一番輝いていたのは相手チームのベテラン(服部)だった」と、珍しく憤りの言葉を発していたのが筆者には印象的でした。

しかし、ゲームパフォーマンスの悪さを平本らベテラン勢の問題にするのではなく、やはりチーム全体の問題として捉えるべきではないかと筆者は感じます。
例えば、自軍のボールキープに対して、自らアクションを起こしてボールを呼び込もうとする選手は平本のみで、あとは右SBの三鬼海の積極的な動きが印象に残ったくらいでした。これでは、どんな戦術を駆使したところでチャンスを作りようがないし、勝利を得ることもできなかったでしょう。

町田はここまでの試合の中でもなかなか結果が出ていませんでしたが、こと内容に関してアルディレス監督は終始ポジティブな姿勢を崩すことなく、試合後のコメントも穏やかなものが多かったです。
その監督がこの日の試合後ではかなり憤った言葉や態度を隠そうともしなかったことからも、この試合の町田は特別に悪かったのでしょう。次回の筆者の町田観戦記は何時のことになるかわからないのですが、その際は本来の町田の姿が見れることに期待したいです。



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