幕下相撲の知られざる世界

稽古場での強さと本場所の強さは、異なる。本場所で勝つために必要なものとは?

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4年前の稽古総見。

当時稽古を観に行ったことが無かったと記憶しているのだが、幕下以上の大部分の力士が観られるということで心躍らせて馳せ参じた。

その時私は次の関取に成れそうな力士は誰なのか、稽古場の様子から予想してみようと考えていた。

申し合いでは勝った力士が残り、勝負が着いた後で手を挙げた力士の中から残った力士が指名する。つまり、連勝が続けば土俵に残り続けることになる。

とはいえ、幕下は実力差が紙一重だ。一体どのようなことになるのだろうか。想像がつかない当時の私はひとまずその様子を見届けることにした。

だが、予想に反して連勝を続ける力士が現れた。

碧天。

幕下の常連力士だ。

正直なところ、当時は幕下上位に居る額の狭い力士程度の認識しか無かった。良い力士だが、どういう相撲を取るかということさえあまり覚えていない。

3連勝程度なら分かる。だが、碧天は10連勝していたのだ。自分の相撲を取り切り、完勝する。一度敗れた後で再度土俵に上がった際も、やはり連勝を重ねた。

余程好調なのか。 それとも、急成長したのか。 その時私は碧天という名前を刻みつけて帰宅した。

ただ、碧天の5月場所は3勝4敗だった。結局彼は幕下上位と中位を行ったり来たりという結果が続いた。

場所後に友人とそんな話をすると、実に興味深い答えが返ってきた。碧天、稽古場ではいつもああなんです。と。

確かに聞いたことは有った。稽古場での力と本場所の力は異なると。一番有名なのは、高見盛だ。稽古場では幕下相手でもあっけなく敗れるのに、本場所になると朝青龍すら倒してしまう。

稽古場での強さはアテにならない。そういうものなのだということがよく分かった。ただ、だとすれば稽古場の訓練というのは何の意味を持つのだろうか。

稽古場の相撲は、本場所とは異なる。一言で言えば、選択肢の幅が増えるのだ。

例えば、同じころに稽古場で大砂嵐がカチ上げを連発し、親方から激しく指導を受けていた。例えば、千代翔馬が総見でけたぐりを見せて館内をどよめかせていた。

立合の駆け引きも、変化も、危険な張り手やカチ上げも、稽古場では殆ど行われない。だからこそ、本番に向けた準備が重要になるのである。

ある元関取の方から聞いた話だと、彼は自分に不利な状況になることを想定し、序ノ口の力士に背後に付かせたところから巻き返す訓練を行っていたのだという。

いわゆる部屋の申し合いではこのような訓練を行うことは出来ない。各自が工夫し、稽古場では行われないあらゆる策に対応するための準備を行う。

逆に言えば、稽古場では弱くても本番に強い力士は対応力が有ると言えるのかもしれない。稽古を観れば、そういうことも見えてくるのである。稽古場で強いが本場所でその力を発揮できない力士は、あとはそういう部分なのだ。

そういえば、高安も稽古場で強かった。

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大砂嵐の稽古場でのカチ上げ
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稽古場での強さはアテにならない
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稽古場での強さと本場所の強さは、異なる。本場所で勝つために必要なものとは?

高見盛の稽古場の弱さのエピソードで、温厚で知られる魁皇が「オマエもっと本気出せ!」と稽古場で高見盛に張り手を喰らわせた、というのがある(そのときNHKのカメラが入っていて、大相撲中継でもそれが放送された。非常に珍しい光景だったので現在も記憶している)。
高見盛のウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E8%A6%8B%E7%9B%9B%E7%B2%BE%E5%BD%A6)によると、
>>「翌日の対戦相手を知ろうとしない。当日に取組表を見て分かる。それまでに教えようとすれば『ワーッ』と叫んで聞こうとしない。耳栓したりわざとトイレに行ったりして情報をシャットアウトする」
という人物なので、稽古場で手の内は絶対見せないという信念があるのか、とも思うが、それにしてもレジェンドクラスの大関を激怒させてまで貫く信念なのか。
引退して4年以上経つが、いまだに「本当の高見盛」はわからない。単なる変人では片づけられない人物だ。

いかん、稽古場の強さの話だ。昔から「稽古場大関」「ブルペンエース」「オープン戦のMVP」と言われる力士や選手はいたが、共通して「緊張して、大舞台では本来の力を発揮できない」タイプだと思う。
碧天がこのタイプなのかは、ちょっとわからない。

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