幕下相撲の知られざる世界

何故若手力士は、四つ相撲を取らないのか。前編

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最近の相撲は、速い。 速くて、強い。

力士達の平均体重が上がっているという事実を耳にすると、相手の攻撃を防ぐための増量かと理解しがちだ。それはある意味正解であり、もう一つの側面を見落としていることになる。

体重の増加は、体格の良い力士に当たり負けないというディフェンシブな意味合いも有るのだが、スピードを殺さずに体を増やそうとするため、攻撃力が上がるのだ。

最近の相撲は、スピードがモノを言う。 これは朝青龍以降に顕著になった傾向である。

前みつを取り、素早く寄る。 下から突いて起こして、勢いに乗って押し出す。 こういう相撲が増えたように思う。

気になるのは少し相撲を離れていた方が、力士の特徴を覚えられないということだ。彼らは言う。かつての相撲と比べると今の相撲は個性が無い、と。

反論したいことは山ほどある。過去の思い出を美化せずに、今の相撲を見て欲しい。彼らは何も分かっていない。そう切り捨てることは簡単だ。

ただ、今の相撲はその速さゆえに違いがわかりづらいのかもしれない。スキルの高度化は、分かりやすさを喪失させることもある。総合格闘技が時を経るにつれてマイナー化していったのも、それが原因の一つだ。

そして最近の相撲は個性が無いという彼らの言い分が全て間違っているかと言えば、そうとも言い切れない。少し考えてみると、昔よく観た光景が今は失われていることも多いからだ。

例えば、吊り。 例えば、引き付け合い。

確かに、ある面で多様性が失われていることは事実だと思う。そしてその失われた光景の多くが、普段相撲を見ない方を引きつけてきたことは間違いない。だからこそ、彼らに今の相撲が刺さらないので、前述のような受け止められ方をすることも有る。

こうした指摘について考えた時、私は最近の相撲を取り巻く一つの傾向に気づいた。そう。最近四つ相撲を取る力士が激減しているのである。

四つ相撲が優れているのは、取組の中で勝つチャンスが無数に存在することだ。素早い相撲は攻め切ることで勝利を手繰り寄せる。そのため、成績がコンディションに左右される傾向にある。

だが四つ相撲であれば、勝ちを拾えるチャンスが相対的に増す傾向にある。攻めを凌いだ先で、相手力士が勝ちを焦って自滅することもある。そして、劣勢でも立て直しが利くのも一つの特徴だ。大横綱が四つを一つの形として持っていることが多いのは、そうした事情が有るためだと私は聞いている。

若手有望株で、本格的な四つ相撲が取れる力士は一体誰が居るだろうか。思いつくのは照ノ富士や逸ノ城だが、守りの相撲は取れるが攻めの形は確立していない。

四つ相撲が時代を作ってきたこともあり、また、強い力士が四つの使い手だったこともあり、私は四つ相撲に次代を見出そうとしてしまう。しかし一体なぜ、今四つ相撲をこれほど観なくなったのか。初場所が終わった後、私はアマチュア相撲の指導者と元力士に質問した。彼らは一様に四つ相撲を取る若手力士が激減している実情を認めた上で、その原因を教えてくれた。

続く。

◇お知らせ◇ 3月14日に、SBSラジオ『IPPO』に出演しました。大相撲の楽しみ方と、今場所の見どころについてお話しいたしました。関係者の皆様、お聴き頂いた皆様、ありがとうございました。

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