幕下相撲の知られざる世界

日馬富士への問題発言に見る、守屋氏が横綱審議委員に相応しくない理由。

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昨日、信じがたいニュースを目撃した。

日馬富士、連日の金星配給に横審から苦言「引退か」

発言の主は、横綱審議委員会の守屋委員長だ。平幕相手に早くも二敗目を喫した姿を見て、冗談交じりに「引退かな」と漏らしたのだという。

まず私が信じられなかったのは、日馬富士という力士をたった3日で判断した点にある。不安定なイメージが有るが、日馬富士は横綱昇進以降中日までに3敗したことが1度しか無い力士である。悪ければ悪いなりに立て直し、最低でもクンロク、最近では11~10勝に収束させてしまう。

負ける時はあっさりしているが、そういう相撲が出ることも有るということくらい少し相撲と日馬富士をかじったファンであれば誰もが知っている。9勝と全勝を交互に繰り返し、批判と賞賛を交互に浴びてきた歴史を想えば序盤の2敗の時点では異変か否かは判断が付かない。それなのに、引退という言葉を口にした。日馬富士を判断するには早過ぎる。私は思った。

だが、私が信じられなかったのはそこだけではない。そう。「引退」という言葉を冗談として使った点である。

私はあらゆる失言についてその言葉だけではなく、そこに至った文脈を判断するようにしている。面白い失言なのか、単に失礼な失言なのか。調子に乗ってつい口が滑ってしまうことは誰にでも有る。許されることではないが、分からなくもない。

だが、この文脈でどう解釈しても「引退」をユーモアとして捉えることは出来なかった。冗談だとしたらユーモアのセンスが無い方だし、本音が出てしまったのだとしたら人間性を疑う。

そもそも日馬富士は引退という言葉を口にするほど、近年不甲斐ない内容が続いている訳ではないし、その発言は勿論、優勝8回、在位26場所を重ねた横綱に失礼だ。

そして何よりも、相撲界に於ける「引退」の重さについてあまりに考えが足りないように感じるのだ。

例えば野球やボクシングは、一度引退しても復帰する選手も居る。引退が全ての終わりを意味するわけではないのである。

翻って、相撲はどうだろうか。思い出してほしい。引退した後で復帰した力士は居るだろうか。誰も居ないのだ。つまり力士にとって引退とは、力士としての死を意味するのである。

更に重要なことが有る。力士は引退を、自分の意志で決めるのだ。

多くの競技の場合、収入を得ながら競技を続けることが出来なくなった時、強制的に競技から足を洗うことになる。

相撲の場合、そうはいかない。続けようと思えば、現役を続けることが可能だ。たとえ勝ち星が上がらなくても、負け越しを繰り返しても、平等に土俵上で闘う機会が与えられる。

横綱の場合、地位が落ちることは無い。そのため、横綱の地位を守るために横綱審議委員会が成績如何によっては引退勧告を行うことになる。彼らの発言次第で、横綱は引退を自ら選択せざるを得ない状況に追い込まれることが有る。言わば力士の命を、彼らは握っているのである。

横綱審議委員とは、それほど重要な意味を持つポストだ。ひとつの発言が力士の将来を左右する可能性が有るのだから、その責任の重さを想うと簡単に引き受けることは出来ない。横綱審議委員になり、職責を果たすことはそれほど難しいことなのだ。単に相撲が好きなだけでは、力士が好きなだけでは務められぬものなのである。

だからこそ、それだけ責任の重い横綱審議委員会の委員長ともあろう方が力士の死を左右しかねない「引退」という言葉を軽はずみに口にすることが私は信じられないのである。もしこの発言が契機になり、日馬富士引退の機運が高まったとしたら、そして日馬富士がこの後敗れるようなことが有ったとしたら、守屋氏は日馬富士引退の引き金を引いてしまったことになる。

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記事カテゴリ:
相撲議論
タグ:
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守屋委員長
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日馬富士への問題発言に見る、守屋氏が横綱審議委員に相応しくない理由。

力士に対する優しさが見えないのは、観ていていらっとします。
そういうのって伝わってきます。内舘さんはそれが有りました。

日馬富士への問題発言に見る、守屋氏が横綱審議委員に相応しくない理由。

なんかもう・・・
なんでこの方を選んでしまったのか。

日馬富士への問題発言に見る、守屋氏が横綱審議委員に相応しくない理由。

求めるなら、まずは自分からだと思います。

日馬富士への問題発言に見る、守屋氏が横綱審議委員に相応しくない理由。

立場のある方なので、どうしてもそういう言い方になってしまうのかなと。
でも、社員ならともかく相撲の観客がそれをされたらいらっとしますよね。
そういう視点も持てないのは残念です

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