幕下相撲の知られざる世界

2016年の全国学生相撲選手権の知られざる世界。後編

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2016年の全国学生相撲選手権、団体戦。

早稲田大学と、法政大学。 相見える両校。

二校ともプロを輩出するような学校ではない。居たとしてもそれは例外と言っていいだろう。つまり彼らの相撲は、アマチュア界で頂点を目指すのとは少し意味合いが異なるのである。

縁あって私は両校共に稽古を観た経験がある。その稽古はかなりハードなものだ。高校時代から実績を残し、相撲で進学を決めている選手ばかりなので、稽古の質も間違いなく高い。

ただ彼らのレベルは、日大や日体大、東洋大とは異なる。団体戦では1勝できればいい方だ。5試合で1勝できれば良いと考えるとその違いが分かると思う。

ここまで相撲を取ることで人生を切り開いてきた彼らではあるが、相撲界のトップではない。そして、彼らの多くが学生で競技としての相撲のキャリアを終える。言わば力士としてのタイムリミットが迫る中で残りの競技人生を送っているのだ。

学生相撲のトップを観ることは、それほど相撲部屋を観るのと意味合いは変わらない。だが、アマチュアに生き、学生相撲にアイデンティティを賭ける相撲も有る。だから私は彼らの相撲に興味を持ったのだと思う。

そういう彼らが、団体戦で相見える。

トレーナーを目指すためにダブルスクール生活を送る選手も居る。教職を目指す選手も居る。そして、普通の学生となんら変わらず就職活動をする選手もいる。彼らは私達と何も変わらない。ただ一つ違うのは、彼らが学生相撲に身を置いているということだ。

リーグ戦の第3戦。法政大学は2戦ともあまり勝てていない。だが、この対戦は先鋒戦から異様な雰囲気だ。一つの立合に、攻めに、大歓声が挙がる。日体大のような大応援団が居るわけではない。それでも、観客はその全てを固唾を飲んで見守っている。

雰囲気に呑まれ、立合を失敗する選手も居る。それを乗り越え、最高の相撲を取る者も居る。突き押し相撲が主流の学生相撲なので、勝負は一瞬で決まる。2勝2敗。この相撲を勝った方が勝者だ。異様な熱気は、更に熱気を帯びる。異様という言葉しかこの雰囲気を表せない。

法政と早稲田。 どちらが勝つのか。 勝負は、一瞬で決まった。

立ち遅れた法政。 付け入る早稲田。 それだけだった。

勝者と敗者のコントラストは、残酷だ。だが、一体何故この対戦は異様な雰囲気だったのか。友人に尋ねたところ、なるほどと思わされた。

これは、事実上の入替戦だったのだ。

一部と二部では、一年間の対戦相手が異なる。一部では学生界のトップと継続的に戦えるが、二部だとそうはいかない。選手集めにも大きく影響することになる。

そして何より、これはプライドの問題でもある。

その重みを誰もが理解しているからこそ、あの雰囲気だったのだ。そして重みゆえに選手は己に勝ち、己に敗れた。

そう。 ここにも幕下相撲が有ったのだ。

彼らは超人ではない。学生だ。人間臭い選手が、タイムリミットに追われながら、競技生活の最後でギリギリの戦いに身を投じる。

これは、面白いはずである。

大相撲ではなく、学生相撲。 トップではなく、入れ替え戦。 だがそこにも、私達が感じる相撲が有る。

また一つ、残酷な楽しみを見つけてしまった。 来年も11月は、大変だ。

総武線に揺られながら私が考えたのは、明日の仕事のことではなかったのである。

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