2007年04月29日

トーナメント戦形式は子供のチャレンジ精神を育むのでしょうか?

「サッカーはサッカーをトレーニングすることによってのみ上達する」
「攻撃を改善したければ守備を改善せよ (究極のサッカー哲学)」
「小学生からもっとチーム戦術を教えてみませんか?」
「子供にコーチがたくさん指示を出すことは悪いことですか?」
「子供に素早い状況判断を求めてはダメですか?」
「小学生には11人制よりも7人制の方が適切と思いませんか?」
「なぜスペインでは6人制でも8人制でもなく7人制なのでしょう?」
と続いて来たシリーズの次のお題は、、、、


【Q】
トーナメント戦形式が子供からチャレンジ精神を奪っていませんか?

です。


【A】
日本の小学生年代の指導者は「チャレンジするプレー」を重要視している傾向があるような気がしますが、それは、最近の日本社会が抱えている「(自分でイニシアチブを取れない)指示待ちの子供の増加」とか「(リスクを犯さない)チャレンジ精神の少ない子供の増加」という点と繋がりがあるのではないでしょうか。

チャレンジ精神の少ない子供たちの姿を見た大人たちが「サッカーでは子供たちにもっとチャレンジして欲しい」という願いを持つようになり、その結果、適切な状況判断を若干無視してでも「チャレンジするプレー」を子供たちに奨励するという流れに繋がっているのではないでしょうか。

私も子供たちにはチャレンジ精神を持って欲しいです。しかし「状況判断を若干無視したチャレンジプレーの奨励」が子供たちのチャレンジ精神を育むことに繋がるとは思えません。特に(負けても次がある)リーグ戦ではなく(負けたら次がない)トーナメント戦であればなお更です。

というのも、大人の試合であれ子供の試合であれ、「適切な状況判断を伴わないチャレンジするプレー」は失点につながり得る“無謀なプレー”になる場合が多いからです。しかも、その試合が(負けたら次がない)トーナメント戦であれば、指導者から奨励されている「チャレンジするプレー」が敗戦の原因になる可能性もあり、その結果「次がない」という悲しい現実と向き合わなければ行けなくなります。そういう意味では「チャレンジするプレー」を奨励したいのであれば、なお更(負けたら次がない)トーナメント戦形式よりも(チャレンジしても次がある)リーグ戦形式が適切なのではないでしょうか?

大人がスポーツを子供の教育や躾のために利用しようとする動きは、日本もスペインも同じです。そして、スペインでも教育や躾の基本は「トライ&エラー&修正&賞賛」です。子供たちに最初から100%適切な行動を求めるのではなく、子供のミスを発見して、それを修正し、そして上手く行ったら褒めてあげる。この繰り返しです。

幸いなことに、スペインのサッカーの基本は長期リーグ戦ですから、負けても次があります。つまり「トライ&エラー&修正&賞賛」を毎週繰り返せる土壌が確立されているのです。勝っても負けても来週も試合はありますから、選手も指導者も父兄もみんな、リスクを背負ってチャレンジするプレーを自然と受け入れています。その結果、失敗を恐れてチャレンジしない、ということはなかなか考えられません。逆に、戦術的に適切ではないチャレンジが多過ぎるため、それにブレーキを掛けることが指導者の役目のひとつとなっているくらいです。

このような環境が整っているからなのか、スペインの少年サッカーの中には「サッカーを通じてチャレンジする精神を育んで欲しい」という特別な想いはありませんが、長期リーグ戦という環境が結果的には子供たちのチャレンジ精神を自然と育んでいます。

翻って「サッカーを通じてチャレンジする精神を育んで欲しい」という特別な想いが存在する日本の少年サッカー界では、逆にチャレンジを否定する部分を秘めている(負けたら終わりの)トーナメント形式の大会が主流です。

チャレンジ精神の少ない日本の子供たちこそ、より多くのチャレンジ精神を認めてくれる(負けても次がある)長期リーグ戦を必要としているのではないでしょうか?

ちなみに、バルサスクールではスクール内のチーム同士による長期リーグ戦を組んでおり、子供たちは以下のような(負けても次がある)試合数を年間を通じて経験しています。そして、チャレンジ精神が旺盛な子供たちにブレーキを掛けることがコーチの役目のひとつです。

【バルサスクールのリーグ戦試合数】
Uー7カテゴリー :21試合(8チームのリーグ戦を3順)
Uー9カテゴリー :22試合(12チームのリーグ戦を2順)
Uー11カテゴリー:27試合(10チームのリーグ戦を3順)

なお、スペインにおけるリーグ戦とトーナメント戦に対する価値観の違いについては 「リーグ戦は日常、トーナメント戦は非日常」で詳しく書いたので、興味のある方は是非ともこちらをお読み下さい。



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posted by 村松尚登 |21:30 | バルサを越える為のヒント集 | コメント(6) | トラックバック(0)
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Re:トーナメント戦形式が子供からチャレンジ精神を奪っていませんか?

コメント投稿者ID :

リーグ戦はトーナメントに比べ運営が難しくなるのが難点ですね。
過疎化の進んだ地域では子供を集めるだけでも大変ですし、そういうところは交通の便も悪いです。
このあたりを自治体や教育機関の理解を深めてもらって、上手く支援してもらえるようにしないといけません。
まあ、ユース年代はプリンスリーグが徐々に重要さを増して来ていますし、少しづつではありますが日本も改善しつつあるのだと思います。
あとは指導者というより、それぞれのチームを取り巻く環境次第でしょう。
個人的にはこの手の話に国見批判を合わせる方が多くて長崎人としては辛いところです。
私には国見がリスクを犯していないのではなく、リスクを犯す、そのやり方が違うだけの様に思えるんですけどね。

posted by いもあん | 2007-04-29 23:38

Re:トーナメント戦形式が子供からチャレンジ精神を奪っていませんか?

コメント投稿者ID :

逆に、子供の若い脳にチャレンジ・リスク・結果・修正とかの概念を植えつけてはいませんか。

工夫とかチャレンジとかは理性から生まれるのではなく、目的達成という脳内の快感を得るため、もしくは自己顕示欲のために自然と湧き出るものと考えています。

ある意味、勝利の中毒性を味あわせることが健全な方法だと思います。

posted by 明 | 2007-04-30 01:21

Re:トーナメント戦形式が子供からチャレンジ精神を奪っていませんか?

コメント投稿者ID :

根本から否定して悪いけど・・・

スペインの親は子供に過大に期待して、他の子をこき下ろすから嫌だとスポナビのコラムに書いていた人がいたよ。

あと、技術論はともかく、国際大会で結果出せないスペイン人の教育論になんか価値あるの?リーガもバルサも外人だらけだし。

posted by Bardano | 2007-04-30 02:43

いもあんさんへ

コメント投稿者ID :

プリンスリーグの導入など、レベルの高い子供たちを取り巻く環境は次第に良くなってきていると思いますが、その他大勢の普通の選手たちの環境はまだまだ改善の余地がありますよね。

リーグ戦の運営は慣れていないと難しいのかもしれませんが、慣れてしまえばトーナメント戦よりもシンプルかもしれませんよ。リーグ戦の運営のコツを少し調べてみますね。

posted by 村松尚登 | 2007-04-30 05:13

明さんへ

コメント投稿者ID :

明さん、コメントありがとうございます。

>逆に、子供の若い脳にチャレンジ・リスク・結果・修正とかの概念を植えつけてはいませんか。

意図的ではないにしても、スペインのリーグ戦システムにはそういう部分も含まれているかもしれませんね。ただ、それが悪いこととは私は思いません。

>工夫とかチャレンジとかは理性から生まれるのではなく、目的達成という脳内の快感を得るため、もしくは自己顕示欲のために自然と湧き出るものと考えています。
>ある意味、勝利の中毒性を味あわせることが健全な方法だと思います。

そのためには(負けても次がある)リーグ戦よりも(負けたら次がない)トーナメント戦の方が効果的ということでしょうか?
明さんがどちらのシステムに賛成しているのか分かりづらいので、もう少し詳しく説明していただけると幸いです。

posted by 村松尚登 | 2007-04-30 05:18

Bardanoさんへ

コメント投稿者ID :

Bardanoさん、コメントありがとうございます。

確かにスペインの少年サッカーの現場には自分の子供を愛し過ぎるあまり、他の子供を軽視する親もたくさんいますね。しかし、マナーのいい親もたくさんいますよ。各自が属している社会層やクラブのレベルなどによって親の行動パターンは左右されているような気がします。

確かに、スペインが国として国際大会でいい結果を出せていないのは事実ですし、スペインリーグが外国人だらけなのも事実ですが、それとスペインの教育論が正しいかどうかはあまり関係ないと思いますよ。
また、今回のブログではリーグ戦とトーナメント戦の違いや特徴を取り上げていますので、スペイン人かどうかというのは関係ないと思います。

posted by 村松尚登 | 2007-04-30 05:32

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