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バルサスクールの定番練習メニュー (6歳からポセッションゲーム)

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シーズンスタート時に行なわれたスタッフミーティングで「バルサスクールの定番練習メニュー」として紹介された「3対3+2フリーマン(図1)」をご紹介します。
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これは、バルサスクールの定番というだけでなく、FCバルセロナのトップチームから育成部(カンテラ)まで、全てのバルサのチームにて「定番」として行なわれている練習メニューです。

決して真新しい練習メニューではないですが、この練習メニューを6歳からやらせようとする所に「バルサっぽさ」があると思います。(もちろん年代に応じて練習メニューの難易度は変化させています)
と同時に、この練習メニューを通して「バルサのプレースタイル」を小さな頃から子供たちに意識させようという隠れた意志がそこには見え隠れします。


さて、まずはこの練習メニューを行なうにあたって、指導者が注意すべき点を幾つかピックアップしたいと思います。


◆スペースは常に長方形◆
今回のようなパスゲーム的練習メニューを行う際、幾つかの例外的な練習メニューを除いて、FCバルセロナでは常に長方形のスペースで行います。フットボールは長方形のスペースで行うスポーツであるため、その長方形のスペースの特徴を子供に常に意識させる為です。

◆スペースの広さの決定◆
スペースの広さは、練習の難易度に反比例します。つまり、スペースが狭いほど練習の難易度は上がり、スペースが広いほど練習の難易度は下がります。その部分を踏まえ、選手の年齢やレベル、また練習の目的によってスペースの広さは変更されなければいけません。
例えば、15メートル×10メートルのスペースでスタートした場合に、あまりにもパスミスが多い場合は、それはスペースが足りないことを意味しているため、少しスペースを広げる必要性があります。逆に、ディフェンスが一度もボールを奪えないようであれば、スペースをもう少し狭くし、オフェンスの難易度を高めなければいけません。スペースのこの微調整は、指導者のセンスが現れる部分でもあります。

◆スペースの厳守◆
指導者によっては、練習のリズムを維持するために、ボールがラインを割っても「続けろ!」と指示することもあるかと思いますが、FCバルセロナではラインは必ず守られます。と同時に、フリーマンもピッチの外にポジションを取るのではなく、図1を見てもらえれば分るとおり、ピッチ内にポジションを取り、ラインを意識しながらプレーします。

◆練習メニューと練習目的の関係◆
外見上は同じ練習メニューだとしても、その練習の中で指導者が求める目的が違えば、これはもう「違う練習メニュー」です。つまり、俗に言う「練習メニュー」が大切なのではなく、その中で指導者が求める「練習目的」の方が大切だということです。そして、その練習の中で指導者が指摘・修正することこそ、練習で最も大切な部分でもあります。練習メニューは、あくまでも「効率的な指導」という「目的」を達成するための「手段」でしかありません。

◆シンプルな練習メニュー◆
練習メニューをオーガナイズすることに指導者と選手が集中してしまうくらい複雑な練習メニューでは(前述の)手段が目的となってしまいます。だからこそ、指導者も選手も練習の目的に集中できるためにも、練習メニューはシンプルであればあるほどいいとFCバルセロナでは考えています。

◆コーチング(指摘と修正)◆
練習において、指導者のコーチング(指摘と修正)は必要不可欠です。というよりも、指導者の指摘と修正こそが、練習の効果を生み出す根源と言っても過言ではありません。練習メニューはあくまでも「手段」であり、それを有効に使えるかどうかは、指導者の力量に掛かっています。
今回紹介する練習メニューにおいても、その練習メニューの中で指導者がどのように指摘し修正するかが、最重要ポイントだと言えます。

◆数字のアンバランス◆
バルサスクールの各チームは、11名から13名の選手と1名のコーチから構成されているのですが、今回紹介する練習メニューは8人用です。では、実際の練習現場では、この数字のアンバランスをどうコーディネートするかというと、実際にトレーニングを行なっている8人のモチベーションを挙げるために有効利用することをFCBスクールでは提案しています。この点については、後で別途説明する。


それでは、実際に練習メニュー「3対3+2フリーマン」について説明を行いたいと思います。

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【3対3+2フリーマン、オーソドックスなルール】
・ボールを持っている攻撃チーム(3名)は、フリーマン(2名)を有効に使いながら、スペース内でボールを回す。守備チーム(3名)はボールを奪います。つまり、常に攻撃側が数的優位(5対3)に立つボールポセッションゲームです。
・フリーマン(2名)は、ライン際のみを移動スペースとします。(図1の矢印を参照)
・守備チームはフリーマンからもボールを奪えます。
・守備チームが5回ボールを奪ったら、守備チームと攻撃チームが役割を交代。
・フリータッチ。

【3対3+2フリーマン、パターン1 自由編(図2参照)】
・攻撃側の3選手の動きに制限はなく、スペースの中を自由に動けます。ただし、フリーマンとポジションが重ならないようには、常に意識する。
・最終的には、各サイドに1人ずつポジションを取り、1人が真ん中にポジションを取るようになりますが、基本的にはポジション取りは自由。
・真ん中の選手がサイドにポジションをずらしたときに、他の選手が真ん中のスペースを利用するように意識させます。
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【3対3+2フリーマン、パターン2 固定編(図3参照)】
・攻撃側の3選手のポジションを固定します。つまり、各サイドにひとりずつ、そして中央にひとりがポジションを取り、そのポジションを維持しつつボール回しを行なうということです。サイドの選手は、図3の矢印のように、ライン際しか動けません。
port3



【様々なバリエーション】
様々な方法によって、この練習メニューには下記のようなバリエーションを加えることができます。バリエーションを加えることにより、練習メニューの難易度や目的が変化します。

◆バリエーション例1、タッチ数の制限◆
・フリーマンのタッチ数を2タッチに制限する。(=プレースピードが速まる。難易度がアップ)
・攻撃選手のタッチ数を3タッチに制限する。(=プレースピードが速まる。難易度がアップ)
・攻撃選手のタッチ数を例えば「4タッチ以上」にする。(=ボールキープのトレーニング)

◆バリエーション例2、攻守の切り替え◆
・攻撃チームはボールを奪われた瞬間、守備にまわる。逆に、守備チームはボールを奪った瞬間、攻撃にまわる。(=攻守の切り替えのトレーニング)

◆バリエーション例3、フリーマンへの守備の制限◆
・フリーマンからボールは奪えないことにする。(=中央での3対3のマークが激しくなる)


【目的の意識付け】
「今日の練習“3対3+2フリーマン”では、××を目的とする」という形で練習の目的を設定します。と同時に、選手を「今日の目的」に集中させるためにも、指導者も練習中にその「今日の目的」にのみ集中し、その「今日の目的」に対しての指摘と修正しか加えてはいけません。例えば、ボディーシェイプが「今日の目的」なのでれば、インサイドキックのテクニック的ミスは、指摘してはいけません。
以下、上記の練習メニュー内で設定できるであろう目的を幾つか挙げてみましょう。

◆目的の意識付けの例◆
・ボディーシェイプ(=視野を広く保った形での遠い足でのボールコントロール)
・ルックアラウンド(=周りを見ることを意識した体と目の動き。特に中央の選手)
・コーチング(=味方選手への指示の声)
・フリーであればパスは出さない(=自分がフリーということは、他の味方選手の近くに敵が多くいる証拠。自分の所に敵が来ていないのに急いでパスを出す必要性はない)
・敵と敵の間を通すスルーパスを狙う(=敵がいる後ろにはチャンスが潜んでいる)
・敵のポジションと次の自分のプレーを意識したコントロール(=先のことを考える習慣付け)
・ロングパス(=逆サイドにスペースがある場合はロングパスが有効)
・ボールキープ(=敵が間近に迫っている場合は、ボールと敵の間に自分の体を入れキープ)
・アウトサイドキック(=アウトサイドキックが有効なシチュエーションではアウトサイドを使うよう意識付ける。実践の中でのテクニックの習得)
・アウトサイドでのコントロール(=アウトサイドでのコントロールが有効なシチュエーションではアウトサイドでのコントロールを使うように意識付ける。実践の中でのテクニックの習得)
・ノールックパス(=ノールックパスが有効なシチュエーションではノールックパスを使うように意識付ける)
・ダイレクトパス(=ダイレクトパスが有効なシチュエーションではダイレクトパスを使うように意識付ける)
・パスコースがなければパスは出さずにボールをキープする(=無闇に無理にパスを探すのではなく、パスコースがないのであれば、パスコースが生まれるまでボールをキープする)


【コーチングの重要性】
上記の「目的の意識付けの例」をご覧頂ければ分るとおり、どんなプレーが適切で、どんなプレーが適切ではないかを決定するのは、指導者ということになります。例えば、どんな時にアウトサイドキックのパスが有効なのかは、指導者間でも若干意見が分かれますが、バルサスクールではそこは各指導者の「感覚」や「価値観」に任されています。
とは言っても、スタッフミーティング(実技編)で実際にトレーニングを行ないましたが、バルサスクールの指導者間では、各プレーに対する「感覚」や「価値観」はほぼ共通しているため、指導者間で指導内容に大きな誤差が出てくることはないと思われます。

【選手の意識の高め方】
例えば、今日の練習の目的が「ボールキープ」だとします。指導者は、ボールキープが有効だと思われるシチュエーションと、そのときの選手の状況判断にのみ意識を集中し、指摘し修正を加えます。その際に、例えば、練習メニューは8名用だが自分のチームには選手が11名いたとします。その場合は、8名が練習を行ない、3名は「順番待ち」とします。そして、指導者から見て「ボールキープ」という目的に反した状況判断をした選手がいた場合は、「その判断はNO!OUT! 次の選手、IN!」とするのです。つまり、練習の目的とその意味を理解して適切な状況判断を行なえていない選手は、ピッチから追い出され「順番待ち」の時間が長くなるという仕組みです。
子供たちは、疲れていようが、なんだろうが、ピッチの中でプレーし続けたいものです。子供たちのその気持ちを逆に利用して、練習に集中させるのです。

【最後に】
今回紹介した練習メニュー自体はとてもシンプルなもので、世界中どこででも行なっているものだと思います。しかし、練習の難易度を決定する条件付けの設定や、目的の意識付けや、指導者のコーチングのレベルによって、この練習メニューは「バルサのパスサッカーの秘訣」的なトレーニングにもなれば、普通の平凡な練習にもなり得ると思います。


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バルサのスクール(普及部)
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この記事へのコメントコメント一覧

久我脩士郎君、コメントありがとう!

 >僕はある中学校の1年の副キャプテンの
 >サッカー部員なんですが
 >今の練習じゃ駄目だと思って
 >新しい練習メニューを考えています

素晴らしい!

 >この練習メニューを僕たちの部活の
 >練習メニューに加えてもよろしいでしょうか?

もちろんです!

 >フリーマンは交代はしないのですか?

時々交代したほうがいいと思います。例えば、5分ごととか。

 >あとボールタッチを
 >2タッチにしてもよろしいですか?

そういうのも、ありだと思いますよ。

 >たくさんの質問すいません。

いえいえ、どんどんどうぞ〜♪

 >最後に人数は僕たちは11人の
 >あまりにも少ないサッカー部なのですが、
 >塾などの習い事などの関係で
 >11人全員どころが8人も
 >揃わないことがあるのですが
 >8人以下の時は
 >どういう対応をすれば
 >よろしいと思われますか?

その場合は、3対3+フリーマン1とか、2対2+フリーマン2とか、3対3+フリーマン1とか、2対2+フリーマン1といった感じでアレンジすれば、ほぼ同じような練習効果があると思いますよ。

 >たくさんの質問で迷惑をかけてしまったら
 >その都度は申し訳ございません。

いえいえ、迷惑どころか、逆に嬉しいです!
今後もどんどん質問して下さい!

たくさんの質問です。

僕はある中学校の1年の副キャプテンの
サッカー部員なんですが
今の練習じゃ駄目だと思って
新しい練習メニューを考えています

そこでコメントというよりは
質問をさせてもらいます。

この練習メニューを僕たちの部活の
練習メニューに加えてもよろしいでしょうか?

フリーマンは交代はしないのですか?

あとボールタッチを
2タッチにしてもよろしいですか?

たくさんの質問すいません。

最後に人数は僕たちは11人の
あまりにも少ないサッカー部なのですが、
塾などの習い事などの関係で
11人全員どころが8人も
揃わないことがあるのですが
8人以下の時は
どういう対応をすれば
よろしいと思われますか?

たくさんの質問で迷惑を
かけてしまったら
その都度は申し訳ございません。

スクールコーチさんへ

よく分かりませんが、了解しました。

なお、昔の記事に書き込みをされても全く問題ありませんよ。

今後ともよろしくお願いします。

バルサスクールの定番練習メニュー (6歳からポセッションゲーム)

コメント返しありがとうございます。書き込み後、2年前の記事だということに気付きました。申し訳ございません。

それから僕のコメントも全撤回です。村松さんの記事を勘違いして読み間違えてました。

本当その通りだと思います。僕の場合はオフェンステーマとディフェンステーマを設けて取り組んでます。

重ね重ね意味不明で申し訳ありませんでした。


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