2007年11月13日

骨と筋肉とフットボールとテコの原理

皆さんから頂いた多くのヒントのおかげで、“Be Water My Friend”に関する自分の考えがどんどんひとつにまとまりつつあります。特に、hao80さんが教えて下さった“邪魔しているものを取り除く”という言葉は大きなヒントになりました。皆さん、ありがとうございます。
以下、まだ完全にまとまっているわけではないですが「骨と筋肉とフッボールとテコの原理」について少し書きたと思います。

※“てこ”は本来カタカナでは書かないと思いますが、読み易くするために今回はあえてカタカナ表記しました。

【スポーツバイオメカニクスは筋肉学?】
漠然とですが、私はスポーツバイオメカニクス(スポーツ力学)のことを筋肉の働きをメインに分析する“筋肉学”と解釈していました。もちろん、各関節の角度なども分析しているわけですが、そのメインはあくまでも“筋肉”であると漠然と私は認識していました。

【実はスポーツバイオメカニクスは骨学?】
しかし、人体の動作に興味を示し、色々な本を読み、色々と人体実験を重ね、皆さんから多くのヒントを頂く過程において、「スポーツバイオメカニクスのメインは筋肉ではなく骨?」と思うようになりました。

【“邪魔しているものを取り除く”】
こう思うようになった最大のきっかけは、hao80さんが教えて下さった次のようなエピソードです。

 > 以前、指導者向けの講習会を受講した時、講師の方がこう言われたのが印象的でした。
 > 「私が心がけているのは、良いところを伸ばすとか、悪いところを改善するというより、
 > ”邪魔しているものを取り除く”ということです。」

この“邪魔しているものを取り除く”というコンセプトが各選手の能力を最大限に発揮できる“各選手の最適動作”を解明するヒントだと強く思います。そして、それこそが“Waterになる”ということなのではないでしょうか。

【改善できない骨、改善できる筋肉】
筋力トレーニングをすれば筋肉の太さや強さは改善させることができます。しかし、骨は難しいです。もちろん、子どもは背が伸びますし、カルシウムをしっかり取れば大人の骨も強くなったり若干太くなったりすることはあるのでしょうが、基本的に大人の骨格の変化は筋肉に比べると大変困難です。

【ガイコツ君と筋肉による“テコの原理”】
「大人の骨格の変化は困難」ということは、骨の長さが変化しないということです。それに「(筋力に変化はあっても)各筋肉と骨の付着部位に変化はない」ということを加えると、「僕の体の中に埋まっているガイコツ君が筋肉と共に醸し出す“テコの原理”は一定」ということになります。つまり、各関節のテコの原理の支点・作用点・力点には変化がないということです。
(※筋肉は腱を介して骨に付着している場合がほとんどですが、話をシンプルにするために今回は腱の存在を無視し骨と筋肉だけで話を進めて行くことにします)

【筋肉の変化による効果は微々たるモノ?】
もちろん、筋力を改善させれば動作に変化をもたらします。しかし、“テコの原理”を最大限に利用した際の動作の変化に比べると、筋力による動作の改善レベルは微々たるものだと思います。例えば、爪切りです。硬い爪を切るためには、爪自体に当たる刃に大きな力を掛けなければいけませんが、テコの原理を上手く使った爪切りさえあれば、各自が持っている筋力の強弱に関係なく老若男女だれでもあの硬い爪を簡単に切ることができます。

【ガイコツ君が希望している最も効率のいい動き】
「テコの原理を上手く使った爪切りは効率の良い働きをする」ということに「ガイコツ君が筋肉と共に醸し出す“テコの原理”は一定」ということを踏まえると、「ガイコツ君が筋肉と共に醸し出す“テコの原理”を効率良く使い、複数の動作を効率よく連鎖(=複合的なテコの原理)させれば人間は効率の良い動作ができる」ということになると思います。そして「(各自の)最高に効率の良い動作」というもの自体が、スポーツの世界における「(各自の)最高のパフォーマンス」ということだと思います。

【武術は骨学?】
メールにて意見交換をさせていただいておりますiさんから届いたメールにこのようなことが書いてありました。(iさん、いつも興味深いご指摘ありがとうございます)

  > これは誤解かもしれませんが、武術的な考え方は、筋肉をどう動かすというより、
  > 骨格をどの位置に置くのかを考えているように思います。

この「骨格をどの位置に置くのか」ということは、まさに「ガイコツ君と筋肉が醸し出す“複合的なテコの原理”を最も有効に使える角度や姿勢を探す」ということなのだと思います。

【ガイコツ君は爪切りほど簡単ではない】
ここで問題になってくるのが、ガイコツ君は爪切りほどシンプルな構造ではないという点です。人体には300前後(数え方によって数字が変化するようです)の関節がありますから、そこに絡み合ってくる“複合的なテコの原理”はとても複雑なものであることは間違いありません。

【とても大きな可能性を秘めているガイコツ君】
テコの原理を有効に使えば小さな力で大きなことができます。あるいは、テコの原理を使えば、ピンセットのように大きな力(=指の力)によって繊細な動き(=ピンセットの先の動き)ができることもあります。関節がひとつのピンセットでもこれだけ効率的な動きができるわけですから、関節が約300もある人体にはもっともっと効率的な凄い動作ができる可能性が秘められていると言えるのでしょう。

【邪魔しているものを取り除く】
しかし悲しいかな、我々は我々の体の中に秘められている大きな可能性に無頓着になり、筋力(例:爪切りを押す手の指の力)に目を向ける傾向があります。複数の関節の動きを上手く組み合わせ“複合的なテコの原理”を効率的に使えば目覚しい動きができるはずなのに、我々はガイコツ君よりもキンニク君に眼を向けがちです。

【邪魔しているものを取り除く】
前述の「邪魔しているものを取り除く」というのは、まさしく「ガイコツ君が秘めている“複合的なテコの原理”による効率的な動作を取り戻す」ということなのではないでしょうか。そして、その“邪魔モノ”の正体は、不適切な姿勢(=関節角度)だったり、重心のずれだったり、各関節(特に骨盤!)のコリだったり、余計な筋緊張だったり、タイミングの悪い動作の連鎖なのだと思います。

【具体的な方法論】
そして、この“邪魔モノ”を取り除くという目的を達成するための具体的な方法論が、武術や、バランスボールや、股関節活性化ドリルや、ゆる体操や、コアトレーニングや、二軸動作や、ヨガなのではないでしょうか。

【筋肉の過小評価?】
体内に秘められている“複合的なテコの原理”を有効活用しようという視点は、筋肉の過小評価とも取れます。事実、そのような気がします。もちろん、動作の改善と筋力の改善はバランス良く実施しなければいけないわけですが、例えば、武道全体に宿っている「柔よく剛を制す」という哲学には「動作 > 筋肉」という優先順位が明確に存在すると思います。

【筋肉は大切ではない?】
筋肉はもちろん大切です。それ無しではスポーツは語れません。しかし、筋力の改善よりも、体内に秘められている“複合的なテコの原理”を最大限有効に使える動作を身に付ける方が大切なのではないでしょうか。もちろん、バランスを崩して“動作”だけに偏るのは良くありませんが、優先順位はあくまでも「動作 > 筋肉」なのだと思います。それに、動作を改善している過程において、効率的な動作に必要な筋力(特にインナーマッスル)は必然的に鍛えられるでしょうから、動作に主眼を置くことは必ずしも「筋肉を過小評価する」ことにはなっていないと思います。

【インナーマッスルはどうなるの?】
では、私がずっと興味を示し続けているインナーマッスルの位置付けはどうなるのでしょうか。私は、インナーマッスルの強化は“目的”ではなく“結果”だと思い始めています。インナーマッスルを鍛えること自体が大切なのではなく、体内の“複合的なてこの理論”を有効活用するためには小さな各関節をナチュラルに動かす必要があり、そのためにはその小さな各関節に力を提供しているインナーマッスルを鍛える必要があるということなのでしょう。事実、私がバランスボールに座って骨盤をグリグリ動かしているのは、あくまでも骨盤の上下にある関節をナチュラルに動かすためですが、その過程において骨盤付近にある(この骨盤グリグリ運動をつかさどっている)インナーマッスルが必然的に鍛えられているという流れなのでしょう。

【理想的な動作は唯一無二?】
前述のように、“邪魔モノ”を取り除く(=最も効率的な動作を手に入れる)という目的を達成するための具体的な方法論には、武術、バランスボール、股関節活性化ドリル、ゆる体操、コアトレーニング、二軸動作、ヨガなど無数にあります。では、理想的な動作は唯一無二なのかというとそんなことはないと思います。人種が違えば体格や骨格は明確に違いますし、日本人同士でも差があります。それに、人間は約300個の関節(=てこの原理を必要としている部位)によって構成されていますから、「効率的な動作」を生み出すための組み合わせは決してひとつではなく無数にあるのだと思います。

【正解が複数ある世界】
だからこそ、人間の動作を研究する様々な派閥(!?)が生まれたり、時には派閥間で相反することを言っていたりするのだと思います。「効率的な動作は必ずしもひとつではない」と考えれば、その「相反する理論」は決して対立するものではなく「それぞれが正しい理論」である場合もあると思うのですが、自分の理論を正当化するために他者の理論を否定する行動が頻繁に見られるのは少し悲しいことですね。世の中には「正解がひとつではない」ことが多々あるのにもかかわらず、スポーツの世界では「唯一無二の正解」を求めようとする傾向があるのかもしれません。

最後にまとめてみます。

【 Be Water My Friend の本質】
“邪魔しているものを取り除く”ことに成功し、動作の種類(ランニング、ジャンプ、スタートダッシュ、ターン、ドリブル、フェイントなどなど)の違いを考慮しつつ、自分の体内に秘められている“複合的なテコの原理”を最大限に活かす形で動けることができた時こそが“Waterになれた瞬間”なのではないでしょうか。


色々と考えた結果、なんだか少し Water に近づけたような気がしますが、これで終了したわけではありません。“Be Water My Friend”の探求の旅はまだまだ続きます。

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posted by naoto |22:37 | バルサを越える為のヒント集 | コメント(4) | トラックバック(0)
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骨と筋肉とフッボールとテコの原理

コメント投稿者ID :

面白い仮説ですね!

この仮説の通りなら、精神的なものも邪魔しているものになるはず。
そうすると、武術が武道になったのも合点がいきます。
また、相手に邪魔しているものを付け加えられれば、相手を凍らせることができるかも!

私は一時期、柔道をやっていました。
柔道の投げ技は、筋力を無力化するものが多かったと思います。
会心の時は、相手の体重をまるで感じませんでした。
寝技も、相手の骨格の制限を上手く利用し、逃げられないようになっていました。

もちろん、体格や筋力も重要でしょう。
ですが、身長で20cm、体重で60kgは差があった人が投げられ、ひっくり返されたのを思い出すと、
この話が、かなり真実に近づいている気がします!

posted by yam | 2007-11-14 01:20

yamさん、コメントありがとうございます

コメント投稿者ID :

yamさん、コメントありがとうございます。

こうやって色々と考えていると、日本人に適した“邪魔モノの除去方法”の秘訣はやはり(日本発祥の)武術や武道の中に潜んでいるような気がします。柔道もそのひとつですよね。

posted by 村松尚登 | 2007-11-14 05:50

骨と筋肉とフッボールとテコの原理

コメント投稿者ID :

 自分のイメージを羅列してみました。。。

 邪魔しているものを除去する。骨を使ったテコの原理・・・。

 邪魔している物を除去する。骨を使ったテコの原理をより使いやすい体、うまく使える体に整えた上で、フットボールのトレーニングに取り組むことでフットボールプレーヤーとしてのパフォーマンスが向上する。

【実体験で・・・】
 自分より明らかに筋力のない友人と比べキックの飛距離が全然違う。キックの力=筋力ではない。友人曰く
 「サッカーは筋力でするもんじゃないんですよ~」
 筋力以外のこと・・・サッカー経験年数の違いもあるため「キックの技術」の違いかと思い、ひたすらロングキックの練習をしましたがイマイチ距離が伸びない。
 ではキックの技術とはなんぞや?正確性・飛距離。ボールに力を伝えるための足を効率的に使えていないのではないか(テコが十分に効いていない)。
 キックの力=体の使い方(骨のテコの使い方)。正確性=骨格を上手くコントロールさせるための筋の制御能力ではないか。実際に骨盤クネクネで楽にボールを遠くに蹴れるようになりました。

 効率的な(正しい)骨のテコの使い方を身につける
+テコを十分に効かせる為に正しい位置へ導き、バランスをとるためのサポート役の筋肉(とその制御能力)。

 細かな骨の稼動域を上げる(動かすための準備)。筋の緊張・緩めるといった筋をコントロールするための神経系を刺激し敏感にしておく。股関節活性化ドリルやゆる体操などで緩めたり縮めたりすることによって骨格や腱、筋肉の動きそのものだけでなく神経系も刺激されるのではないか。

【邪魔している物とは何か?】
 邪魔しているもの=骨の動きを妨げる過剰な筋力?間違った筋力の使い方をする脳・神経?

【筋力は不要か?】
 プレー中の動き・骨格の動きを制御するもの。フィジカルコンタクトの際にバランス(骨格の状態)を維持するために必要。
 骨の上にある筋肉。骨のサポートのための筋肉。骨格の動きの効率×筋力=フィジカルの強さ?ターンなどの敏捷性については筋力はそんなに重要ではないか?局面によって必要な筋力量が違う。

【動きの中で筋力を使い分ける事】
 筋力があれど場面に応じた筋の使い方ができないと、俗に言う「力が入っているよ、リラックスリラックス」ということになる。動きの邪魔になる筋力の緊張をどうコントロールしていくのか。神経系へのアプローチを行うトレーニング。

 む~ん。色々考えていたら頭がゴチャゴチャになりました。ぐだぐだと書いてしまい申し訳ありません。とりあえず何も考えず体をグネグネさせておきます(笑)。

posted by カタヤマ | 2007-11-14 13:14

カタヤマさん、コメントありがとうございます

コメント投稿者ID :

カタヤマさん、コメントありがとうございます。

今回は脳や神経系について触れませんでしたが、この二つもとても大切ですよね。これらについてももう少し深く探求してみようと思います。

posted by 村松尚登 | 2007-11-15 05:59

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