長田渚左の「考え中」

村田諒太の敗戦で見えたボクシングの危機

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 多少の相性はあるが、どんなスポーツにも特有の面白さがあり、その魅力に引き込まれる。  その中でも最も好きなのがボクシングだ。たった2つの拳の戦いなのに、狭いリングの中に決意、勇気、知性といった人間の持つあらゆる要素がむき出しになり、そのたった1試合がボクサーの人生さえも変えてしまうからだ。  5月20日、東京・有明コロシアムで観戦した、12年ロンドン五輪ミドル級金メダリスト村田諒太(帝拳)が、初の世界王座獲得をかけて同級1位の元王者アッサン・エンダム(フランス)と戦った、WBA世界ミドル級王座決定戦は、後味の悪さばかりが残った。  4回に右強打でダウンを奪い、その後も有効なクリーンヒットを決めて相手を何度もグラつかせた村田が、1-2の判定で敗れたのだ。エンダムは手数は出していたものの、村田の堅いガードでほとんどのパンチをブロックされていた。判定を聞いた瞬間、私は集計ミスに違いないと思ったほどだ。  アマチュアではなく、プロの試合なのだ。審判は相手にダメージを与えた有効打を最重視して採点すべきだ。その次に有効打がない場合は相手にヒットしたパンチの数で優劣をつける。それが採点基準だろう。ただエンダムのパンチは当たっていないのだから、手数が多かったという判断もおかしい。単に繰り出したパンチ数だけを採点の判断基準にするなら、機械でカウントすればいいだけで審判などいらない。  パンチが有効かどうか、相手にどれだけダメージを与えたのか、そこを見極めるからプロの審判なのではないか。  特に2人の審判が終盤をすべてエンダムにポイントを与えていたのは承服しかねる。エンダムは明らかに村田のパンチに逃げ回り、ダメージでひざがグラついていた。  世界戦の前日に選手の計量が行われるが、審判の目の検査も必要なのではないか、とさえ思った。  少なくともこんな不可解な採点をする審判がいては、人生をかけてリングに上がる選手に失礼だ。一方で採点競技なのに、肝心の判断基準が明確化されてないプロボクシングというスポーツの甘さも痛感した。  観客が見て感じたものとは、まるで違う結果が出るようなスポーツは、やがて大衆からも見放される。有明コロシアムで「えっー、ウソでしょう」と声を上げた1人として、そこは声高に強調たい。



 総合無料スポーツ誌『スポーツゴジラ』の最新35号は6月中旬に刊行され、都営地下鉄全駅に配置します。今回の特集は〝2020年に何が変わるか〟。3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックに多角的に光りを当てます。  なお、すでに在庫のなくなったバックナンバーについて「どうしたら読めますか」との問い合わせを多数いただいております。国会図書館、都立中央図書館、東京・世田谷区の大宅文庫で閲覧いただければ幸いです。35号刊行までもう少しお待ちください。

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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(07月19日現在)

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