長田渚左の「考え中」

森喜朗会長、家庭教師を志願します!

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 リオデジャネイロ五輪の開幕が近づいてきた。  今回もまた、メダリストの国の旗がひるがえり、優勝者の国の歌が流れる表彰式で、幾多の感動のシーンが胸に刻み込まれることだろう。  だから、あえて言っておきたい。表彰式で掲げられるのは「国旗」ではなく、流れる歌は「国歌」ではない。では、いったい何なのか。五輪憲章第70条の細則によれば、各国のオリンピック委員会(NOC)が採用し、国際オリンピック委員会(IOC)が承認した「選手団の旗と歌」である。  極端なことを言えば、日本オリンピック委員会(JOC)が、真ん中を赤い玉ではなく、黄色いピカチューを描いた旗と、サザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」を選手団の旗と歌として申請し、IOCから承認されれば、表彰式で使用できることになる。

 昔は五輪憲章でも国旗国歌だったが、メダル争いがナショナリズムを過熱させるなどの理由から、個人やチームの競技という本来の理念に戻すため、30年以上も前に「選手団の旗と歌」に変更している。  実は国旗や国歌以外が五輪で使用される例は少なくない。64年の東京大会で東西に分かれていたドイツ統一選手団の歌はベートーベンの「歓喜の歌」で、旗は三色旗の中央に五輪マークが描かれていた。92年のアルベールビル冬季大会とバルセロナ大会では、旧ソ連や新ユーゴが五輪旗、五輪賛歌を使用した。台湾は毎回NOC旗を使っている。  さらに五輪憲章には「国家間の争いではない」とも明記されている。あくまで国別対抗戦ではないから、国旗や国歌でなくていいのである。今回のリオデジャネイロ五輪では初めて難民五輪選手団が編成される。内戦の続くシリアをはじめ、南スーダン、コンゴ、エチオピアの男子6人、女子4人の計10選手が五輪旗を掲げて行進する。大きな拍手で迎えられることだろう。

 7月3日、都内で行われたリオデジャネイロ五輪の日本選手団壮行会の来賓あいさつで、2020年東京大会組織委員会の森喜朗会長が、「国歌を歌えないような選手は日本代表ではない」と発言し、さらに「声を大きく上げ、表彰台に立ったら、国歌を歌ってください」と選手たちに呼び掛けた。森氏は単に選手たちを激励するつもりで言ったのかもしれないが、私は強い違和感が残った。  最初にも書いたが、五輪で流れる歌は国歌ではなく、選手団の歌である。そして、当然ながら声に出して歌ってもいいし、喜びをかみしめながら心の中で歌ってもいいし、ひたすら歓喜に浸ったまま歌わなくてもいい。それこそ個人の自由である。  スポーツ評論家の玉木正之氏が、1964年東京五輪を題材にした映画「東京オリンピック」(市川崑監督)の中で君が代が3度流れると教えてくれた。柔道の重量級金メダリスト猪熊功、バレーボール女子で頂点に立った『東洋の魔女』の河西昌枝主将、体操の男子個人総合優勝の遠藤幸雄。3人とも表彰式で口を開けて君が代を歌っていない。勝利のかみしめ方が三者三様だからこそ、今も見る者の心に響く。

 実は森氏は組織委員会の会長就任直前の14年1月18日、テレビ東京の番組でこんな発言もしている。原発問題に触れ「五輪のためにはもっと電気が必要だ。今から(原発)ゼロなら、五輪を返上するしかなくなる。世界に迷惑をかける」。五輪組織委員会のトップに就任する人物が、五輪開催を原発という極めて政治的な問題に結びつけて発言する。これも政治利用を禁じている五輪憲章に違反すると受け止められかねない。IOCから問題視される可能性もあった。

   14年1月の会長就任からの森氏の発言に耳を傾けると、五輪憲章を詳細にお読みになっていないことがよく分かる。20年に向けて、今後さらに五輪関連の会合や行事が増えていく。だから森氏にお願いしたい。御多忙で時間がないことはよく分かるが、会長は20年五輪・パラリンピックの『顔』でもあるのだから、五輪憲章にいま1度、じっくりと目を通して、理解していただきたい。  もし、高齢による視力低下で目がかすんで読みにくいということでしたら、私が家庭教師としてお伺いさせていただき、要点を分かりやすくご説明申し上げたい。

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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(05月26日現在)

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