長田渚左の「考え中」

「NO! と言える人間を育てるには」

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 野球賭博問題。  開幕を目前にしたこの時期に、またしても出てきたのかと、あきれ返った。  昨年、巨人の投手が3人も野球賭博に関わったとして無期限資格停止処分を受けた。その後の調査で収束したかに見えたが、幕引きとはいかなかった。開幕を前に新たに高木京介選手の関与が発覚した。  事態は振り出しに戻り、日本野球機構(NPB)の調査委員会が、ほかに関与した選手がいないか巨人以外の11球団も含めて再調査するという。  試合の勝敗を対象にした賭博は、選手を巻き込んだ八百長の引き金になる可能性がある。それは過去の「黒い霧事件」でも経験済みだ。さらに反社会勢力の資金源にも結びつく。「フェアプレー」を根幹とするスポーツの存在価値を脅かし兼ねない。それがスポーツ界の不安の根底にある。再調査を徹底して、膿は出し切るべきだろう。

 もちろん、今回の一件を受けて、野球しか知らない社会経験の乏しい選手に、あらためて「賭博に関与してはいけない」「反社会勢力に気をつけろ」と指導することは必要だ。ただ一方で「射幸心をあおる」という理由で、プロの選手に対してギャンブルという行為をすべて否定することには、私はどこか違和感も覚える。人間そのものが、どんどん小さくなってしまう気がしてしまう。  長年スポーツを取材して感じるのは、アスリートには賭け事が好きな人が多いということである。特にプロのスポーツ選手は幼い頃から、相手に勝ち、勝負に勝つことを目指してきた勝ち組だ。野球には一発逆転、値千金打などバクチを連想させる言葉もある。勝負の駆け引きも、賭け事に通じるものがある。そして、ふつうの人よりもお金がある。ギャンブルに入り込みやすいとはいえないだろうか。  『賭け事』そのものが悪いわけではないし、人の射幸心だって悪いことばかりではない。誤解を恐れずに言えば、例えば、打者の胸元ぎりぎりを狙う投手の駆け引きや、球種にヤマを張って決定打を放つ打者の勝負勘の素地にだってなり得る。それは誰かが教えようとしても教えられないことだったりもする。だから規制ばかりしていると、その選手の魅力でもあるいい意味での野性的な部分が減ってしまう気がする。

 先月、たまたま府中競馬場の貴賓室に遊びに行った。同じ部屋にカーレーサーの人たちがいた。鈴鹿サーキットなどで活躍している人たちだが、独特の勝負勘で競馬を楽しんでいる姿は実に興味深かった。日本には公営の競馬や競輪、競艇、オートレースもある。適度な賭け事は、精神的重圧のかかるプロ選手の息抜きにもなる。球界の上層部も賭け事そのものを否定するのではなく、選手たちを大人扱いして、自分の責任で、節度を持ってやるのがギャンブルだということを教えてほしい。

 巨人の選手は伝統的に「紳士たれ」と言われてきたが、それはきちんとした「大人になれ」と言っているのだと私は解釈している。「紳士=gentleman」という言葉は男の尊称である。荒々しさや猛々しさをも包み込む優しさを秘めた本物の大人。そして、物事を自分の責任において選べる男なのだと思う。  巨人というブランドを背負って生きる上で、いろいろな誘惑やさまざまな人が近づいてくる。そこで選択をして生きることこそ、本物の紳士なのだと教えてほしい。



 3月5日、筑波大学東京キャンパスでスポーツ新聞創刊70年シンポジウム(主催・スポーツ学会ほか)を開催しました。 スポーツ新聞全7社から、各社の顔として第一線で活躍された記者の方々やOBにお集まりいただき、スポーツ新聞の魅力や未来を語っていただきました。  200人収容の会場はほぼ満席となり、2時間半にも及んだディスカッションは熱気と活気に満ち、皆さん最後まで熱心に耳を傾けられていました。  シンポジウムの内容は『スポーツゴジラ31号』(5月下旬刊行予定)に掲載させていただきますので、しばしお待ち下さい。  登壇してくださった7名の方々、ご来場のお客さま、本当にありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。  次回スポーツ学会開催は、4月13日『日本のテニスはどこまでゆけるか~福井烈→松岡修造→錦織圭へ~』(仮題)。ゲストスピーカーは福井烈氏。場所・早稲田大学国際会議場第3会議室。時間・18時30分開始。お問い合わせ先・スポーツネットワークジャパン 03・3323・0893

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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(05月26日現在)

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