長田渚左の「考え中」

新国立競技場再考の最後の切り札

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 膨大な税金をつぎ込む新国立競技場の建設は、もう後戻りできないのだろうか。  「2520億円もかける必要はない。見直そう」と、真のリーダーが大きな声を上げれば、その人こそ英雄として後生に名を残すのではないだろうか……。  7月6日に新国立競技場問題を考えるシンポジウムが都内で開かれた。参加した女子マラソンの五輪メダリスト、有森裕子さんは「オリンピックが皆さんの負の要素のきっかけに思われることは本望ではない」と涙ながらに語った。新国立競技場建設の是非については明言しなかったが、気持ちは伝わってきた。オリンピックを真に愛する人たちの気持ちを代弁していた。

 よくぞ発言したと思う。  日本のスポーツ界は、コーチや監督に言われたことには、たとえ疑問を抱いても口答えせずに従わなければならないという風潮が今も根深くある。それが体罰問題の引き金にもなっていた。つまり上の意向には逆らえないという特性である。一方で、選手たちは協会や所属チーム、スポンサーのしがらみがあり、自身の主張を声高に発信することは難しい。その意味で有森さんの発言に少し驚くとともに、何か小さな光が見えた気がした。  近年、選手を一番に考える『アスリート・ファースト』という言葉がスポーツ界全体に広がっている。私はアスリート側も遠慮することなく「自分たちが主役です」と主張できる時代になったと思う。  「オリンピックで見てもらいたいのは、自分たちのリアルなパフォーマンスです。会場は雨、風を防げて、観客が快適に自分たちの勝負を見られる建物であればいい。それ以上は望まない。それより五輪へ向けた強化費にお金を回してほしい」。過去の五輪選手、現役選手、未来のオリンピアン候補生たちが一緒になってそう訴えて、新国立競技場建設の見直しを要求すれば、国も立ち止まらざるを得なくなるのではないか。  それこそが最後の切り札のように思う。

 長いものに巻かれて気がついたときに後悔はしたくない。新国立競技場の建設問題に接しているとそんな気持ちになる。その意味で安全保障や原発、沖縄基地の問題とも共通する。  今月、私はスポーツ界から原発問題を考えるために、『日本と原発』という映画の上映会を予定している。しかし、来場を呼び掛けると、首を傾げられることが少なくない。あえてその話題に触れたくないという人も多い。それは決して健全なことではない。  スポーツをするためには新鮮な空気が必須で、安心、安全な環境抜きには考えられない。スポーツと人の生きる環境は地続きになっている。  デザイン性より、まず選手がベストを尽くせる環境づくりを最優先しよう。そんな発想からスタートしていたら新国立競技場もまた違ったものになっていたと思う。



【映画上映会のお知らせ】  NPO法人「スポーツネットワークジャパン」と筑波大学の菊幸一教授のゼミは、7月11日(土)、15日(水)にスポーツと原発をテーマに、映画「日本と原発」(河合弘之監督)の上映会を筑波大学東京キャンパスで開催します。11日にはスポーツライターの木村元彦氏、スポーツ評論家の玉木正之氏も参加して一緒に映画を見ます。  最寄り駅は茗荷谷(東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅出口1より徒歩2分)です。震災から4年、あの事故を風化させることなく、あらためて原発と向き合ってみませんか。映画としても優れた作品ですので、ぜひお越しください。

 日時 7月11日(土)、15日(水) 両日とも午後6時開場。6時30分主催者挨拶に続いて上映  会場 筑波大学東京キャンパス 文京校舎1偕 134講義室  寄付金 一口500円  ※寄付金は核科学者・高木仁三郎氏の基金に寄付させていただきます。

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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(11月10日現在)

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