長田渚左の「考え中」

車椅子バスケに感じた時代の変化

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 今年のゴールデンウイークはいかが過ごされましたか?  私は近年、必ずある会場に足を運んでいます。日本車椅子バスケットボール選手権大会が開催される東京体育館です。今年も5月5日に取材に行ってきました。

 7年前、私の30年来の友人でもある田中晃氏(元日本テレビ・プロデューサーで現スカパー執行役員)から「何も言わずにゴールデンウイークは千駄ケ谷の東京体育館に終結せよ」と言われたことがきっかけだった。彼は〝口で説明するより見た方が早い、百聞は一見にしかず〟という気持ちだったのだろう。  確かに、車椅子バスケットボールとの出会いは衝撃的だった。  まず練習コートに現れた車椅子に乗った大勢のプレーヤーに圧倒された。大変に失礼な表現だが、こんなに多くの車椅子に乗った人が一度に集まったところを見たことがなかった。何だか心の根幹を揺さぶられた気がした。  試合が始まるとプレーの激しさ、速さ、レベルの高さにくぎ付けになった。車椅子と車椅子がぶつかり合う衝撃音、車椅子ごと転倒しても腕のバネを使って跳ね起きる選手、上半身の力だけでこんなにも正確なシュートを決められるのかと驚いた。

 ただ会場は決して観客が多いとはいえなかった。  何とか集客に貢献したいと考えて、その翌年から担当していたNHKのラジオ番組で「ゴールデンウイークは東京体育館へ行きましょう」と呼び掛けた。実際にそのラジオを聴いて来場してくれた人もいて、「こんな世界もあったのですね」と複数のリスナーから手紙をもらった。  車椅子バスケットボールの面白さは、実際に自分の目で見ないと分からない。  客員教授を務めている淑徳大学の授業で、車椅子バスケの観戦をリポート課題にしている。学生たちは〝ゴールデンウイークに課題を出すとは何事か〟と不快な顔になるが、なぜかリポートの課題もないのに、翌年、翌々年と東京体育館を訪れる人が少なくない。懐かしい顔を見つけて「あれっ、どうしたの」と声を掛けると、「もう一度、見たくなったから」とはにかむ。

 今年の日本選手権は宮城MAXが史上最多の7連覇を達成した。特に日本代表のエース、藤本怜央選手が圧倒的な存在感を見せた。体は前年とは別人のようにシェイプアップしていた。理由を聞くと昨年9月から今年4月まで在籍したドイツリーグのハンブルガーSVでプレーするうちに、20㌔も体重が絞れたという。シェイプアップしたことで、体に切れが増し、車椅子を操作するテクニック、いわゆるチアワークがさらに際立つようになっていた。試合後、すでに入籍していたマネジャーの優さんとの近く披露宴を行うと明かした、藤本選手の笑顔が輝いて見えた。生きる自信のようなものが、言葉や表情に溢れていた。豊かなものが彼を包んでいて、それが観客にも伝わるようだった。

 今年の観客総数は5700人。嬉しいことに昨年に比べて600人増加したという。決勝戦はスカパーが生中継した。会場には民放のテレビカメラも列を成していた。さらに目を引いたのはスポーツ新聞2紙、日刊スポーツとスポニチが大会の記事をスポーツ面に掲載していたことだ。以前はパラリンピックをのぞけば、スポーツ紙が障害者スポーツをスポーツとして取り上げることは稀だった。  いくつかの事象の変化が、時代の変化と直結して、人の気分や気持ちに深い影響を及ぼす。  5年後に開催される2020年東京オリンピック・パラリンピックに向かって、時代が変わりつつあることを東京体育館で実感した。



<追伸>  スポーツネットワークジャパンが発行しているスポーツ無料総合誌「スポーツゴジラ27号~嘉納治五郎 Who?~」は、柔道界やオリンピック関係者などにご好評頂き、在庫がなくなりました。ただ、5月15日時点で、東京都北区西が丘のJISS(国立スポーツ科学センター)にまだ在庫が残っていました。入り口の自動扉を入ってすぐ右側のカウンターに積まれていました。受付までは誰でも入ることができます。ゲットできる穴場ですのでこっそり記しておきます。

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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(05月27日現在)

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