長田渚左の「考え中」

際立った「ゆとり世代」

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2月のソチ五輪で新鮮な発見があった。

10代の若い選手たちがインタビューで、実にしっかりと受け答えしていたことである。
興奮して舞い上がることも、落胆して取り乱すこともない。現実を冷静に受け止めて、自分の言葉で心境を語っていた。
私の周囲にも「どうして、こんなにしっかりしているの」という声が多かった。

 もちろん彼ら、彼女らはインタビューの特訓を受けていたわけではない。生まれも、育ちも異なる。しかし、成長の要因や時代背景には共通点がある。
 「ゆとり教育」で育った世代という点である

 「ゆとり世代」に定義や範囲は明確ではないが、大まかに言うと1987年から1996年までに生まれた世代を指す。
 例えば男子フィギュアスケート金メダリストの羽生結弦選手は、1994年生まれだから小学2年から高校卒業までどっぷりとゆとり教育で育ったといえる。
 女子ジャンプでメダルを逃した高梨沙羅選手、スノーボード・ハーフパイプ銀メダリストの平野歩夢選手と、銅メダリストの平岡卓選手もゆとり世代である。

 「ゆとり教育」は噛み砕いて言うと、「詰め込み教育」といわれたそれまでの学習指導要領を見直し、厚い教科書を薄くして、学習時間と内容を減らし、知識だけを詰め込むのでなく、いろんな経験をさせることで人間としてのびのびと生きる力をつけさせようとしたものだ。2002年からは完全学校5日制を実施した。

 子どもと親がその「ゆとりの時間」を生かし、余裕のある有意義な時を過ごした家庭も少なくなかった。
 平岡卓選手は大好きなスノーボードの練習のため、週末になると奈良県から雪を求めて岐阜県まで通っていたという。父親の運転する車で金曜日の夜に家を出て、土、日と存分に練習する。高梨沙羅選手もクラシックバレエとジャンプを両立させた。
 週末になると知らない土地で、学校以外の多くの仲間と触れ合い、しのぎを削り、情報交換する。活動範囲はどんどん広がり、海外の試合に出向くようにもなった。
 15歳で冬季五輪史上日本人最年少メダリストになった平野歩夢選手は、たった1人で海外で修行に出向いていたという。

 自分の知らない土地で、自分の知らない人に囲まれて過ごすということは、未知の環境に丸ごと自分をさらすことでもある。自分をアピールしなければならないし、自然とコミュニケーション能力が鍛えられる。何よりも度胸がつく。

 国際的な学力調査で日本のランキングが落ちたことで、「ゆとり教育」を疑問視する声が強まり、方針が見直されたが、そもそも教育の成果というものは、すぐに出るものではない。特に「ゆとり教育」はその性質から考えても、成果が表れるまでには長い時間が必要だ。

 今の「ゆとり世代」が本当の意味で日本を担う世代へと成長する10年、15年後、「ゆとり教育」は名前を変えて、再び日本で導入されるのではないか。ソチ五輪で躍動する若者を見て、そう思った。



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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(07月19日現在)

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