長田渚左の「考え中」

ソチ五輪で見えた、新時代のメダル争い

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 ソチ五輪は4日目まで日本勢にとって厳しい戦いが続いている。
 特に有力選手が登場すると、見る側も期待して「さあ、今度こそ」と力が入るので、結果が出なければそれだけ落胆も大きくなる。

 5大会連続出場の女子モーグルの上村愛子は、またしてもあと1歩でメダルを逃し、4位に終わった。彼女は「前回の4位とは達成感が違う」と話し、万感の涙をこぼした。
 上位6人が進出する決勝に、6番目の成績で滑り込んだ上村は、難コースでただ1人だけ30秒台をマークした。タイムだけなら決勝最速だった。
 しかし、メダルにも手が届かなかった。モーグルの採点はターンが50%で、エアとタイムは各25%。その最も比重の高いターンの採点で、上村は全体の4位と伸びなかった。これについてコーチは「判定の傾向が変化した」と悔しがった。
 コブを縦に切り裂くよう滑走する上村のターンは、世界屈指の技術と呼ばれた。しかし、現在は銅メダルを獲得したカーニー(米国)のように、コブ周辺を縫うように滑るターンが主流で、スキー板が雪面から離れず、上体が安定して滑らかで美しい方が、高く評価されるのだという。
 つまり、五輪では競技力のアップとともに、採点の世界的な傾向も綿密に研究して準備をしなくては、なかなかメダルには届かないということになる。

 葛西紀明らが出場したスキーのジャンプ・ノーマルヒルでも同じようなことがあった。100㍍以上のジャンプを2本そろえた選手は、ストッホ(ポーランド)と葛西の2人だけだった。
 ところが、結果はストッホが金メダルで葛西は8位。2人の差は、五輪では今大会から初めて採用された採点計算方式「ウインドファクター」の影響が大きかったようだ。
 「ウインドファクター」は、これまで「運」とされてきた風の条件を数値化したもので、ジャンプに不利な追い風が吹いた時には加点し、有利な向かい風には減点するというものだ。
 これによって2位と3位の選手には、2回目のジャンプで6点以上の加点があった。
 今回の葛西にはこのルールがマイナスに働いた思われる。
 スポーツには「もし」や「たら、れば」はないが、「ウインドファクター」採点計算式がなかった前回大会のルールのだったら、葛西は堂々とメダルを獲得していたはずだ。

 ジャンプでは「ウインドファクター」に加えて、「ゲートファクター」も新たに導入された。
 「ゲートファクター」はスタート地点を下げれば加点され、上げれば減点される採点計算方式。しかも、複雑なのはゲートを下げればジャンプの落下速度は落ちるが、飛型が安定しやすくなり「飛型点」が出やすくなる点だ。だから、その日の風や雪の状態を見極めて、どこで加点を狙うか、陣営の判断が勝敗の鍵を握ることになる。

 近年、バレーボールでは1ポイントごとに相手チームの動きをデータ化し、どこに弱点があるのかを探り出して、刻々と戦略を変化させて勝機を見いだす。世界トップレベルでは、その正否が勝敗を大きく左右すると言われる。実際に2012年のロンドン五輪で日本女子はそのデータを駆使して銅メダルを獲得した。

 五輪のような世界トップレベルの紙一重の戦いでは、選手個人の力とともに、チームで採点傾向やデータを分析して、緻密な戦略を立てて臨まなければ、メダル獲得は厳しい。
 ソチ五輪のし烈なメダル争いを見ていると、スポーツが新たな時代に突入したことを、あらためて実感させられる。



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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(05月27日現在)

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