長田渚左の「考え中」

気になる「五輪の顔」の発言

このエントリーをはてなブックマークに追加

 2月のソチ五輪に臨む日本選手団の結団式と壮行会が1月20日、都内のホテルで行われた。選手たちはテレビや新聞でお互いの顔を知ってはいても、競技が違うと直接顔を合わせる機会はほとんどない。同じ目標を目指す仲間と、一堂に会することで、五輪本番へ向けて気持ちが高まる。その意味でも大切な時間になったと思う。

 そんな五輪へ向けた日本の機運が盛り上がってきた中で、水を差す発言が気になった。今月14日に2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長に決まった森喜朗元首相(76)の、18日のテレビ番組でのコメントに耳を疑った。「東京五輪ためには、もっと電力が必要だ。今から(原発が)ゼロなら、五輪を返上するしかなくなる。世界に迷惑をかける」。

 この発言の背景には、2月9日の東京都知事選挙がある。小泉純一郎元首相の後ろ盾を受けて、細川護熙元首相が「脱原発」を選挙戦の争点に掲げて出馬表明したことへの、強烈なけん制だったことは明らかだ。そして、その政局のために、まるで五輪が人質に取られたような発言だ。大会組織委員長という立場の人物の発言としては、あまりにも軽率で不用意で残念だった。

 五輪開催を原発という極めて政治的な問題に結び付けるのは、ある意味で五輪憲章違反とも言える。国際オリンピック委員会(IOC)から問題視される可能性もある。
 何よりも「原発ゼロなら五輪返上するしかない」という組織トップの発言は、6年後の東京五輪を楽しみにしている国民や、出場を目指して頑張っている若い選手たちに、不安や誤解を与えてしまう。

 そもそも、東京五輪に必要な電力については、昨年1月に日本の招致委員会がIOCに提出した立候補ファイルに「既存の配電システムで東京大会で発生する追加需要に対応できる」と明記している。原発抜きでも可能だったはずではなかったか。

 森元首相は気配りの人で、人脈も広く、特に財界に力があると聞く。確かにスポーツ界では人望もある。しかし、今回の発言を聞く限り、どこまで五輪の理念や意義を理解されているのか。五輪関係者ならずとも、不安になる。

 ちなみに東京都知事選で「新しい都知事は東京五輪の顔になる」という声をよく聞くが、これは正しくはない。都知事の任期は4年。今回、選出されるのはとりあえず2018年までの都知事である。地道な準備だけで任期を終える可能性もある。一方で大会組織委員長は2020年まで6年間、職責をまっとうすることになる。開催都市の首長である都知事の五輪への影響はもちろん大きいが、大会運営は大会組織委員会が取り仕切る。つまり大会組織委員長こそが「五輪の顔」になる。

 「五輪の顔」の発言は、それだけ影響力も大きい。6年先までずっと内外の注目を浴び続ける。だとすれば、もう少し自分の立場を自覚して、「五輪とは何か」を考えて、発信していただきたい。



1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
言わずにいられない
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

こんな記事も読みたい

松戸ジュニアラグビー練習会2014-3【Dream Rider  西山淳哉】

ドリームサポートプログラム募集【ホシノドリームズプロジェクト】

アスリート取材記者募集【ホシノドリームズプロジェクト】

告知~Baseball Bridge presentsスペシャルトークライブ池永大輔×田中亮多 2014~と今年のTB【Rayを釣りたくて】

【U-21】現段階でのイラク戦惜敗をどう評価するか。【サッカー鍋【石に立つ矢】】

AFC U-22選手権準々決勝 日本0-1イラク【蹴球二日】

ロシア・フィギュア男子代表が大迷走状態に【スポーツ24/7 1日24時間・週7日間スポーツ!】

2014女子体操ルール変更と芸術性についての雑感【日本のスポーツを元気に!!!】

ブロガープロフィール

profile-iconnagisaosada

長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
  • 昨日のページビュー:139
  • 累計のページビュー:434403

(07月23日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. ソチ五輪の見どころは「人間力の成長」
  2. 羽生結弦選手の衝突再発防止策はアスリートファーストで
  3. 安藤美姫の告白と、女子アスリートの「いつ産むか」
  4. ピアノとスポーツ
  5. 落合博満とクルム伊達公子
  6. 愛すべきシューマッハー、再び限界を超えて!
  7. 高橋大輔選手の15カ月の大勝負――医療ネットワークの奮闘
  8. 体罰問題と落合博満
  9. 体育祭と人間教育
  10. 白鵬の品格

月別アーカイブ

2017
07
05
2016
08
07
05
03
02
2015
11
07
06
05
02
01
2014
12
09
03
02
01
2013
12
11
09
07
06
05
03
02
01
2012
12
08
06
02
01
2011
08
06
05
04
03
02
01
2010
12
11
08
07
06
05
04
03
02
01
2009
12
10
08
06
05
04
03
02
01
2008
12
11
10
01

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年07月23日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss