長田渚左の「考え中」

ジャッキー・ロビンソンの闘いが教えてくれたこと

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 映画「42~世界を変えた男~」を見た。
 今は日本でもメジャーリーグのテレビ中継が楽しめる。〝褐色の肌〟の選手は珍しくない。むしろ白人選手よりも目立っている。
 もともと米国は人種のるつぼだと思っていたし、ベースボールをはじめ、あらゆるスポーツで米国の人種差別を意識したことはなかった。

 だからこそ、この映画は新鮮な驚きだった。
 1947年、今から66年前、メジャーリーグは約400人の白人選手だけで構成されていた。
 そこに初めて黒人選手、ジャッキー・ロビンソンが誕生する。
 最初の一歩を踏み出すために扉を押したのが、当時のドジャース会長だったブランチ・リッキー。同会長は「仕返しをしないガッツのある選手を捜していた」と話し、ジャッキー・ロビンソンと契約を交わした。
 映画の冒頭、ロビンソンは所属していたニグロリーグ(黒人中心のリーグ)の長距離バス移動中に、ガソリンスタンドで黒人であることを理由にトイレの使用を断られる。当時の米国の根強い差別意識を象徴するシーン……。
 そんな時代にロビンソンは、白人選手だけだったメジャーリーグに挑む。拒否反応は想像以上だった。「一緒にプレーはできない」というチームメートたちの嘆願書に始まり、遠征先のホテルでの宿泊拒否、相手チームの対戦拒否。そして、バッシングや脅迫状が洪水のように押し寄せる。
 最も驚いたのが対戦チームの監督までが、プレー中に嵐のように口汚く侮辱のヤジを飛ばし続ける…。

 野球をする以前の闘いがあふれ返る日常の中で、ロビンソンはグラウンドでのプレーにだけ集中しようと心を砕く。
 映画はプロ入りしてから3年間のエピソードで集約されているが、彼は1957年1月に引退を表明するまでメジャーリーグに10年間も在籍した。その膨大な時間にも思いをはせながら思う。
 人の真の強さとは何なのか。

 近年、「やられたらやり返す」「目に物見せる」といった考え方が、国家間の争いなどでも強まっているように思う。そんな中、この映画で見た「力には力で」ではない闘争をまぶしく感じた。
 メジャーリーグではロビンソンに敬意を表し、現在も彼がメジャーデビューした4月15日の試合で、全選手がロビンソンの背番号「42」を付けるという。
 全球団共通の永久欠番42が標した偉大な功績を忘れない努力、語り継ぐ努力も、日本人はヒントにしたい。



スポーツゴジラ


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長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
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(07月25日現在)

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