長田渚左の「考え中」

落合博満とクルム伊達公子

このエントリーをはてなブックマークに追加

 クルム伊達公子は、若いころから予期できない人である。

 20年近く前、気が向かないからと、試合後の公式会見に姿を見せないことがあった。集まった50人の報道陣が主催者側に抗議したが、翻意することはなかった。記者の質問に気分を害して、席を立ったシーンも忘れがたい。

 94年1月、日本人で初めて世界ランキングのトップ10入りを果たした。「さあ伊達の時代だ」。世間の期待が高まった。95年11月には世界ランクを4位まで上げた。しかし、トップ3入りも見えていた96年、26歳で突然現役を引退する。早すぎる幕引きに周囲からは「もったいない」という声があふれたが、本人の決意は固かった。

 ところが、テニス界に若い世代が台頭してきた2008年、37歳にして12年ぶりにカムバック。そして、09年の韓国オープンをツアー歴代2番目の年長記録で制し、最長ブランク優勝記録を達成した。

 40歳をすぎてからはさすがに成績が落ちてきた。昨年は両足の内転筋を痛めて、ツアー大会13連敗。もういくらなんでも潮時だろうと思っていたら、今年の全豪オープンで42歳にして3回戦進出という大会史上初の快進撃。地元メディアは「不死鳥、ライジングサン」と報じているという。

 プレーしている彼女の表情には、「テニスが楽しくて仕方がない」と書かれているように見える。
 やはり予期できない人である。

 この貪欲(どんよく)さはどこからくるのか。なぜ、ここまでテニスに集中できるのか。一つだけ分かることはテニスをプレーすることでしか語れないタイプの人種なのだろうという気がする。
 言い方を変えれば孤高を保つ人である。

 「全身小説家」といわれた作家がいたが、同じ属性だろう。だからこそ、取材する側としては、見たいし、聞きたいし、本音を引き出したいと思いウズウズするのだが…。

 実はこの「全身小説家」あるいは「全身テニスプレーヤー」と同じカテゴリーに、元プロ野球選手の落合博満氏も入るような気がしていた。

 現役時代の落合氏は取材で手を焼く、最上位の選手だった。大活躍した翌日に取材に行くと、「なんで取材にくるんだ」という対応をされた。それでもテレビカメラを回すと「あんたはこう聞く、俺はこう答える。いや、こう答えるとあんたは困るから、こう言うか?」。一人二役で延々としゃべり、私の困惑ぶりに大喜びして「じゃあ、またな」とグラウンドへ練習に行ってしまう。
 だからこちらも取材に行くたびに次から次へ、あの手この手を考えていくようになった。

 その落合博満氏が昨年、2012年度の日本スポーツ学会大賞に選ばれた。投票では圧倒的多数で支持された。選手として3度の三冠王、監督として2度のセ・リーグ制覇。そして、ユニホームを脱いだ昨年、独自の鋭い視点でプロ野球評論家として新境地を切り開いたことが日本スポーツ学会に高く評価された。
 日本スポーツ学会は全国に約200人の会員がいる。選手、指導者、研究者、大学関係者、マスコミ関係者など、スポーツに携わるあらゆる分野の人たちがメンバーに名を連ねる、日本最大のスポーツ親睦団体である。

 この日本スポーツ学会が落合氏に大賞を決めたことは心底うれしかったが、私が直接本人に連絡することになったときは、正直心配だった。過去の経験から彼がどんな対応をするのか…。予測がつかなかった。あの名誉ある名球会入りを拒否したことも、頭をよぎった。
 プレッシャーのかかる電話をかけた。

 意外なことにすべてOKだと了承してくれた。ただ細かい説明に伺うと言うと、断られた。
 「俺は一度OKですと言ったことは、それ以上の手続きはいらない。逆にNOと言ったら、その後どんなことがあってもNOなんだ。俺に大賞が決まったのだから、ほかのことはアンタに任せるよ」

 そういう訳で4月8日、東京・新宿区の早大で第4回日本スポーツ学会大賞、落合博満氏の記念講演会が行われます。午後6時開場です。読者の皆さん、是非、表彰式に続く記念講演の視聴者になっていただきたいです。

 参加希望者は日本スポーツ学会ホームページ「http://www.sports-gakkai.jp」までアクセスしてください。



1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
その他スポーツ
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

こんな記事も読みたい

今年もやります!12球団戦力分析2013(千葉ロッテマリーンズ)【夢をみんなで】

日本ハムのローテーション予想、オーダー予想、期待選手など【四国からいろんな競技を応援!!】

期待の選手 part ③【熱烈鷹党ブログ】

想い出の名選手(七、ドラゴンズ編)【ベトナムよりテニス愛を込めて!】

セリーグ開幕スタメン&ローテ予想~中日ドラゴンズ編【Lock-on Giants】

またまた妄想。現役全選手が全盛期に!?【竜HEY会】

郭源治さん離日【目覚めよドラゴンズ】

進退をかける岩瀬仁紀、佐々木主浩の381セーブを超えられるか【燃えろDragons】

ブロガープロフィール

profile-iconnagisaosada

長田渚左(おさだ・なぎさ)
ノンフィクション作家。女性スポーツジャーナリストの草分け的存在であり、現在も旺盛な取材活動を続けている。
NPO法人スポーツネットワークジャパンおよび日本スポーツ学会代表理事。
スポーツ総合誌『スポーツゴジラ』編集長。
  • 昨日のページビュー:23
  • 累計のページビュー:433581

(07月19日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. ソチ五輪の見どころは「人間力の成長」
  2. 羽生結弦選手の衝突再発防止策はアスリートファーストで
  3. 安藤美姫の告白と、女子アスリートの「いつ産むか」
  4. ピアノとスポーツ
  5. 落合博満とクルム伊達公子
  6. 愛すべきシューマッハー、再び限界を超えて!
  7. 高橋大輔選手の15カ月の大勝負――医療ネットワークの奮闘
  8. 体罰問題と落合博満
  9. 体育祭と人間教育
  10. 白鵬の品格

月別アーカイブ

2017
07
05
2016
08
07
05
03
02
2015
11
07
06
05
02
01
2014
12
09
03
02
01
2013
12
11
09
07
06
05
03
02
01
2012
12
08
06
02
01
2011
08
06
05
04
03
02
01
2010
12
11
08
07
06
05
04
03
02
01
2009
12
10
08
06
05
04
03
02
01
2008
12
11
10
01

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年07月19日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss