2009年01月05日

ギブ・ミー・アンドレス

08/09リーガ・エスパニョーラ 第17節 バルサ vs マジョルカ



 GKはバルテス。ディフェンスは右からプジョル、マルケス、ビクトル・サンチェス、アビダル。中盤は底にジャジャ、前にチャビ&グディ。トップは右からフレブ、エトー、アンリ。
 まあバルセロニスタなら誰でもDFビクトル・サンチェスには目を疑っただろう。中盤の選手じゃなかったかしら。積極的にターンオーバーを使っていくペップ新監督だが、時折こういう超冒険をしてくださる。あとはメッシとアウベスがお休み。イニエスタもまだベンチで様子を見。


 今回は鉄人アウベスがお休みで、右サイドに入ったのはプジョル。前半戦のバルサを見て地味に気になっていたのがアウベスのバックアップなだけにこの起用は非常に興味深かった。
 新シーズンが始まってまだ半年も経たないというのに既にアウベスはバルサでは絶対的なポジションを手に入れている。ペップ新監督の下より自由を得たメッシが徐々に中央へとその活躍の場を移しているので、バルサの右サイドは半ばアウベスのものと化している。だからこそ不安になる。もしアウベスが怪我したらどうなるのか。ザンブロッタを放出したためラテラルの層は薄い。ペップはもしものときのことをちゃんと考えているのかなぁ、とちょっぴり不安になっていたのだが、この試合でようやくその回答は得られた。アウベスのバックアッパーはプジョル。
 個人的にこのペップの選択を非常に嬉しく思う。プジョルのラテラル時代を知っているだけに。プジョルはデビューしたての頃は右ラテラルでプレーしていた。しかも守備の良いラテラルとしてでなく、攻撃的なラテラルとして。これでもか!というぐらいに攻め上がり、時にはエリア内にまで入ってくる。自分の脳裏にはまだその頃のプジョルのオーバーヘッドキックが焼き付いている。
 しかしその後セントラルでも起用されるようになり、クラシコでフィーゴを完璧に抑えてみせる等の大活躍を見せたことでプジョル・セントラルが定着し、プジョル・ラテラルは忘れ去られていった。バルサとは縁が深くない多くの人にとってプジョルとはセントラルなのだろう。
 でもペップは違う。ペップは近くでプジョル・ラテラルを見ていた。プジョルのことをより深く理解しているペップ。その上でのプジョルのラテラル起用。ライカールト・バルサや代表でもラテラル起用されることがあったが、その判断は本質的に違っている。ライカールトやアラゴネスはセントラルから裾野を広げるためプジョルをラテラル起用したが、ペップはプジョルを元のポジションに戻しただけ。そしてプジョルの内に秘められた攻撃性を知っているからこそ、より守備が重視される左ラテラルのアビダルの位置ではなく、超攻撃的な右ラテラルのアウベスの位置でも起用できる。
 その証拠に今回のプジョルのポジションはかなり高かった。マジョルカの守備ラインが非常に深かったこともあるが、守備のバランスはある程度他の選手に任せて、かなり高いポジションに位置し、攻撃に絡みたがる。この高いポジショニングはペップの指示とプジョルの自由意志、両方の結果だろう。ペップはプジョルがアウベスのような高い位置でもプレーできると解っているし、プジョル自身も攻撃的な位置でプレーしたいという気持ちがやはり心のどこかにあるはず。クラシコでは良くも悪くも空気の読めないドリブル突破をところどころでお見舞いしてたし、柄沢アナも言っていたドイツW杯でのドリブルからのルーレットなど、実はそういうこともドンドンやっていきたい選手なのだ。
 セントラルも出来て守備的なラテラルも攻撃的なラテラルも出来たなら、そんなパーフェクトなDFはいない。年齢のことなんて微塵も考えずドンドンレベルアップしていってほしいと思う今日この頃。
 ただこの試合ではアウベスとプジョルの決定的な差がもろに出た。早い話、この日のプジョルはクロスがすっごい下手だった。こんなに下手だったっけと思うほど、クロスが良いところに飛ばない、DFに弾かれる。柄沢アナが何度「一山越えない」と言わされるはめになったか。ベッカムみたいな古典的なサイドハーフがここ最近はめっきり減り、クロスは今やラテラルの仕事。ただでさえペップ・バルサではエトー、アンリの他にチャビ、グディ、ケイタとインテリオールがエリア内に入りゴールを狙っていきたいんだから、そこに正確なボール放れないとそれだけでプジョル・ラテラルの可能性が限られることになってしまう。ある程度調整すればそこそこのボール蹴れるぐらいの技術はあると思うからあまり心配はしてないけれど。


 試合はというと今回の対戦相手マジョルカはアウェーよろしく前線にアドリスを残し、後の全員でガンガンに守りを固める作戦。このマジョルカの布陣を見て今日は一筋縄ではいかないと悟る。ペップ・バルサは引いた相手を崩すのは得意じゃないもんね。クラシコでスペイン中のクラブにドン引きされる相手が苦手と知らしめてしまったから、こういうチームが増えてくるとはある程度覚悟していたけれど。おまけに今日は前にDFが何人いようとおかまいなしに突っ走る弾丸男メッシがいないんだからなおさらだ。
 案の定攻めあぐねるバルサにマジョルカがジャジャのパスミスを奪ってカウンター。アドリスとビクトル・サンチェスの駆けっこ勝負になったが、まさかバルサでまさかマジョルカ相手に走っても突き放される絶望を味あわされるとは思ってなかった。ということで赤子の手をひねるかの如くビクトル・サンチェスを軽々と振り切ったアドリスがそのままゴール、地味にバルサ2試合連続で先制点を許す。
 これはビクトル・サンチェスのミスというよりペップのミスというべきだろう。ビクトル・サンチェスがあそこであんなにあっさりやられる選手なら、それはそんな選手を起用した監督に責があるというものだ。積極的なターンオーバーが特徴のペップだが、「それはやりすぎだろ・・・」と思うターンオーバーは大抵失敗する。引き分けに終わったヘタフェ戦もボージャンとフレブのエストレーモ経験の浅い選手を同時起用したことで攻め手を失っていた。まあまだ監督経験自体が短く、こういうミスも考慮に入れていかなければいけないんだろうけど、それにしたってビクトルサンチェスのセントラルはやっぱりやり過ぎだった。なんかバルサに一人高校サッカーの選手が混じっているようなそんな印象を受けた。
 その後先制点を奪って心置きなく全員守備が出来るようになったマジョルカからやはりバルサはゴールが奪えない、速攻を仕掛けられず、遅攻でも上手く崩せない。でもそれでも心配いらないのがペップ・バルサだ。こんなときの合い言葉は「セットプレー」。31分チャビのコーナーキックがフリーになっていたアンリに流れ、アンリはキーパーの脇狭いコースを通してバルサ同点。
 この試合では得意の縦に速い攻撃を封じられたアンリだったが、それでもセットプレーで着実にゴールが取れたりとアンリが本当にノリにノッている。もうここまで来れば復活は本物と断じてもいいんじゃなかろうか。それほどバルサにおけるアンリの存在感が高まっている。開幕当初はイニエスタにポジション奪われ試合に出ることすらままならなかったというのに。イニエスタの左エストレーモのポジションはすっかり奪われてしまったカンジだ。それがバルサのダイレクトなパワーアップに繋がっているので何も言うことはないのだけれど。


 その後もバルサ攻勢は続くが、ゴールは奪えない。そうなるとカンプノウの思いは一つ。ギブ・ミー・アンドレス。もちろんペップはそんなカンプノウの意志を重々承知している。ということで後半22分、怪我で負傷したバーゼル戦から約2ヶ月ぶりにイニエスタ登場。それだけでもうカンプノウはスタンディング・オベーションだ。バルセロニスタは真の功労者とその恩を決して忘れたりはしない。
 そのイニエスタは久々の試合感覚を確かめるかのようにカンプ・ノウを自由に走り回ってはボールに絡む。その姿も何だか楽しそうで、見ているだけでこっちまで幸せになってくる。そんなイニエスタにフットボールの神様から最高のプレゼント。後半30分チャビのシュートに跳ね返ったこぼれ球をグディが拾い、ゴール前フリーになっていたイニエスタにすんばらしいパス、イニエスタはこれを押し込むだけでバルサ勝ち越し。復帰した直後にバルサを救う勝ち越しゴール(しかも十中八九オフサイド)とは出来過ぎな気もするが、この日は1月3日。慌てん坊の3賢人の贈り物ってことでまあいいじゃない。
 その後ロスタイムにジャジャがメッシが乗り移ったんじゃないかと思えるほどの個人技でDF3人を振り切り、追加点を決め勝負あり。クラシコでもプジョル同様時折強引過ぎる突破を見せていたジャジャ。ジャジャ曰くモナコでは攻撃的MFのようなポジションもこなしていて、オフェンスは嫌いじゃないというか、どちらかというと好きな方らしい。今の守備的ボランチに落ち着いたのは当時のバルサ事情のためだとか。そしてペップはそのジャジャの本質を見抜いてか、もうちょっと攻撃的になってもいいと許可してあげて、結果昨季よりアグレッシブなジャジャの登場と相成った。だからジャジャは結構今のバルサでプレーするのが以前より楽しくなっているんだそうだ。メッシのオリンピック問題といいポジション問題といいこのジャジャの件といい、ペップは本当に選手の気持ちをつかむのが上手い。




 そんなこんなでバルサは2試合連続の逆転勝ち。うーん、強い。今のバルサは本当に強い。ビハインドの状況でも必ず逆転してくれるはずと信頼出来るからスゴイ。負けてても不思議と不安な気持ちにならない。これはどこからどう見たって本物だわ。敵さんのチーム達はこのバルサの勝ちっぷりを見てさぞかし絶望したことだろう。さらにそこにイニエスタが加わったんだから本当に質が悪い。積極的なターンオーバーを使うペップにとってこれほどの補強はないはずだ。中盤でもエストレーモでも使える。これで心置きなくアンリもメッシもチャビまでも休ませられるんだから、こりゃちょっと勝ち目がなさそうだわ。
 

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posted by myrowka |07:31 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年01月04日

トップ下ごっつぁんゴーラー

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。


ということで。


プレミアリーグ08/09 第19週 ユナイテッド vs ボロ


 GKはエドさん。ディフェンスは右からラフィ、エヴァ、ビダ、オシェイ。中盤は右からパクチー、フレッチェル、キャリック、クリ坊。トップ下ベルビー、トップにルーニー。
 ここ最近のユナイテッドは4-6-0なり4-2-4-0なりと表されたようなアタッカーがめまぐるしくポジションチェンジを行うフォーメーションじゃなく、ウイングはウイング、トップはトップとポジションをある程度固定したフォーメーションで戦っている。これまでも4-3-3導入などいろいろなチャレンジをしてきた御大だが、最終的にはオーソドックスなフォーフォーツーに収まる。やっぱりユナイテッドにはこれが一番似合っている、ということだろうか。


 今日は久々ベルビーが先発。ウイルスをやっつけて快復したベルビーに何か変化はあるかな?御大にポジション固定されてもっとトップらしくなってないかな?と淡い希望を抱きながら見ていたが、今日も今日とてベルビーはトップ下。柔らかいトラップとしなやかなボールキープ、そして惚れ惚れするようなスルーパスとまごうことなきトップ下ぶりを今回も発揮してくれた。ベルバトフがボールを持つとこうボールの材質がやわらかくてこうふわふわしたものに変わったような、そんな気さえしてくる。それぐらいスペシャルな選手だ。
 周りの選手との連携もここ数試合出場機会が無かったにもかかわらず良くなっていて、ピッチを元気いっぱい走り回るルーニーやクリ坊の要求通りの場所へパスを通せるようになっている。そしてその様は2人のわんぱく王子にいいなりの愚直なしもべ、というカンジでもなく、2人のわんぱく王子を適度にコントロールしながらもその良さを最大限に引き出すやり手の宰相のようなカンジだからこっちも安心できるのだ。御大はベルビーを選んだ理由のひとつに「若いアタッカー陣の中に経験のある選手を入れたい」ということを挙げていたが、その思惑は上手くいっているようだ。


 そんなベルビーがチャンスを作ってくれるのにユナイテッドにゴールは入らない。ゴールを決めるべき選手が決めれないからだ。クラブ・ワールドカップの時に正直疑惑が確信へと変化していたけれど、縁起が悪いので書きたくもなかったのだが、まあハッキリいってクリ坊が以前のしょっぱいクリ坊に逆戻りしている。クリ坊が覚醒したのは2007年の冬頃で、それまでのクリ坊はチャンスがくれば決まって外すというぐらいの選手だった。ゴールを決めると「おー、珍しいこともあるもんだ」と感じた日々はそう遠い昔の話でもない。それがその2007年の冬頃から急に決定機もガンガン決めるようになって、1年足らずで世界最高の選手と評されるようになったわけだ。で、ここ最近のクリ坊はその覚醒以前のクリ坊を彷彿とさせる、とまあ早い話がこういうこと。
 ここ最近ユナイテッドのフォーメーションが昨季の4-4-2風に戻ったことでクリ坊のゴールチャンスも増えているように感じる。4-2-4-0時代は変に自由を与えられすぎたせいか、逆にチャンスメイクを意識しすぎて昨季と比べてゴールチャンスはあまり多くはなかった。だがこうしていざゴールチャンスが増えてみると決めるべきところで決められない姿が際だつ。クリ坊はしっかりと成長していて昨季の活躍は決してフロックではなく、結局の所ここ最近はクリ坊の調子が良くない、という結論に落ち着くのだが。
 うーん、クリ坊が不調でもゴールが決めれるようにということでのベルビー補強だと思ったんだが、蓋を開ければベルビーはトップですらなかったし、結局今シーズンもクリ坊頼みのシーズンになってしまうのだろうか。それでも勝てればまあいいんだけれども。


 そんなこんなでゴールが入らないユナイテッドを救った救世主は自分が最も想像してなかった選手だった。ディミタール・ベルバトフ。絶好のシュートチャンスでもパスを選択するほどゴール欲のないお人だが、さすがにペナルティエリア付近でこぼれてきたボールは自らの力で押し込むようだ。ということで69分、キャリックの入れたクロスをボロDFがクリア、そのこぼれ球を押し込んだベルビーがごっつぁんゴールでユナイテッド待望の先制点。これでベルビーのプレミアでのゴール数は2から3に増えた。ちなみにそのうち1ゴールもWBA戦でのごっつぁんゴールだし、セルティック戦でも1つごっつぁんゴールを決めている。トップ下ベルビーの忘れてはいけない才能の一つだ。ありがたやありがたや。




 結局このゴールを守りきってユナイテッドがクラブワールドカップ含めると3試合連続のイチゼロ勝利。ここでも昨季ユナイテッドをもっともイタリアンなクラブと褒め称えたスパレッティの評価が正しいことが証明された。
 でもまあ御大が勝ち抜けなければ後がないチャンピオンズではともかくリーグのプレミアでこんな展開をよろしく思うはずもなくて、珍しく試合後にゴールチャンスを逃し続けたアタッカー陣に檄を飛ばしていた。その主な矛先はやはりクリ坊であり、また決定機を外したパクチーにもある程度は向けられていただろう。
 うん、やっぱりもっとゴールが欲しい。個人的にはもっとベルビーにフォワードっぽい面を見せていってほしいんだけど。ベルビーも「まだ力を発揮できていない部分がある」と認めているし。自覚があるということに少し驚いたが、その発揮できていない部分を後半戦では思う存分見せつけて、ぜひ「トップ下ごっつぁんゴーラー」から「ラストパスも出せるトップ」への進化をご所望いたします。

posted by myrowka |06:33 | コメント(0) | トラックバック(0)
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