2008年04月30日
UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 2ndレグ ユナイテッド vs バルサ
※この記事は個人の主観によってのみ書かれているのであしからず。
ユナイテッドのフォーメーションはGKエドさん。DFラインはビダが膝蹴りの負傷から回復しきれず、右からハーグリーブス、ブラウン、リオ、エブラの並び。中盤はルーニーがこれまたチェルシー戦で負った負傷のため出られず、クリ坊が代わりにトップに入ったためナニが入り、右からナニ、スコールズ、キャリック、パクチー。トップはクリ坊とテベスだ。
バルサはGKバルテス。DFは右からザンブ、プジョル、ミリート、アビダル。MFはヤヤ、デコ、シャビ。FWはエトー、メッシー、イニエスタ。つまりベスト。
自分はフットボール界には大別して2種類のフットボールがあると思っている。勝利することを第一に考えた現実的なフットボールと、勝利と同時に観衆を楽しませることにも重点を置いた理想的なフットボール。
フットボール界では現実的なフットボールを選択しているチームがほとんどだ。それは当たり前のこと。勝ってなんぼのこの世界。勝利より重視すべきものなぞあるはずがない。勝つことに精一杯。他のことには構ってられないという実情。
だが世の中どこにでもはぐれものはいるもので。ただ勝つなんてつまんないじゃん。どうせなら美しく勝とうと、勝利と同時にスペクタクルを追い求める人たちがたまにいる。バルサであったり、ベンゲルであったり、かつてのクライフであったり。勝利するだけでも恐ろしく大変なこの世界。彼らは信念を貫くため、更なる重荷を自らに課しているのだ。自分はこういう人たちにとても感謝すると同時に尊敬する。
ユナイテッドというチームは自分はこの両方を兼ね備えたクラブだと認識している。王者として、ただ勝つだけのフットボールからはとうに脱却している。ゲームを支配し、そして勝つ。それは第一。しかし時と場合によって相手に攻めさせ裏をつくという、狡猾さも持ちあわせている。理想と現実が上手く同居しているチーム。それがユナイテッドだ。
ユナイテッドとバルサが対戦すると分かった時、自分は理想と理想の対決を期待した。ただでさえ理想的なフットボールを体現するチームが少ない現在、両者が対決する試合なんてそうはお目にかかれない。それがトーナメント戦ならなおのこと。
しかし第1戦ではユナイテッドは現実を選んだ。勝利を確実に掴むため、スペクタクルは二の次に置き、まずは守りきるフットボールを選択したユナイテッド。眼前ではバルサが面白いようにボールをつなげ、面白いように攻撃の芽を摘んでいく。期待は大きく裏切られた。しかしそうは言っても、2ndレグも残っている。まだこれで終わったわけではない。ユナイテッドもやられっぱなしではあるまい。バルサがホームで見せた理想的なフットボールを2ndレグのホームで今度はユナイテッドが顕示してくれるだろう、とそう期待した。
しかしその期待も裏切られた。
序盤は両者様子見でお互いの頬を撫で合う展開。深いところまでは踏み込まず、まずは何かが起きるのを待っていた。そしてその何かは起きた。ザンブロッタがボールを奪うものの、安易なパス。これをスコールズがかっさらう。スコールズフリー。これまで幾度も決めてきたお得意のレンジ。右足を振りぬく。刺さった。刺さってしまった。
面白い試合になるために、どうしても先取点はバルサに入って欲しかった。バルサが入れればユナイテッドは2ゴール決めなければいけない。ユナイテッドに現実を捨てさせるためにはバルサのゴールが絶対必要。しかし先取点はユナイテッドに入ってしまった。完全に相手を崩した素晴らしい攻撃からではなく、チェルシー戦同様相手のミスを上手くついて。
今シーズンのユナイテッドを何度となく見ている今、今後の展開は手に取るように分かる。ただでさえユナイテッドは1点をやれない状況なのだ。ガチッと守ってクリ坊、ナニの高速カウンターで追加点を狙う、チェルシーやリバポーが得意とするあのフットボール。期待からは程遠いあのフットボール。
予感は見事に的中した。ただでさえバルサはエスパニョール戦、1stレグのユナイテッド戦、デポル戦とゴールを決めれていない。それを今季のユナイテッドから奪えだと?無茶な話だ。メッシーが果敢に突破を挑む。その姿勢自身は特筆すべき素晴らしいものだが、いかんせん周りの選手と連動しておらず、それゆえ独りよがりのプレーとして終わってしまう。今後の課題だな。その他にもデコのミドルなどそれらしいチャンスはちらほらするが、しかし完璧にユナイテッドを崩すまでにはいかない。ユナイテッドは完全にどっしりと自陣に構え、1点もやらせない算段だ。バルセロニスタならすぐに察する。これは数え切れないほど見てきている負けパターンだ。ただそれでも「フットボールには何が起こるか分からない」という使い古された真理を信じ続けたのだが、この試合では結局何も起きぬまま。万に一つの可能性をもねじ伏せるユナイテッドの「強さ」の前にバルサは散った。
そう、罪なのはバルサの「弱さ」。それは分かってる。だから悔しい。現実の前に理想が負けた。この試合は理想より現実が強いと、そう示しているのだ。だから悔しい。めちゃくそ悔しい。だが、ここで引いちゃいかんのだ。3年前バルサは今回と同じように徹底的リアリズム・チェルシーの前に敗れた。しかし翌シーズンの対決では1年かけて成長し、そのリアリズムを倒している。やられたらやり返せばいいのだ。時間をかけて。借りは必ず返す。UEFA、来シーズンの組み合わせでもちょこちょこっと頼みますよ。
一方ユナイテッドの決勝進出に関しては複雑な思い。どうせなら理想サイドのユナイテッドで勝ち進んでほしかった。理想的なフットボールは誰にだって出来る代物ではない。選ばれた人にのみ許されるフットボールなのだから、その力を擁しながら発揮しないのをすごくもったいなく思う。でも現場の人達はそんなこと言ってらんないんだろうね。勝たなきゃ意味はない。そんなことは十分理解しているんだけど。今思えばスパレッティは恐ろしく見事にユナイテッドを表現してた。「ユナイテッドは私がみたことのないくらい最もイタリアらしいクラブである」。当時は半分冗談、半分負け惜しみと取っていたが、実はそうではなかった。
決勝はチェルシーかリバポー。現実的フットボールを代表する2チームだ。ユナイテッドも決勝では現実的なフットボールを選んでくるだろう。どちらが来ても点を与えないフットボールの戦いになるはずだ。ちぇっ。
posted by myrowka |15:53 |
マンチェスター・ユナイテッド |
コメント(6) |
トラックバック(0)
2008年04月27日
リーガ・エスパニョーラ07/08 第34節 デポル vs バルサ
バルサのフォーメーションはGKピント。DFラインは右からザンブ、プジョル、テュラム、シウビーニョ。MFはマルケス、トゥーレ、グディ。FWはジョバニ、アンリ、ボージャン。まあ早い話が消化試合。そりゃビジャレアルとの2位争いが残っちゃいるが、ユナイテッド戦を控えた今それはひとまず置いといて。せっかくビデオも録ったので一応視聴。
まあそれにしてもよそよそしいバルサだ。バルサ色のある選手がほとんどいない。バルサのフォーメーションに従って新人さんらが配置されてプレーしている感覚。要するに二軍。まあそれならそれで一軍目指して頑張る二軍を眺める楽しみもある。
アンリはまだ9番やってんのか。どう考えたってアンリは左ウイングなのに。ライカールトも早く気付いてやってほしい。まあ途中から監督の指示なのか、それとも指示無視してなのか、左サイドに寄ってたから、それでいいんだけど。あのチームの中で唯一格が一つ上だと考えられるのがアンリなんだから、ボールがめったに行かない9番の位置じゃなく、よりボールに触る機会の多いサイドでプレーさせるって意味でも有効。
そんな時に9番のポジションに入ってほしいのがボージャンだったのが、この日のボージャンも少し下がり目でチャンスメークしたがるボージャン。9番タイプでより輝くという話なので、そろそろ点取り屋としての姿を見てみたいのだが、どうも最近のボージャンはゴールよりチャンスメークがお気に入りのご様子。イニエスタ顔負けのフライングスルーパスも決めちゃって。ボージャンの幅が広がることは好ましいことなのだけれど、9番の位置に誰もいなけりゃゴールが入るはずもない。ジョバニは相変わらず。バルサの選手としてプレーするにはもう1,2年修行が必要だろう。
バルサよりも興味深かったのがデポルだ。解説の仰るとおり、シーズン序盤は降格争いをしていて「スーペルデポルはどこへやら」と思っていたが、今ではスーペルとは言わぬまでもエウロデポルに手が届きそうな位置にいる。秘訣はやはりあのフットボールだろう。監督はロティーナ。ロティーナと言えば思い出すのがセルタ。ビクトル・フェルナンデスの生み出したスペクタクル・セルタを一転させ、守備的なフットボールで手堅い路線へ変更。フットボールファンをがっかりさせたが、しかし結果はついていき、なんとセルタ初のチャンピオンズリーグ出場を成し遂げちゃった。かと思いきや次のシーズンはセルタをセグンダに降格させる。その後はエスパニョールで国王杯を獲得して復活かと思いきや、06-07シーズンにはソシエダで再び降格を味わうなど、まあ波の激しい監督だ。そしてこのデポルでは凋落デポルを復活させて上昇中。ということはつまり次にロティーナと契約するチームは少し考えてみた方がいいのかもしれない。
記憶が確かならば、ロティーナはセルタでもエスパニョールでも4バックを使っていたはずだが、デポルでは3バック。3-4-3と現代フットボールではかなり珍しいフォーメーション。だが上手く使いこなせているようだ。サイドバックのマヌエル・パブロとフィリペ・ルイスの上がりが攻撃の基点。中央のデ・グズマンやフアン・ロドリゲスとパス交換しつつサイドを徐々に上がっていき、前線の選手と絡んで基本クロス、スキあらば突破、とサイドアタックを中心とした実にシンプルな攻撃。
守備の時はデ・グズマンが良い。中央を縦横無尽に駆け回り、パスを遅らせ、その間にセンターバック3人とサイドバック2人がゴール前にドン!と据われば、そう簡単にゴールを割ることは出来ない。それにしてもデ・グズマンは良かった。あんなに走れてスピード、プレーのリズムが良い選手はそうお目にかかったことがない。1試合しか見てないのであれだが、今のバルサに欠けている動きが出来ている選手だと思う。安ければ狙ってもいいかもしれない。
気になったのでデ・グズマンの経歴。本名ジュリアン・デ・グズマン。27歳。国籍はカナダ。代表では24試合でプレー。父親はフィリピン人。母親がジャマイカ人。弟もフットボーラーで、フェイエノールトでプレーしている。弟さんはカナダ史上最高の選手とまで評価されているらしい。カナダにあるトロントのクラブで育ち、1997年にマルセイユに才能を認められ渡仏。2000年に当時ドイツ2部のザールブリュッケンとプロ契約。2002年にハノーファーへ移籍。2005年にデポルティーボへやってきたということだ。デポルへの移籍金は1500万ユーロ。当時のレート考えても20億は軽く超える。決して安くはないぞ。地味にスペイン1部でプレーした初のカナダ人であるそう。今年の3月レアル戦を前にしたコメントで「レアル戦はラ・コルーニャで最も楽しみにされている試合の一つ。もしそんな試合でゴール決められるなら1年間セックスを我慢してもいい」と言っちゃう選手。あぁ、なんか軽そうだ。今のバルサに来たら色々と問題も多いだろうなとちょっとガッカリ。でもやっぱりタフさはすごく、今季デポルで3番目に長くプレーしている選手だそうだ。1位はマヌエル・パブロ(あの歳で!)、2位はコロッチーニなそうな。
なんかデ・グズマン紹介の記事みたくなってしまったが、そんなデ・グズマンの運動量がロティーナのフットボールを支えていたと思う。あのフットボールが安定したなら、そりゃ中位は堅いだろう。
ただ昔のようなスーペルデポル復活はないだろうな、とも思う。スーペルデポルを支えたものに資金力があったことは否めない。ベベトに始まり、リバウド、ジャウミーニャ、マカーイ、トリスタン、バレロンなどなど華のある選手がいたからこそ、中位から一つ抜け出せてたのだと思う。そういう華はあのチームからは感じられなかったから。まあでも中位を狙い戦っている方が1980年代後半までは1部リーグでプレーすることもままならなかったデポルにとっては厳しい言い方になるかもしれないが身の丈にあっているのかもしれない。
そんなこんなで敗北と引き換えに、選手の休息を勝ち取ったバルサ。この意味のないように思われた90分を意義あるものにするために、なんとかオールド・トラッフォードではユナイテッドに一泡吹かせてやりたいもんだ。1点取れればグっと近づく。堅いディフェンスを崩すには奇襲が有効。久々にヤヤがガツンとかましてみてはどうだろう。
posted by myrowka |16:52 |
FCバルセロナ |
コメント(2) |
トラックバック(0)
2008年04月26日
プレミアリーグ07/08 第33週 チェルシー vs ユナイテッド
ユナイテッドのフォーメーションはGKエドさん。DFラインはエブラを休ませ、右からブラウン、ビダ、リオ、シル。中盤はスコールズ休ませキャリック、フレッチ、アンデルソン。トップはクリ坊とテベス休ませ、右からナニ、ルーニー、ギグスの並び。ふー。そう来ましたか、御大。
やっちゃったなぁ。今日の試合を見て出てくる言葉はこれだけだ。ユナイテッドにこれだけはしてほしくなかった。主力選手を休ませ、受けに回るフットボール。そりゃ中小クラブ相手になら厳しいシーズン考えて、ある程度流してもらって構わない。だが。だが。天王山において、ぶっ潰すべき相手を前に受けるなんて。アウェーとはいえ。違う。それは絶対に違う。
受けのフットボールは弱者のするフットボール。弱者が強者相手に力の差を感じながら、それでも何とか勝利の可能性を増やしたい。そんな時にするのが受けのフットボールだ。そうなんだ。そうなんだよ。だから受けのフットボールをしてしまうと、その時点で自ら相手に劣っていることを認めてしまうことになる。2ndレグが残ってるバルサ相手ならまだいい。しかし90分で勝負が決まるこの試合でやっちゃいけない。
チェルシーやリバポーならこんなやり方しても別に構わないと思ってる。でも。でも。王者として、イングランドに残る僅かな良心として、絶対にユナイテッドにだけはこんなフットボールしてほしくなかった。なんかこのフットボールは見ているだけで敗北感に満ちる。
御大も色々考えてのことだったのは分かる。試合前に過密日程について不満を述べていた。チェルシーの方が休息が多い。しかしビジネス化してしまった今、それは不可避ではあることだと。バルサ、チェルシー、バルサの3連戦。どこかで手を抜けるなら抜いた方がそりゃいい。バルサには勝たなきゃ後がない。チェルシーには負けてもまだ後がある。勝ち点差で並んだ時は得失点差で優劣を決定する。試合前の時点でユナイテッドは54。チェルシーは36。3試合で詰まる差ではない。それならば手を抜くべきはチェルシー戦か、と。その判断は十二分に理解できる。御大は「過密日程のせいでこんな面白そうな試合で手抜かなければいけなくなったんだぞ」というメッセージも込めていたのかもしれない。
そんな時に受けのフットボールは有効だ。それはチェルシーやリバポーがプレミアやチャンピオンズでさんざ示してくれたこと。ユナイテッド自身も引いて守る相手に苦戦することもしばしばだ。なら今度はこちらがそれをやってやればいい、とその気持ちも十二分に理解しよう。
でも。でも。受けのフットボールが意味するものは前述した。胸に満ちる惨めさ、怒り、悔しさ、失望。いくら理屈で説明しても、この気持ちはごまかせない。例え勝てていたとして、例え引き分けていたとして、この気持ちが晴れることはなかっただろう。例えこの後2連勝をし、プレミア優勝を成し遂げたとして、傷ついたプライドが完全に回復することはないだろう。
例え試合後ボロボロになってもいいから、例えそのせいでバルサに負けることになってもいいから、例えそのせいでプレミア優勝を逃すことになってもいいから、ユナイテッドには、御大にはどつきあいをして欲しかった。それでこそ。それでこそ・・・。
posted by myrowka |23:30 |
マンチェスター・ユナイテッド |
コメント(4) |
トラックバック(0)
2008年04月24日
UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 1stレグ バルサ vs ユナイテッド
バルサのフォーメーションはGKにバルテス。DFラインはもうホント悔しいことにプジョルが欠場で代わりにマルケスが入り、右からザンブロッタ、マルケス、ミリート、アビダル。中盤はデコが復帰し、トゥーレを底にシャビ、デコの逆三角形。トリデンテはイニエスタ、エトー、メッシーだ。このプジョルを中盤から上は自分が考える現時点でのバルサ最強布陣。エトーとメッシーは不動。問題はジーニョなき後の左ウイングなのだが、個人的にはイニエスタがベストチョイスだと考える。突破力とその意思が何よりあるし、もちろんパスも出来れば守備も当然献身的。イニエスタをウイングに置いた時の中盤の穴を埋めることさえ出来れば、これほど理想的なウイングは他にゃいない。
ユナイテッドのフォーメーションは4-4-2。GKエドさん。ディフェンスはビダが残念ながら胃の不調から間に合わず、代わりはピケではなくブラウン。空いた右サイドにはなんとハーグリーブスを持ってきた。ということで並びは右からハーグリーブス、リオ、ブラウン、エブラ。中盤は右からクリ坊、キャリック、スコールズ、パクチー。トップはルーニーとテベスという並び。左にパクを持ってきたところにチェルスキー戦のためにナニ、ギグシーを温存させておきたいという御大の意思が見え隠れするが、かといってバルサ相手に思い切り手を抜くことは出来ず、その他はベストの布陣。
もうこの試合はバルサの一言につきる。バルサ!バルサ!バルサ!前半3分から試合終了までずっとずっとバルサタイムだった。今シーズン、というか昨シーズンから割と多くがっかりバルサを見させられてきた。全盛期の輝きは徐々に失せ、クライフにはサイクルの終わりと決め付けられて、実際そう感じざるを得ない試合が続く。もうあの頃のバルサを拝む日は来ないのか、と不安が募る日々。だが、どうだ。この日のバルサは。
始まりは前半2分、ミリートのハンドから与えられたユナイテッドのPKだった。審判がPKを指示した瞬間「つまんねぇ!」と叫んでしまった。まあもちろんフットボールにGK以外手を使ってはいけないというルールがある以上、どう考えたってあの審判が正しいのだが、こんな楽しみな1戦で開始早々から不運による1点献上はバルサファン的にもユナイテッドファン的にも残念。
しかし。クリ坊がボールをスポットに置いた時から、このPKがなんら容易いものではないと気づき始めた。四方八方からクリ坊へ襲い掛かる9万超のブーイング。カンプ・ノウはでかい。イングランドにあるどのクラブのスタジアムよりも一回り大きい広さ高さから降り注ぐプレッシャー。そしてカンプ・ノウ独特の異様な雰囲気。そうだ、ここはただのフットボールスタジアムではない。カタルーニャ人がスポーツ上の敵のみならず、様々な敵と戦ってきた歴史と誇りが詰まっている。その全てをクリ坊一人で相手にしなければいけなかった。ハッキリ言おう。勝てるはずがない。バルセロニスタが一丸となってピンチを切り抜けてみせた。開始早々得たPKでその強さを示したのはユナイテッドではなく、バルサ。もうこの時点でシビレ倒し。そしてここからバルサ・タイムが始まる。
この日見たバルサはあの日見た胸躍らせるバルサ。まるで2年前にタイムスリップしたかのよう。当時中盤をコントロールしたデコが色々な意味で復帰。昔を髣髴とさせる狡猾かつ献身的なプレーでユナイテッドの攻撃の芽を摘みまくった。シャビは相変わらず絶好調。左ウイングにイニエスタが入ることで前線の運動量が増え、周りの良いリズムに乗りエトーも昔のプレッシングを思い出す。帰ってきた。あの攻撃的な守備が帰ってきた。もう上から眺める全体的なポジショニングの形からして綺麗。みながみな己の仕事をしっかり把握出来ている証拠だ。あのユナイテッドがパスをつなげない。個人技での突破もことごとく跳ね返す。2年前のバルサの強さの源はこの守備にあった。故障の原因が解決すれば、かつての調子が戻ってくるのは必然。
ボールを奪えばシャビ、デコが難なく散らす。勝負を仕掛けるはイニエスタとメッシー。この記事で書いているようにこの2人は勝負を仕掛けれる技術とそれ以上にその勇気を持っている。カンプ・ノウの声援に押され、赤い悪魔なぞ微塵も恐れずガンガン勝負。背景には、ボールを奪われても他の皆がすぐ取り返してくれるという信頼がある。だからこんなにも突っかけられる。そしてその信頼どおりボールを奪われてもすぐ奪い返すバルサ。セカンドボールはことごとくバルサの選手の下に転がり、たまにユナイテッドの選手が保持したときもすばやいプレッシャーでボールをかっさらう。グッドリズム!!グーーッドウィドゥム!!バルサが披露する素晴らしい攻撃と守備の数々。もうおりゃ幸せだ。何もいらない。このバルサが見られるんならもう何もいらない至福の時。
だがその幸福に少し水が差された。メッシー交代。そりゃおかしい!絶対おかしい!!この至福の時をもう少し!!!などと考えたが、幸せに浸りすぎて周りが見えなくなっていたか、よく考えればそういやメッシーは怪我から復帰して間もない。こんなハイテンションで90分はプレーさせられなかったということか。時間は60分。もうそんな時間!!!今回のバルサに満足しすぎていたからこれまた気付かなかったが、そういやゴールもまだ入っていない。かといってそれでもこの幸せの大きな源であるメッシーを奪われたことには不服だったが、それはわかままというものなんだろう。交代するメッシーが悔しそうな顔をしている。抱きついて慰めるライカールト。メッシーは頭の良い選手だ。まだプレーし続けたい気持ちと怪我のことを考えるとここで下がるのも已む無しという、気持ちとは相反する事実を自らの内に収め、咀嚼できる力を持っている。ありがとう、メッシー。交代して入るのがしっかりバルサイズム継いでるボージャンというのがせめてもの救いだ。
だがやはりスケール不足は否めなかった。つられてバルサの攻撃も少しトーンダウン。だがそれでも根源である攻撃的な守備が崩れたわけではなかった。その後も試合を支配し続けるバルサ。77分にデコに代わり、アンリが入る。入ってそうそう見事なシュートを放ち「こりゃ今日のアンリは調子がいいかも」と思うが、まだ味方の信頼が薄いのかボールがアンリ自体にあまり渡らない。それでもバルサ・タイムはずっと続き、気がつけば試合が終わってた。もう終わり!?そりゃないぜ!!!
今日の試合は恐ろしいほど満足だった。幸せだった。終始にやけ顔。冷静に考えればホームでノーゴールに終わったわけだが、あのショウを見せられて文句は出ない。あれだけ良いフットボールをしてくれたんだから、ノーゴールに終わった責任をライカールト一人に負わせるのは無粋というものだろう。不運だ。うん、不運だ。そういうことにしておこう。クライフはかつて「つまらない1-0の勝利より、2-3で負けた方がいい」と言ったそうだが、今ではその気持ちが分かる。引き分けに終わった今でも不満はまるでなく、感謝の気持ちでいっぱいだ。まあそれはセカンド・レグがあり、まだ負けたわけじゃないからかもしれないけれど。
自分がライカールトをまだ更迭すべきでないと考える理由はこの試合にある。上手くいけばこんな試合も出来るんだよなぁ、ライカールトは。ライカールトを失うことはこのフットボールを失いかねないってことを意味し、それが自分はものすごく恐ろしい。ライカールトが辞めた先にもっと輝かしい未来がある可能性があることも重々承知してはいるんだけれど。良いフットボールをするためには良い選手が必要だ。これまで良いフットボールを出来なかったのはデコやメッシーという良い選手を怪我で欠き、またジーニョという選手に固執しなければいけなかった環境にあると、自分はそう思いたい。あくまでそう思いたいという個人的希望。だからもう1シーズンライカールトにやらせてやってくれないかなぁ。今度ダメなら本当に諦めるから。
一方ユナイテッドは真剣と書いてマジバルサの前に全くといっていいほどフットボールをさせてもらえなかった。自分より一段階高みからフットボールをしてくるチームを相手にするユナイテッドは初めて見た気がする。ルーニー、クリ坊、テベスは若さからかあっさりとボールを失った。クリ坊に至っては勝負する意思さえ、ユナイテッドの選手として初めて格上の敵を相手にする混乱の中でどこかにおいてきてしまった。キャリックはある程度のゆとりがないと持ち味を発揮できないが、バルサはそんなゆとりを与えてくれなかった。百戦錬磨のスコールズでさえ軽々ボールを失う始末。チェルスキー戦を前にある程度手を抜いたなんて言えば格好はいいが、実際に試合を見ればそんな余裕がなかったことは明白だった。
かといってユナイテッドの全てを殺されたかと言えばそうではない。あの無限に続くかと思われたバルサ・タイム。そのバルサ・タイムを90分間守りきった守備陣の奮闘を忘れてはいけないだろう。プレミアリーグで35試合19失点を誇るユナイテッドの守備力一番の武器は安定力というよりも、どれだけ崩されても最後足一本伸ばしてボールを防ぐ粘り強さ。それは出てた。あれだけ良かったバルサがノーゴールに終わったのにも不運以外にある程度理由がある。
いや、ホントビックリした。世界は広いということを実感した。予想だにしないような強敵が実際にいるんだもん。これこそ国境を超えて強豪クラブが戦いあうチャンピオンズリーグ真の醍醐味。
0-0で終わった第1戦。正直言った話バルサ一歩リードだと感じる。バルサにとってはアウェーゴールを与えなかったことが大きい。ユナイテッドにとってはアウェーゴールを奪えなかったことが大きい。アウェーゴールを活かすチャンスが残っているのはバルサだけ。そういう意味でバルサリード。
9年前に並々ならぬ奇跡を起こした並々ならぬスタジアムで、今度はその住人に並々ならぬフットボールをされ、並々ならぬほどボールを追い掛け回させられ、並々ならぬ屈辱を味わったユナイテッド。だが、このまますんなり引くユナイテッドでもない。次はオールド・トラッフォード。今回はバルセロニスタがその力を顕示した。お次はユナイテッドのターン。ユナイテッドファンは今からメラメラ燃えているに違いない。やられたらやり返す。それが俺達のやり方。次戦は6日後。
追記:テベスを仔ゴリラと表現してきたことについて
正直な話をすると失礼な表現であることは自覚しています。しかし個人的にはテベスは大好き。その失礼な表現を出来るだけ文章内容でカバーしてきたわけでしたが、今回の記事においてはユナイテッドにあまり良いところがなかったため、カバー出来なかったのは不徳の致すところ。ダウンタウンの松っちゃんが浜ちゃんを仔ゴリラと時に呼んだりするように、これも自分なりのテベスに対する愛情表現だったりするわけですが。そうして愛情を表現することのメリットよりもデメリットが多くなってくる可能性があると判断。今限りで封印することにいたしましょう。ある程度読んでくれる人なら分かってくれてたと思うんですが、やはり初見の人にはインパクトが強すぎたか・・・。
posted by myrowka |18:40 |
FCバルセロナ |
コメント(9) |
トラックバック(0)
2008年04月24日
さてさて。
今日は待ちに待ったバルサ対ユナイテッドの日だ。ブログの説明にも書いてある通り、私バルサとユナイテッドが好きである。厳密に言えば1999年頃から海外フットボールにはまった。その翌年には既にこの2チームのファンになっていたと思う。その日からいつか実現しないものかと心の片隅で願い続けた1戦。
意外とどちらにも負けてほしくないという複雑な気持ちはなく、期待感の方が遥かに大きい。どちらのチームもボール支配を重視する。引いて受けるやり方は性に合わない。そんなものは弱者のやることだ。両者とも世界を背負って立つフットボールクラブだという自負がある。その自負が引いて守ることを許さない。その気概に惚れた。混じりっけなし正々堂々と正面からガチンコでぶつかりあう試合が楽しめるはずだ。あぁ、もう考えただけでゾクゾクする。
フォーメーションを想像しただけでワクワクする。初戦はカンプ・ノウ。ユナイテッドは最初は守備力重視でセンターハーフを3人置いた4-3-3で来るだろうか、それとも初っ端からハイテンションの4-4-2で飛ばしてくるか。守備的ハーフは誰が務めるだろう。豊富な運動力のハーグリーブスか、展開力のキャリックか。
個人的には守備的ハーフにキャリックを置いた4-3-3で挑んでほしい。自分は昨季からキャリックのプレーを見ていて、どこかペップの匂いを感じさせる男だと常々感じていた。パス能力はもちろん、ミドルシュート、ドリブル突破、守備力、スタミナなどなど、特にビッグクラブでは万能が求められる現代フットボールにおいて、キャリックは珍しくパス能力に特化したスペシャリスト。無理に上がることはない。出来る限り中盤の底に位置し、パスで攻撃を作りたがる。パスのレンジは自由自在。ショートのグラウンダーパスから、ロングのフライングスルーと何から何までお手の物。またパスのどれもが嫌というほど正確で、フォームもまた優雅なんだ、これが。そんなキャリックがカンプ・ノウで4-3-3のフォーメーションの下、4番の位置でゲームメイク。おつじゃあないの。
ただ戦術的に言えばハーグリーブスの方が効果的だとぶっちゃけ思う。バルサの生命線のシャビとイニエスタ。ここの動きを鈍らせるためにはまず運動量だ。ハードなマークで2人を狂わす。先にも書いたようにパスの専門家キャリックにはこの仕事は少々厳しいものがある。そこでハーグリーブスの出番だ。ハーグリーブスは絵に描いたような万能ハーフ。やはり使い勝手はこちらの方が良い。でもキャリックは捨てがたいというジレンマ。スコールズ、ハーグリーブス、キャリックの逆三角形が個人的に理想だと思うが、御大は果たして。
バルサ対ユナイテッド。世間で注目されているのはやはりメッシーとクリ坊の対決だ。この対決、個人的にはクリ坊の方が一枚上手だと考えている。加入当初から様々な思いでクリ坊を眺めてきた。正直にいって去年の冬までクリ坊には批判的な意見を持っていた。正直嫌いだった。そのスピードとテクニックは既に世界最高ではあったが、それが結果に結びついていなかった。無駄無駄シザースは文字のごとく不発に終わるばかり。放つシュートはことごとく枠をそれ続けた。しょっぱいプレーばかりが目立ち、結果を出せずにいたのが昨季前半までのクリ坊。シュートが枠を逸れるたびに大きなため息を吐いたもんだ。しまいにはクリ坊がシュートを撃っても「どうせ入んないんだろ」と期待さえできなくなっていた始末。それが昨季の中盤戦から変化が見え始めた。珍しくシュートがゴールに入っていく。これが1試合ならまだしも、次の試合もその次の試合も入るんだから、いくらなんでも事情がおかしいと気づきはじめる。気がつけばニステルローイばりにゴールを取っていた。もう既にこの時点でクリ坊に対する不信感は払拭されている。そして今季、そのクリ坊の得点力に磨きがかかった。大事な場面で点を決めてくるのは決まってクリ坊。この決定力はただもんじゃない。決めれる時に決めてくれればそれはもうヒーローで怪物だ。実はしょっぱいプレーは健在で、何も変わっちゃいないのだが、それでもゴールが入るようになり、持ち味はそのまま残しつつ、するべき仕事もキチンと出来るようになったクリ坊。
長々と書いてきたが、このクリ坊が手に入れたただもんじゃない決定力がメッシーには残念ながらない。メッシーにクリ坊のようなしょっぱいプレーはない。プレーはどれも効果的で、全体的なプレーの貢献度で言えばメッシーの方が上なのだが。だがいかんせんメッシーには決定力がもう一つ足りない。決めてほしい!ここで決めてくれ!という場面で決めれないことが多いメッシーはやはり努めて客観的な立場で見れば、クリ坊に一歩及んでいないといわざるを得ないだろう。この前のエスパニョール戦でも決定的なチャンスは複数あった。でも最終的にはゴールに至ることはなかった。ここに差を感じる。
とはいってもあくまでそれは総合的に見た上で総合的に比較をすればの話で、メッシーはクラシコでハットトリック出来るような奴なわけだ。メッシーの凄さを語るにはこの事実一つで事足りる。どちらもどちらで規格外のスーパー選手。何をしでかしても何らおかしくはない。ぶっちゃけた話をすれば、この試合でどちらが上回るか、自分には全く検討もつきませんよ、とそういう情けない話。
こんな俺的世紀の一戦を前に残念な話もちらほら。アンリが発熱で出場が微妙になっているらしい。アンリからすればユナイテッドは勝手知ったる相手なわけで、実際ロスタイムにヘディングゴール決めちゃってくれてたりするのだけれど、かといってユナイテッド的には歴史的に見てアンリにそう大きな仕事をさせた記憶はない。しかもまだあまり馴染めていないバルサでのプレーということで、正直ユナイテッドから見ればあまり重要なニュースではないような気はするが、一方バルサ的にはやはり痛い。アンリが抜けた場合フォーメーションはどうなるか。普通に考えればボージャン、エトー、メッシーだが、個人的にはデコの仕上がり具合だが、イニエスタ、エトー、メッシーで行って欲しい。これがおそらくバルサ最強のトリデンテだから。
一方ユナイテッドもビダが胃を壊したらしく、なんと病院に搬送されたそうで。病状は悪いわけではなく、すぐにでも復帰が可能だそうだが、なんといっても試合前日の出来事。時間的に間に合うかどうか非常に微妙な状況らしい。ビダがプレー出来なくなったら?そりゃピケが出場する公算が大きいだろう。御大だからこんな時こそためらいなくピケを使ってきそう。ピケはユナイテッドがバルサカンテラから(敢えて言おう)強奪した選手。あぁ、神様は残酷だ。同期はメッシー。同じ釜の飯を食べた仲だが、かといってメッシーも昔のメッシーではまるでない。ピケ自体は殊勝に「僕はバルセロニスタ。だが今はユナイテッドのユニフォームを着ている。勝ちたいよ」と語っている。その勝利を自らバルサを下して掴み取れるか。うーむ、おもしろい。
そんなこんなでもうあと数時間で試合が始まる。ユナイテッドが9年ぶりにカンプ・ノウに凱旋するわけだ。奇跡をピッチ上で体験した選手は今やもう2人のみ。スコールズにとっては無念にも立てなかったピッチにようやく立つことになる。当時の相手はバイエルンだった。しかし今回の相手はその住人。周りは敵だらけ。バスビーの誕生日もまだ先だ。どうなるか。もう楽しみで仕方ない。
posted by myrowka |00:55 |
FCバルセロナ |
コメント(3) |
トラックバック(0)