2008年04月30日

複雑>期待

UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 2ndレグ ユナイテッド vs バルサ


※この記事は個人の主観によってのみ書かれているのであしからず。


 ユナイテッドのフォーメーションはGKエドさん。DFラインはビダが膝蹴りの負傷から回復しきれず、右からハーグリーブス、ブラウン、リオ、エブラの並び。中盤はルーニーがこれまたチェルシー戦で負った負傷のため出られず、クリ坊が代わりにトップに入ったためナニが入り、右からナニ、スコールズ、キャリック、パクチー。トップはクリ坊とテベスだ。
 バルサはGKバルテス。DFは右からザンブ、プジョル、ミリート、アビダル。MFはヤヤ、デコ、シャビ。FWはエトー、メッシー、イニエスタ。つまりベスト。


 自分はフットボール界には大別して2種類のフットボールがあると思っている。勝利することを第一に考えた現実的なフットボールと、勝利と同時に観衆を楽しませることにも重点を置いた理想的なフットボール。
 フットボール界では現実的なフットボールを選択しているチームがほとんどだ。それは当たり前のこと。勝ってなんぼのこの世界。勝利より重視すべきものなぞあるはずがない。勝つことに精一杯。他のことには構ってられないという実情。
 だが世の中どこにでもはぐれものはいるもので。ただ勝つなんてつまんないじゃん。どうせなら美しく勝とうと、勝利と同時にスペクタクルを追い求める人たちがたまにいる。バルサであったり、ベンゲルであったり、かつてのクライフであったり。勝利するだけでも恐ろしく大変なこの世界。彼らは信念を貫くため、更なる重荷を自らに課しているのだ。自分はこういう人たちにとても感謝すると同時に尊敬する。
 ユナイテッドというチームは自分はこの両方を兼ね備えたクラブだと認識している。王者として、ただ勝つだけのフットボールからはとうに脱却している。ゲームを支配し、そして勝つ。それは第一。しかし時と場合によって相手に攻めさせ裏をつくという、狡猾さも持ちあわせている。理想と現実が上手く同居しているチーム。それがユナイテッドだ。


 ユナイテッドとバルサが対戦すると分かった時、自分は理想と理想の対決を期待した。ただでさえ理想的なフットボールを体現するチームが少ない現在、両者が対決する試合なんてそうはお目にかかれない。それがトーナメント戦ならなおのこと。
 しかし第1戦ではユナイテッドは現実を選んだ。勝利を確実に掴むため、スペクタクルは二の次に置き、まずは守りきるフットボールを選択したユナイテッド。眼前ではバルサが面白いようにボールをつなげ、面白いように攻撃の芽を摘んでいく。期待は大きく裏切られた。しかしそうは言っても、2ndレグも残っている。まだこれで終わったわけではない。ユナイテッドもやられっぱなしではあるまい。バルサがホームで見せた理想的なフットボールを2ndレグのホームで今度はユナイテッドが顕示してくれるだろう、とそう期待した。
 しかしその期待も裏切られた。


 序盤は両者様子見でお互いの頬を撫で合う展開。深いところまでは踏み込まず、まずは何かが起きるのを待っていた。そしてその何かは起きた。ザンブロッタがボールを奪うものの、安易なパス。これをスコールズがかっさらう。スコールズフリー。これまで幾度も決めてきたお得意のレンジ。右足を振りぬく。刺さった。刺さってしまった。
 面白い試合になるために、どうしても先取点はバルサに入って欲しかった。バルサが入れればユナイテッドは2ゴール決めなければいけない。ユナイテッドに現実を捨てさせるためにはバルサのゴールが絶対必要。しかし先取点はユナイテッドに入ってしまった。完全に相手を崩した素晴らしい攻撃からではなく、チェルシー戦同様相手のミスを上手くついて。
 今シーズンのユナイテッドを何度となく見ている今、今後の展開は手に取るように分かる。ただでさえユナイテッドは1点をやれない状況なのだ。ガチッと守ってクリ坊、ナニの高速カウンターで追加点を狙う、チェルシーやリバポーが得意とするあのフットボール。期待からは程遠いあのフットボール。


 予感は見事に的中した。ただでさえバルサはエスパニョール戦、1stレグのユナイテッド戦、デポル戦とゴールを決めれていない。それを今季のユナイテッドから奪えだと?無茶な話だ。メッシーが果敢に突破を挑む。その姿勢自身は特筆すべき素晴らしいものだが、いかんせん周りの選手と連動しておらず、それゆえ独りよがりのプレーとして終わってしまう。今後の課題だな。その他にもデコのミドルなどそれらしいチャンスはちらほらするが、しかし完璧にユナイテッドを崩すまでにはいかない。ユナイテッドは完全にどっしりと自陣に構え、1点もやらせない算段だ。バルセロニスタならすぐに察する。これは数え切れないほど見てきている負けパターンだ。ただそれでも「フットボールには何が起こるか分からない」という使い古された真理を信じ続けたのだが、この試合では結局何も起きぬまま。万に一つの可能性をもねじ伏せるユナイテッドの「強さ」の前にバルサは散った。

 
 そう、罪なのはバルサの「弱さ」。それは分かってる。だから悔しい。現実の前に理想が負けた。この試合は理想より現実が強いと、そう示しているのだ。だから悔しい。めちゃくそ悔しい。だが、ここで引いちゃいかんのだ。3年前バルサは今回と同じように徹底的リアリズム・チェルシーの前に敗れた。しかし翌シーズンの対決では1年かけて成長し、そのリアリズムを倒している。やられたらやり返せばいいのだ。時間をかけて。借りは必ず返す。UEFA、来シーズンの組み合わせでもちょこちょこっと頼みますよ。


 一方ユナイテッドの決勝進出に関しては複雑な思い。どうせなら理想サイドのユナイテッドで勝ち進んでほしかった。理想的なフットボールは誰にだって出来る代物ではない。選ばれた人にのみ許されるフットボールなのだから、その力を擁しながら発揮しないのをすごくもったいなく思う。でも現場の人達はそんなこと言ってらんないんだろうね。勝たなきゃ意味はない。そんなことは十分理解しているんだけど。今思えばスパレッティは恐ろしく見事にユナイテッドを表現してた。「ユナイテッドは私がみたことのないくらい最もイタリアらしいクラブである」。当時は半分冗談、半分負け惜しみと取っていたが、実はそうではなかった。
 決勝はチェルシーかリバポー。現実的フットボールを代表する2チームだ。ユナイテッドも決勝では現実的なフットボールを選んでくるだろう。どちらが来ても点を与えないフットボールの戦いになるはずだ。ちぇっ。

posted by myrowka |15:53 | Manchester United | コメント(6) | トラックバック(0)
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2008年04月27日

暇つぶし

リーガ・エスパニョーラ07/08 第34節 デポル vs バルサ


 バルサのフォーメーションはGKピント。DFラインは右からザンブ、プジョル、テュラム、シウビーニョ。MFはマルケス、トゥーレ、グディ。FWはジョバニ、アンリ、ボージャン。まあ早い話が消化試合。そりゃビジャレアルとの2位争いが残っちゃいるが、ユナイテッド戦を控えた今それはひとまず置いといて。せっかくビデオも録ったので一応視聴。


 まあそれにしてもよそよそしいバルサだ。バルサ色のある選手がほとんどいない。バルサのフォーメーションに従って新人さんらが配置されてプレーしている感覚。要するに二軍。まあそれならそれで一軍目指して頑張る二軍を眺める楽しみもある。
 アンリはまだ9番やってんのか。どう考えたってアンリは左ウイングなのに。ライカールトも早く気付いてやってほしい。まあ途中から監督の指示なのか、それとも指示無視してなのか、左サイドに寄ってたから、それでいいんだけど。あのチームの中で唯一格が一つ上だと考えられるのがアンリなんだから、ボールがめったに行かない9番の位置じゃなく、よりボールに触る機会の多いサイドでプレーさせるって意味でも有効。
 そんな時に9番のポジションに入ってほしいのがボージャンだったのが、この日のボージャンも少し下がり目でチャンスメークしたがるボージャン。9番タイプでより輝くという話なので、そろそろ点取り屋としての姿を見てみたいのだが、どうも最近のボージャンはゴールよりチャンスメークがお気に入りのご様子。イニエスタ顔負けのフライングスルーパスも決めちゃって。ボージャンの幅が広がることは好ましいことなのだけれど、9番の位置に誰もいなけりゃゴールが入るはずもない。ジョバニは相変わらず。バルサの選手としてプレーするにはもう1,2年修行が必要だろう。


 バルサよりも興味深かったのがデポルだ。解説の仰るとおり、シーズン序盤は降格争いをしていて「スーペルデポルはどこへやら」と思っていたが、今ではスーペルとは言わぬまでもエウロデポルに手が届きそうな位置にいる。秘訣はやはりあのフットボールだろう。監督はロティーナ。ロティーナと言えば思い出すのがセルタ。ビクトル・フェルナンデスの生み出したスペクタクル・セルタを一転させ、守備的なフットボールで手堅い路線へ変更。フットボールファンをがっかりさせたが、しかし結果はついていき、なんとセルタ初のチャンピオンズリーグ出場を成し遂げちゃった。かと思いきや次のシーズンはセルタをセグンダに降格させる。その後はエスパニョールで国王杯を獲得して復活かと思いきや、06-07シーズンにはソシエダで再び降格を味わうなど、まあ波の激しい監督だ。そしてこのデポルでは凋落デポルを復活させて上昇中。ということはつまり次にロティーナと契約するチームは少し考えてみた方がいいのかもしれない。
 記憶が確かならば、ロティーナはセルタでもエスパニョールでも4バックを使っていたはずだが、デポルでは3バック。3-4-3と現代フットボールではかなり珍しいフォーメーション。だが上手く使いこなせているようだ。サイドバックのマヌエル・パブロとフィリペ・ルイスの上がりが攻撃の基点。中央のデ・グズマンやフアン・ロドリゲスとパス交換しつつサイドを徐々に上がっていき、前線の選手と絡んで基本クロス、スキあらば突破、とサイドアタックを中心とした実にシンプルな攻撃。
 守備の時はデ・グズマンが良い。中央を縦横無尽に駆け回り、パスを遅らせ、その間にセンターバック3人とサイドバック2人がゴール前にドン!と据われば、そう簡単にゴールを割ることは出来ない。それにしてもデ・グズマンは良かった。あんなに走れてスピード、プレーのリズムが良い選手はそうお目にかかったことがない。1試合しか見てないのであれだが、今のバルサに欠けている動きが出来ている選手だと思う。安ければ狙ってもいいかもしれない。


 気になったのでデ・グズマンの経歴。本名ジュリアン・デ・グズマン。27歳。国籍はカナダ。代表では24試合でプレー。父親はフィリピン人。母親がジャマイカ人。弟もフットボーラーで、フェイエノールトでプレーしている。弟さんはカナダ史上最高の選手とまで評価されているらしい。カナダにあるトロントのクラブで育ち、1997年にマルセイユに才能を認められ渡仏。2000年に当時ドイツ2部のザールブリュッケンとプロ契約。2002年にハノーファーへ移籍。2005年にデポルティーボへやってきたということだ。デポルへの移籍金は1500万ユーロ。当時のレート考えても20億は軽く超える。決して安くはないぞ。地味にスペイン1部でプレーした初のカナダ人であるそう。今年の3月レアル戦を前にしたコメントで「レアル戦はラ・コルーニャで最も楽しみにされている試合の一つ。もしそんな試合でゴール決められるなら1年間セックスを我慢してもいい」と言っちゃう選手。あぁ、なんか軽そうだ。今のバルサに来たら色々と問題も多いだろうなとちょっとガッカリ。でもやっぱりタフさはすごく、今季デポルで3番目に長くプレーしている選手だそうだ。1位はマヌエル・パブロ(あの歳で!)、2位はコロッチーニなそうな。


 なんかデ・グズマン紹介の記事みたくなってしまったが、そんなデ・グズマンの運動量がロティーナのフットボールを支えていたと思う。あのフットボールが安定したなら、そりゃ中位は堅いだろう。
 ただ昔のようなスーペルデポル復活はないだろうな、とも思う。スーペルデポルを支えたものに資金力があったことは否めない。ベベトに始まり、リバウド、ジャウミーニャ、マカーイ、トリスタン、バレロンなどなど華のある選手がいたからこそ、中位から一つ抜け出せてたのだと思う。そういう華はあのチームからは感じられなかったから。まあでも中位を狙い戦っている方が1980年代後半までは1部リーグでプレーすることもままならなかったデポルにとっては厳しい言い方になるかもしれないが身の丈にあっているのかもしれない。


 そんなこんなで敗北と引き換えに、選手の休息を勝ち取ったバルサ。この意味のないように思われた90分を意義あるものにするために、なんとかオールド・トラッフォードではユナイテッドに一泡吹かせてやりたいもんだ。1点取れればグっと近づく。堅いディフェンスを崩すには奇襲が有効。久々にヤヤがガツンとかましてみてはどうだろう。

posted by myrowka |16:52 | FC Barcelona | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年04月26日

ユナイテッドの境界線

プレミアリーグ07/08 第33週 チェルシー vs ユナイテッド 

 ユナイテッドのフォーメーションはGKエドさん。DFラインはエブラを休ませ、右からブラウン、ビダ、リオ、シル。中盤はスコールズ休ませキャリック、フレッチ、アンデルソン。トップはクリ坊とテベス休ませ、右からナニ、ルーニー、ギグスの並び。ふー。そう来ましたか、御大。


 やっちゃったなぁ。今日の試合を見て出てくる言葉はこれだけだ。ユナイテッドにこれだけはしてほしくなかった。主力選手を休ませ、受けに回るフットボール。そりゃ中小クラブ相手になら厳しいシーズン考えて、ある程度流してもらって構わない。だが。だが。天王山において、ぶっ潰すべき相手を前に受けるなんて。アウェーとはいえ。違う。それは絶対に違う。
 受けのフットボールは弱者のするフットボール。弱者が強者相手に力の差を感じながら、それでも何とか勝利の可能性を増やしたい。そんな時にするのが受けのフットボールだ。そうなんだ。そうなんだよ。だから受けのフットボールをしてしまうと、その時点で自ら相手に劣っていることを認めてしまうことになる。2ndレグが残ってるバルサ相手ならまだいい。しかし90分で勝負が決まるこの試合でやっちゃいけない。
 チェルシーやリバポーならこんなやり方しても別に構わないと思ってる。でも。でも。王者として、イングランドに残る僅かな良心として、絶対にユナイテッドにだけはこんなフットボールしてほしくなかった。なんかこのフットボールは見ているだけで敗北感に満ちる。


 御大も色々考えてのことだったのは分かる。試合前に過密日程について不満を述べていた。チェルシーの方が休息が多い。しかしビジネス化してしまった今、それは不可避ではあることだと。バルサ、チェルシー、バルサの3連戦。どこかで手を抜けるなら抜いた方がそりゃいい。バルサには勝たなきゃ後がない。チェルシーには負けてもまだ後がある。勝ち点差で並んだ時は得失点差で優劣を決定する。試合前の時点でユナイテッドは54。チェルシーは36。3試合で詰まる差ではない。それならば手を抜くべきはチェルシー戦か、と。その判断は十二分に理解できる。御大は「過密日程のせいでこんな面白そうな試合で手抜かなければいけなくなったんだぞ」というメッセージも込めていたのかもしれない。
 そんな時に受けのフットボールは有効だ。それはチェルシーやリバポーがプレミアやチャンピオンズでさんざ示してくれたこと。ユナイテッド自身も引いて守る相手に苦戦することもしばしばだ。なら今度はこちらがそれをやってやればいい、とその気持ちも十二分に理解しよう。
 

 でも。でも。受けのフットボールが意味するものは前述した。胸に満ちる惨めさ、怒り、悔しさ、失望。いくら理屈で説明しても、この気持ちはごまかせない。例え勝てていたとして、例え引き分けていたとして、この気持ちが晴れることはなかっただろう。例えこの後2連勝をし、プレミア優勝を成し遂げたとして、傷ついたプライドが完全に回復することはないだろう。
 例え試合後ボロボロになってもいいから、例えそのせいでバルサに負けることになってもいいから、例えそのせいでプレミア優勝を逃すことになってもいいから、ユナイテッドには、御大にはどつきあいをして欲しかった。それでこそ。それでこそ・・・。

posted by myrowka |23:30 | Manchester United | コメント(4) | トラックバック(0)
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2008年04月24日

バルサタイム

UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 1stレグ バルサ vs ユナイテッド


 バルサのフォーメーションはGKにバルテス。DFラインはもうホント悔しいことにプジョルが欠場で代わりにマルケスが入り、右からザンブロッタ、マルケス、ミリート、アビダル。中盤はデコが復帰し、トゥーレを底にシャビ、デコの逆三角形。トリデンテはイニエスタ、エトー、メッシーだ。このプジョルを中盤から上は自分が考える現時点でのバルサ最強布陣。エトーとメッシーは不動。問題はジーニョなき後の左ウイングなのだが、個人的にはイニエスタがベストチョイスだと考える。突破力とその意思が何よりあるし、もちろんパスも出来れば守備も当然献身的。イニエスタをウイングに置いた時の中盤の穴を埋めることさえ出来れば、これほど理想的なウイングは他にゃいない。
 ユナイテッドのフォーメーションは4-4-2。GKエドさん。ディフェンスはビダが残念ながら胃の不調から間に合わず、代わりはピケではなくブラウン。空いた右サイドにはなんとハーグリーブスを持ってきた。ということで並びは右からハーグリーブス、リオ、ブラウン、エブラ。中盤は右からクリ坊、キャリック、スコールズ、パクチー。トップはルーニーとテベスという並び。左にパクを持ってきたところにチェルスキー戦のためにナニ、ギグシーを温存させておきたいという御大の意思が見え隠れするが、かといってバルサ相手に思い切り手を抜くことは出来ず、その他はベストの布陣。


 もうこの試合はバルサの一言につきる。バルサ!バルサ!バルサ!前半3分から試合終了までずっとずっとバルサタイムだった。今シーズン、というか昨シーズンから割と多くがっかりバルサを見させられてきた。全盛期の輝きは徐々に失せ、クライフにはサイクルの終わりと決め付けられて、実際そう感じざるを得ない試合が続く。もうあの頃のバルサを拝む日は来ないのか、と不安が募る日々。だが、どうだ。この日のバルサは。
 始まりは前半2分、ミリートのハンドから与えられたユナイテッドのPKだった。審判がPKを指示した瞬間「つまんねぇ!」と叫んでしまった。まあもちろんフットボールにGK以外手を使ってはいけないというルールがある以上、どう考えたってあの審判が正しいのだが、こんな楽しみな1戦で開始早々から不運による1点献上はバルサファン的にもユナイテッドファン的にも残念。
 しかし。クリ坊がボールをスポットに置いた時から、このPKがなんら容易いものではないと気づき始めた。四方八方からクリ坊へ襲い掛かる9万超のブーイング。カンプ・ノウはでかい。イングランドにあるどのクラブのスタジアムよりも一回り大きい広さ高さから降り注ぐプレッシャー。そしてカンプ・ノウ独特の異様な雰囲気。そうだ、ここはただのフットボールスタジアムではない。カタルーニャ人がスポーツ上の敵のみならず、様々な敵と戦ってきた歴史と誇りが詰まっている。その全てをクリ坊一人で相手にしなければいけなかった。ハッキリ言おう。勝てるはずがない。バルセロニスタが一丸となってピンチを切り抜けてみせた。開始早々得たPKでその強さを示したのはユナイテッドではなく、バルサ。もうこの時点でシビレ倒し。そしてここからバルサ・タイムが始まる。
 この日見たバルサはあの日見た胸躍らせるバルサ。まるで2年前にタイムスリップしたかのよう。当時中盤をコントロールしたデコが色々な意味で復帰。昔を髣髴とさせる狡猾かつ献身的なプレーでユナイテッドの攻撃の芽を摘みまくった。シャビは相変わらず絶好調。左ウイングにイニエスタが入ることで前線の運動量が増え、周りの良いリズムに乗りエトーも昔のプレッシングを思い出す。帰ってきた。あの攻撃的な守備が帰ってきた。もう上から眺める全体的なポジショニングの形からして綺麗。みながみな己の仕事をしっかり把握出来ている証拠だ。あのユナイテッドがパスをつなげない。個人技での突破もことごとく跳ね返す。2年前のバルサの強さの源はこの守備にあった。故障の原因が解決すれば、かつての調子が戻ってくるのは必然。
 ボールを奪えばシャビ、デコが難なく散らす。勝負を仕掛けるはイニエスタとメッシー。この記事で書いているようにこの2人は勝負を仕掛けれる技術とそれ以上にその勇気を持っている。カンプ・ノウの声援に押され、赤い悪魔なぞ微塵も恐れずガンガン勝負。背景には、ボールを奪われても他の皆がすぐ取り返してくれるという信頼がある。だからこんなにも突っかけられる。そしてその信頼どおりボールを奪われてもすぐ奪い返すバルサ。セカンドボールはことごとくバルサの選手の下に転がり、たまにユナイテッドの選手が保持したときもすばやいプレッシャーでボールをかっさらう。グッドリズム!!グーーッドウィドゥム!!バルサが披露する素晴らしい攻撃と守備の数々。もうおりゃ幸せだ。何もいらない。このバルサが見られるんならもう何もいらない至福の時。
 

 だがその幸福に少し水が差された。メッシー交代。そりゃおかしい!絶対おかしい!!この至福の時をもう少し!!!などと考えたが、幸せに浸りすぎて周りが見えなくなっていたか、よく考えればそういやメッシーは怪我から復帰して間もない。こんなハイテンションで90分はプレーさせられなかったということか。時間は60分。もうそんな時間!!!今回のバルサに満足しすぎていたからこれまた気付かなかったが、そういやゴールもまだ入っていない。かといってそれでもこの幸せの大きな源であるメッシーを奪われたことには不服だったが、それはわかままというものなんだろう。交代するメッシーが悔しそうな顔をしている。抱きついて慰めるライカールト。メッシーは頭の良い選手だ。まだプレーし続けたい気持ちと怪我のことを考えるとここで下がるのも已む無しという、気持ちとは相反する事実を自らの内に収め、咀嚼できる力を持っている。ありがとう、メッシー。交代して入るのがしっかりバルサイズム継いでるボージャンというのがせめてもの救いだ。
 だがやはりスケール不足は否めなかった。つられてバルサの攻撃も少しトーンダウン。だがそれでも根源である攻撃的な守備が崩れたわけではなかった。その後も試合を支配し続けるバルサ。77分にデコに代わり、アンリが入る。入ってそうそう見事なシュートを放ち「こりゃ今日のアンリは調子がいいかも」と思うが、まだ味方の信頼が薄いのかボールがアンリ自体にあまり渡らない。それでもバルサ・タイムはずっと続き、気がつけば試合が終わってた。もう終わり!?そりゃないぜ!!!


 今日の試合は恐ろしいほど満足だった。幸せだった。終始にやけ顔。冷静に考えればホームでノーゴールに終わったわけだが、あのショウを見せられて文句は出ない。あれだけ良いフットボールをしてくれたんだから、ノーゴールに終わった責任をライカールト一人に負わせるのは無粋というものだろう。不運だ。うん、不運だ。そういうことにしておこう。クライフはかつて「つまらない1-0の勝利より、2-3で負けた方がいい」と言ったそうだが、今ではその気持ちが分かる。引き分けに終わった今でも不満はまるでなく、感謝の気持ちでいっぱいだ。まあそれはセカンド・レグがあり、まだ負けたわけじゃないからかもしれないけれど。
 自分がライカールトをまだ更迭すべきでないと考える理由はこの試合にある。上手くいけばこんな試合も出来るんだよなぁ、ライカールトは。ライカールトを失うことはこのフットボールを失いかねないってことを意味し、それが自分はものすごく恐ろしい。ライカールトが辞めた先にもっと輝かしい未来がある可能性があることも重々承知してはいるんだけれど。良いフットボールをするためには良い選手が必要だ。これまで良いフットボールを出来なかったのはデコやメッシーという良い選手を怪我で欠き、またジーニョという選手に固執しなければいけなかった環境にあると、自分はそう思いたい。あくまでそう思いたいという個人的希望。だからもう1シーズンライカールトにやらせてやってくれないかなぁ。今度ダメなら本当に諦めるから。


 

 一方ユナイテッドは真剣と書いてマジバルサの前に全くといっていいほどフットボールをさせてもらえなかった。自分より一段階高みからフットボールをしてくるチームを相手にするユナイテッドは初めて見た気がする。ルーニー、クリ坊、テベスは若さからかあっさりとボールを失った。クリ坊に至っては勝負する意思さえ、ユナイテッドの選手として初めて格上の敵を相手にする混乱の中でどこかにおいてきてしまった。キャリックはある程度のゆとりがないと持ち味を発揮できないが、バルサはそんなゆとりを与えてくれなかった。百戦錬磨のスコールズでさえ軽々ボールを失う始末。チェルスキー戦を前にある程度手を抜いたなんて言えば格好はいいが、実際に試合を見ればそんな余裕がなかったことは明白だった。
 かといってユナイテッドの全てを殺されたかと言えばそうではない。あの無限に続くかと思われたバルサ・タイム。そのバルサ・タイムを90分間守りきった守備陣の奮闘を忘れてはいけないだろう。プレミアリーグで35試合19失点を誇るユナイテッドの守備力一番の武器は安定力というよりも、どれだけ崩されても最後足一本伸ばしてボールを防ぐ粘り強さ。それは出てた。あれだけ良かったバルサがノーゴールに終わったのにも不運以外にある程度理由がある。
 いや、ホントビックリした。世界は広いということを実感した。予想だにしないような強敵が実際にいるんだもん。これこそ国境を超えて強豪クラブが戦いあうチャンピオンズリーグ真の醍醐味。




 0-0で終わった第1戦。正直言った話バルサ一歩リードだと感じる。バルサにとってはアウェーゴールを与えなかったことが大きい。ユナイテッドにとってはアウェーゴールを奪えなかったことが大きい。アウェーゴールを活かすチャンスが残っているのはバルサだけ。そういう意味でバルサリード。
 9年前に並々ならぬ奇跡を起こした並々ならぬスタジアムで、今度はその住人に並々ならぬフットボールをされ、並々ならぬほどボールを追い掛け回させられ、並々ならぬ屈辱を味わったユナイテッド。だが、このまますんなり引くユナイテッドでもない。次はオールド・トラッフォード。今回はバルセロニスタがその力を顕示した。お次はユナイテッドのターン。ユナイテッドファンは今からメラメラ燃えているに違いない。やられたらやり返す。それが俺達のやり方。次戦は6日後。




追記:テベスを仔ゴリラと表現してきたことについて

 正直な話をすると失礼な表現であることは自覚しています。しかし個人的にはテベスは大好き。その失礼な表現を出来るだけ文章内容でカバーしてきたわけでしたが、今回の記事においてはユナイテッドにあまり良いところがなかったため、カバー出来なかったのは不徳の致すところ。ダウンタウンの松っちゃんが浜ちゃんを仔ゴリラと時に呼んだりするように、これも自分なりのテベスに対する愛情表現だったりするわけですが。そうして愛情を表現することのメリットよりもデメリットが多くなってくる可能性があると判断。今限りで封印することにいたしましょう。ある程度読んでくれる人なら分かってくれてたと思うんですが、やはり初見の人にはインパクトが強すぎたか・・・。

posted by myrowka |18:40 | FC Barcelona | コメント(9) | トラックバック(0)
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2008年04月24日

期待>複雑

さてさて。


 今日は待ちに待ったバルサ対ユナイテッドの日だ。ブログの説明にも書いてある通り、私バルサとユナイテッドが好きである。厳密に言えば1999年頃から海外フットボールにはまった。その翌年には既にこの2チームのファンになっていたと思う。その日からいつか実現しないものかと心の片隅で願い続けた1戦。
 意外とどちらにも負けてほしくないという複雑な気持ちはなく、期待感の方が遥かに大きい。どちらのチームもボール支配を重視する。引いて受けるやり方は性に合わない。そんなものは弱者のやることだ。両者とも世界を背負って立つフットボールクラブだという自負がある。その自負が引いて守ることを許さない。その気概に惚れた。混じりっけなし正々堂々と正面からガチンコでぶつかりあう試合が楽しめるはずだ。あぁ、もう考えただけでゾクゾクする。

 
 フォーメーションを想像しただけでワクワクする。初戦はカンプ・ノウ。ユナイテッドは最初は守備力重視でセンターハーフを3人置いた4-3-3で来るだろうか、それとも初っ端からハイテンションの4-4-2で飛ばしてくるか。守備的ハーフは誰が務めるだろう。豊富な運動力のハーグリーブスか、展開力のキャリックか。
 個人的には守備的ハーフにキャリックを置いた4-3-3で挑んでほしい。自分は昨季からキャリックのプレーを見ていて、どこかペップの匂いを感じさせる男だと常々感じていた。パス能力はもちろん、ミドルシュート、ドリブル突破、守備力、スタミナなどなど、特にビッグクラブでは万能が求められる現代フットボールにおいて、キャリックは珍しくパス能力に特化したスペシャリスト。無理に上がることはない。出来る限り中盤の底に位置し、パスで攻撃を作りたがる。パスのレンジは自由自在。ショートのグラウンダーパスから、ロングのフライングスルーと何から何までお手の物。またパスのどれもが嫌というほど正確で、フォームもまた優雅なんだ、これが。そんなキャリックがカンプ・ノウで4-3-3のフォーメーションの下、4番の位置でゲームメイク。おつじゃあないの。
 ただ戦術的に言えばハーグリーブスの方が効果的だとぶっちゃけ思う。バルサの生命線のシャビとイニエスタ。ここの動きを鈍らせるためにはまず運動量だ。ハードなマークで2人を狂わす。先にも書いたようにパスの専門家キャリックにはこの仕事は少々厳しいものがある。そこでハーグリーブスの出番だ。ハーグリーブスは絵に描いたような万能ハーフ。やはり使い勝手はこちらの方が良い。でもキャリックは捨てがたいというジレンマ。スコールズ、ハーグリーブス、キャリックの逆三角形が個人的に理想だと思うが、御大は果たして。


 バルサ対ユナイテッド。世間で注目されているのはやはりメッシーとクリ坊の対決だ。この対決、個人的にはクリ坊の方が一枚上手だと考えている。加入当初から様々な思いでクリ坊を眺めてきた。正直にいって去年の冬までクリ坊には批判的な意見を持っていた。正直嫌いだった。そのスピードとテクニックは既に世界最高ではあったが、それが結果に結びついていなかった。無駄無駄シザースは文字のごとく不発に終わるばかり。放つシュートはことごとく枠をそれ続けた。しょっぱいプレーばかりが目立ち、結果を出せずにいたのが昨季前半までのクリ坊。シュートが枠を逸れるたびに大きなため息を吐いたもんだ。しまいにはクリ坊がシュートを撃っても「どうせ入んないんだろ」と期待さえできなくなっていた始末。それが昨季の中盤戦から変化が見え始めた。珍しくシュートがゴールに入っていく。これが1試合ならまだしも、次の試合もその次の試合も入るんだから、いくらなんでも事情がおかしいと気づきはじめる。気がつけばニステルローイばりにゴールを取っていた。もう既にこの時点でクリ坊に対する不信感は払拭されている。そして今季、そのクリ坊の得点力に磨きがかかった。大事な場面で点を決めてくるのは決まってクリ坊。この決定力はただもんじゃない。決めれる時に決めてくれればそれはもうヒーローで怪物だ。実はしょっぱいプレーは健在で、何も変わっちゃいないのだが、それでもゴールが入るようになり、持ち味はそのまま残しつつ、するべき仕事もキチンと出来るようになったクリ坊。
 長々と書いてきたが、このクリ坊が手に入れたただもんじゃない決定力がメッシーには残念ながらない。メッシーにクリ坊のようなしょっぱいプレーはない。プレーはどれも効果的で、全体的なプレーの貢献度で言えばメッシーの方が上なのだが。だがいかんせんメッシーには決定力がもう一つ足りない。決めてほしい!ここで決めてくれ!という場面で決めれないことが多いメッシーはやはり努めて客観的な立場で見れば、クリ坊に一歩及んでいないといわざるを得ないだろう。この前のエスパニョール戦でも決定的なチャンスは複数あった。でも最終的にはゴールに至ることはなかった。ここに差を感じる。
 とはいってもあくまでそれは総合的に見た上で総合的に比較をすればの話で、メッシーはクラシコでハットトリック出来るような奴なわけだ。メッシーの凄さを語るにはこの事実一つで事足りる。どちらもどちらで規格外のスーパー選手。何をしでかしても何らおかしくはない。ぶっちゃけた話をすれば、この試合でどちらが上回るか、自分には全く検討もつきませんよ、とそういう情けない話。


 こんな俺的世紀の一戦を前に残念な話もちらほら。アンリが発熱で出場が微妙になっているらしい。アンリからすればユナイテッドは勝手知ったる相手なわけで、実際ロスタイムにヘディングゴール決めちゃってくれてたりするのだけれど、かといってユナイテッド的には歴史的に見てアンリにそう大きな仕事をさせた記憶はない。しかもまだあまり馴染めていないバルサでのプレーということで、正直ユナイテッドから見ればあまり重要なニュースではないような気はするが、一方バルサ的にはやはり痛い。アンリが抜けた場合フォーメーションはどうなるか。普通に考えればボージャン、エトー、メッシーだが、個人的にはデコの仕上がり具合だが、イニエスタ、エトー、メッシーで行って欲しい。これがおそらくバルサ最強のトリデンテだから。
 一方ユナイテッドもビダが胃を壊したらしく、なんと病院に搬送されたそうで。病状は悪いわけではなく、すぐにでも復帰が可能だそうだが、なんといっても試合前日の出来事。時間的に間に合うかどうか非常に微妙な状況らしい。ビダがプレー出来なくなったら?そりゃピケが出場する公算が大きいだろう。御大だからこんな時こそためらいなくピケを使ってきそう。ピケはユナイテッドがバルサカンテラから(敢えて言おう)強奪した選手。あぁ、神様は残酷だ。同期はメッシー。同じ釜の飯を食べた仲だが、かといってメッシーも昔のメッシーではまるでない。ピケ自体は殊勝に「僕はバルセロニスタ。だが今はユナイテッドのユニフォームを着ている。勝ちたいよ」と語っている。その勝利を自らバルサを下して掴み取れるか。うーむ、おもしろい。


 そんなこんなでもうあと数時間で試合が始まる。ユナイテッドが9年ぶりにカンプ・ノウに凱旋するわけだ。奇跡をピッチ上で体験した選手は今やもう2人のみ。スコールズにとっては無念にも立てなかったピッチにようやく立つことになる。当時の相手はバイエルンだった。しかし今回の相手はその住人。周りは敵だらけ。バスビーの誕生日もまだ先だ。どうなるか。もう楽しみで仕方ない。

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2008年04月21日

myrowka的バルサイズム

 リーガ・エスパニョーラ07/08 第33節 バルサ vs エスパニョール


 バルサのフォーメーションはGKバルテス。DFはアビダルが何やら心を病んでるらしく休憩で、右からザンブロッタ、ミリート、プジョル、シウビーニョ。中盤はイニエスタを休ませ、トゥーレ、シャビ、グディのウェルバ戦と同じ逆三角。トップはメッシー、アンリを休ませエトーを先頭にボージャン、ジョバニのトリデンテと、週末ローヴァーズ戦をベストの布陣で臨んだユナイテッドとは対照的に、バルサは明らかにミッドウィークのユナイテッド戦に焦点を絞った。まだ可能性が消えたわけではないリーガや倒すべき相手エスパニョールとのダービーよりもチャンピオンズのタイトルを選ぶところに時代の流れを感じるが、まあそれもいいだろう。


 先週のウェルバ戦もそうだったが、グディが予想外の働きをしてくれて驚く。もちろんイニエスタのような突破やゲームメイクは望むべくもないが、パス回し中に急にアクセルを入れて少ないタッチパスで中央突破を果敢に狙ったりする攻撃が新鮮でいい。フォワードでの経験を活かしたプレーはイニエスタ、シャビ、デコといった良くも悪くもパサータイプ(厳密に言えばイニエスタは違うが)しかいないバルサが重用すべきオプションだろう。言い方を変えればライカールトがワンパターンなMFしか起用してこなかったってことになるわけだが。まあこうやって幅を広げた選手起用は今後ライカールトに望まれることだろう。万が一ライカールトがチームに残ればの話だけれど。
 だがしかし、グディが予想外の活躍をしたとしても、イニエスタがいないバルサは全然違う。パスが遅い。オフ・ザ・ボールの動きも少ない。パス回しからアタッキングへの切返しポイントもハッキリしない。だからスピード感がない。早い話バルサじゃない。
 自分はバルサはメッシーとイニエスタだと思っている。バルサが持つべきバルサイズムをこの2人は持っている。2人がいればバルサはバルサ足りうる。どちらかがいればバルサはバルサとしての体裁を何とか整えることは可能なのだが、やっぱり2人抜けるとダメだ。どうしてもバルサを見ているという感じがしない。それならそうとこのバルサは俺の知ってるバルサとは違う別のバルサだと踏ん切りつければ、まあこういう形もあるのだろう、とある意味納得して観戦出来る。案外2人がいなくてもボールはつながって一応なりともバルサっぽいフットボールが出来たりするもんだ。


 そんな明らかに良い意味ではないニュー・バルサの中にも光明はある。ボージャン。ボージャンはイニエスタ、メッシーの後を着実に追えている。ボージャンのプレーは見てて楽しい。何で見てて楽しいのか。答えは簡単。勝負をしてくれるからだ。
 「バルサとは何か?」と聞かれれば、自分は「ウイングだ」と答える。自分が知った頃のバルサはちょうどクライファート、リバウド、フィーゴのトリデンテ。フィーゴが右から、リバウドが左からサイドを切り裂きまくってた。そんなバルサに恋をした。だからバルサはウイングなのだ。
 なぜああもウイングに惹かれたのか。クライフを知って理解できた気がする。何の本で読んだか覚えていないが、クライフはウイングにフットボールが1番上手い選手を置いたらしい。ウイングがサイドで勝負を仕掛け、その勝負に勝ってようやくチャンスは生まれる。だからウイングは1番上手い奴じゃなければいけない、と。
 だからウイングは勝負を挑まなければいけない。その勝負に勝たなければいけない。華麗なるパス回しはそのためのお膳立てでしかない。バルサイズムとはそういうものだと自分は理解している。だからメッシーは挑む。イニエスタは挑む。ボージャンも挑む。分かっているからだ。ここで抜かなきゃ始まらないと。幸いボージャンには既にそのための技術は備わっているようだ(そもそも技術がないと挑むための自信は生まれないけれど)。だからボージャンのプレーは見てて楽しい、というか誇らしい。そして安堵する。この3人がいればバルサは安泰だ。ボージャンがいれば無理してロナウジーニョの抜けた穴を補強で埋める必要はないのかもしれない。
 

 そんなボージャンとは対照的に目を覆いたくなるのがジョバニだ。ジョバニには前述の3人のような挑む気概を持ってない。それだけならまだしも、自分のビジョンも持っていないように思える。ウイングなのか、フォワードなのか、それすらハッキリしない。何をしていいか分からない。だから何も出来ない。エトーがブチ切れている。何で俺がガキの世話をせにゃならんのだ。信用がない。だからパスも来ない。そもそも下向きながらプレーしてんじゃねえよ。そこはプロとして顔の上げ方ぐらい覚えとけ。ひどい。これは重症だ。
 だが一番不安なのはこのジョバニを復活させるためのアイデア、支えれるだけの余裕が今のバルサにあるのかということ。ジョバニはまだ若い。こういう状況だからこそクラブが率先して道を指し示してやらなければいけないのだが、会長は白いハンカチをしまわせるのに必死、監督は自分の座を守るために必死。一体誰がジョバニを守ってやれるのだろう。ジョバニを狙ってくる悪いやつらも当然いる。悲しい別れ方だけは何とか避けなければいけない。クラブとして。人として。
 何も出来ないジョバニ、ジョバニの子守りにキレてプレーが雑なエトー。イニエスタもメッシーもいない。ボージャン、シャビ、グディの健闘だけでは限界があった。スコアレスドローのまま前半終了。味気ないカタルーニャ・ダービー。このままでは試合後どえらいことになる。ライカールトはそんなことも分からないほどのバカではなかった。


 後半開始からジョバニに代えてメッシー、グディに代えてイニエスタが入る。バルサイズムが注入されたバルサは本来の姿を見る見るうちに取り戻す。メッシーが開始直後に見せたシャビとの連携でエリア内に切り込んだプレー。あれが全てだ。DFが何人いようと関係ない。ウイングが勝負を挑み、そして勝つ。それでこそバルサだ。イニエスタの投入でボールの流れもスムーズかつスピーディーに。子守りから解放されたエトーも徐々に本来の姿を取り戻す。
 メッシーは本当に凄かった。復帰後数分しかプレーしてないはず。これだから天才は恐ろしい。メッシーは決して引かない。ボールをもらっても絶対に後ろを向かない。そのままパスは考えない。ボールをもらえば勝負を挑む。バルサのウイングであるという矜持がメッシーを戦わせているのだ。退かぬ。媚びぬ。省みぬ。メッシーのプレーはどこか聖帝を髣髴させるものがある。
 イニエスタも負けてはいない。イニエスタはそのポジションからパサーとしての役割に注目されがち。現にイニエスタが入ってからはボールの流れが明らかに変わった。だがしかし、イニエスタが特別な理由はウイングにもなれるとこ。イニエスタはパサーでありながら、機を見てはウイングのように勝負を仕掛け、そして勝てる。前座であるパス回しに参加しながら、本番であるアタッキングにも参加できたら、それ以上のことはない。まさにミスター・パーフェクト。




 この2人の活躍はあのボージャンの輝きまでも霞ませてしまうほど。やっぱり本物は一味違った。結局ゴールは奪えず、スコアレスドローという形でダービーは終えたが、不思議と悲壮感は薄かったりする。メッシーとイニエスタのおかげであのキラキラしたバルサの片鱗が垣間見れた。この2人がいればユナイテッド相手にも恥ずかしくないプレーが出来るという期待。メッシーが帰ってきてくれてホント良かった。
 リーガはまあほとんどなくなったと言っていいんだろう。っつっても自分はまだ希望を捨てたわけじゃない。そりゃ上にいるのがユナイテッドだったら諦めもつくが、お白さんだってんだからもったいない気がして。今季健闘しているラシン相手に、天敵バスク魂相手に2連敗しないなんて誰が断言できよう。対するバルサはメッシーが戻ってきた。うん、まだ希望を捨てるのはまだ早い。

posted by myrowka |01:54 | FC Barcelona | コメント(4) | トラックバック(0)
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2008年04月20日

矛盾

 プレミアリーグ07/08 第32週 ローヴァーズ vs ユナイテッド。


 ユナイテッドのフォーメーションはGKがクシュチャク。DFはビダがめでたく復帰して、右からブラウン、ビダ、リオ、エブラの黄金ライン。MFは右からクリ坊、キャリック、スコールズ、ギグス、FWはルーニーと仔ゴリラの2トップとエドさんを除いては鉄板の並び。ミッドウィークにバルサ戦があるにも関わらず本気モード。そりゃそうだ。プレミアが一番大事。
 それはそうと今週は赤いシャツに黒パンツと自分が一番好きな組み合わせのユニフォーム。レッドデビルズという異名からだろうか、白よりも黒のパンツの方がユナイテッドの持つ畏怖がよく引き立って見えて好きだ。


'フリーデルッ!フリーデルッッ!!フリーデルーーーッッッ!!!


 この試合はこの一言に尽きるだろう。ルーニー、クリ坊、仔ゴリラ、スコールズ、ギグス、リオ諸々スーパースターがひしめく試合で、最も輝きを放ち、彼らを押しのけ主役の座を奪ったのは今年5月37歳になるというアメリカ人ゴールキーパーだった。
 この試合、ユナイテッドに不備はなかった。アーセナル戦のような緊張もなくいつも通りのプレー。ディフェンス陣がよく守り、スコールズとキャリックのパスで試合を組み立てながら、トップ4の個人技&連携プレーで相手ゴールをこじ開ける。ローヴァーズもプレミア8位とヨーロッパを目指すでなく、残留を目指すでなく、モチベーションがないのでボロのようなエネルギーに欠けている。勝てる。これなら勝てる。
 ただふと心をよぎるペデルセンとフリーデル。ユナイテッドキラーとも言うべきこの2人に良い思い出は微塵もない。だがそんな嫌なジンクスも今のユナイテッドの勢いなら吹き飛ばしてくれるだろう。そう信じる他なかった。


 だが時間が経つにつれ、その嫌な思い出が徐々に徐々にせりあがってくる。攻めども攻めどもゴールが入らない。そんな時に限ってDFの不運なミスからゴールを奪われるからフットボールは嫌いだ。なぜか木曜日に試合を終わらせ、勝利しているチェルスキー。負けは絶対に許されないユナイテッドがまさかのビハインド。
 それまでは余裕をもってボールを散らしていたユナイテッドだが、王者も人間。当然焦りはある。知ってか知らずかペースがドンドン上がっていく。スピードが上がればミスも自然と多くなるのだが、前述したようにローヴァーズ自体に勢いがないのであまり怖がる必要はなかった。「心配ないさ、すぐに追いつける」と気を取り直してベタに引いてくる相手に文字通り攻撃を畳み掛けるユナイテッド。だが、それでもゴールは入らない。コーナーキックからフリーで撃ったクリ坊のヘディングもフリーデルに阻まれた。思えばユナイテッドの悪夢はこの時から始まったのかもしれない。1-0のままで前半は終わった。


 嫌な予感を御大も察していたのだろう。後半開始直後からギグシーを下げ、より若く運動量に長けるナニを入れる。うーん、ここまできたらギグシーは久々の長期スランプと断じてもいいのかもしれない。味方の限界を求める厳しいパスと言えば聞こえはいいが、少し視点を変えて眺めれば雑なプレーとなる。余裕がある試合ではそれでもいいが、今は優勝争いの真っ只中。御大は許しちゃくれなかった。実際ナニが入ったことで左サイドが活性化する。ナニが突破してクロスと、やるべきことがハッキリして良い。あそこで勝負を仕掛けて勝てるとゴールの匂いもより濃くなる。その闘志と技術を持ったナニ。ユナイテッドの新しい波はドンドン勢いを増していく。
 だがナニ投入もフリーデルにとってはささいな出来事だったのかも知れない。誰が来ようと止めればいいのだ。時間と共にユナイテッドの悪夢はより現実味を増していく。63分、クリ坊が左足振り切って放ったシュートはポストに嫌われ、64分、センタリングからゴールへこぼれたボールはフリーデルが超反応でセービング。78分、相手DFがクリアし損ねたボールを上手く処理した仔ゴリラのシュートはフリーデルが左腕一本、82分、キャリックのヘディングはエマートンが左腕1本。84分、ナニのナイススルーから抜け出したルーニーが放ったシュートはフリーデルが今度は右腕、86分、スコールズのナイスパスをダイレクトで撃ったオシェイのシュートは再びフリーデルの右腕に阻まれた。
 どんなシュートもフリーデルの腕が反応して止めてしまう。まるで腕が意思を持っているかのように。もしかしたら。もしかしたらフリーデルの両腕はフリーデルとは別の生き物かも知れない。フリーデルは幼少の頃両腕を失って、で、宇宙人が力を貸してやろうとかなんとか言ってくっついたとか。そんな寄生獣的バカげた発想も今回のフリーデルの超反応を見たらあながち間違ってもないかも知れないと思えてくる不思議。生物学者の方は一度フリーデルの腕を調べてみてはどうだろう。
 そんなある意味新種の生物とでも言うべき敵を相手にどうすればいいと言うのか。ユナイテッドの選手は100%のプレーをしている。ピッチサイドでパクチーがアップをしているが、残念ながら入る場所はない。代えるべき場所がない。それぐらいユナイテッドは上出来だった。だから御大も打つ手がない。でもゴールは入らない。全てはあのフリーデルがっ!あのフリーデルがっっっ!!!
 

 しかし。そんな宇宙人を破る方法もユナイテッドの手の内にはあったのだから驚きだ。もうここまで来たら理屈ではなく感覚。考えるんじゃない、感じるんだって誰かが言ってた。頼りになるのは野生の血。本能的にゴールを嗅ぎつける嗅覚を持った仔ゴリラがフリーデルの一瞬の隙をつく。あれほどシュートに反応しつづけたフリーデルの両腕も仔ゴリラの野生の力の前には反応できず。まさか人間の中に仔ゴリラが混ざっているとは思いもしなかったのだろう。ユナイテッドが貴重な貴重な同点弾。これを最後まで守り抜いて試合終了。




 この試合を見ている途中、故事の矛盾が頭に浮かんだ。ことごとくユナイテッドのシュートを止めるフリーデルはまさにどんな矛をも防ぐ盾。その盾を前にクリ坊、ルーニー、仔ゴリラを擁する超破壊力のユナイテッドはどんな盾をも貫く矛になりえるか。それを試す90分。結果は御存知の通り。何度も何度もつついていりゃあ、いつしか盾にもヒビがいく。今のユナイテッドに貫けないものはない。次に貫くべきはチェルスキー、そしてその奥にある無敗記録だ。

posted by myrowka |21:46 | Manchester United | コメント(1) | トラックバック(0)
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2008年04月15日

たまにはついてたっていいじゃない

 遅ればせながらUEFAチャンピオンズリーグ07/08チャンピオンズリーグ バルサ vs シャルケ


 バルサのスタメンはGKバルテス、DFは右からザンブロッタ、テュラム、プジョル、アビダル。中盤はいつものトゥーレ、イニエスタ、シャビの逆三角形。FWも最近はおなじみボージャン、アンリ、エトーの3トップだ。


 リーガの望みが徐々に失せ、こうなりゃ何が何でも欧州王者の座を奪還したいバルサ。のはずが。そんな気概は今回のバルサからはこれっぽっちも見られない。メラメラと燃えていたのはアウェーゴールを奪われ不利なはずのシャルケの方だった。十分バルサを研究してきたのだろう。自信に満ち溢れている。「このバルサになら俺たちでも勝てる!」という自信に。白状しよう。そうさ、勝てるさ。ちょっと本気を出して、あとほんの少しの運に恵まれたなら、今のバルサには難なく勝てる。んなこたここ数試合のバルサ見てりゃ明白で。だからシャルケは本気を出した。大事なのは最初の1点。先制点を狙って開始直後からアクセルを全開にいれてきた。


 対するバルサといえば、その相手の意気に押されて腰が引き気味。なんてことないパスもミスするし、周りを見る余裕もないので、ガンガン敵をフリーにするし、味方との連携も最悪だ。なんと情けない。カンプ・ノウ中に不安が漂う。こりゃダメかもな。
 だがここで運がバルサに味方した。シャルケが放つシュートはことごとく枠をそれるか、バルテスに阻まれる。チャンスはバルサの倍作る。しかしゴールは決まらない。フットボールにはままあること。10のシュートを撃ったとしても、ネットゆらさにゃ意味はない。そういう流れを読めないバルサの選手たちでもなかった。シャルケの意気を何とかいなし、チームが不調でも仕事が出来るイニエスタを中心に虎視眈々とカウンターパンチを狙ってる。
 内容と結果は比例しない。この試合もそれを示すいい例だ。あれだけシャルケが押していても、ゴールが入るのはバルサなんだから。相手のパスミスを拾ってトゥーレがカウンターを開始。自ら持ってあがって右にワイドに開いたボージャンにパス。そのボージャンがすんばらしいクロスを入れるもDFにはじかれる。しかしこぼれ球につめてたトゥーレが押し込んでバルサに入った先制点。
 あー、怖かった。やー、怖かった。こんなとこで負けてたまっかよ。シャルケなんかに負けてたまっかよ。お次の相手はユナイテッド。バルサ対ユナイテッド。世界中(主に俺)が夢見た一戦。そんな夢を乗せたトゥーレのゴール。この試合に限れば内容なんてどうでもよかった。内容とゴールは別物である。白状しよう。カウンターフットボールの方がゴールが決めやすい。そんなゴールの決め方を普段のバルサにゃ全く期待してないが、色んなことに目をつぶってでも、ただただゴールが欲しい時もある。大事な大事な先制点を奪ったバルサがかなり優位に立った。


 このゴールの影響力は予想以上に強烈で、このゴールを境にあれだけ自信に満ち溢れていたシャルケの選手たちは見る影もなくなった。「バルサを倒すなんてやっぱり俺たちには無理だったんだって」「所詮俺たちはベスト8どまりさ」と強豪のイメージに気圧される典型的な中小チームに成り下がる。これほどまでに自信をなくす(しかも前半も終わらぬうちに)チームは初めて見た気がする。おそらくシャルケ監督スロムカは暗示をかけていたんではなかろうか。「先制点を決めた方が勝つ」。そう思い込んだが故のあの勢い。だからこそ暗示が解けた時の落差も激しかったというわけだ。
 後半も同じだった。前半であれだけ動いた上に、暗示も解かれたシャルケはもう動けない。何も動きを見せないスロムカに実況解説は疑問を抱いていたが、おそらくスロムカは一度折れた選手の心を戻す術は手元にないことをよく分かっていたのだ。運動量はメンタルに因るところが大きい。メンタル面での回復を図らなければ、あの勢いは取り戻せない。でもそれはもう無理。選手交代の数もたかが知れている。シャルケの選手の心を砕くトゥーレのゴールが決まった時から、出来ることはなくなった。だから何もしなかったのだ。そのままシャルケの選手はたたずんだまま試合終了。




 2年ぶりにベスト4進出を決めたバルサだが、まあ上でも述べているように全く楽観視は出来ない内容。ついていただけだ。バルサはただついていただけだ。前半は本当目をつぶりたかった。運動量がない。意思の疎通もなってない。そもそもチームとしてフットボールをしていない。ただボールを追っかけまわしてるだけ。どうしてまあこんなにバルサはひどくなってしまったのか。シャルケの健闘もあるが、だからといってあそこまで押されていいはずがない。2年前はあの勢いさえ押し返して寄り切り倒す勢いがあったのに。
 リーダーの不在かなぁとも思う。あれだけの選手を一つに纏め上げれる所謂ピッチ上の監督がいない。プジョルはそういうタイプじゃないんだよなぁ。シャビも然り。カタルーニャ人にはカピタンは無理なのかも。イニエスタも攻撃の核だが、人を引っ張っていけるタイプでもないし。以前はデコがその役割を担ってくれていたわけだが。トゥーレなのかなぁ。いい働きをしてくれているので心苦しくはあるのだが、しかし消去法で考えるとそういうことになってしまう。バルサメディアはシルバを御所望のようだが。確かにいい選手だが、そこじゃないだろ。攻撃じゃない。まず守備だ。
 ただ希望もないわけじゃない。メッシーがユナイテッド戦までに戻ってきてくれそうだ。これまでイニエスタが一人で背負っていたバルサの重みも、これでメッシーと分け合える。今のバルサの一番の問題は守備。メッシーの復帰でその守備が改善するわけではないわけだが、バルサを支える二大歯車の一つが帰ってきたことで、チームとしての機能も取り戻してくれればと理屈もへったくりもない一方的な希望的観測を抱いたりする。


 この試合では実況解説にも実に腹が立った。Jスポーツ時代はこの2人のコンビは好きだったんだが、今はひどい。ひどすぎる。実況解説をするつもりはない。ただ自分の思ったこと考えたことを垂れ流しているだけだ。バルサがおかしいのは分かった。シャルケが良いのも分かった。が。しつこい。一つ一つのプレーを取って一つ一つバルサがおかしいおかしいといい続ける。一つ一つのプレーを取って一つ一つシャルケのプレーがいいといい続ける。だがそれは逐一言い続けなければいけないことなのか。テレビの前にはバルセロニスタが大勢いる。バルセロニスタは今のバルサがダメなことも重々承知している。しかし一つ一つのプレーを取ってしつこくおかしいと言われ続ける筋合いはない。言ってもらう必要もない。分かりきっているバルサの批判は聞けば聞くほど腹が立つだけだ。その辺の配慮が彼らにはない。
 なぜないのか。マンネリ化しているのだ。数年前から彼らがあの席に座ることが当たり前になっている。ゆえに彼らは勘違いしてしまう。あの席は自分たちの特等席だと。自分たちだけの観客席だと。だから聞いている人がいることを忘れてしまう。そこが実況解説席だということを忘れてしまう。
 極めつけはライカールトがボージャンを下げた際の「寿司屋に寿司がなくなった」発言。これにはさすがの俺もプッツンきた。イニエスタが寿司じゃないだと?シャビが寿司じゃないだと?エトーが寿司じゃないだと?ジョバニが寿司じゃないだと?ふざけんじゃない。俺はイニエスタのプレー見てるだけでそれはもう幸せですよ。それなのにあんたたちは。実況解説の言いたいことも理解は出来る。確かに前途輝かしいボージャンが活躍する様は今のバルセロニスタにとって大きな楽しみの一つである。その楽しみを奪われた気持ちは察する。だがしかし、だからといって他の選手をガリ扱い。これは明らかにバルサに対する侮辱である。他に例えようがあっただろうよ。これをカンプ・ノウに試合を見に来た酔っ払いのおっさんが言ってれば「あぁ、そうですか」と看過できる。しかし、あろうことかこの言葉を発したのは大勢のバルセロニスタが観戦している試合の解説だったのだ。彼らにはもうそういった分別すらない。
 バルサの批判をすることが悪いわけじゃない。問題は量と限度。物事には適量ってもんがある。物事には限度ってもんがある。適当な量を慮らず、限度すら弁えられず、ただただ自分の思ったこと感じたことだけを好きなだけ垂れ流してりゃ、その人はもう実況解説ではない。せっかくたまには主音声もいいもんだと最近になって切り替えたのに、これでまた副音声生活に逆戻りだ。

posted by myrowka |23:01 | FC Barcelona | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年04月14日

ザ・引導

 プレミアリーグ07/08 第31週 ユナイテッド vs アーセナル



 ユナイテッドのスタメンはGKエドさん。ディフェンスは右からブラウン、ピケ、リオ、エブラ。ボロ戦でリオの代わりを果たしたピケはどうやら第3センターバックの地位を確立したようだ。中盤はキャリック、ハーグリーブス、スコールズの英国製逆三角。強豪で今時こんな並びが出来るのはユナイテッドぐらいなもんだろう。トップはクリ坊、ルーニー、パクチーの3トップ。


 対戦相手は宿敵ベンゲル率いるアーセナル。ユナイテッドのライバルがリバポーなら、御大のライバルはこのベンゲルになる。20年超ユナイテッドを率いてきた御大とたかだか10年そこそこのベンゲルを比類するのはいささか御大に対して失礼ではあるのだが、キャリアが長いとそれ相応の因縁も生まれるもので。自分はリバポーに負けるより、ベンゲルに負ける方が百倍嫌だ。
 そのアーセナルは先日チャンピオンズでリバポーに敗れ、モチベーションがプレミアリーグ逆転優勝の一本に絞られた。首位を走るユナイテッドとの差は6。勝てば望みも残るが、負ければそこで終わり。全てを出し尽くすべき背水の陣。そこでアーセナルはまさしく全てをさらけ出した。気合が違う。運動量が違う。ホームもアウェーも関係ない。頭にあるのは勝利の一文字だけだった。


 そんなアーセナルの勢いに飲まれたか、ユナイテッドがどこかおかしい。最初は単なるミスかと思うが、次々と続くとさすがに何かがおかしいと気づく。キャリック、スコールズがらしくもないパスミス。リオをはじめとしたディフェンス陣はことごとくアデバヨールをフリーにした。こんなに余裕がないユナイテッドを見たのは今季初めてかもしれない。ただそれだけでアーセナルは王者に挑むにふさわしい相手だということは証明された。
 だが王者は揺るがない。この相手にはいつものパスフットボールは難しい。ならばそれなりのやり方がある。アーセナルにも穴はある。今季センターバックで初スタメンを務めるソング。その穴をロングボールでチクチクと突いていく。アーセナルのプレスは激しく、中盤でのパスミスも目立ったのでこの作戦は効いた。しかもユナイテッドのロングボールはその他のチームのロングボールとは一味違う。リオ、キャリックをはじめエドさんまでもが正確なフィード力を持っているので、アーセナルが10本パスをつなげて作り出すチャンスを、ユナイテッドは2,3本で作ってみせる。計算外はルーニー。この試合でもルーニーは今季のルーニーのままだった。1対1で決めれない。レーマンのセービングを褒めるべきなのかもしれないが、しかし幾度も繰り返されてきたこの光景。やはり問題はルーニー自身にあるのだろう。
 アーセナルは全てをぶつけ、ユナイテッドは受け止める。スコアは動かぬまま前半が終わった。


 後半開始直後試合が動く。アーセナルの勝利への意思は実を結んだ。ペルシーのクロスをアデバヨールが体を使ってゴール。色々と議論の余地があるゴールではあるのだろうが、審判が認めたのだから1点は1点。リオ、キャリックも緩かった。ビダが抜けて以来ここのコンビネーションに不備が見られる。やられてしまったユナイテッド。しかしまだ時間はたっぷりある。
 その数分後にギャラスのハンドがとられたのは因果応報ということだろう。シーズン後半戦の不調を審判のミスジャッジのせいにし続けてきたベンゲルであるが、明らかにギャラスは触れているし、その前にはハンドを見逃してもらっている今、この試合では誤審という言い訳の道は立たれた。そうだ、それでいい。
 PK自体はクリ坊が威厳を示して決めた。クリ坊はこういうとこでは外さない。チャンスをことごとく外していたのはもう過去のこと。それは今シーズンの活躍で重々承知している。が、しかし覚醒した昨シーズンまでの外しっぷり、裏切られっぷりが半端じゃなかったので、体に不安が染みついているのが悲しい。でもまあそれが歴史というもんなんだろう。一応大切にしておこうか。決め方も感服。右に蹴ると見せかけて右に蹴る。レーマンも右に蹴ると分かっている。なのに止められない。本物になったクリ坊が本物たる所以を高みから示す。そう、これが格の違い。


 このゴールで乗ったユナイテッド。リードを許してから御大はベンゲルの攻撃を受け止めながらも、虎視眈々と攻勢にでる機会をうかがっていた。そんな時に生まれたゴールという意味でもクリ坊のゴールは大きかった。目立てなかったパクチー、ミスが目立ったスコールズはここで御役御免。この勢いに乗って仔ゴリラとアンデルソンは送り出された。こんなシチュエーションで燃えない仔ゴリラではない。ベンチで溜めに溜めたエネルギーを爆発させる仔ゴリラがベンゲルの調子を狂わす。攻めるベンゲル、受ける御大。この構図が変わりはじめた。
 ルーニーと仔ゴリラ、クリ坊の3トップ。キャリックとアンデルソンが中央に位置し、ハーグリーブスが右寄り。左はエブラの上がりでカバーする変則的な並び。ローマ戦の活躍で右サイドも任せられると御大の信頼を勝ち取ったハーグリーブスの頼もしさあってのフォーメーションだ。
 この試合ではようやくアンデルソンの価値を見出せた。これまで普通にパスを出し、普通に守備をしてきたアンデルソンは、この試合でも普通にパスを出し、普通に守備をした。この普通さが普通の試合では目立たないが、大舞台では地味に効く。それまではアーセナルの勢いに押され、ミスが目立った中盤に「ザ・普通」アンデルソンが加わることで安定感が生まれた。どんな時でも普通でいることが出来たなら、それは立派な色となり魅力となる。そういうことだったのか。
 それまではロングボールが多かったユナイテッドも仔ゴリラが入ったことで前線でボールがキープできるようになり、アンデルソンのおかげで中盤でのボールの流れもスムーズに。そしてアーセナルの運動量も落ち始めてきたことで、いつものパスフットボールへと移行していく。待ちに待ったユナイテッド・タイム。勝ち越すならばこの時しかない。
 お膳立てはエブラだった。右サイドにスペースがあるにも関わらず誰もいないことに気づき、「ならば俺が」と左サイドをほったらかして攻撃参加。上手いスルーパスでルーニーに通すものの、案の定キーパーにぶつけ、こぼれ球をうまく処理しゴール前でFKを見事ゲット。さぁ、クリ坊の登場だ。
 クリ坊がもう蹴る気満々でゴールを狙っている。これを決めれば勝ち越しだ。ヒーローになるとき。それは今。こんなビッグチャンスを見逃すクリ坊ではさらさらない。そばに立っているハーグリーブスはただの置物。んなもんこれまでのユナイテッドを見てきた人なら承知している。アーセナルの選手たちもそういうデータを仕入れているのだろう。みなが確信している。「クリ坊がFKを譲るはずがない」。
 しかし様子が少しおかしい。気づいたのはファン・ペルシーだけだった。なぜそこでハーグリーブスが蹴る!実はハーグリーブスは近距離FKが上手い。その上壁が動かなければ入るのも当然だ。だが問題はそんなことではない。まさか・・・。まさかクリ坊があそこで譲るとは・・・。誰もが意表を突かれた「譲る」というファンタジー。ハーブリーブスのキックも見事。だがハーグリーブスには悪いと思うが、あのキックよりもクリ坊が譲ったことの方が百倍驚いた。


 このゴールの直後ベンゲルはペルシーに代えてベントナーを投入にし、背の高いフォワードを2人並べる。狙いは明確だ。だが狙いがシンプルになったことで逆に守りやすくなった。敵という立場からアーセナルを見て、怖いのはアイデアを豊富に持った選手がなにやらかしてくるか分からないところ。でもこれでフレブ、ウォルコットは縦に抜いてくるんだろう、クロスをいれてくるんだろうことは容易に想像がつく。ベントナーもペルシーに比べ、アイデアもテクニックもない。おまけに持ち味である高さを活かしたヘディングもエドさんに止められてしまえば、もうおしまいだ。時間は無情に過ぎていき、ベンゲルの今シーズンは終わりを告げた。




 この試合は今シーズンのアーセナルとユナイテッドを象徴したような試合だったように思う。前半はアーセナルがリードするが、ユナイテッドはすぐに追いつく。そして一進一退の攻防の後、ユナイテッドが逆転。その後アーセナルは追いつけぬまま終了。
 断言しよう。内容で勝ったのはアーセナルだった。アーセナルは上手い。チャンスは山ほど作る。しかし勝てない。フィニッシュが決まらない。得点源であるアデバヨールも大事なところでゴールを決めれない。そういう「らしさ」もこの試合に出ていた。
 対するユナイテッドは相手に押し込まれる展開でも、キッチリ対処出来る。そうしながらチャンスを伺う。そして来るべきチャンスを強かに決める。そして勝つ。
 良いフットボールの仕方を知っているベンゲルだが、勝ち方をまだ良く分かっていないようだ。色々と試行錯誤はしているのだろう。ベントナーがまさにそうだ。テクニック重視のベンゲルがリードを許せば、フィジカルに頼るようになった。しかしその解答はどうやら正答ではないようだ。チェルスキー戦ではそれまで調子が悪かったドログバにやられた。リバポー戦ではPKを取られジェラードに決められた。そしてこの試合ではクリ坊のPKとファンタジーで止めを刺された。ここら辺にベンゲルが探し出すべき答えが隠れているように思う。愛弟子アンリもここぞの場面で決めれなかった。ベンゲルの苦悩は続く。


 そして答えを知っている御大は進む。ライバルを自らの拳でぶっ飛ばしながら。この前はベニテスのどたまをかち割った。この試合ではベンゲルにクロスカウンターをお見舞いした。グラントにはどんな引導の渡し方をするのだろう。

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2008年04月10日

蟻社会

 UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準々決勝 2ndレグ ユナイテッド vs ローマ


 フォーメーションはGKエドさん。ディフェンスは右からブラウン、リオ、ピケ、シルといつもと2人も違う並び。リオ兄の怪我が軽度で済んだようでたくましく先発してくれたのが何よりだが、ビダはまだ回復しておらず、代わりにボロ戦途中出場で健闘したピケ、エブラを休ませるためシルが入ってる。シルか。シルなんだな・・・。中盤はキャリックを底に置き、ハーグリーブス、アンデルソンからなる逆トライアングルの3ハーフ。 トップは右からパクチー、仔ゴリラ、ギグシーとまさかの二本柱抜けだ。


 トッティもいないローマ相手に、2点差、しかもオールド・トラッフォードではルーニーやクリ坊は使うまでもないという宣戦布告。御大が見せるあまりに不遜な態度。もうこの時点でしびれ倒した。だからみな御大についていく。対するローマには耐え難い屈辱。自らの王国を卑下された王子はどう思っただろう。
 二本柱がいない時、中央にドン!と据えられるのは仔ゴリラ。二本柱がなくても勝てる自信はこの仔ゴリラから湧き出ている。御大が見せる厚い信頼。昨季まではこんな状況考えられなかった。1年も経たないうちにこれほどユナイテッドに馴染むどころか、夢の劇場で主役を任せられる選手になるとは誰が予想しただろう。仔ゴリラを獲ってホントに良かった。ユナイテッドはつくづくチャンスに恵まれたものだ。


 クリ坊、ルーニー、さらにはスコールズまでいない非常にレアな今回の布陣。コンダクターはキャリックだ。4-3-3の3の部分で底に立ち、テキパキと試合を組み立ててている。マジ年々キャリックはペップ化していくなぁ。
 主役はもちろん仔ゴリラだが、今日は主役以外に脇役たちがとびきり輝いた。特にパクチーとハーグリーブスの働きは群を抜いていた。持ち前の運動量を惜しみなく使い、絶えずピッチを走り回ったハードワーカーズが懸命に仔ゴリラを支える。
 個人的にはハーグリーブスの積極的な攻撃参加が予想外で驚いた。これまではキャリック同様中盤の底での起用が多かったハーグリーブス。豊富な運動量を活かしての守備に期待してのことだったが、その少し前で使うとこんなにも目立ちたがるとは。そのクールなイメージとは裏腹に大胆な野郎だ。だから早くキャリックと背番号を取り替えろ。
 クロスも抜群に上手いんだ。そりゃまあフリーキック上手いやつがクロスが下手なわけはなかったが、クロス大好き人間としては幸せな発見。
 ボロ戦ではオシェイの代わりにセンターバックに入ったハーグリーブス。この試合ではオフェンシブハーフとしても機能することを示してくれた。ユナイテッドらしいユーティリティを持ったハーグリーブスと近年珍しいスペシャリストタイプのキャリック。クリ坊とルーニーにばかり目が行きがちのユナイテッドだが、2人を支える選手も力強く、頼もしく、そしてなにより面白い。
 パクチーの活躍については別に書く必要もないだろう。といっても最近特に素晴らしくなったわけじゃなく、以前から頼もしいやつだったけど。怪我で抜けさえしなければやってくれる男なんだ、パクチーは。ルーニーとの仲良さも手伝って、ナニもホントにその座が危うくなってきた。まあでも別にレギュラーは取れなくても、その存在感は抜群で、そしてそのことはパクチーが一番良く理解出来てるはず。これからもよろしく頼むよ、ホントに。もしかしたらポスト・オーレ一番手はパクチーだったりして。
 

 この4人が中心となってユナイテッドのオフェンスが繰り広げられていく。クリ坊とルーニーがいないとやはり違和感はすごく、別のユナイテッドを見ている感覚だ。仔ゴリラを頂点にその下でせっせと働く選手たち。ユナイテッドのこんなに生真面目な姿は初めて見た気もするが、なかなかどうしてこういうユナイテッドも面白い。


 だが自分は気づき始めていた。ゴールが遠いことを。ホームの利を活かし、ローマを圧倒するユナイテッドだったが、しかしゴールが入らない。いくら絶好のチャンスを10作ったって、それは1つのゴールに適わない。ドニの好セーブに阻まれ、次々とチャンスを逸していった。これまでのユナイテッドならそれでも良いのだけれど、今日はルーニーもクリ坊もいないし、なんてったってシルが守ってるんですぞ!とそんな不安を抱えていた28分やっぱりあったDFのミス。PK。内容は結果に比例しない。もしこれを決められればあれだけたっぷりあるように見えたアドバンテージなぞ1チャンスで無くなる。だから決めれるときに決めとかなきゃいけない。
 でもそんな不安もすぐに消え去る。PKを与えた時はやっちまったと思ったが、事が進むにつれそれほど重大なことではないと気づく。ローマにとって追撃のための大事すぎる1ゴール。相手は憎きユナイテッド。舞台は1年前屈辱を受けたオールド・トラフォード。その住人たちがブーイングを容赦なく浴びせかける。やられたらやり返さねば。こいつらに一太刀浴びせずのこのことローマに帰れるものか。これら全ての感情がキッカーのデ・ロッシの背中にのしかかる。案の定あっさり押しつぶされた。


 しかしそれでもユナイテッドのゴールは遠いことに変わりはない。後半になってもチャンスは作るが、決め手に欠ける。クリ坊もいない。ルーニーもいない。責任は仔ゴリラ一人で背負わなければいけない。それが主役を任されたものの定め。時間はどんどん過ぎていく。そのまま0-0でも勝ちは勝ちだが、一花咲かずに終わるとなれば、存在感は自ずと希薄に。それじゃあダメだ。仔ゴリラの名が廃る。
 だからやってくれました69分。ハーグリーブスがふわっとあげたクロスに上手くあわせ、自らの力でねじ込んだゴール。痛感した。ヒリヒリきた。仔ゴリラは伊達じゃない。ルーニーとクリ坊に代わる主役に任命され、その役割をしっかり果たせる男が果たしてこの世に何人いるか。います。ここにはいます。リヨン戦。スパーズ戦。バーミンガム戦。リバポ戦。仔ゴリラのゴールには重みがある。それでこそ主役だ。


 今日はルーニーとクリ坊がおらず、いつもよりユナイテッドの色が薄いため、アンデルソンの色をよーくよく観察できる良いチャンスだと思っていたが、相も変わらず今日も普通。普通に中盤に位置し、普通に守備をし、普通にパスを出している。ザ・普通。いや、別にそれならそれでいいんだけど。このイジリが前フリになることを祈って。
 ギグシーも今日も特にギアはいれず、中盤の駒として働いている。昨季からではあるが、ギグシーはホントウイングじゃなく、ハーフになったなぁ。サイドに開いてドリブルを仕掛けるでなく、中盤で他の選手を使う側に位置したがる。全盛期を知るだけに一抹の寂しさも。
 いつもはエブラがギグスの空けたサイドのスペースを有効的に使うので問題はないのだが、案の定シルでは使い切れない。今日はそんな3人が左サイド担当だったので、当然左からは香ばしい匂いはしてこなかった。





 そんなこんなで仔ゴリラの1点を守りきり、ユナイテッドはその後苦も無く勝利。2年連続ベスト4を決めた。以前はベスト16が定位置だったのだが、うれしい限り。最後はさながら兄ちゃん復帰セレモニー。ボランチ姿のネビ兄も新鮮で気持ちいいや。何なら弟さんと同じく新境地開いちゃえ。

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2008年04月07日

大雪

 プレミアリーグ07/08 第30週 ボロ vs ユナイテッド


 フォーメーションはGKエドさん。DFラインは怪我のビダに代わりオシェイがセンターバックに入って、右からブラウン、オシェイ、リオ、エブラ。中盤は右からクリ坊、キャリック、スコールズ、ギグス。トップはルーニーとテベスと、中盤から上は自分が現時点で最高と考える布陣。


 ジャイアントキリングの名所リバーサイドはどんより曇り空、氷雨が降っている。クリ坊が決めに決めてきた髪形も台無しだ。ボロもスタートから勢いよくぶつかってくる。これまでの自分ならかなり不安になってしまうのだが、今のユナイテッドにはこんな障害軽く叩き潰して突っ走れる力強さがある。大丈夫だろうと思ってた。案の定クリ坊がボロの出鼻をくじくゴール。「昔はあの距離からでも軽くふかしてたのに、今ではしっかり決めれるようになって・・・」となぜか母心。安心が確信に変わる。こりゃ今日も4点試合だ。
 実際その後はユナイテッドペース。スコールズがグラウンダーの速いショートパスでテキパキとイングランド人らしい試合の組み立てをすれば、パスの王子様キャリックはその少し後ろでフライングのロングスルーで華麗なキラーパスを狙いまくってる。ルーニーもクリ坊もノリノリだ。自然と笑みがこぼれてくるユナイテッドらしい展開。
 そりゃ少しカウンターを食らう場面もあるが、別段心配することもないだろう。でも今思えばこの頃にはもうクライシスは迫りつつあったわけだ。

  
 解説の永井洋一さんが執拗にアフォンソ・アウベスを批判している。おそらくはこれが前フリだったのだ。解説が必要以上に自分の意見を主張したがると、それはえてして外れるもので。さんざチームにフィットしてないと言われ続けていたアフォンソがディフェンスの裏とって丁寧にゴール。
 そりゃそうだわなぁ。ビダの抜けた穴が小さいはずは無かった。いつものような安定感が見られないディフェンスはちょくちょくアフォンソに裏を取られていた。前にリオが自慢していた。「今のディフェンスラインは最高だ。阿吽の呼吸でなに考えてるかが分かる」と。でも裏を返せばそれは一人でも抜ければ、その安定は崩れてしまうということ。この試合のユナイテッドディフェンスは見てられなかった。誰か一人が悪いというわけじゃ無かったと思う。じゃあなにが悪いと問われれば、4人に頼りすぎてた姿勢だろうか。長い長いシーズンを4人きりで乗り越えられるわけはない。もう少しいろんな選手を試していて、他の選手との連携も高めていなければいけなかったのかもしれない。
 後半に入っても妙に間の空いたディフェンスの隙をボロはどんどんついてくる。悪天候と滑るピッチもボロに味方した。こういう状況下ではカウンターがより有効。ユナイテッド守備陣の不安定さは終始続いた。永井さんのアフォンソ批判も終始続いた。永井さんがアフォンソの批判をするたび、不安になる。やめとけ、もうそこでやめとけ。批判すれば批判するほど、フリ幅が大きくなるだけなんだ。するとやっぱり不安は的中。ユナイテッドディフェンスのミスをついたアフォンソがこれまた正確にボール蹴って2点目。自慢じゃないが今季ユナイテッドは勝ち越されて逆転した試合はありません。
 トラブルは続く。リオが怪我で途中退場。こんな大事な時に。


 だがここでずるずる落ちていかないところが今のユナイテッドの底力。パクチーがナイス切り返し一発、エリア内に侵入し、仲良しルーニーにナイスパス。そのパスからのシュートをDFに当ててしまうところがいかにも今のルーニーっぽいのだが、しかしそれでもねじ込むところに頼もしさも感じる。
 動きの良くなかったテベスに変えてパクチーを入れた御大の判断も見事。そうです、ゴリラは南国の動物。寒さに強いのはイエローモンキーです。ホント良かった。ホントに良かった。


 サウスゲイトがアフォンソを代えてくれたのはラッキーだったと言うほかない。今回のアフォンソには何かが降りてきていたのに、サウスゲイトにもそれが分からなかったか。その後の永井さんの発言で確信する。「スピードに優れるトゥンジャイの方が効くと思いますよ」。これでフラグ成立。もうユナイテッドに失点の恐れはない。ピケもナイスファイトを見せた。うんうん、ユナイテッドには良いDFが他にもいる。もっともっとピケを試していった方が今後のためにもいいだろう。
 永井さん効果は抜群で、案の定サウスゲイトの采配は外れ、カウンターに勢いはなく、残り10分ぐらいからはユナイテッド怒涛の攻撃。だがゴールを決めるまでには至らなかった。時に安全に行き過ぎたためであり、時にボロがスーパーディフェンスを見せたからでもあった。最後ボロは勝ち点1をもらいにドン引き戦術。背の高い選手がいないユナイテッドにとって、これはキツかった。でも他に攻めようもないのでクロスを入れるしかない。こんな時のためにもやっぱり一人ヘディングが強い選手獲ってほしいのだけれど。





 
 そんなこんなで試合終了。最近主音声で実況解説を聞くようになったのだが、今回は大外れだった。永井さんのアフォンソ批判ありきの試合の見方。そりゃ悪いところを探そうと思えばいくらだって探せるさ。そもそも試合見てる人は選手の悪評聞いていい気分にはならない。選手を批判すれば、その選手に期待している人は気を害す。妥当な意見を妥当な量だけぶつけるならいいのだが。試合は色んな人が見ている。その大多数が気持ちよく見れる実況解説をしなければ。大前提だと思うんだけど。だから日本語で実況解説聞くのは好きじゃないんだ。

posted by myrowka |17:29 | Manchester United | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年04月05日

さよなら

 ジーニョが6週間の怪我だったらしい。ということはつまり今季は絶望だ。この報の前には兄アシスとミラン副会長との会食が取り沙汰されたばかり。なんとまあ都合の良い怪我でありますこと。これでジーニョならびにアシスは気兼ねなくミランと話し合いが出来る。4月中に発表なんてこともあり得るだろう。
 今季の終わりにお別れというのは既定路線ではあったが、こういう別れは予想だにしていなかった。今はてんでダメでも、数年前まではバルサに尽くし、リーガ2連覇、欧州制覇のタイトルだけでなく、数え切れないほどのファンタジーを届けてくれた選手である。せめて去り際だけは何とか見れる程度綺麗に取り繕いたかったのだけれど、こういう別れは予想だにしていなかった。
 そういう願いは綺麗事ということなんだろう。ジーニョらしい別れ方、ブラジル人らしい別れ方と言われれば確かにそうだ。2年間ゴール決めまくったロマーリオの別れ方もさっぱりしていたらしいし、リバウドもさんざバルサに尽くしてくれたのに毒チューリップとの仲たがいであっさりお別れ。で、ジーニョは怪我でさよなら。よくよく考えればちゃんとブラジル人の系譜を継いだ後味の悪い別れ方だ。どんな系譜だよ。


 2年前まではバルセロニスタの心を掴んで離さなかったジーニョ。一時期は終身契約なんて話もあり、自分もぜひ結ぶべきだ!と声高々に叫んでいたものだ。だからこそ余計に昨今のバルセロニスタのジーニョ離れ、ジーニョ嫌いに至ったスピードは目を疑うものがある。今ではただのお荷物扱い。なぜこんなことになってしまったのだろう。
 それはジーニョの性分のせいだろう。思えばジーニョは元からファンにあまり好かれるような性格をしていなかった。簡単に言えばサボり屋だった。守備をサボり、練習をサボり。普通ならばその時点でファンからは嫌われるわけだが、しかしジーニョはサボりながらもピッチで結果を残した。ファンタジーを提供してくれた。ファンはジーニョの負の部分には目がいかず、キラキラしたところしか見えない。自らのプレーでマイナス面を補ってあまりある活躍をしたジーニョ。
 だがしかし、これはすごい辛い戦いでもある。少しでも手を抜けば、すぐ負の部分がニョキと顔を出す。それが長く続きでもしようものなら、そんじょそこらの力では抑えきれずにドッと勢いよく流れ出る。その勢いの激しさには自分も正直びっくりした。それまではカンプ・ノウの喝采を受けていた選手が、1年も経たないうちにブーイングの対象になっていた。一度あふれ出した負のエネルギーはそう簡単に収集がつかない。ピッチ上で続くふがいないプレー。地元紙が暴くジーニョのサボり癖。今季の開幕頃には頂点にまで達していたように思う。でも開幕まで来てしまった。まだジーニョに希望を捨てないライカールト。1シーズンゆっくりと時間をかけていけば失われた信頼は取り戻せるはず。実際にそのチャンスはあった。結構あった。しかし活かせなかったジーニョとライカールト。バルサもつられて低調だ。これではファンに許してもらえないのも当然なのかもしれない。ジーニョが良いやつなら、ジーニョが頑張り屋さんならファンも応援してやろうという気になったのかもしれないが。良くも悪くもジーニョは典型的なブラジル人だった。


 行き先はACミランになるんだろう。歴史ではそうなってる。元日本代表監督ジーコは我がチームにジーニョを連れてくることにご執心のようだが、まだジーニョの持つネームバリューはトルコリーグには収まらないほど莫大であるし、そもそもブラジル人狂のベルルスコーニがこんなビッグチャンスを見逃すはずがない。曲がりなりにもメディア王。札束合戦になればジーコに勝ち目はないはずだ。リバウドに30億出せる男。今頃ベルルスコーニはロナウド、ジーニョ、カカ、パトのカルテットを本気で夢見ているに違いない。


 ジーニョが抜けたことでバルサは一応垢抜けるだろう。今シーズンの負けパターンの一つにジーニョがプレーするというものがある。バルサの攻撃の真髄はウイングにある。そのウイングに敵をドリブルで抜きもせず、自分の後ろを越えてったアビダルにパス、もしくは中央に横パスしかしない男がいたら、そりゃ調子悪くもなるわ。ジーニョがいなくなることでアンリを左サイドに固定することも可能になる。これはアンリ復活に不可欠だ。などなど。正直言って自分は今季の不調の一番の原因はジーニョがチームにいたことだと思っている。ジーニョがいなければ上手くいっていた試合がたくさんあった。だからジーニョがいない中でライカールトにはもう1年チャンスをと思っているひいき男がここに一人。上手くいくって。そうでなけりゃベンゲルしか認めんよ。