2011年08月14日

俺はタイトルが欲しい

 セスクのバルサ移籍が内定したとか。


 やっとか、と感じる人が多いはずのこのニュース。少なくともよほどのベンゲル信奉者でない限り、ビッグ・サプライズではないだろう。セスクのアーセナル脱出願望は年を増すにつれ抑えきれなくなり、移籍の噂は最近ではオフシーズンの風物詩ともなっていた。
 とはいえ、毎シーズン「こんなクラブもう嫌だ」と露骨に口にするテベスやバロテッリとは違って常識人のセスク。それはW杯優勝パレードの際、プジョルらが悪ふざけで着せたバルサのユニフォームをすぐさま慌てて脱ぎ捨てた行動からも窺いしれる。もちろん自分を育ててくれたベンゲルへの恩もある。そうおおっぴらに「出て行きたい」とは口に出さないし、出せない。
 そんな彼がそれでもここ数年、暗に「アーセナルを退団したい」「バルサに移籍したい」と匂わせ続けたのは、裏によほど強い意志があったからだろう。「タイトルが欲しい」という純粋がゆえの強い意志が。


 セスクがタイトルを欲していたのは数々のインタビューで話しているとおり周知の事実だ。特に開幕前の「アーセナルのような偉大なクラブが○シーズンもタイトルがないなんてことはあってはならないんだ」的なコメントはもはや定番。そして○に入る数字が3から4へ、4から5へと増えていく度にセスクの中に募る疑念、「もしかして、このクラブに居たら一生タイトル獲れないんじゃね?」
 ベンゲルは当然、そんなことはないと胸を張る。「確かに他のビッグクラブと比べると資金が少なく選手層は薄いかもしれないが、戦い方次第で十分に張り合えるさ」と。カリスマ性の高いベンゲルのことだ。こうして選手を鼓舞する力は人一倍あるだろう。みんなその言葉を信じて一生懸命頑張ってきた。
 しかし現実は残酷だ。序盤はベンゲルの言うとおり首位争いが出来るものの、シーズンが進むにつれ戦力差が表れはじめ失速し、終わって見るとタイトルを掲げているのはいつもユナイテッドがチェルシー。ヨーロッパではせいぜいCLベスト4が関の山だ。その度に監督は「今季は惜しかった。来季はいける」とか「今季は怪我人が多かった。来季は気をつけよう」とかなんとかそれらしい理屈をつけてくる。が、タイトルが獲れてないという事実にはなんら変わりない。そんなこんなで気がついてみると、無冠のまま6シーズンの時が過ぎていた。


 解決方法は意外と分かりやすい。選手層を厚くすることだ。「監督、お願いです。ユナイテッドやチェルシーと渡り合うために、もっと選手を獲って下さい」とどれだけ直訴しただろう。しかしベンゲルの返答は「うちは他と違ってそんな余裕は無い」の一点張り。そして決まってその後ろに「大丈夫。お金はなくても工夫次第でタイトルは獲れる」と優しく一言添えてくる。「でもそんなこと言ったって何年続いてるんですか!何年コレがぁ!」と何度心の中で叫んだか分からない。おそらく言っても分かってもらえないだろう。
 もちろんベンゲルだって補強はする、が、獲るのは決まって若くてプレミア経験がない選手。それでも辛抱強く育ててようやく中心選手になってくれたと思ったら、金を積んできたクラブにためらいなくポイだ。こんな所業をずっとそばで見続けてきたセスク。そら「おい、ベンゲルさん。あんた、本気でタイトルを獲る気があんのかよ」と疑いたくもなる。
 そんなのんきなことを言ってたら2年前、プレミアリーグに新たな石油王がやってきた。アブラモビッチも顔負けの金満ぶりで、金に物言わせてガンガン選手を獲ってチームを補強する。昨季はケツを噛みつかれる寸前だった。ユナイテッド、チェルシー、リバポーの3チームだけでも持て余してたのに、もひとつとんでもないチームが突然降って沸いた。最近ではトッテナムも力をつけ始めている。しかしアーセナルのお財布事情には一向に良いニュースは聞こえてこない。今まででもダメだったのに、こんなんでこの先タイトルなんて獲れるわけはないじゃないか・・・と諦めを覚えるセスクを一体誰がどうして責められよう。
 セスクと同じような気持ちを持つ選手は他にもいる。ナスリだ。先日ナスリが放った一言は非常に強烈だった
 「僕はとにかくタイトルが欲しいんだ。僕はまだ2004年のU-17欧州選手権でしか優勝を経験したことがない」
 とても素直で、だからこそ気持ちがすごく伝わるこの言葉。セスクは代表でタイトルを勝ち取っているだけまだ恵まれてはいるが、それでもクラブの選手としてここ数年なんのタイトルも勝ち取れてない苦しみは同じだ。


 ずっと同じ事が何年も続いている。若い有望な選手を買ってきては育てて売ってまた買っての繰り返し。それで何シーズンも首位争いを続けているベンゲルの手腕はそれは素晴らしいものだ。誰にもマネできることではない。でもそれだけ。それ以上でもそれ以下でもない。
 ベンゲルに気に入られたばっかりに、他の選手とは違って売られることはなかった。タイトルが欲しいのに出ていくことを許されなかった。アーセナルで戦い続けるしか選択肢はない。だからこそ「大丈夫。アーセナルでもタイトルは獲れる」とベンゲルの言葉を信じるしかなかった。でも、もうこれ以上自分にウソはつけない。自分を騙し続けるのももうおしまい。
 「無理です。僕はアーセナルではタイトルを獲れません」と今夏、セスクはアーセナルを後にする。

posted by myrowka |01:18 | プレミアリーグ | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年08月15日

良くも悪くもチェルシー節

さてさて。


 やっとこさ始まりましたプレミアリーグ。長いよ、ホント。おかげでこっちは体のうずきが止まらない。いくらニュースを読みあさって新シーズンを待ち望んでも、文字見てるだけじゃ何もわかりやしないから。
 そんなプレミアリーグ開幕週なのに、我らがユナイテッドの試合は日曜日。でも開幕した喜びが栓を切ったようにあふれ出て止まらない。ということで仕方なく今日はチェルシー戦でも見て抑え込む。アンチェロッティの戦い方も気になるし。


 そんな新監督の下、発進した新生チェルシー。うーん、アンチェロッティはピルロの影を追っている。ピルロそのまんまのポジションに、一応パスセンスがあるということでミケルを配置。しかしピルロの代役なんて誰にもこなせるわけはなくて。ミランではセンターサークルエリアからどこまででも飛んできた美しいパスも、ここチェルシーではたかが数メートルそこここにパラパラと散らばるだけ。ピルロを追いかけるアンチェロッティも、ピルロを追いかけさせられるミケルも、どちらも見ていて痛々しかった。チェルシーのフロントはどんな犠牲を払ってでも、新天地で頑張るアンチェロッティにピルロをプレゼントしてあげなければいけなかったのか。


 ピルロのことを誰よりも理解しているアンチェロッティ。前半の45分もあれば、ミケルに代わりは不可能だということは解る。後半開始直後ミケルに代えてバラックを入れるいさぎよさはさすが。でもそれはそれでゲーム作りの中心となる選手がいなくなるので厄介。
 ゴールから遠くなるからランパードを中盤の底に置きたくない。エッシェンはボールは奪えてもボール回しの中心にはなれない。バラックもボールを受けて生きる選手。マルダはワイドに広く開けないので窮屈そう。攻めあぐねるチェルシー。個人個人でボールをゴール前には持って行くものの、単発でチームとして流れに乗れない。
 そんな良くないチェルシーの流れを少し良い方向に持ってきたのは、あのデコ。中盤でボールをキープして前に運びながら、パスも出せる。シンプルだけどだからこそ効果的。チェルシーに足りてなかったピースがバシッ!とはまった。変わった中盤のアイデアを持ってるアンチェロッティだが(なんてったってピルロとセードルフとガットゥーゾを並べるんだもの)、ヒディング時代は不遇だったデコも、だからこそ彼の下では居場所を見つけられそうだ。


 しかし結局一番いいところを持ってったのは毎度のことながらドログバ。ロスタイムに角度のないところからループシュートを華麗に決めて勝負あり。あんなゴール、ないよ。1点目のフリーキックの時もそうだったし。まるで宇宙人だ。
 結局ドログバやランパードの圧倒的な個人の力で最後の最後むりやり勝利をもぎとるそのスタイルは変わっちゃいなかった。良くも悪くもこれがチェルシーらしさということなんだろう。そこにプラス自分の色をどれだけ出していくかが今後のアンチェロッティの見所。デコの活躍は大きな収穫だったろう。またミラン時代のスタイルをチェルシーでも再現したければ、市場が閉まるまでの約2週間フロントももっと頑張らなければいけない。アンチェロッティのフットボールの質とチェルシーの選手の質がずれてる。もっと器用な選手を獲ってあげなければ。

posted by myrowka |23:46 | プレミアリーグ | コメント(5) | トラックバック(0)
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