2008年06月27日

「一瞬のバルサイズム」 準決勝 スペイン vs ロシア

 まず最初に謝らなくちゃいけない。セニョール・アラゴネス、ロシエント。ペルドネメ、ポルファボール。


 このゲームは最初の10分で決まると思った。ポゼッション気にしてちんたらぽんたら横パスばっかしてたらロシアのカウンター食らってスペインの負け。選手が前に移動しながら縦にパスをつなげていければスペインの勝ち。中盤でボール回されてるだけじゃディフェンスは何も怖くない。逆にパスカット狙って速攻カウンター決めてやろうと意気を上げてしまうぐらいだ。しかし後ろに空くスペースというリスクを恐れず、前に移動することでマークをつきづらくしながらパスを回し早い段階でボールをロシアのディフェンスラインにまで送ることが出来れば、敵は常にプレッシャーにさいなまれることになり、ミスも期待できる。カウンターもかけにくくなる。スウェーデン戦とイタリア戦は前者のフットボールですんごい苦労した。ロシア戦は後者のフットボールで4-1の快勝を見せた。勝つならあのフットボールを再び見せるしかない。


 結論から言えば自分の予想は良い方向に外れた。中盤でボールを持つと選手達が前に走り始めて前のめりに攻撃を仕掛ける。スペインらしからぬ実に早いボール展開。これだよ、これを待ってたんだよ。思わずガッツポーズ。勝てる。これなら勝てる。 

 が!出足が好調なスペインだったが前半33分思わぬトラブル。ビジャがまさかの負傷退場。豹のように狡猾にゴールだけを狙い続けるあのビジャが・・・。スペインの中で最もゴールが期待できる選手だっただけにスペインの勝利を望む人全てに嫌な予感がよぎったに違いない。だがやっぱりフットボールって分からないもので。この交代が思いがけない好影響を2つもたらした。
 まずはセスクの出場。セスクが入ったことで中盤のボールの流れがより流動的になり、またセスクも空気読んでドンドンポジション上げていくんで、中盤でボールが停滞することもない。前に進みながらボールをつなげるフットボールをするためにはやっぱりセスクは絶妙の選手だ。
 そしてもう一つの好影響は1トップになったことで生まれた。トップが1人になったということはこれまで以上に中盤の選手の攻撃力が必要になるということ。特にサイドハーフはクロス上げるだけじゃなくドリブルで切り込むなどウイング的役割も望まれる。また1人前線が少なくなったということは中盤、特にサイドの選手の前にスペースが生まれるということでもある。「ん!この感覚!!覚えがある!!!」と俄然生き生きしだす選手が一人。アンドレス・イニエスタ。


 イニエスタのポジションといえばセンターハーフというイメージが強いが、ロナウジーニョがスランプに入った今季はよくウイングの位置も任せられた。でもイニエスタはこのウイングも難なくこなす。というより自分はイニエスタが最も活きるポジションはウイングだと思っているぐらいだ。イニエスタはパスだけでなくドリブルでも相手を崩せるからスペシャル。ひ弱な外見とは裏腹にウイングの位置でボールを持つとガンガン勝負を仕掛け、そして勝利しゴールを演出する。自分がイニエスタを世界最高の10番だと思う所以だ。


 ビジャの退場で1トップになったことでバルサでのウイングと似たポジションでプレーすることになったイニエスタ。ペナルティエリアの角っこでボールを持つイニエスタはやっぱりひと味違う。「自分がやらねば誰がやる!」という気持ちに燃え、プレーしている様も何だか楽しそう。今大会では不調に陥り目立った活躍が出来なかったイニエスタだったが、ようやく本来の実力が発揮されはじめた。そういや調子が良かったユーロ予選はトーレスの1トップで戦ってることが多かった。そうか、1トップがイニエスタを輝かせるのか。
 そして後半5分そのイニエスタがすべからく試合を決める活躍を見せる。シャビのスルーパスをもらいペナルティエリア隅でボールを持つイニエスタ。これまでバルサで決定的な仕事を幾度となく行ってきたお得意の位置。イニエスタはさすがここで勝負を仕掛ける。が、ロシアのディフェンスは簡単に振られない。攻め手に詰まるイニエスタだが中央のぽっかり空いたスペースに猪突猛進走り込むシャビ兄貴。「合点承知!」と右足ふわっと上げたボールをシャビがそのままゴールにたたき込み、スペイン先制!!!
 勝負を挑める技術と度胸を持ったイニエスタがウイングの位置から勝負を仕掛け、そこで作り出したチャンスをバルサの選手が決める。スペイン代表に一瞬だけ顔を見せたバルサイズム。やべぇ、なんか泣ける。


 このイニエスタのゴールの後はグループ第1戦のリプレイを見ているよう。ゴールを奪うため前に出ざるを得なくなったロシアの裏の大きなスペースをスペインが効果的に効率よく突いて追加点を積み重ね、終わってみれば3-0。パターンはオランダがイタリアとフランスに圧勝したのと全く同じ。ただスペイン代表はセットプレーじゃなく、流れの中でディフェンスを崩して先制点取ったけどね。フフフフフ。


 がっかりしたのはロシア。バカみたいに攻撃的だったギリシャ戦からアルシャービンが復帰し、攻守のバランスが良くなるなど試合ごとに成長していったロシアだったが、成長しきった先にいたのはただの凡チームだった。この胸をトキメかせたのはそんなロシアじゃないのよ。サイドバック、守備的ハーフまでがガンガンエリアに入り込み、動き回って敵ディフェンスをかき回し、出来た隙を突いてゴールを奪い勝ってきたのに、この試合では攻守のバランスを考えるあまり後ろの選手があまり攻撃参加してこず、またエリア内での運動量も乏しい。勝ち進んでいくうちに負けることを恐れ、そして大事なものを失ったロシア。五つ神童、十で天才、二十過ぎればただの人 という言葉があるが、今回のロシアがまさにそうだったように思う。 





 ということで。よくよく気づけばスペイン代表国際大会史上2度目の決勝進出。イニエスタ(24)以降トーレス(24)、セスク(21)、シルバ(22)、セルヒオ・ラモス(22)と若いタレントが台頭し始め、その若者達を支えるビジャ(27)やシャビ(28)、カシージャス(26)らの選手達も脂がのりはじめて非常にバランスがよろしい。行っちゃうんじゃないかなぁ。イニエスタはそれに見合うタレントであると思う。で、このチームがより熟成されて、またボージャンやらデラレやらグラネロやらまだ見ぬ選手やらさらなる若手が加わって2年後ワールドカップに挑むんだから、狙うならマジでもうここしかない。
 でもあれだ。やっぱりスペインを褒めるのは止めておこう。期待するのは止めておこう。どうせ決勝ではドイツの勝負強さに負けるさ。期待させるだけさせておいて結局はがっかり。そうに決まってる、とこういうスタンスでいた方が結果良いような気がする。試合前に書いた心配も単なる杞憂だったし。そもそも自分が良い予想をしてその通りにいったためしがない。優勝予想のオランダはベスト8,準優勝予想のスイスがグループリーグで敗退。それが自分の実力。それならそれで別にいいのさ。 

posted by myrowka |14:01 | ユーロ08 | コメント(2) | トラックバック(0)
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「一瞬のバルサイズム」 準決勝 スペイン vs ロシア

ついに来ましたね、スペインのいる決勝戦!!
長年、美しくも醜く散って逝くスペインを見続けていただけに今大会の彼らの活躍は感涙ものです。

正直、内容的には後半2-0となった以降、ロシアの選手達の足が止まってしまっていたので特に目新しいところはなかったのですが、気になった事が一つ。

………トーレスしっかりしろよ、オイ!!!!!

1-0になってロシアのディフェンスラインの裏にスペースが広がり、決定的なチャンスを幾度も与えながらゴールを奪えないトーレス。勿論1トップでフォローにくる味方の選手が少なかったり、そもそもトーレスのスピードとテクニックだからこそ難しい場面でもチャンスになり得た場面もあったのだけれど、それでもあの展開で一点も奪えずに代えられてしまったのは情けない。
決勝戦の相手はあのバラック率いるドイツ。彼らはロシアのように甘くない。ポルトガル、オーストリアを粉砕した時のの鬼気迫るバラックの表情。
今大会はここまでいわゆる勝利のロジックが通用しない試合をいくつも提供してきたので単純に比較はできないけれど、それでもシュートを外して芝生に横たわるトーレスと、立ち上がり味方を必死で鼓舞するバラックを見比べてしまうと悲観的な結果に気持ちが傾いてしまう…。

頑張れトーレス!ビジャがいない今、スペインのエースは君なのだから。

posted by スペイン! | 2008-06-28 09:19

「一瞬のバルサイズム」 準決勝 スペイン vs ロシア

スペイン! さん

8年以上辛抱強くスペインはやるやると信じ続け、でもそろそろスペイン人達と同じように何となくダメなんだろうなスペインという国は、なんて諦めはじめた頃に彼らはやってきました。いや、ホント彼らでもやることがあるんですね。何でも決めつけてもの考えちゃいかんです、ハイ。

9番をもらったストライカーとして情けないっちゃ情けないですね、トーレス君は。中盤がそれ相応のチャンスを作ってくれてるだけに余計。ビジャとの2トップの時はビジャの、1トップの時はセスクやイニエスタの引き立て役になれるならそれはそれでいいんですが、でもやっぱり周り活かすだけじゃなく自分で決めるべき時は決めてってほしいですね。全く関係ないんですが、これ書いててルーニー思い出しました。仰るとおりドイツは全く甘くないですから、決めるべきチャンスをより多く外した方が絶望を味わうでしょうね。その意味でトーレスが鍵を握るとみてもいいかもしれません。

個人的にはトーレスとバラック比べたらトーレスが可哀想だと思います(笑)経験でも完成度でもまだバラックはトーレスとはまだ段違いの場所にいると考えていいでしょう。スペインにはバラックのような顔となるカリスマ性のある選手がいないから、その差が出る可能性はありますね。私はイニエスタが決勝戦でバラックのような立場まで上り詰める展開を期待しているのですが。何はともあれスペインにバラックはいなくても、クアトロフゴーネスとか呼ばれてる素晴らしい創造者たちやポテンシャルだけは抜群にあるトーレス君等がいます。バラックの強烈すぎる個もチームで呑み潰してしまいましょう。

posted by myrowka | 2008-06-29 01:17

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