2008年06月23日

「重たい歴史」 準々決勝 スペイン vs イタリア

 重たい。すごく重たい。あまりにも重たいセスクのPKだった。セスクはその意識さえ保つことの難しい重さを堪え「こなくそが!」とふんじばってボールを蹴っただろうか。それとも若さ故の無自覚からその重みをあまり意識することなく飄々とあのボールを蹴っただろうか。張り裂けそうな思いであのPKを見守っていた自分にはそれが判断出来ない。あのPKが決まったとき悲鳴にも似た雄叫びを上げてしまった。重たかった。あまりにも重たかったイタリア戦88年の敗北の歴史。そんなに長い間スペインを縛り付けてきたものは一体何だったんだろう。そのスペインをずっとずっと縛り続けてきた鎖をちぎり破った力の源は一体何だったんだろう。トーニを始めイタリアの攻撃を執念で守り続けたカシージャス、プジョル、マルチェナ、ラモス、カプテビジャ、セナたち本当にありがとう。PKを決めたビジャ、カソルラ、セナ、セスク本当にありがとう。トーレス、グイサ、シャビ、イニエスタ、シルバたち。まだ大会は終わってない。今度はユーロ44年の敗北の歴史を打ち破るための試合があと2つ残ってる。力に微塵も疑いの余地はない。だからこそ決めてよ、今度こそ。


 この試合はまるで88年の敗北の歴史の縮図そのものだ。スペインはパスはつなげるものの、最後のところでイタリアの堅い守備は崩せない。ブッフォン、キエッリーニはまさにカテナチオの権化。何だよ、カンナバーロとマテラッティいなかったらあとは楽できるはずじゃなかったの?特に何、あのキエッリーニってすげえ守備の人。あんな人がいるなんて聞いてない。パヌッチもトーレスによくやられるもののそれはサイドに寄せたときの話で、エリア内では抑えるところ抑えてるし、その他の選手もスペインのパスで崩す戦法をしっかり研究していて、パスを出せるスペースをつくらず、パスが出てきても選手にきっちりついてきて、それでも空く隙はブッフォンがカバーリングとパーフェクト。
 おまけにスペインは辛酸をなめ続けてきた最大の天敵イタリアに対しDNAに染みついた苦手意識が抜けきらず萎縮している。周りが見えてないからサイドに開く選手に気づかない。パスの判断も遅い。勝負を仕掛けなければいけないところで仕掛けない。いつもは違いを生み出すバルサご自慢のちびっこイニエスタだが、この日はただのラ・マンチャの男だ。それでも時折シルバ等が勇気振り絞って前につっかかるが、先も言ったとおりイタリアの守備はパーフェクト。こんなんじゃゴールが入るはずもない。あーあー、そりゃイタリア相手に88年勝ちがないのもうなずける。


 ただイタリアがこれまでのイタリアと違っていた。一人で勝負を決めれる選手がいない。大体それは10番を背負ったいわゆるファンタジスタが担うのだが、今大会の10番はそういうタイプの選手じゃないようだし。良かった良かったと思ったらピルロという化け物級のキラーパサーが出てきたのだけれど、そんなピルロもこの試合では欠場。それでもピルロに変わる選手が現れるんじゃないかと心配だったが、幸い杞憂だったようだ。そんなスゴイ選手そうそう出てこないか。
 攻撃の核を欠いたイタリアはそれでもサイドアタックからトーニの高さ活かした攻撃を繰り返すが、ことごとく失敗する。スペインは大会後トーニに金一封を贈っておいた方が良い。イタリアの9番は例えばビエリだったり例えばピッポだったり少ないチャンスを活かす力強く抜け目ない選手を思い出すが、トーニに至ってはそんな心配をする必要がない。ゴールを望めないトーニをそれでもポストプレーで活かすためのペッロッタだったが、そのペッロッタもトーニとの連携はイマイチ。
 もちろんカシージャスを始めディフェンス陣も頑張った。この試合はさながらディフェンスの見本市。特にマルチェナはこれまでは心配させるような守備ばかりしていたのに、この試合では驚くほど集中して守っている。嬉しい誤算がここで来るか。ゴールを決めれる気配は全くしないが、ゴールを決められる気配も全くしないぞ。


 ということでまるで出来レースのようにPK戦突入。ユーロ84年準決勝のデンマーク戦からPK戦での勝利はなし。6月22日のPK戦は日韓W杯の時の韓国戦を始め嫌な思い出が少なからずあるそうだ。嫌だなぁ。ただでさえキーパーはブッフォンなのに。いや、こっちにだってカシージャスがいるけども・・・、となんかもう鼻から諦めモード。
 ただ最初のキッカーの2人を見て、おやおや?と思った。スペインはビジャ。自チームが誇る最高のストライカーがプレッシャーのかかる最初のPKを蹴る。あぁ、なんと頼もしや。そのビジャが振り切って右隅にドン!くぅ~!しびれる!一方のイタリアのキッカーはグロッソ。んん?そうか、グロッソなのか。イタリアで最初のPKを担うのはサイドバックのグロッソなのね。ここに違和感というか、両者の違いを感じ取った。グロッソは思い切ってボールを決める。その後何やら意味ありげにトーニを映すカメラマン。ガッツポーズして喜んでいるトーニ。なるほどそうか。カメラマンさんありがとう。そうか、スペインとイタリアの一番の違いはここなのか。
 2本目のキッカーはカソルラ。正直言うと外すと思った。まだヨーロッパを知らない若者にブッフォンはあまりに大きすぎる。だけど落ち着いてブッフォンの逆をつき右隅に決めた。うわぁ、やっぱり若さって分からん。怖い。よくあれを決めれたな、ホント。これでスペインは大きく一歩前に出た。対するイタリアのキッカーはデ・ロッシ。思い出すユナイテッド対ローマ戦。その時デ・ロッシはオールド・トラッフォードのプレッシャーに押しつぶされPKをふかした。奇しくも今回もゴール裏には敵様の応援団。外せ。止めろ。外した。やった。来た。これは来た。カシージャスはやっぱりスゴイ。神様だ。
 3本目はベテランの登場。セナとカモラネージが危なげなく見える。カソルラとセナ。ビジャレアルのリーガ2位躍進を支えた選手達はやっぱり伊達じゃない。
 4本目グイサ。ここもカソルラに続いて嫌な予感。プレーを見ててもなんか他の選手達よりもスケールが一回り小さいようなそんな印象を抱いていた。ここでは嫌な予感が当たる。失敗。3-2。次のPKを決められればイーブンという場面。カメラは外したグイサやそれを慰める選手は抜かずカシージャスを抜いた。過去ではなく未来を映したカメラマン。何だこの人、センスがあるにもほどがある。そのカシージャスの表情には失望が映っているようにも覚悟が映っているようにも見えた。おそらくは両方だったのだろう。覚悟を決めたカシージャスはディ・ナターレのPKを止めた。
 そしてセスクが次のPKを決め、歴史は変わった。何も有り余るほどの強い力で強引に変えたのではない。歴史の重さに腰が引けながらも、それでも何とか踏ん張って耐えて堪えて前に進み、相手の弱さにも助けられながらかすかに入ったヒビを何とかこじ開けて変えた歴史。胸張って自慢するほどのものではないが、しかし誇るべき勝利。良かったよ。俺スペイン応援し続けて良かったよ。




 今ものすごく言いたいことがあるが、あまりにもスペインに縁起が悪すぎることなので、それがベスト4なのか準優勝なのか、それとも優勝なのかは分からないが、スペインの大会が終わるまで取っておこう。
 こうして88年の敗北の歴史にピリオドを打ったスペイン代表だが、その中心選手がビジャだったり、セナだったり、カソルラだったり、マルチェナだったり、バレンシア州勢が目立ったのはバルセロニスタとしては何とも情けないところ。まあプジョルは頑張ってたけどそれだけじゃ何ともね。ただ先にも書いたように大会は続く。次はロシア。10日ほど前に4-1で勝利した相手。だた10日前とは比べものにならないほど強くなっている。アルシャービンっていうとんでもない選手も現れた。ただスペインも今日のような萎縮したスペインではないだろう。何より天敵イタリアを倒したことで自信をつけた。イタリア戦とは違ってロシアは後ろにスペースが空く。スペインご自慢のパス主体のフットボールもより活きるだろう。結果はさっぱり検討がつかないが、よりアクティブな試合になることは間違いない。
 そんなスペインとロシアの違いを分けるのがイニエスタであれば。ユーロ予選では大活躍で決定的な仕事を何度もしてきたイニエスタだが、この大会では何か自信なさげに一歩引いてプレーしている。そうじゃないでしょ。バルサでしているようにもっと伸び伸びと自信を持ってプレーして。そうすればイニエスタを止めれる選手はこの世にいない。そう本気で信じてる。行け、イニエスタ。ラ・マンチャの男からエル・サルバドールヘ。美白のその素顔の裏にはさらに輝く黄金があることを、バルセロニスタだけでなく全世界に見せつけるのだ。

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posted by myrowka |09:00 | コメント(2) | トラックバック(0)
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「重たい歴史」 準々決勝 スペイン vs イタリア

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イニエスタはリーグ戦終盤に故障してからコンディション崩したまま大会に入ってしまった。まだ戻ってきてないから次の試合から期待しましょう。
おめでとうスペイン。

posted by FDS | 2008-06-23 09:38

「重たい歴史」 準々決勝 スペイン vs イタリア

コメント投稿者ID :

コンディション不良の問題もあるでしょうね。今回途中で代えられた悔しさでイニエスタの中に何かが芽生えればいいんですが。
本当にスペインは頑張ったと思います。心からおめでとう、ありがとうと言いたいですね。

posted by myrowka | 2008-06-24 00:22

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