2008年06月05日

プシー・キャットはかく語りき

 先日サー・アレックス・ファーガソン(以下、御大)のインタビューを発見。自らのニックネームに対する感想からベッカム、後継者問題、外国人問題などなど、色んなことに答えてる。さっそくどんなものか見てみよう。


・自称プシーキャット

 御大のニックネームとして最も有名なのはヘアードライヤー。熱くなりやすい性格から名付けられたものだが、御大自身は気に入ってないご様子。そりゃ昔はそうだったが、今は歳も歳だしさすがに丸くなってるだろう、とのこと。その証拠に以前にBBCとの確執を紹介したが、時が経つにつれ態度も軟化しつつあるのだとか。

「BBCとの問題はあいつらが絶対に謝らないことだ。でももう2008年だ。そろそろ解決してもいいころだろう。ただ一言、自分たちが間違っていましたと謝ってくれればそれでいい。それだけで済むんだ。BBCといえども引かねばならない時もある。向こうが引けば私も許す。別に意地悪をしているわけじゃないんだ」

 許すとは言いつつも、結局事態は何ら改善してなかったり。しかもBBCへの怒りは社の態度だけにはとどまらない。

「以前BBCが誇るべき男リネカー(注:リネカーはBBCのフットボール番組『Match of the Day』の司会をしている)が、私のことを子供っぽいとか言ってたが、そういう自分はどうなんだろうな。何やら圧力をかけて自分に不利な記事を止めているそうじゃないか(注:リネカーは離婚後女性問題が絶えないそうで)。子供っぽいとはどういうことか、あいつ自身子供っぽいから十分分かっているだろう。だとしても私は私が子供っぽいとは思わない。BBCのインタビューを避け続けているのは意地悪じゃない。スタンスだ。リネカーと違って私の場合、悪いことをしたのは向こうなんだから」

 キレやすいことは認めつつもそれは昔のことで、しかもキレていい時はキレていいと開き直る御大。

「私に『正しい理由がある場合はキレても自分を責めることはない』と教えてくれたのはジョック・ステイン(注:元スコットランド代表監督で御大は彼のアシスタントコーチとして働いていた)だった。これまでキレたことは何度もあったが、7,8割正しい理由があったと思う。時に私の考えを理解させるため、時に選手に地に足をつけさせるため。でもそれは15年ほど前の話だ。今の私はもうプシーキャットだ。キレるには歳を取りすぎた」

 御大の有名ブチギレエピソード。

「コップを投げたことがあるだろうって?一度や二度の話だ。有名なのはゴードン・ストラカンに投げた時の話か。でもあれはあいつがルーマニア戦で私の話を聞いていなかったからだ。その時大きなティーアーンがあったから、それを思いっきり殴りつけたんだ。もうちょっと強く殴ってたら冗談じゃなく骨が折れてただろう(笑)その後トレイを思いっきり蹴ったらコップが飛んでったんだ。とは言っても最大の被害者はストラカンじゃなく、紅茶が背中にかかったアシスタントコーチのアーチー・ノックスだった」

 そんな御大が最もブチギレた人物とは。

「もちろん私にこんなニックネームをつけてくれたマーク・ヒューズだ(笑)」

 厳しい御大にしごかれて26年ぶりのリーグ優勝を果たし、その後もイングランドのトップとして君臨し続けるユナイテッド。秘訣はモチベーションの維持だとか。

「リーグ優勝をしたとき、封筒を見せながらこう言うんだ。『この中に3人の名前を書いておいた。その3人は来シーズン確実に足を引っ張ることになる』と。すると選手はお互いを見合って『俺じゃない!』って言うんだ。もちろん封筒の中には何も入ってないんだがね」



・後継者はやっぱりケイロス?

 ユナイテッドの次期監督としてよく名前が挙がるのがロイ・キーンなりマーク・ヒューズなりのOB。そりゃファンとしては昔オールド・トラッフォードでプレーした選手が監督としてユナイテッドの歴史を紡ぐ姿を見たいと思うのは当然のこと。しかし御大はOBにこだわっていないようで。

「そりゃロイ・キーンもマーク・ヒューズも候補の一人だが、ケイロスの存在を無視することは出来ないだろう。OBであることは絶対必要条件ではない。あのマット・バスビーだってシティの選手だっただろ?ケイロスは十分やってくれている。クラブへの貢献度は抜群だ。(後継者という点において)何の問題もないだろう。」

 御大は70歳までには辞めると公言しているが、実際ボビー・ロブソンのように70歳を超えてもバリバリ監督を務めた人はいる。

「監督としてやり続けようという熱が冷めたらもう無理だと思ってる。70を超えてその熱が保てるか、自信がないんだ。あと3年以上は無理だろう」

 情熱以外にも御大に引退を考えさせるファクターが。

「妻にはもう随分迷惑をかけ続けている。妻は実はフットボールに興味がないんだ。だから試合を見に来ることもない。妻は試合を文字多重放送(注:イギリスにはほぼ全ての番組に字幕つきというサービスがあるんだとか)で見るんだ。信じられるか?」

 最後に御大の監督論。

「ユナイテッドにとって最も重要な人物が監督だ。監督が変わるとクラブが急速に低迷することもあるだろう。主導権を選手に渡してはいけない。ファンに渡してもいけない。もちろん彼らはクラブにとって大切な存在ではあるけれど。誰かがクラブを引っ張っていかなければいけない。誰かが責任を負わなければいけない。それは監督なんだ。だから他の人間は監督を支えなければいけない」



・ベッカムのロングシュートを振り返る

 先日ベッカムがMLSで60m弾を決めたことで話題となった。ベッカムのロングシュートと聞いてユナイテッドファンが思い出すのは、96-97シーズンの開幕戦でハーフラインから決めたゴールだろう。当時はユナイテッドのユの字も知らなかった自分もこのゴールは知っている。御大ももちろん例に漏れないその一人。

「その10分前も同じようなことをしようとしたんだ。そのプレーを見てアシスタントコーチのブライアン・キッドに『次あんなことをしたら交代だ』と言ったんだ。あの試合の時ベッカムは少し興奮していたみたいだった。まあ開幕戦だったし、興奮しても仕方ないかもしれないが、それでも選手たるもの常に地に足をつけるよう努力しなければいけない。まあでもあのゴールは入った。キッドが私に向かって「交代させなけりゃいけませんよ!」って言ってきたのは今でも覚えてるよ」



・イングランドの王者たるプライド

 近年外国人が多いとやたら批判されるプレミアだが、御大はその流れに真っ向から対抗する数少ない貴重なお人。ルーニー、キャリック、スコールズ、ギャリー・ネビル、ブラウン、リオ、ハーグリーブスと7人のトップクラスのイングランド人を抱え、イギリスまで枠を広げればスコットランドのフレッチ、ウェールズのギグスと9人にまで膨れあがる。若手にもフォスター、イーグルスがいるし、ウェールズでギグシーの後継者と評されるカーディフのアーロン・ラムジーを積極的に狙いに行ってる。だが一人孤軍奮闘の状態では解決のしようもない。自然とカペッロに同情を寄せてしまう御大。

「代表にとって昨今の外国人問題は危険かだって?そりゃ危険だ。外国人選手が減れば自然と監督もイングランド人である必要が少なくなる。自国の監督にとっても重要な問題だ。これは批判ではないがアーセナルとチェルシーを例に取れば分かるだろう。アーセナルから選手を選ぼうとしても2人しかいない。チェルシーからはその倍の4人選べるが、それにしてもやはり外国人の割合が多いと言わざるを得ない。こんな状況下では代表監督も厳しい仕事となるだろう。かといって私はイングランドのアカデミー・システムが悪いとも思わない」




 一応念のために言っておくと、御大自身がプシーキャットと自称しているし、そもそもプシーキャットには単なるおとなしい人と言う意味があるので、もちろん御大もその意味で使ってます。
 御大とリネカーの仲がこんなに悪くなってるとは知らなかった。とは言っても自分はリネカーのことなんてほとんど知らないけど。なんか現役時代リネカーは御大の誘いを断ったこともあるとか。この騒動において最初にケンカを売ったのもリネカーの方だそうだし、やっぱりリネカーが悪いんじゃないかしら。何より相手が悪い。おそらくフットボール番組の司会やるリネカーとしては自分の番組のインタビューに全く答えてもらえないフラストレーションってのがあったんだろうけれど。御大はケンカするときはとことんだから、怪我をせずには済むはずもない。早速女性関係のことでチクリとやられた。
 キレっぽいのは昔のことと御大は言うが、ベッカムの靴騒動もあったし、スタムやらルートやらとのやりあいもあるし、自身はプシーキャットと言うものの、やっぱりまだまだヘアードライヤーじゃないのかなぁと個人的には思う。

 このインタビューで何より興味深かったのが後継者問題。これって暗にケイロス指名してない?自分はナニとアンデルソンの獲得が政権委譲の布石だったと予想している。ヒューズはあろうことかシティ行っちゃったし、今現在ケイロス以上に御大のやり方知り尽くしてる人物がいないってのも事実。ただケイロスで大丈夫かという不安も実はあって。年齢も55とそこそこの高齢だし、レアルでの手腕も疑問の残るものだったし、そもそもトップレベルでの監督経験も経験が少ない。
 でも経験面での不安は御大のやり方をずっとそばで見てきたことで解決されるかもしれないし、レアルでは滑ったが、勝手知ったるユナイテッドで指揮するのでは事情も違ってくるだろうとも思う。するとすれば御大直々の指名になるだろうし、御大引退後もその影響力を行使出来るという意味ではやっぱりケイロスなのかなぁと思う。
 御大の監督論も正座して拝読。ユナイテッドで最も重要な存在は監督。御大だから言える言葉。こんなことを堂々と言えるビッグクラブは世界中探してもユナイテッドぐらいじゃなかろうか。あるクラブではそれは会長だし、あるクラブではそれはソシオ、あるクラブではそれはサポーター。それぞれがごちゃごちゃごにょごにょとピッチ上の出来事に文句を言い、口を出し、物事をややこしくするというのはフットボール界において常。だが、絶対監督政のユナイテッドではそんなことはあり得ない。その分責任は全部俺が背負うという覚悟。泣きたくなるぐらいかっこいい。「主導権を選手に渡してはいけない。ファンに渡してもいけない」。極東にある某クラブは見習うべし。

 最後のは良い意味では自負、悪い意味では両チーム、というより両者に対する嫌味だろうなぁ。お前らイングランド人だけでここまで出来るか?っていうかイングランド人使わないで俺に負けてるってどういうことだ?って。実際その通りだと思う。すげぇ。外国人が増えると自国に悪影響とは言うが、これほどまで選手抱えててカペッロは不満も何もないだろうと思う。世界最高クラスの選手層だとは思うけどなぁ。となるとやっぱり問題は監督の方じゃないかしら。マクラーレンはなかった。

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posted by myrowka |21:06 | Manchester United | コメント(2) | トラックバック(0)
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プシー・キャットはかく語りき

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うーん、なるほど。そういう見かたもあるんだ。
かねがねおっしゃられてましたもんね、ケイロスへの移譲については。
わたしはケイロスをアシスタントとしてつなぎとめるためのコメントかと思っていたのですが。
ひいてはロナウド引きとめにもなりますし。
いやいや参考になります。

わたしは最終的にはスティーブ・ブルースを指名するのかな、と。
ブライアン・ロブソンは監督としては大失敗でしたからね。
まあいずれにせよ気の早い話なのですが…。

posted by 由比彰紀 | 2008-06-06 05:26

プシー・キャットはかく語りき

コメント投稿者ID :

繋ぎ止めるために両方で80億超は高すぎると思ったんですよね。ファーガソンも後継者のことを考えないほどの人でもありませんし。ロナウドに関してはそういう意図もあるでしょうが、でもロナウドは監督如何でユナイテッドでの生活を長引かせようとするような人間かどうか、って疑問はあります。まあでも一ファンの単なる予想ですけどね。

もちろんスティーブ・ブルースも候補の一人でしょうが、ファーガソン自体あまりOBを気にしてる様子ではありませんからね。これから他の監督の活躍如何で色々と変化する微妙な状況でしょう。まあいずれにせよ気の早い話ですw

posted by myrowka | 2008-06-07 01:42

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