2008年04月24日
バルサタイム
UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 1stレグ バルサ vs ユナイテッド バルサのフォーメーションはGKにバルテス。DFラインはもうホント悔しいことにプジョルが欠場で代わりにマルケスが入り、右からザンブロッタ、マルケス、ミリート、アビダル。中盤はデコが復帰し、トゥーレを底にシャビ、デコの逆三角形。トリデンテはイニエスタ、エトー、メッシーだ。このプジョルを中盤から上は自分が考える現時点でのバルサ最強布陣。エトーとメッシーは不動。問題はジーニョなき後の左ウイングなのだが、個人的にはイニエスタがベストチョイスだと考える。突破力とその意思が何よりあるし、もちろんパスも出来れば守備も当然献身的。イニエスタをウイングに置いた時の中盤の穴を埋めることさえ出来れば、これほど理想的なウイングは他にゃいない。 ユナイテッドのフォーメーションは4-4-2。GKエドさん。ディフェンスはビダが残念ながら胃の不調から間に合わず、代わりはピケではなくブラウン。空いた右サイドにはなんとハーグリーブスを持ってきた。ということで並びは右からハーグリーブス、リオ、ブラウン、エブラ。中盤は右からクリ坊、キャリック、スコールズ、パクチー。トップはルーニーとテベスという並び。左にパクを持ってきたところにチェルスキー戦のためにナニ、ギグシーを温存させておきたいという御大の意思が見え隠れするが、かといってバルサ相手に思い切り手を抜くことは出来ず、その他はベストの布陣。 もうこの試合はバルサの一言につきる。バルサ!バルサ!バルサ!前半3分から試合終了までずっとずっとバルサタイムだった。今シーズン、というか昨シーズンから割と多くがっかりバルサを見させられてきた。全盛期の輝きは徐々に失せ、クライフにはサイクルの終わりと決め付けられて、実際そう感じざるを得ない試合が続く。もうあの頃のバルサを拝む日は来ないのか、と不安が募る日々。だが、どうだ。この日のバルサは。 始まりは前半2分、ミリートのハンドから与えられたユナイテッドのPKだった。審判がPKを指示した瞬間「つまんねぇ!」と叫んでしまった。まあもちろんフットボールにGK以外手を使ってはいけないというルールがある以上、どう考えたってあの審判が正しいのだが、こんな楽しみな1戦で開始早々から不運による1点献上はバルサファン的にもユナイテッドファン的にも残念。 しかし。クリ坊がボールをスポットに置いた時から、このPKがなんら容易いものではないと気づき始めた。四方八方からクリ坊へ襲い掛かる9万超のブーイング。カンプ・ノウはでかい。イングランドにあるどのクラブのスタジアムよりも一回り大きい広さ高さから降り注ぐプレッシャー。そしてカンプ・ノウ独特の異様な雰囲気。そうだ、ここはただのフットボールスタジアムではない。カタルーニャ人がスポーツ上の敵のみならず、様々な敵と戦ってきた歴史と誇りが詰まっている。その全てをクリ坊一人で相手にしなければいけなかった。ハッキリ言おう。勝てるはずがない。バルセロニスタが一丸となってピンチを切り抜けてみせた。開始早々得たPKでその強さを示したのはユナイテッドではなく、バルサ。もうこの時点でシビレ倒し。そしてここからバルサ・タイムが始まる。 この日見たバルサはあの日見た胸躍らせるバルサ。まるで2年前にタイムスリップしたかのよう。当時中盤をコントロールしたデコが色々な意味で復帰。昔を髣髴とさせる狡猾かつ献身的なプレーでユナイテッドの攻撃の芽を摘みまくった。シャビは相変わらず絶好調。左ウイングにイニエスタが入ることで前線の運動量が増え、周りの良いリズムに乗りエトーも昔のプレッシングを思い出す。帰ってきた。あの攻撃的な守備が帰ってきた。もう上から眺める全体的なポジショニングの形からして綺麗。みながみな己の仕事をしっかり把握出来ている証拠だ。あのユナイテッドがパスをつなげない。個人技での突破もことごとく跳ね返す。2年前のバルサの強さの源はこの守備にあった。故障の原因が解決すれば、かつての調子が戻ってくるのは必然。 ボールを奪えばシャビ、デコが難なく散らす。勝負を仕掛けるはイニエスタとメッシー。この記事で書いているようにこの2人は勝負を仕掛けれる技術とそれ以上にその勇気を持っている。カンプ・ノウの声援に押され、赤い悪魔なぞ微塵も恐れずガンガン勝負。背景には、ボールを奪われても他の皆がすぐ取り返してくれるという信頼がある。だからこんなにも突っかけられる。そしてその信頼どおりボールを奪われてもすぐ奪い返すバルサ。セカンドボールはことごとくバルサの選手の下に転がり、たまにユナイテッドの選手が保持したときもすばやいプレッシャーでボールをかっさらう。グッドリズム!!グーーッドウィドゥム!!バルサが披露する素晴らしい攻撃と守備の数々。もうおりゃ幸せだ。何もいらない。このバルサが見られるんならもう何もいらない至福の時。 だがその幸福に少し水が差された。メッシー交代。そりゃおかしい!絶対おかしい!!この至福の時をもう少し!!!などと考えたが、幸せに浸りすぎて周りが見えなくなっていたか、よく考えればそういやメッシーは怪我から復帰して間もない。こんなハイテンションで90分はプレーさせられなかったということか。時間は60分。もうそんな時間!!!今回のバルサに満足しすぎていたからこれまた気付かなかったが、そういやゴールもまだ入っていない。かといってそれでもこの幸せの大きな源であるメッシーを奪われたことには不服だったが、それはわかままというものなんだろう。交代するメッシーが悔しそうな顔をしている。抱きついて慰めるライカールト。メッシーは頭の良い選手だ。まだプレーし続けたい気持ちと怪我のことを考えるとここで下がるのも已む無しという、気持ちとは相反する事実を自らの内に収め、咀嚼できる力を持っている。ありがとう、メッシー。交代して入るのがしっかりバルサイズム継いでるボージャンというのがせめてもの救いだ。 だがやはりスケール不足は否めなかった。つられてバルサの攻撃も少しトーンダウン。だがそれでも根源である攻撃的な守備が崩れたわけではなかった。その後も試合を支配し続けるバルサ。77分にデコに代わり、アンリが入る。入ってそうそう見事なシュートを放ち「こりゃ今日のアンリは調子がいいかも」と思うが、まだ味方の信頼が薄いのかボールがアンリ自体にあまり渡らない。それでもバルサ・タイムはずっと続き、気がつけば試合が終わってた。もう終わり!?そりゃないぜ!!! 今日の試合は恐ろしいほど満足だった。幸せだった。終始にやけ顔。冷静に考えればホームでノーゴールに終わったわけだが、あのショウを見せられて文句は出ない。あれだけ良いフットボールをしてくれたんだから、ノーゴールに終わった責任をライカールト一人に負わせるのは無粋というものだろう。不運だ。うん、不運だ。そういうことにしておこう。クライフはかつて「つまらない1-0の勝利より、2-3で負けた方がいい」と言ったそうだが、今ではその気持ちが分かる。引き分けに終わった今でも不満はまるでなく、感謝の気持ちでいっぱいだ。まあそれはセカンド・レグがあり、まだ負けたわけじゃないからかもしれないけれど。 自分がライカールトをまだ更迭すべきでないと考える理由はこの試合にある。上手くいけばこんな試合も出来るんだよなぁ、ライカールトは。ライカールトを失うことはこのフットボールを失いかねないってことを意味し、それが自分はものすごく恐ろしい。ライカールトが辞めた先にもっと輝かしい未来がある可能性があることも重々承知してはいるんだけれど。良いフットボールをするためには良い選手が必要だ。これまで良いフットボールを出来なかったのはデコやメッシーという良い選手を怪我で欠き、またジーニョという選手に固執しなければいけなかった環境にあると、自分はそう思いたい。あくまでそう思いたいという個人的希望。だからもう1シーズンライカールトにやらせてやってくれないかなぁ。今度ダメなら本当に諦めるから。 一方ユナイテッドは真剣と書いてマジバルサの前に全くといっていいほどフットボールをさせてもらえなかった。自分より一段階高みからフットボールをしてくるチームを相手にするユナイテッドは初めて見た気がする。ルーニー、クリ坊、テベスは若さからかあっさりとボールを失った。クリ坊に至っては勝負する意思さえ、ユナイテッドの選手として初めて格上の敵を相手にする混乱の中でどこかにおいてきてしまった。キャリックはある程度のゆとりがないと持ち味を発揮できないが、バルサはそんなゆとりを与えてくれなかった。百戦錬磨のスコールズでさえ軽々ボールを失う始末。チェルスキー戦を前にある程度手を抜いたなんて言えば格好はいいが、実際に試合を見ればそんな余裕がなかったことは明白だった。 かといってユナイテッドの全てを殺されたかと言えばそうではない。あの無限に続くかと思われたバルサ・タイム。そのバルサ・タイムを90分間守りきった守備陣の奮闘を忘れてはいけないだろう。プレミアリーグで35試合19失点を誇るユナイテッドの守備力一番の武器は安定力というよりも、どれだけ崩されても最後足一本伸ばしてボールを防ぐ粘り強さ。それは出てた。あれだけ良かったバルサがノーゴールに終わったのにも不運以外にある程度理由がある。 いや、ホントビックリした。世界は広いということを実感した。予想だにしないような強敵が実際にいるんだもん。これこそ国境を超えて強豪クラブが戦いあうチャンピオンズリーグ真の醍醐味。 0-0で終わった第1戦。正直言った話バルサ一歩リードだと感じる。バルサにとってはアウェーゴールを与えなかったことが大きい。ユナイテッドにとってはアウェーゴールを奪えなかったことが大きい。アウェーゴールを活かすチャンスが残っているのはバルサだけ。そういう意味でバルサリード。 9年前に並々ならぬ奇跡を起こした並々ならぬスタジアムで、今度はその住人に並々ならぬフットボールをされ、並々ならぬほどボールを追い掛け回させられ、並々ならぬ屈辱を味わったユナイテッド。だが、このまますんなり引くユナイテッドでもない。次はオールド・トラッフォード。今回はバルセロニスタがその力を顕示した。お次はユナイテッドのターン。ユナイテッドファンは今からメラメラ燃えているに違いない。やられたらやり返す。それが俺達のやり方。次戦は6日後。 追記:テベスを仔ゴリラと表現してきたことについて 正直な話をすると失礼な表現であることは自覚しています。しかし個人的にはテベスは大好き。その失礼な表現を出来るだけ文章内容でカバーしてきたわけでしたが、今回の記事においてはユナイテッドにあまり良いところがなかったため、カバー出来なかったのは不徳の致すところ。ダウンタウンの松っちゃんが浜ちゃんを仔ゴリラと時に呼んだりするように、これも自分なりのテベスに対する愛情表現だったりするわけですが。そうして愛情を表現することのメリットよりもデメリットが多くなってくる可能性があると判断。今限りで封印することにいたしましょう。ある程度読んでくれる人なら分かってくれてたと思うんですが、やはり初見の人にはインパクトが強すぎたか・・・。
posted by myrowka |18:40 |
FC Barcelona |
コメント(9) |
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バルサタイム
バルサが調子良かったことには納得です。
ただ試合を見ていて思ったのは、
ユナイテッドは自ら攻めようとしていなかったように見えました。
次はオールドトラッフォード。第一戦とは全く違った展開になるのではないでしょうか。
posted by う | 2008-04-24 20:25
バルサタイム
バルセロナに点の入る雰囲気はなかったと思いました ね。
正直ユナイテッドが悲観にくれる必要はまったく無い。
posted by テロ | 2008-04-24 20:26
バルサタイム
マンUは攻めれないんじゃなくて最初から狙って守っていたのでは?
posted by ロニー | 2008-04-24 21:22
バルサタイム
テベスは最高のストライカーです。
posted by じじ | 2008-04-24 21:25
バルサタイム
う さん
それもある程度はあったと思います。自分の感覚では、攻められなかった:攻めなかった=7:3ぐらいの割合でした。あのバルサの守備の前ではユナイテッドお得意のボール回しをしようとしても、困難だったんではないでしょうか。ならば無理してボールキープするよりもある程度引いて守備をしようというファギーのバランス感覚が発揮されてたと思います。
私も第2戦は一転ホームでユナイテッドが攻勢に回ると思います。このまま終わるタマじゃない。かといって後がないバルサは今回のユナイテッドのようなやり方をするわけにもいかず、前に出てくると思うので、次はもっと面白い試合になると期待しています。
テロさん
私も薄々ながらそれは感じていました。ゴールを奪うための何かが欠けているカンジですね。エトーにもっと厳しい要求をしなければいけないんでしょうか。私は全く悲観していませんよ。今シーズンのユナイテッドの試合を見ている人で悲観している人はほとんどいないんじゃないでしょうか。
ロニーさん
ある程度狙ってはいたでしょうが、かといって攻撃しようと思っていてもいつもどおりしようと思うとかなり難しかったと思います。狙って守っていたなら逆に高速カウンターをぶちかましてやろうと思っていたはずですが、それも封じられていましたからね。
posted by myrowka | 2008-04-24 21:37
バルサタイム
“仔ゴリラ”評判よかったんですけどねえ。
試合内容ひとつでこうもリアクションが変わるとは、なかなか難しいものです。
とりあえずこれで、わたしも恥をかかずにすみました(笑)
ユナイテッドお得意のカウンターがまるで繰り出せませんでしたからね。
バルサ、さすがです。
アウェーゴールをとれなかったぶん、たしかにバルサ有利やもしれません。
お互いチェルシーやリバプールとは違い、禁欲的なフットボールは苦手ですから。
さあて、おたのしみはこれからだ。
posted by 由比彰紀 | 2008-04-24 21:49
バルサタイム
もしかしたらこんな試合になるとも思っていたのでそれほど衝撃はうけませんでしたね。
ただユナイテッドは4-3-3、もしくは4-5-1のほうがよかったのではないかとも考えました。
普段リーガの試合を見ないので私見になりますが正直な感想を言えば、バルサはメッシ頼みのワンマンチームに見えました。
ただ一人で試合を決めることのできるタレントなのは確かでしょう。
来週も彼を抑えるためにエブラの頑張りに期待したいです。
posted by テロ | 2008-04-24 22:12
バルサタイム
プレミアファンです。確かに、バルサとマンUには差があったと思います。個人レベルではそんなに差があるとは思えないんですけど、ポゼッションを見るとチームとしての差は圧倒的でしたね。ただ、決定的な場面といったらエトーのサイドネットへのシュートだけだったと思いますしマンUはよく守ったとおもいます。プレミアでも下位チームにポゼッションで長い時間支配されることはありますが、90分ほぼ支配されてしまうとは・・・。セカンドレグ怖いです。アウェイでも攻めてくるであろうバルサ・・・。1-1とかで負けそう・・・。
posted by パルサー | 2008-04-24 22:37
バルサタイム
じじさん
心の底から同意します。テベスのゴールには重みがある。彼もまたヒーローであり怪物だと思います。
由比彰紀さん
理解してくれてありがとうございます。ホント難しいですね。色々と勉強していかなくてはいけません。
予想に恥も何もないと思いますが、一応おめでとうございます(笑)エスパニョール戦でのメッシーの復帰で復活の兆しは見せていましたが、まさかこれほどまでとんでもないフットボールをしてくるとは思いませんでした。ゴールを奪うことは出来ませんでしたから、2戦目では何とか修正したいですね。週末のデポル戦で何か掴んで欲しいです。
勝つためには両者引くことが出来ませんし、仰るとおり我慢が苦手な人達ですから、クライマックスの第2戦はとんでもないことになりそうです。
テロさん
そうでしたか。押されることはあると思ってましたが、私はここまでとは流石に予想外でした。それでも守りきったのが今季のユナイテッドの強さでしょうね。中盤でのボールキープのために私もセンターハーフ3枚置いた方が得策だったと思います。良いハーフたくさんいますし。ファギー的にはパクチーの運動量と縦の突破に期待したのかもしれませんが、上手くいってませんでしたね。
ぶっちゃけた話をしてしまうと、仰るとおりバルサはメッシー頼みなところがあります。この試合だけ見るとバルサは決定力以外はスゴいと思っちゃうかもしれませんが、メッシーが帰ってくるまでのバルサはあまり褒められたものではありませんでした。ある程度メッシー頼みになるのも私は仕方ないと思っていて、バルサのような勝利だけでなくスペクタクルも求められるチームは飛びぬけた個人技を持った天才を擁する必要があり、しかしそんな天才は世界に数えるほどしか存在しませんから。まあでもバルサがメッシー頼みである事実は、メッシーが怪我もなくプレーしている今、ユナイテッドにとってあまり意味を成すものではありません。メッシーを止めることが出来たならエブラは間違いなくその試合の影のMVPでしょうね。
パルサーさん
戦力の差で言えば、私はユナイテッドの方に分があると考えていましたが、やはりフットボールはチーム競技です。ただホームとアウェーで全く立場が逆になるというのもフットボールではままあることなので、オールド・トラッフォードではユナイテッドがプレミアの真価見せてくれると思ってます。期待していてください。
ここ3年連続で決勝までチームを送り込んで、4年連続になることが決定しているプレミアですが、チャンピオンズ・カップ時代を含めてまだ決勝でプレミア勢同士の対決は実現したことないんですね。ここはプレミアの現王者としてユナイテッドが底力見せるべき場ですが、チェルシー戦挟む過密日程に加え、バルサはもうチャンピオンズに全神経集中させてますからね。地味にそういうオチがありそうで怖いです。
posted by myrowka | 2008-04-25 02:07


