2008年12月24日

クロスとショートパスの狭間で

08/09リーガ・エスパニョーラ 第16節 ビジャレアル vs バルサ


 GKはバルテス。ディフェンスは右からアウベス、ピケ、プジョル、アビダル。中盤は底にブスケッツ、前にチャビとケイタ。トップはメッシ、エトー、アンリの3人。
 マルケスが今日はお休み。底にもこれまでとは違いジャジャではなく、久々にブスケッツが入っている。開幕当初はリーガでは底にブスケッツが定番と化しつつあったが、シーズンが進むにつれスケジュールもハードなものになり、また上位陣との戦いも続いたので、若さというリスクを負っていた4番ブスケッツは一時封印していたペップ。セビージャ、バレンシア、マドリと3連続で叩けたおかげでようやくその封印を解放する余裕が出てきたということだろう。2月の終わりチャンピオンズ決勝トーナメント1回戦再び始まる激闘に向け、それまでの間は色んなこと試しながら徐々にチームとしての完成度をもっと高めていきたいところ。


 この日は今日も今日とていつものバルサ。相手が引いているときはショートパスで、相手があがっている時は縦に早い高速カウンターで。これまでと少し違う点と言えばエトーが左サイドに流れることが多いということだろうか。右サイドに流れるシーンはよく見られたものだが、エトーとアンリがポジションチェンジをする場面が頻繁に見られたのはペップ・バルサ史上初めてのような気がする。アンリの調子が上がったことで自然とこの2人のコンビネーションも良くなったのか、それともエトーが「俺もメッシみたくサイドから切り込んでシュート撃ちてえ」と急に新境地を開きたくなったのかは定かではないが、バルサのアタッキングパターンも増えることになるし、アンリの中央でプレーしたいという願いもかなうことになるし、何よりである。
 そんなバルサはチャビと中央でプレーすることの多くなったメッシのショートパスを中心にポンポーンと軽快にボールを繋げながらビジャレアルゴールに迫る。日々右エストレーモと化しつつあるアウベスの攻撃参加やアンリのドリブルがそのバルサの攻撃に箔をつける。うーん、やっぱりバルサは見ていて気持ちが良い。


が。


時間が経つにつれ胸に広がっていくこのモヤモヤはなんだろう。「うお!すごい!速い!そこでそう来る!?あ、くそ、止められた!」などバルサのハイレベルなプレーの前に一喜一憂する自分は相も変わらずだが、しかし何かこうずっと物足りない感覚に襲われていた。それが何かは前半終了時画面に映し出された文字で判明する。0-0、スコアレス。そうだ、ゴールが足りない。
 メッシやエトー、アンリらの速いパス回しで敵を一応崩せはする。しかし相手も相手でバカではない。バルサの攻撃力は百も承知。一枚の壁で防げないなら、一枚もう一枚と壁を重ねていけばいい。フットボールとは要はいくら壁をぶち破られようと、最後の砦ゴールさえ割らせなければいいのだ。この非常にシンプルかつ真理をついた守備でバルサの攻撃を最後の最後で守りきるビジャレアル。
 バルサの選手もそれならそうで、壁をひょいと跳び越すだとか壁と壁の相手を通すような大砲ぶっ放すとか色々な工夫を見せていけばいいのに、バカ正直に一個一個丁寧に壁を崩してからゴールをいただこうとする。以前どこかでアーセナルはキレイにゴールを決めたがるきらいがあるという批判を見た記憶がある。実際アーセナルのフットボールをキチンと見たことはないので詳しくは分からないが、バルサの前半の攻撃にはこの批判がまさしく当てはまるだろう。バルサの攻撃の目的がいつの間にやらゴールではなくなり、いかに相手をキレイに崩すかにシフトしてしまっている、そんな印象を受けた。
 その中心にいる人物はメッシだ。メッシは今シーズンペップから「どこでも好きな位置でプレーしろ」という白紙委任状を受けた。元々トップ下でのプレーが好きだったというメッシは水を得た魚のように主戦場を右サイドから中央に変える、これまでは右サイドからドリブルで敵を崩しチャンスメイクすることが多かったメッシが、今シーズンはトップの位置でボールを受けて楔となりラストパスで味方のゴールを演出するのが目立つのはそのためだ。世間の自己中心的な選手という評価もなくなりつつある。メッシが中央に寄ればアウベスの上がるスペースも確保出来るし、一見このメッシのポジションチェンジはいいことづくめのように思える。


 しかしだ。このブログでは何遍も書いていることだが、今シーズンのバルサに遅攻からのゴールは少ない。バルサのゴールの多くは速攻によるもので、最近は特にその傾向は顕著だと言える。今シーズンメッシが好んでやっている自らがポストとなって速いショートパスの交換から相手を崩すパターンでゴールを奪った試しはほとんどない。そしてそれはこの試合にも当てはまるというのは上にも書いた通り。
 そうしてボールをキープしこねくり回すことは出来ても肝心要のゴールは奪えないという、いつかそう遠くない昔どこかで見たことのあるバルサを前にビジャレアルは後半3分、ロッシのスルーパスに抜け出したカニがふっとバルテスの頭の上を超えるループシュートで軽々とゴールを奪ってみせた。0-1。バルサはビハインド。
 正直言って自分はこのビジャレアルのゴールは嬉しかった。そう、たとえ5人抜きから決めようと、神の手で決めようと、1本のスルーパスで抜け出して決めようと、オウンゴールで決めようと、ゴールはゴール、1点は1点。半ばゴールを奪うのを躊躇してるんじゃないかと思うほどゴールにぐずぐずしていたバルサにとってこのゴールは良い薬になるだろう。ゴールはこうもシンプルに奪うことが出来る。そしてまた勝つためにはあと45分ほどでそのゴールを最低2つも奪わなきゃいけない。この逆境を前にバルサの選手達はどうでるか。ここで燃えなきゃうそだ。
 このビジャレアルのゴールを境にバルサのアタッキングは前半よりかはシンプルになった。早い話がシュートが増えた。単純にクロスを放り空中戦に持ち込む場面も多くなった。もしかするとビジャレアルにゴールを入れられる前にペップがハーフタイムに修正をかけていたのかもしれない。
 そして後半9分バルサに「シンプル」なゴールが生まれる。右サイド猛烈にかけあがったアウベスが決死のクロスを放る。良い具合にスワーブのかかった高さのあるクロスに中盤からエリア内にするするっと入ってきたケイタが合わせてゴール。バルサが同点に追いついた。メッシやアンリの個人技もなんも関係ない、クロスに合わせただけのゴール。でもそれでもこれはゴールなのだ。
 その後もバルサの攻撃はやむことがなく、後半21分ドリブルで右サイドを突破したチャビがこれまたクロスを放ち、アンリがこれまたそのクロスに合わせバルサ2点目。前半のハイレベルではありつつもゴールはなぜか遠かった内容と違い、かくもシンプルなアタッキングで18分の短い間に逆転を決めてしまった。こうした弱点を即座に修正できる立て直しの早さもペップ・バルサの強みだろう。
 後半29分ピケが2枚目のイエローカードで退場し、バルサは一転窮地に陥るが、ビジャレアルの拙攻にも助けられ、なんとか逃げ切りセビージャ、バレンシア、マドリ、ビジャレアル地獄の4連戦を4連勝で飾ったバルサ。冬のカンペオン通り越してもう普通にカンペオンにでもなってしまった気すらしてくる。が、ここは気を緩めず勝って兜の緒を締めておこう。




 この勝利を心の底から喜べないのはメッシだろう。クロスに合わせてゴールを奪って勝利出来る。ともするとこれはメッシという選手を否定しかねないからだ。もちろんそんなことは全くなく、メッシの才能、プレースタイルはバルサにとって絶対必要不可欠なものなのだが、しかしその自分のプレーで直接バルサを勝利に導けなかったことに一抹の悔しさは覚えているに違いない。思えばクラシコでもゴールを一番カンジさせたのは積極的にシュートを放っていったエトーだった。遅攻において、という限定的な話ではあるが、メッシのゴールに対する存在感はそう大きくないと感じている。
 なにもメッシにクロスを放てといっているんじゃない。メッシにショートパスで相手を崩そうとするな、といっているんじゃない。トップ下でパスを繋げるのが好きならそれで構わない。ドリブルで相手を抜くのが好きならそれでも構わない。だが決してその先に「ゴール」があることを忘れちゃいけない。パスもドリブルも全てはゴールを奪うためにあるんだから。

posted by myrowka |07:55 | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL: (表示は許可制となっています)
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/myrowka/tb_ping/104
コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」